ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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休みなのをいいことに一日中書いてしまいました、また冷却期間置かないと
ウーバーイーツ初めて頼んだよ。

で、ハジメに続き、光輝もようやく折り返し点まではもってこれました。



Change Myself

ハジメたちが大火山に向かっていた頃へと時間は遡る。

 

王宮内、クラスメイト達に用意された宿舎にて、深夜。

まるで山籠もりでもするかのような、重装備に身を包んだ坂上龍太郎は、

自分に言い聞かせるかのように、最後の決意を固めようとしていた。

 

(俺は強くなりたい……今よりも、そうすれば)

 

一人で六十五層まで辿り着けるかは、やや不安ではあったが、

光輝や雫にこればかりは頼ることはできない、それに……。

 

 

『龍太郎、悪い、今日中にこの本を読んでおきたいんだ』

『ゴメンね、新しい構えをもっと練習したいの、また後でね』

 

 

(あいつらはあいつらで自分のやるべきことに懸命なんだ……けど)

 

俺にはこれしかないんだと、握りしめた両の拳を震わせる龍太郎。

その震えには、自分の道を見つけ出しつつある幼馴染たちに、

置いて行かれる不安が籠っていないかといえば、嘘になる。

 

(俺はただ、皆で仲良くやって行きたいだけなんだ……それだけじゃいけないのか)

 

それが今までシンプルな行動論理の中で、天之河光輝という太陽の下で、

生きて来た、坂上龍太郎にとっての限界だった。

 

しばらく単独で修行に出る旨の書置きを机の上に置き、そっとドアのノブを捻る。

これまでもこういうことは何度かやっている、出ていく姿さえ、

見とがめられなければ、疑われることはないだろう……しかし。

 

「へへ、行くんだろ、オルクスの底へよ」

「付き合うぜ」

 

食料や装備を用意していた所を見られていたか?

部屋の外には、まるで待ち構えてたかのような、近藤、中野、斎藤ら三人の姿があった。

 

「おい……」

 

いくら単独行が不安であっても、こんな奴らと行動を共にする気は一切ない。

何せ彼らは命を救われたにも関わらず、未だにハジメのことを認めないような連中である、

三人を半ば無視し、足早に宿舎を出ようとした龍太郎だが、

そうくるだろうと思ってたとばかりに、その背中に中野の声がかかる。

 

「おっと、でかい声出すぜ、俺たちゃいいんだぜ……

どの道、期待なんてされてねぇんだからよ」

 

檜山が全国指名手配となって以降、かつての友人ということで、

彼らもまた王宮の人々から白眼視されるようになっており、

したがって三人もまた何とか浮かび上がろうと、それなりに焦っていた、

自分たちがハジメや檜山に対して行っていたことが、己の身に降りかかることだけは、

避けたかったのだから。

 

「けどよ、天之河や八重樫はどうなるんだろうな」

 

これまでも修行と称して、数日間郊外で一人キャンプを張ったり、

オルクスのごく表層で魔物たちを狩って過ごしたことはある。

だが、今回はそれとは勝手が違う、ここで揉めれば間違いなく、

色々と調べを受けねばならなくなり、そしてそれを交わす自信は龍太郎にはなかった。

 

「ま、旅は道連れって言うだろ?」

 

こうして第二の悲劇の幕は開き、そして時間はまた少し遡り、その日の昼下がり。

 

 

(また眠ってしまってたか……)

 

光輝は寝ぐせの付いた髪を手で押さえながら、

突っ伏した机の上から、ゆっくりと上半身を起こしていき、両腕を伸ばすと、

身体の節々が解放されたような心地よさが全身を走る。

身体をほぐすついでに、少しランニングでもしたいところであったが、

 

(今の俺は……)

 

たらいに汲んだ水で目を濯ぐと、また光輝は書物へと目を走らせる。

ここは王宮から遠く離れ、王都の外れにある一般兵用の兵舎の中だ、先のオルクスでの一件以来、

天之河光輝はその一室にて、勇者にはあまりに似つかわしくない、

簡易ベッドと机が置いてあるだけの、六畳ほどの簡素な部屋で、

謹慎生活を送っていた。

 

もっとも謹慎と言っても、半ば自分から志願したことではあったが。

そうでもしなければ、あの時の自分は誰彼構わず傷つけてしまいかねない程に、

荒れ狂っていたのだから、この世界に蔓延する"憎しみ"という余りにも巨大で、

形なき物に立ち向かうには、余りにもか細過ぎる己の力に拭い難き敗北感を抱えて。

 

こうして光輝はジャンヌとの午前中の訓練の他は、ほぼ他者から隔絶された部屋の中で、

ひたすら書物を読み漁る生活を送っていた。

その他者の中には、級友たち、もちろん雫や龍太郎も含まれている、

唯一例外がいないわけではないが…。

 

 

「メルドさん……転属になるかもだって」

「そうか……」

 

図書館から借りて、一部は無断で拝借した書物を、床の上に大きさごとに並べていきながら、

光輝へと話しかける遠藤、書物についてもそうだが、こうして彼は遠藤を通じ、

時折クラスメイトや王宮の様子を小耳に挟んでいた。

これは心情的にも能力的にも龍太郎と雫には頼めないことだった。

 

「遠藤は……悔しくないのか?」

「そりゃ悔しいさ、神の使徒だの何だのと持ち上げておいて、

結局は傭兵だったってことだろ」

 

遠藤は小雨がぱらつく屋外へと目を向ける。

 

「でもさ、俺たちは王国の金でこうして養って貰えてる、だから雨にも濡れずに済むし」

 

次いで王宮でのフカフカなベッドとはあまりにも違う、カチカチのベッドに腰を下ろす。

 

「足を伸ばして眠ることも出来るわけだ、だからやっぱりまずは、

王国の為に何かをするべきなんじゃないかって思うんだ」

 

もっとも勝手にこんな世界にムリヤリ連れ込んだ以上、

それくらいはして貰って当然だし、意趣返しだってやりたくないわけではない。

だが、自分たちは未だ籠の鳥だ、だからそう自らに言い聞かせるくらいしか、

今の遠藤には出来なかった。

 

(仕返しは南雲と蒼野が千倍にして返してくれるだろうしな)

 

「……だったら、そういうの抜きにしたら、お前は何のために戦う?」

「生き残るためかな」

 

それについては即答する遠藤。

 

「俺は……生きて家に帰りたい、でも、そのために誰かを裏切ったりはしたくない……、

だから自分に出来ることはちゃんとやっとかないと、

信じられるものは何かを、ちゃんと知っておかないとな」

 

だからスパイ紛いのことでも買って出る、生き残るために、

生か死かのギリギリの状況で、見誤らないために。

 

「そうか……強いな、遠藤は」

「え?強い?俺が」

 

光輝からの意外な言葉に目を丸くする遠藤。

 

「強いだろう、自分で考えて、自分のやるべき事をちゃんと見つけているんだから」

 

日本にいた頃は、光輝と遠藤はさほど交流がなかった、

しかしそれが今となっては却って幸いし、二人はいわばフラットな関係を築けていた。

クラス替え直後のようなムズ痒い気分を覚えつつ。

 

 

「あと、それとあの時は……悪かった」

「あの時?」

 

別に遠藤に謝られるようなことは……と、首を傾げる光輝だったが。

 

「あの、最初のさ……全部お前に背負わせてしまって」

「ああ」

 

ガナビーオーケーの宣言を思い出し、気恥しさと何より申し訳なさに赤面する光輝。

一方の遠藤も、あれは乗せられたのではない、自分たちが乗ってしまった、

これ幸いと、目の前の男に背負わせてしまったのだと、やはり申し訳なさを覚えていた。

 

「いずれ皆にも謝るけど、こんなことに巻き込んでしまって本当にすまない」

「それについてはいいんだ、どの道従ってなかったら、

もっとヤバイことになってただろうからさ」

 

それでも答えは変わらずとも、全員で結論を出したという事実は必要ではなかったかと、

今更ながら光輝は思い返す、ジータもきっとそれを怒っていたのだろう。

そんなストレートな謝罪を受けて、少し面食らった感を覚える遠藤。

それでも、一頃の頑なさが影を潜めつつある、

光輝の変化は、彼にとって好ましいものに思えていた。

 

「じゃあ、もう行くからな、あ、その赤い表紙のやつは最優先で読んでくれ

なんか重要っぽい棚のだから、出来れば早く戻しに行きたいんだ」

 

 

書物を紐解きながら、午前中の訓練を思い出す光輝。

 

(今日も……歯が立たなかったな)

 

 

「痛みを恐れず尚も前進し、決して諦めない姿勢は評価します、しかし」

 

ジャンヌの声と共に、光輝の視界は横転する。

足払いを仕掛けられたと思った時にはすでに彼の身体は地に転がり、

そして槍の切っ先が、眼前に突き付けられる。

 

「足元を顧みれぬ者はこうなる!……何度目ですか」

 

ジャンヌダルクは、今日も容赦なく光輝を叩きのめしていた。

ああいうことがあったとはいえど、今の光輝の剣技はメルドやアランといった、

騎士団の猛者たちにも、決して引けは取らない。

しかしジャンヌの操る右手に剣、そして利き腕である左手に槍を構える変則的な二刀流は、

ステータスを差し引いたとしても、その遙か上を行っていた。

 

「才能だけで勝てるのは試合までです、戦場はすべてにおいて平等、

聖も邪もなく、勝者の正義のみがまかり通る場所なのですから」

「……だからこそ、仲間の命を預かるべき者は常に勝利が求められる」

 

ジャンヌの方には顔を向けないまま、悔し気に呟く光輝。

しかし、その声音にはやはり納得できない思いが込められていた。

 

「それは違う、光輝、覚悟を知る者は相手の覚悟の有無を容易に悟ります、そう」

 

そんな光輝の思いを汲んだか、彼が口を開く前にジャンヌが答える。

突きつけた槍の穂先は離さぬままに。

 

「命を摘み取る覚悟のある者だけが、戦に於いて命を守ることが出来るのです

……己だけではなく、誰かの」

 

女魔人族の最期を思い浮かべる光輝、あの時自分にもっと力があれば……

いや、違う、本当に覚悟が必要だったのはあの時じゃない……。

 

「避けられないのですか……どうしても」

 

自らの声が震えていることを自覚しつつ、ジャンヌに問い返す光輝、

やはりジャンヌの顔は見ないまま。

 

「もしも辛いのならば……その剣を返上すべきです、いかなる時代、世界に於いても

戦とは人の行う愚行の中でも最低の禁忌、逃げることは決して恥ではない

私だって……」

「それでも、誰かがやらなければ、他の誰かがやらされるんでしょう」

 

慌てて光輝はジャンヌの言葉を遮る、そこから先は聞いてはいけない気がしたのだ。

光輝は思いだす、自らにぶつけられた孤児たちの無邪気な願いにも似た殺意を、

あんな純粋な憎しみを雫たちが知っていいはずがない……それに。

 

「戦争は怖いです、人を殺すのも……怖いです、けど、自分の課せられた役目から、

逃げることはもっと……怖いんです、でなければ、俺が俺でなくなる気がして」

 

声は未だ震えてはいるが、それでも何とか笑顔を作り、

ようやく光輝はジャンヌの顔をその目に写す、やはり頬が熱くなっていく感覚を覚えながら。

 

そんな戸惑いの表情を垣間見せる光輝を、ジャンヌは微笑みつつも少し寂しげに見つめ返す。

 

きっとこの少年は幼き頃から特別な存在だったのだろう、

それゆえに余りにも多くの期待を役目を課せられてきており、そして皮肉なことに、

それら全てに応えられるだけの才を持ち合わせていた。

だからこそ分からないのだ、普通の少年として生きる術が――― 。

 

「だから、俺は勝ち続けないと、正しく在り続けないといけないんです!正しくないと……」

 

―――本当の自分が何者であるのかを知る術が。

 

「光輝、確かに勝利すること正しいこと、それも勇者、ひいては将の責務の一つです

ですが……永遠に勝利するなど、まして不変の正しさなど決してあり得ない……」

 

地に跪いたままの光輝へと手を差し伸べるジャンヌ。

 

「いずれ君は必ず躓く時が来る、その時こそ君は真に選ばねばならない」

 

(人としての幸福か、勇者としての栄光かを……)

 

もう今だって躓いてますよとジャンヌの手を取りつつ苦笑する光輝、

しかしその口調には未だ心の何処かに、それでもきっと上手く行くだろうという、

これまでの自分の成功体験のみを根拠とした、朧げな自信が宿っているように、

ジャンヌには思えた、そしてその姿はかつての自分と……。

 

 

『世界を救う…その使命のためなら、私は命をも投げ出そう』

『自らの信念を放棄して生きることは、若くして死ぬよりも悲しいことだ』

 

 

「光輝、君の手は暖かいな…生きている者の温度だ」

「ジャンヌさんだって生きているじゃないですか」

 

ジャンヌの言葉に特に何も感じることなく答える光輝。

……後にその言葉の意味するところを知り、彼は深く煩悶することになるのだが、

それはまた別の機会に語ることになるだろう。

 

ただ、それでも、まさに自分の思い描いた夢の世界から現れたかのような、

理想の英雄にして勇者の姿をした少女が、凛々しい中にも時折見せる、

寂しげな瞳が意味する、深く刻まれた戦いの悲しみだけは今の光輝にも理解出来た。

 

(……いつか俺は君を……まだ俺にはそんな資格は……っ)

 

「君が揺れているのは、覚悟以前に、君自身の正義を見つけ出せていないからです」

「前にも話したと思う、俺はお祖父さんのように……」

 

胸が締め付けられる思いを悟られぬよう、幾度か話したことを繰り返そうとする光輝。

しかしジャンヌはそれには及ばぬとばかりに続ける。

 

「そう、しかしそれは君のお爺様の正義だ、光輝、君の正義ではない、

君がお爺様のようになりたいと思っている間は、決して君はお爺様のようにはなれない

ただ、誰かの正義をなぞっているだけなら」

「俺は憧れた人になりたい、俺に正義を教えてくれたお祖父さんのように、

それがいけないことなのですか?」

 

やや鼻白んだような光輝へ、まるで慈しむような笑顔をジャンヌは向ける。

たった二つしか年齢が離れていないとは思えぬ、その大人びた輝きに満ちた笑顔を、

光輝はただ呆けたように見惚れてしまう他なかった。

 

「志を受け継ぎ、さらなる次代に紡ぐことも大切です、ですが君は天之河光輝だ、

決して、お爺様ではない」

「!」

 

当たり前のことなのに、何故か初めて教えてもらったような……。

自分がずっと言って欲しかったことを、ようやく言って貰えたような

そんな感覚を光輝は覚えていた。

 

「次代に紡ぐべき、誰にも譲れない君自身の正義を見つけるのです、

ただし平和や愛や友情、それらごくごく普遍的なありふれたものをただ守るだけでは、

勇者の正義足りえない」

「勇者の……正義」

「そう、勇者とは願う者ではなく、名もなき者の願いを背負い、

叶える者であるべきなのですから」

 

それがいかに過酷で、険しいことなのかは光輝にも理解出来た。

 

「もちろん急ぐ必要はありません、君はまだ多くを……多くのことを、

知らねばならぬのですから……」

 

その言葉の裏側には、知らずに、知らなければ……人としての幸福を求めるのならば、

決して知るべきではないことも含まれていることに、まだ光輝は気が付いていなかった。

 

「ただしこれだけは胸に留めて置いて欲しい、例えどれほど尊き愛や正義の元に

始めた行為でも、その結果、人々を地獄に導いたのなら……裁かれずとも、

それはもはや悪だということを」

 

およそこれまで戦いを経験したことがなかったであろう、十七歳の少年には、

あまりにも厳しすぎる言葉をジャンヌは投げかける。

しかしそれはこの天之河光輝という少年の、巨大な才を認めているからに他ならない。

だからこそ聖女は勇者へと、"背負う者"へと妥協をすることはない。

 

いや、もしかすると彼女も、才能以上の何かをこの少年に感じているのかもしれない。

 

 

「誰かに教えられ、受け継ぐだけの正義ではなく、俺自身の理想を、正義を……」

 

書物を開きながら、口癖のように独り言ちる光輝、

そんな彼の頭を過るのは、書物の内容よりも、また孤児たちの笑顔。

 

(家族を奪われたあの子たちにとっては、魔人族を殺すことが正義なんだ

そういう正義しか教えられてこなかった……いや)

 

それは別に不思議でも何でもない、奪われた者は奪い返すことでしか、その怒りを、

悲しみを鎮めることは出来ない、心では間違っていると分かっていたとしても。

 

(俺だって……もしもあの時、香織と雫が殺されていたら、同じように思ったに違いない

香織とジータを俺から引き離した南雲に……納得できない気持ちを今でも抱えているんだから)

 

その納得できない気持ちは、笑顔でその背中を見送ることが出来なかった後ろめたさは、

己の正義が定まっていないことによるものだということも、今の光輝には理解出来ていた。

そして己の正義を定めるということは、他人の定めた正義を認めねばならないということも。

 

『私たちは私たちの道を選んだ!』

 

ジータの叫びが、涙が、胸に甦る。

 

(自分の確固たる何かを抱えていないから、俺は南雲たちに悔し紛れの八つ当たりを

するしかなかった、あの子供たちに何も言えなかった、そんな無責任なことは……)

 

 

『俺はッ!俺の正義で必ずこの世界の戦争を止めて見せる、

そしてお前から香織を!そしてジータを必ず取り戻す!』

 

 

「何が俺の正義だっ!くそっ!」

 

乱暴に本を閉じ、頭を抱え込む光輝、思えば自分自身の確固たる考えのもとに、

事を為したことが、これまでの自分にはあっただろうか?

ただ、その場にとって都合のいい、耳触りのいい回答を弾き出していただけではなかったのか?

(皮肉なことにそれらを弾き出せてしまうだけの能力が彼には備わっていた)

そんな浮ついた心根で、正義を口にし、命を背負う資格があったのだろうか?

あいつに……かつての親友に、届くことが出来……。

 

「違う!」

 

自分の目指すべき正義は勝ち負けや、まして競争などでは決してない、

また自分が危険な考えに引き摺られそうになったのを悟り、

頭を振って必死でそれを打ち消そうとすると、今度はジャンヌの戒めの言葉が浮かんでくる。

 

『例え、どれほど尊き愛や正義の元に始めた行為でも、その結果、

人々を地獄に導いたのなら……裁かれずともそれはもはや悪だということを』

 

聖堂で万能感と使命感に狂喜しつつ、拳を振り上げ高らかに宣言した在りし日の姿と、

魔人族の女に追い詰められた、つい先ごろの哀れな姿が、自分の中で重なっていく。

 

そしてまたその頭の中に巡るのはもう何度思い起こしたか分からない

あの場面、メルドが女魔人族の首筋へと刃を疾らせるシーンだ。

 

確かにあの瞬間に関してだけは光輝はメルドを恨み憤った。

しかし今ならばメルドの行動の意味も朧気ではあるが理解出来る。

 

(きっとこの世界の歴史の重さがメルドさんに刃を取らせた……

そしてあの人もそれを受け入れた)

 

どうして先に教えてくれなかった!とは思わない

これは自らが率先し己の意志で調べ学ぶことだ。

ただ考えることなく剣としての役割に甘んじるのならばともかく。

 

(それをきっとこの国の人たちは望んでいる、そしてそれを勤めあげる事こそが

"勇者"の正しい在り方なのだろう、けれど……)

 

そこで思考を止めざるを得ない光輝、ここから先へはまだ進めない。

自分たちは剣でも道具でもないという感情以外の理由で

けれど……のその先を見出すことの出来ぬ自分では。

 

そこで唐突にドアをノックする音が耳に届き、こんな時間に珍しいなと、

ドアを開くと、そこには彼のもっとも身近な親友の姿があった。

 

「龍太郎」

「よ、よう……」

 




天之河光輝という少年の本質は不器用で愚直な男なんだと自分は思います。
ただその抜きんでた能力ゆえに、誰かに頼られ、持ち上げられる関係が、
当たり前になってしまって、それが使命感の暴走に繋がっていったのかなと。
ともかく原作の彼は善意や使命感が前面に出過ぎて、肝心の自我が希薄過ぎるので、
解釈に各自ズレが出るのは仕方がない部分もあるのかなと思います。

但し、そんな彼を再会後に叩きのめすのも、
ありふれた職業で世界最強という作品のお約束の一つだと思ってますので、
容赦はしたつもりですが、妥協はしませんでした。

で、光輝君の最終的な勇者像なのですが、一応想定しているモチーフはあります。
えみやんにはならない筈です、多分。
いずれにせよ、原作以上にストイック&ハードボイルドな男になるとは思います、
順調なら。
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