アンケート結果……まさか擁護意見ゼロとは思わなかった。
古戦場ですが、いやぁ、エッリル強かったですねぇ、95まではザコでしたが
100以降はスパロボのオーラバトラーみたくなってて、鬱陶しいことこの上ありませんでした。
次回の相手らしい竜吉公主もかなり手強そうな予感。
古戦場の相手はスルトくらいのがちょうどいいかな。
首を奇妙な角度に傾けてジータを睨みつける香織。
「どういうこと、なのかな?」
(反射的にとはいえ、なんで私土下座しちゃったんだろ)
確かに、香織への申し訳なさはずっと持ち続けていた、あの日、ハジメを抱きしめ
奈落へと落ちた時から……。
でも、言い訳をさせて貰えるなら、本当に色々あったのだ。
確かに恋の指南役を請け負って置きながら、ご覧の有様だ、香織が怒るのも無理はない。
そういえば某アニメでこういう展開があった気がする……確か結末は。
青い顔で、ジータはついお腹のあたりを押さえてしまう。
「中に誰もいない、いないからぁ、ノコギリはやめてぇ」
怯えた風に呟くジータであったが。
「いや、別に何も後ろ暗いことなんてないだろ」
クラスメイトの前でパパと呼ばれ、少し面食らったものの、先に落ち着きを取り戻した、
ハジメが見かねて声を掛ける。
「ああ、紹介するよ、この子はミュウ、母親と逸れて人攫いに売り飛ばされそうになってたのを
俺たちが助けたんだ」
「母親って……じゃあ、ジータちゃんはママじゃないの?」
「うん、ミュウのホントのママはね、エリセンにいるのぉ」
「そもそも考えろよ、たったの四か月とちょっとで子供が産めるわけないだろ」
そうなのだ、考えてみれば。
冷静さを取り戻した香織が、羞恥と申し訳なさで顔を真っ赤にしてジータに詫びているのを
横目に、そういえばティオは?とミュウに聞くハジメ。
「妾は、ここじゃよ」
人混みをかき分けて、妙齢の黒髪金眼の美女が現れる、しかも巨乳。
え?また美女登場!?と、香織のみならず、クラスメイトたちがまたも色めき立つ。
「おいおい、ティオ、こんな場所でミュウから離れるなよ」
「目の届く所にはおったよ、ただ、ちょっと不埒な輩がいての、
凄惨な光景はミュウには見せられんじゃろ」
「なるほど、それならしゃあないか……で? その命知らずは何処だ?」
「いや、ご主人様よ、妾がきっちりシメておいたから落ち着くのじゃ」
「ごしゅ……じん……さまぁ」
「いちいち驚いてたらこれから持たないよ」
吐息のような譫言を口にした香織に応じつつ、でも仕方ないなと思うジータ。
香織が望めば旅に連れていくことは、事前に決めているのだが……。
ホントに連れて行って大丈夫なのだろうか?
この分だと同行を望むのは明白なだけに、少し不安になってくる。
「おお、ジータもユエもシアも無事で何よりじゃ、一仕事お疲れさまというところじゃの」
ティオの労いの言葉を聞きながら、奥方様呼びを却下しといてよかったと、
ジータはつくづく思う、もし、今の状態の香織に聞かれでもしたらと、
彼女は自身の判断に胸を撫でおろすのであった。
そしてハジメたちは、ロア支部長の下へ依頼達成報告をした後、
書類の受け取りのため、広場でメルドの戻りを待っている。
聞いていた時間通りだと、儀式はそろそろ終わる筈。
ティオの話によると、件の連中はミュウを誘拐しようとしたのではないかとのことだ。
面倒なことになる前に、出来るだけ早く街を離れたいところなのだが……。
しかし、早いとこ宿屋で休みたいだろうに、どうしてこいつらはいつまでも
自分たちの後ろに付いて来てるのだろうかと、ハジメは雁首揃えて広場まで付いて来た
クラスメイトたちを見て、小さく溜息をつく。
まぁ、理由は分かる、香織が自分たちから離れようとしないのと、
それから光輝が訝し気な目でずっとこっちを睨んでおり、その為
俺、先に上がらせて貰うわと言い出せない雰囲気が出来上がっているのだ。
(ジータが言ってたけどホント笛吹きに操られるネズミだわ)
もっとも何人かは笛の音の呪縛から逃れつつあるようだが……。
露店で何か買うか……と、ハジメがベンチから腰を上げた時だった。
十人ほどの男たちがこちらへと向かってくる。
「おいおい、どこ行こうってんだ?俺らの仲間ボロ雑巾みたいにしておいて、
詫びの一つもないってのか? ア゛ァ゛!?」
その先頭の薄汚い格好の武装した男が、いやらしく頬を歪めながらティオを見て、
そんな事をいう、どうやら先程ミュウを誘拐しようとした連中のお仲間らしい、
さしづめ賊紛いの傭兵と言ったところだろうか?
ハジメたちが噛ませ犬的なゲス野郎どもに因縁を付けられるというテンプレな状況に、
呆れているだけなのを何か怯えているとでも勘違いしたか、
傭兵崩れ達は、更に調子に乗り始め、その嫌らしい視線がユエやシアにも向いていく。
「ガキィ!わかってんだろ?死にたくなかったら、女置いてさっさと消えろ!
なぁ~に、きっちりわび入れてもらったら返してやるよ!」
「まぁ、そん時には、既に壊れてるだろうけどな~」
あまり思いだしたくない過去が……帝国兵との一件が記憶の中にまざまざと甦り始める。
さらに男たちがミュウに目を向けた時だった。
その瞬間、涼やかな……それでいて絶対に逃れられなき死の気配を纏った
濃密かつ巨大なプレッシャーが傭兵紛いの男たちに叩きつけられる。
ハジメの正体に今更気が付いたか、傭兵紛いどもは必死で命乞いをしようとするが、
プレッシャーのせいで肝心の口が開かない。
やれやれといった感じでハジメは、少しプレッシャーを緩めてやる。
「おい、今、この子を睨んだやつ」
「……わ、悪かった……命だけは」
「そんなこと聞いてねぇよ……笑え」
「「「「「「「え?」」」」」」」
手近な奴に喉輪を掛けてやりながら、さらにハジメは言葉を続ける。
「聞こえなかったか?笑えと言ったんだ、にっこりとな、怖くないアピールだ、
ついでに手も振れ、お前らのせいでウチの子が怯えちまったんだ、
トラウマになったらどうする気だ?ア゛ァ゛?責任とれや」
教室でのハジメとはまるで違う、性格が反転したとしか思えないような恫喝に
唖然とするクラスメイトら……。
「聞こえなかったか?五つ数える間に笑え……いーち、にぃー」
傭兵紛いどもは頬を盛大に引き攣らせながらも必死に笑顔を作ろうとする、
股間に生暖かい液体の感覚を覚えながら。
「ちゃんと手も振れよ」
空気が漏れるような音を一様に唇から漏らし、ガタガタと歯を鳴らしながら
何とか手を振ろうとするが……、そこまでが彼らの限界だったのだろう、
全員そのままの姿勢で白目を剥いて失神してしまった。
すかさずメドゥーサが傭兵紛いどものズボンを石にして動きを封じていく、
いい晒し物だ、これでもうこの界隈で、でかい顔は出来ないだろう。
ちなみにこの程度かと、醒めた目で連中を眺めるハジメの視界に、
何故か息を荒げている光輝の姿が入る、大方首を突っ込もうとでもして、
巻き込まれてしまったか?
「……漢女にしてやればよかったのに」
「そんな残酷ショー、ミュウの前で見せられるか……それに」
ハジメの様子に何かを感じ取ったか、またユエの表情が少し険しくなる。
そんな彼女の視線の先には……香織がいた。
「今のハジメちゃん、怖いと思った?……でもね、これが今の私たち、
戦うために生きるために変わらざるを得なかった」
香織へと問いかけるジータ、香織はユエやシアやティオやメドゥーサに囲まれ、
そしてミュウをあやすハジメの姿を見つめながら、静かにしかしはっきりと首を横に振る。
「ううん」
凄惨な数ヶ月であったことは、面影を多分には残しつつも、変わってしまった外見を見ても、
想像がつく、それでも……。
「ハジメちゃんね、嬉しかったって言ってたよ、香織ちゃんが"強い"って言ってくれたこと
強い人が暴力で解決するのは簡単だよねって言ってくれたことを」
「……覚えていてくれてたんだ」
「だからこそ……変わらないと、守ってくれた、守るって言ってくれた人たちの為にって
……それで」
言葉を詰まらせるジータ、彼女もまたハジメと同じ闇の中で手を取り合い、
生を掴み取るための戦いに身を投じていたのだ、いや真に彼女が守っていたのは……。
「あの人たちだって、本当ならもっと酷い目に合わせることだって出来た筈だよね
けど、ハジメくんはそうしなかった」
ギュと香織はジータの手を握る、その目に涙を浮かべて。
「ジータちゃん、ありがとう、ハジメくんを、ハジメくんの中の大切なものを守ってくれて」
香織の言葉にジータの目から涙が溢れ出す、それは彼女が最も言って欲しかった言葉
いや、そんな言葉のためにここまで来たわけでは決してない、それでも嬉しくって
仕方が無かった。
「ジータちゃん、お願いがあるの、私も皆の旅に連れて行って!」
それもまた待ち望んでいた言葉だった……正直、不安もあったが、
そこはもう飲み込もう。
「私からもお願いするよ、二人で……ううん、皆でハジメちゃんを人の世界に繋ぎ止めよう
そして、皆で生きて帰って笑顔でただいまって言おう」
「ね、雫ちゃんもそれでいいよね」
「いっそ雫ちゃんも一緒に……」
そこまで言いかけて、翳りを含んだ雫の表情に二人は気が付く。
「私は……行けないよ、だって」
雫の視線の先には、光輝とそれを介抱する龍太郎の姿があった。
「あの二人は放っておけないから……それに」
雫が思い浮かべるは、あの大聖堂での一幕。
分かっていた、あの時、二人を止めることが出来たのは自分だけだったのだ、にもかかわらず、
なぜやめなさいと言えなかったのか、なぜ流されてしまったのか……。
もちろん、二人だけで勝手にやらせるわけにもいかなかったのも事実だが、
自分もまた、誰かの為に何かが出来るという万能感と使命感に酔ってしまっていたことは、
心の奥底で八重樫の剣を実戦で試したいと思っていたことは、
否めない気がする。
(……その結果が)
ぶるると雫は身を震わせる、ジータたちが助けに来なければ今頃どうなっていたか……と。
救いの手が差し伸べられたことをさも当然と思っているのは、光輝くらいのものだろう。
(光輝だけのせいじゃない、この責任は私にもあるんだ)
だから自分はまだここを離れるわけにはいかない。
雫は香織の背中をバシンと叩く。
「行ってきなさい!面倒ごとは全部この八重樫雫が引き受けてあげるからっ」
少し迷いの表情を見せる香織だが、ここで遠慮は却ってこの親友の誇り高き心遣いを、
無にしてしまうように思えた……力強く頷くと、香織はハジメの元へと駆け寄っていく。
「ハジメくん、私もハジメくんに付いて行かせてくれないかな?
……ううん、絶対、付いて行くから、よろしくね!」
息を切らしながら、それでも勢いのままにハジメへと力強く思いのたけを打ち明ける香織。
「だって、あなたのことが……ハジメくんが好きだから」
「……お前にそんな資格はない」
ハジメが答えるより先にユエが割って入る、いつにないその自己主張に、
驚きを隠せないハジメたち。
「資格って何かな?ハジメくんをどれだけ想っているかってこと?
だったら、誰にも負けないよ?」
「……抜け抜けと」
香織や雫たち、クラスメイトのことは度々聞いていた、実はその時から
ユエは香織に並々ならぬ警戒心を抱いていた。
実際、やはりこの女は違う、シアやティオがあくまでも仲間という裾野から始めているのに対して、
さも当然のようにいきなり頂上を獲りに来ている、危険だ。
ジータだけではない、自分もハジメの心を、優しさを戦いの中で守り続けていたという
自負もある、そして何よりハジメは自分を、あの孤独と暗闇の中から、
救い出してくれた男なのだ。
―――易々とは渡せない、いかにジータの親友であろうとも、この女にだけはハジメを。
と、釘を差したところでユエはハジメへと会話のバトンを渡す。
「覚えてるか?あの夜の……宿屋でのこと」
「うん」
忘れる筈がない。
「あの時の香織の言葉があったから、俺は自分だけの何かを手に入れたい、
見つけ出したいって思えた、それも生か死かの土壇場で俺を支えてくれた中の一つなんだ
……だから」
一息置いてから、ハジメは続ける。
「もしも今の俺と、お前の中の南雲ハジメが僅かでも重なるのなら……また、
俺に力を与えて欲しい」
それは恋人ではなく、友としてでも仲間としてでもなく、
そう、まるで恩人に対するような返事だった。
警戒しているような、それでいて安堵しているようなユエの顔が目に入る。
「……なら付いて来るといい、そこで教えてあげる、私とお前の差を」
「お前じゃなくて、香織だよ」
「……なら、私はユエでいい、香織の挑戦、受けて立つ」
「ふふ、ユエ、負けても泣かないでね?」
「……ふ、ふふふふふ」
「あは、あははははは」
二人は互いに表面上は爽やかに笑いあう、その背中に龍と般若を纏わせて。
どうしたものかと、ハジメパーティーの面々が顔を見合わせる。
そしてそんな彼らへと光輝は鋭い視線を向けるのであった。
次回、勇者決壊。