前回書いてて思いました、遠藤君って半沢直樹の渡真利さんみたいな
立ち位置だなと、だからもしかすると彼はハジメや光輝らの心の中にだけに住む
妖精なのかもしれないと……シャレになりませんね、ハイ。
「龍太郎」
「よ、よう……」
あの日のことがあって以来、彼は親しき友人たちとも、ほぼ接触を絶っていた。
顔を合わせるのは、時折書物を持ってきてくれる遠藤くらいのものだ。
それはもちろん、自身の暴走で迷惑を掛けてしまったというバツの悪さと、
自分で納得が行くまで考えたいとの思い故だ。
「珍しいな、お前が本なんか読むなんて」
王宮で与えられた部屋とはあまりにも違う、簡素で狭い部屋の中に、
所狭しと並べられた書物の山に目を丸くする龍太郎。
彼にとって光輝は、いわば一を聞いて十を知るような男だった。
事実、朝晩の予習と復習のみでトップクラスの成績を収めているのだから。
したがって、こうして机や床にまで本を積むような状況には、お目にかかったことはなかった。
「珍しいとは何だよ、俺だって本くらい読むぞ」
まぁ、無理もないなと思いつつも、少しムッとした表情の光輝。
それでもやはり親友の思わぬ来訪に喜びを隠すことなく、相好を崩そうとしたが。
(……悪い、今の俺はまだお前たちに合わせる顔がない)
彼は気が付いていた、自分が今まで"天之河光輝"で、理想郷の王子様でいられたのは、
龍太郎を始めとする親友たちが、世の不都合や不条理から己を守る、
いわば傘となっていてくれたからなのだと。
そう、自分は守っていたつもりで、実は守られていたのだということに。
(今までの俺ではなく、これからの……今度こそ本当に誰かを守る資格のある
俺になるために)
今、親友たちの顔を見てしまえば、きっとまた甘えてしまう、頼ってしまう。
理想郷を捨て、現実と向き合わねばならないなら、感謝の言葉を口にするのはまだ早い。
お分かりだろうか?この天之河光輝という少年は、いささか極端で、
かつ純粋すぎるのだ、良くも悪くも。
「大事な用じゃないなら後にしてくれ」
「……え」
親友の思いがけない言葉に、声を詰まらせる龍太郎。
もちろんこれまでも、日本にいた時でもこういうことは珍しいことでも何でもなかった。
しかし、この地での、この時の光輝の言葉は、龍太郎の胸に何故か重く圧し掛かった。
「折角訪ねてきてくれて悪い、今日中にこの本を読んでおきたいんだ」
「そっか、悪いな」
日本にいた時と変わらぬやり取りを交わすと、光輝はドアを閉め、
また思考と読書に没頭しだす。
去り際の龍太郎の声が、普段より沈んでいたことにも気が付かないままに、ただ。
「ありがとう」
という小さくはあったが、限りない感謝と親愛を込めた声が、
静寂に支配された部屋の中に響いた。
(大事な用じゃなきゃ……ダメなのかよ)
つい数か月前、日本にいた頃には決して考えなかったことを、
いつも通りなのになぜかいつもと違う、そんな思いを巡らしながら、
あてもなく兵舎の中を龍太郎はぶらついていた。
「龍太郎?あんたもこっちに来てたの?」
不意にかけられた声に振り向くと、そこには彼のもう一人の親友の姿があった。
「な……なぁ雫」
後でお前も光輝の部屋へ……と言おうとした所で雫の声が重なる。
「光輝の邪魔しちゃダメよ」
それもまたいつも通りの、教室でも道場でも何度でも聞いた言葉だった。
しかし、今の龍太郎にとってその言葉は錐のように心に突き立った。
(邪魔……邪魔か、俺……)
「光輝は今、何かを掴もうとしてるんだから」
彼が自ら王宮を、クラスメイトたちの元を離れ、この兵舎で謹慎すると聞いた時には
雫とて驚いた、何もそこまですることは、と。
とはいえど、光輝が自分らの元を離れることを不安がる何人か、
(その何人かの中には、光輝をジャンヌから引き離したいという考えの者もいた)に、
引き留めを頼まれ、彼の元に向かった雫だったが、無言で私物の整理を続ける、
その背中を見ると、彼女もまた、待ってるから……頑張ってね、
としか、口にすることが出来なかった。
そして何より、恐らくは誰にも聞かせるつもりではなかった、
きっと不意に、心の蟠りが言わせたであろう、別れ際のか細い呟きを、
雫は耳に入れてしまったのだから。
「ごめん……今まで何も知ろうとしなくて」
その"今まで"は、きっと日本での日々も含まれているのだろうと雫には思えた。
実際、今の独りで悩みつつも、己の殻を破ろうとしている光輝の姿は、
雫に取って好ましい変化に思えた。
だから今は見守るだけでいい、そして自分もまた鍛えねばならない。
いつか彼が立ち上がった時に備えて、そして……八重樫の武を試すに相応しき、
暴を纏ったあの二人に挑むに相応しい力を得るために。
「あ……ああ、わかってるよ」
だったら久々にお前と組手……と、龍太郎が言おうとしたところで、
また雫が先に口を開く。
「それじゃ私も行くわね、ジャンヌさんと約束してるから」
カチャリと腰に下げた太刀の鞘が鳴る。
「ゴメンね、新しい構えをもっと練習したいの、また後でね」
「ああ……またな」
笑顔で龍太郎に手を振ると足早に練習場へと駆けて行く雫、
その笑顔は新たな力を早く会得したいという、意欲と期待感に満ちていた。
だからだろうか?彼女もまた龍太郎の笑顔がどこかぎこちないことには、
気が付かぬままだった。
そして新しい道を探り、選びつつある友人たち、その中で、
一人だけ置いて行かれているような疎外感を、思春期の若者ならば誰もが抱える、
ごくありふれた焦燥感を龍太郎は覚えていた、だからだろうか?
俺も一緒に……とは、なぜか言えずに、雫の背中を見送ることしか出来なかったのは。
"朝の訓練……見たか?"
"ああ、勇者様とジャンヌ様だろ、凄かったよな"
"なんか、勇と智と美とが完璧に調和してるっていうかさ、憧れるよなあ"
この兵舎は志願・徴募されて間もない新兵らが多い。
ジャンヌは光輝の教育係を兼ねつつ、メルドからそんな彼らの基礎訓練も任されていた。
『しかし私はまだこの国の軍法については何も……』
『なあに、こんなむさくるしい男どもにドヤされるより、お前さんのような
別嬪に鍛えて貰う方が、ひよっ子連中もやる気が出るってもんだ』
一旦は断ったジャンヌではあったが、
豪放磊落に笑うメルドに結局は押し切られる形で、引き受ける羽目になってしまった。
面倒くさけりゃ一日中走らせるか、草むしりでもさせときゃいいと言われた時には、
流石に戸惑ったが、その鷹揚さが彼の将としての力なのだろう。
「光輝、本当の躓きは……君が今思っているようなものではない」
練習場に一人佇み、光輝の部屋の窓の方角を見つめるジャンヌ、彼女の脳裏に甦るは、
手酷い裏切りの末に、生きながら焼かれていくオルレアンの村人たちの姿、
自身の決して償えぬ罪の源。
「例え愛や正義の元に始まった行為でも、その結果が地獄なら……」
"ジャンヌお姉ちゃん熱いよー、パパが燃えちゃうよー"
"ジャンヌ様、助けて下さい、死にたくない、死にたくない!"
"何で俺たちがこんな目に合うのですか!聖女様!"
"ずっとあなたを信じて、ここまで来たのに!"
"この……嘘つきっ!偽聖女め!"
(私は……もしかすると彼に私が失ってしまった物を求めているのかもしれない
それがいかに苦難に満ちた道程だと知っていながら)
だとすれば。
「ああ……私はなんて卑怯な女なのだ」
あまりにもかつての自分に似すぎている少年の姿に想いを巡らせ、
苦悩に頭を抱えるジャンヌ、しかし自身を見つめる視線に気が付き振り返ると、
そこには雫の姿があった。
「雫……」
「午後から稽古に付き合って頂けるって聞いてたので」
「あ、そうでしたね」
ドレスの埃を払いながら、ジャンヌは雫へと話しかける。
「光輝には会ったのですか?」
彼は外出を自ら禁じ、かつクラスメイトたちとも半ば接触を絶っている状態と聞いている。
「光輝は、今は一人で自分と向き合うべき時だと思うの、だから……
そっとして置こうと思って」
ドレスの埃を払いつつも、右手に剣を握ったまま離さない、
どこか促されるような、そんなジャンヌの仕草に誘われ、
話もそこそこに、雫は刀を構える、内心に微かな疑問を抱えつつも。
雫が現在、会得しようとしている刀術は、相手の状況に合わせ、
戦いの最中に何度も構えを変更することが必要不可欠となっている。
したがって目まぐるしいまでの戦況の変化を常に見極めなければならず。
なおかつ相手の行動も先読みで予測しなければ、使いこなせているとは到底言えない、
お粗末な術となってしまう。
何しろ、構えてからその構えに応じた技を放つのに、僅かとはいえ
タイムラグが乗じるため、読みが外れれば戦機を逃すことに成り兼ねず、
また構えの切り替えにもそれなりの時間が必要だ。
それに、構えを変更するたびに攻撃力が上がる半面、
防御力が下がるという、いわば諸刃の刀術でもあるのだから。
(基本はこの"源氏の構え"で戦って……)
雫は腰溜めに居合にも似た構えを取り、時折牽制を行いながら、ジャンヌの動きを観察する。
ちなみに雫が使っている刀は、もちろん"八命切"ではない、
王宮の錬成師に作ってもらった、八命切を模した練習用のものだ。
ジャンヌが左手の槍に力を込めていくのを察知すると、雫はジャンヌの、
その槍の穂先を見据えながら、抜き放った刀を、自分の胸元に片手で掲げる様にして構える。
(この"神楽の構え"で、相手の後の先を取る……オクトーさんが言っていた)
相手が大技を繰り出そうとした瞬間に、この構えで技を放った際、威力が数倍になると。
「どうしたのですか雫、気もそぞろですよ!」
しかし、雫の動きはジャンヌの指摘通り、どこか精彩を欠いているように見えた。
(ジャンヌさん……さっき)
光輝に限らず、雫に取ってもジャンヌは夢の世界から、物語の世界から、
抜け出してきたような、そんな美少女に、まさしく理想の戦乙女に、
救国の聖少女ジャンヌ・ダルクそのものに思えてならなかった。
それゆえに、雫は引っ掛かりを覚えていたのだ、自分が一瞬ではあったが垣間見た、
信じ難き、あってはならない何かを……。
(一瞬、悪魔みたいな姿になってたような……)
そんなことがあってから数日後。
半ば観光地と化しているとはいえ、オルクス大迷宮に入るには、
正門ゲートでパスの交付を行わなければならない、
これはアタック中の冒険者らの身元や人数の把握、何より遭難者を防ぐために、
なくてはならない規則だ。
しかし、今回は場合が場合だ、龍太郎たちは裏技を使った。
彼らは冒険者たちに迷宮内でアイテムを売りさばく、行商人たち用の搬入口が、
ほぼフリーパスとなっていることを知っていたのだ。
(登山カードはちゃんと出そうね!作者からのお願い♪)
そして整備されたショートカットを駆使し、六十五層へと向かっていく。
「おかしいな、警備の騎士が何人かは必ず詰めているのに」
交代の時間を見計らい、こっそりと使わせて貰うつもりだったが……。
やや腑に落ちない表情の龍太郎だが、近藤らは特に疑問は感じてない様だ。
「騎士でもよ、そりゃサボりたくなる日もあるだろうがよ」
「お前らみたいにか?」
「んだと、コラァ!」
やはり内心苛立っているのだろう、らしからぬ辛辣な口を利く龍太郎。
挑発されたと感じたか、掴みかかろうとする中野と斎藤を、近藤が制する。
「止せよ、お前ら二人、いや俺入れて三人でも坂上にゃ勝てねぇよ」
近藤の指摘に、不精不精な態度で引き下がる二人。
「文句があるなら、今からでも引き返せ」
そう厳しく言い放つと、鉱石の元へと向かう龍太郎、その後を近藤が追いかける。
彼の丸まった背中は、どうにも媚びを売っているように見えて仕方がなく、
(……強くなったら)
(最初はよ……)
そんな悪友の姿を眺めながら、中野ら二人は不穏な囁きを漏らすのだった。
そして彼らは件の六十五層に降り立つ。
ここも一応の整備はされてはおり、崩壊した橋の再建予定もあるようだが、
現在は、単に侵入禁止のロープが張られているだけだ
試しに瓦礫を落としてみる……いつまで待っても底に届いた音がしない。
ライトを翳してみる……光が底を照らすことは無かった。
さらに、地の底から吹き上げる烈風が彼らの頬を撫で、
まさしく虎落笛という表現が相応しい風の音が耳を襲う。
「……」
この奈落の底には、確かに力を、強さを与えてくれる精神と時の部屋があるのかもしれない。
しかしその場所に辿り着くのは……宝くじに当たるよりも遙かに低い確率のように、
彼らには思えてならなかった。
とりあえず互いの体をザイルとハーネスで繋いではいたものの、そこから先へ進む、
いや、落ちる勇気など、さすがに彼らは持ち合わせてはいなかった。
「なぁ……精神と時の部屋と、宝くじ一等とどっち選ぶ?」
「……宝くじ」
声が震えていることを自覚しながら、龍太郎たちは顔を見合わせる。
「帰るか……」
「ああ」
勇気だけでは越えられないことも、越えてはならないこともあるのだ。
安堵と若干の敗北感を抱え、彼らが帰路に就こうとした時だった。
突如として迷宮内を、いやホルアド一帯に強い揺れが襲った。
それは奇しくもグリューエン大火山噴火と時を同じくしてのことだったのだが、
そのことを知る者は当たり前だが誰もいない。
そして復旧途上で放置されていた橋は、その揺れに耐えられず、
脆くも崩れてしまい、龍太郎たちは闇に宙づりとなってしまう、しかも、
(ザイルが……)
生来の雑さが災いした、ザイルの長さばかりを気にして、強度にまで頭が回らなかったのだ。
わぁわぁと泡を喰ったように叫ぶのみの近藤らと違い、ザイルが四人の重さに耐えきれずに
少しずつ裂けていく様子を、龍太郎ははっきりとその目に捉えていた。
(このままだと全員が落ちて……)
「お……おいロープが」
「やべぇってやべぇって」
「先に上に行けっておい」
三人も気が付いたのだろう、龍太郎の頭上が騒がしくなる。
「動くな、動くと余計にザイルに負荷がかかっまうぞ!」
しかし冷静さを欠いた三人の耳にその忠告が届くはずもない。
そうしている間にもザイルはミシミシと軋みの音を上げながら、
裂けていくのを止めようとはしない。
(このままだと全員……)
頭上と奈落を交互に見比べる龍太郎。
「仕方ねぇ……な」
そう呟くと龍太郎は懐からナイフを取り出す。
「お……おい」
龍太郎が何をしようとするのか気が付いたのか、近藤の顔が驚愕に歪む。
「このままじゃ全員真っ逆さま……だろ、なぁ近藤よぉ」
震える声で、それでも何とか笑顔を作る龍太郎。
「もう諦めろ、ジータはそんな……ただ強いだけの男に振り向いたりしねぇよ、
あと、南雲をいい加減認めてやれ、見苦しい…ぜ」
龍太郎は全身を恐怖で震わせながら、ナイフをザイルへと押しあてる。
近藤はそれをただ無言で止めることも出来ずに眺めることしか出来ない。
が、龍太郎の手はそこで止まる、戦場に於いて恐れ知らずの彼であっても、
奈落の底はこれまで相対した、全ての魔物の牙や爪よりも遙かに得体のしれぬ
獰猛な顎に思えて仕方がなかったのだから。
(き……切れない、俺には……無理だ)
縋るように祈るように、奈落から頭上へと視線を移したその時だった。
そこで乾いた音と共に、ザイルを結わえていた胸元の金具が砕け、
龍太郎は闇へと投げ出される。
ロープはいい加減な確認しかしてなかったが、反面、金具の確認は入念に行った。
いや、行い過ぎた、結果、石橋を叩きすぎて渡る前に壊してしまったのだ。
「いいか……生」
そこから先の叫びは近藤らの耳に届くことは無く、
そして、ザイルの軋みも収まったのであった。
「な、なぁ、俺が落としたんじゃないよな!アイツが勝手に落ちたんだ!」
「だよなぁ!お前もそう思うだろ!」
命からがら何とか橋の上に逃れ、言い訳じみた叫びを口にする中野と斎藤、
しかし近藤はそれには応じることなく、ただ奈落の底を見つめ続けていた。
自ら巨獣の足止めを引き受け、闇に消えたハジメ、そして自らザイルを断とうとし、
闇に消えた龍太郎、その崇高な姿を二度も目の当たりにし、
この粗暴な男にも何か感じる所があったのかもしれない。
「……俺、一体何をしてたんだろうな」
しかし、そんな彼の神妙な横顔を、訝し気な目で見つめる中野たち。
いかに悔悛の切欠を掴もうとも、悔恨の思いを芽生えさせようとも、
彼が教室でハジメを、そしてこの地で檜山を生贄に捧げ、自分の立場を保っていたという、
事実は決して消えることは無い、ゆえに今度は自分が贄の立場に落ちつつあったことは、
いわば必然であった。
ちなみに坂上龍太郎くんについて君たちはどうお考えでしょうか?
と、天之河光輝、八重樫雫両名に質問したとした場合の回答を以下に記す。
『俺の一番の親友さ、そりゃさ、いつも力任せで雑なところもあるけど
でも、あいつのそういうところに、なんていうか……ホッとしてしまうんだよ
ああ、そんなこと言ったら、あいつ怒るか?でもさ、あいつの真っすぐさを見てると
いつも安心できるっていうかさ、あいつなら大丈夫って思わせるそんな力があるんだよ』
『龍太郎?そりゃあバカで雑だけど、でもだからこそ……ああ、ゴメンね
そういう意味じゃなくって、とにかく安心できるのよ。
無心っていうか、私たちの背中をいつも押してくれる、率直な純粋さっていうかね
だから……こんなことになってしまって、色々なことや物が変わっていく中であっても、
龍太郎だけは変わらずにいて欲しいって思うの』
そう、彼らは坂上龍太郎を決して無視しているわけでも、疎外しているわけでもなかった。
むしろ深い友情と信頼を抱いているからこその、きっと大丈夫と思っているからこその、
皮肉な結果だった。
だって、あまりにも安心できる存在だったから、身近過ぎる存在だったから……。
だから失念していた、そんなお人好しで雑な男でも人並みに悩むということを。
最も付き合いの長い彼らですらそうなのだ。
それゆえに龍太郎が王宮から姿を消したことに心配する者は誰もなく、
数日ほどすれば、どうせいつも通りの笑顔で戻ってくると、クラス全員が信じ切っていた。
だから数日後、やはり姿を消していた近藤たちが青い顔をして戻ってきたことと、
龍太郎の消息を結びつける者もまた、誰もいなかった。
かくして第二の悲劇は起こってしまったのであった。
奈落体験ツアー、一名様ご案内。
強くなれる可能性があるなら、誰か一人くらい奈落に向かおうとする、
無茶な奴がいてもおかしくないのではと原作読んでて思ってたんですよね。
で、龍太郎君についてですが、彼は温厚かつ誠実な善人であると同時に、
行動論理がどこまでいっても光輝のためなので、中心メンバーであるにも関わらず、
やや原作etcでも持て余し気味な印象がありました。
本作で、ジータに想いを寄せているという形にしたのは、
光輝以外の判断・行動論理を与えることで、
その動かしにくさを少しは変えることが出来るかなと考えたわけです。
ともかく彼も、ついにありふれの洗礼を受ける時が……。
ですがどちらかといえば、むしろ近藤君の心配をしてあげて欲しいと思います。
というわけで、次回からメルジーネ編です。