ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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カリおっさんの次のDLC、ヴィーラだと思ったんですが、
ユエルは少し予想外。


悲しみの残滓

 

 

激しい渦の中をユエの魔法による水流操作と、エンジンフル稼働の水中スクーターで

激流をなんとか掻い潜り先に進んで行くハジメたち。

とはいえど、離れ離れにならないように互いが互いにしがみ付くのがやっとだ。

 

咥えた酸素ボンベは三十分しか持たない、空気が溜まっている場所はないかと、

ハジメたちが目を凝らす中、やがて、激流が弱まると同時に、

上方に光が見えたので、彼らはゆっくりと浮上する。

 

そろそろと水面から顔を覗かせたハジメたちが見た物は、

まるで南国のプライベートビーチを思わせる白い砂浜と、密林だった。

 

ひとまず砂浜に寝転び、激流に揉まれた身体を休めつつ、すぐにハジメは

オルニスを飛ばし、周囲の地形や敵の有無の確認に入る。

 

「これは……船の墓場ってやつか?」

「すごい……帆船なのに、なんて大きさ……」

 

モニターにはおびただしい数の帆船が半ば朽ちた状態で横たわっている様が

映し出されていた、場所は密林を抜けた先の岩石地帯のようだ。

 

「実際見てみないと分からないが、多分どの船も全長百メートルはありそうだな」

「大昔の海戦の痕跡かな?」

 

ここはいわば敵地ではあるが、古代のロマンへのワクワクを抑えきれない、

そんな表情のジータを、仕方ないなといった風にハジメは目を細めて眺める。

 

「じゃ、食事を済ませたら、行ってみるか」

「あ、ジョブチェンジも済ませておくね」

 

 

「やっぱ思ってた通りでかいな」

 

密林を抜けた先の光景に感嘆の声を上げるハジメ。

映像で事前に見ていたとはいえど、生のド迫力さには当然ながら及ばない、

特に一番奥に横たわっている船が凄い、全長三百メートルはありそうだ。

船体に施された装飾が他よりもひと際豪華なところを鑑みるに、

もしかすると客船なのかもしれない。

 

「あれ以外は全部戦艦みたいだね」

 

竪琴を抱え、久々と言わんばかりに白いドレスを翻すジータ。

なんとか蒔いたとはいえど、あのクリオネもどきが、

この先に待ち構えていないとは限らない、従ってジータは、

オールラウンダーともいえるランバージャックよりも、

弱体を中心としたサポートに特化した、エリュシオンを選択したのであった。

 

「大砲と違って、こっちじゃ魔法で撃ち合うんだな」

「ビデオに撮っておくね」

「よし、許可するぞ!」

 

何処まで行っても岩と炎のグリューエンよりは遙かに撮り甲斐がある、

ジータは懐から自らのスマホを取り出し、動画の撮影を始める。

それにいずれは皆に教えねばならないのなら、本物の大迷宮の様子や、

解放者の言葉は自分たちの説明に加え、実際に見て貰う方が早いと踏んだのだ。

 

ちなみに彼らのスマホ含む私物だが、二人が戻って来た時にいつでも返せるように、

香織がホルアドの宿に持ち込んでいたものだ。

……ハジメ関連の物がやけに多いのは置いといて。

 

電波が無い以上、通信機能こそ当然のことながら使えなかったが

その他の録画や録音、再生、その他通信を必要としないアプリなどは、

ハジメが充電器を作成することで、問題なく機能した。

 

彼らは岩間を、船を乗り越えて、ひとまず奥の客船を目指して進んでいく。

スッパリ切断されたマストや、焼け焦げた甲板、石化したロープや網などが、

太古の海戦の模様を後世に残していた。

そんなロマンの残骸を眺めつつ、船の墓場のほぼ中間あたりに差し掛かった時だった。

 

――うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

――ワァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

「ッ!? なんだ!?」

「ハジメくん! 周りがっ!」

「空間が歪んでく!皆集まって!」

 

突然、大勢の人間の雄叫びが聞こえたかと思うと、周囲の風景がぐにゃりと歪み始めた。

警戒を促すジータの声に従い、風景が歪んでいく中、

ジータを中心にハジメらが集まったところで、歪みが晴れる。

 

「な、なんだこりゃ……」

 

気が付けば、ハジメ達は大海原の上に浮かぶ船の甲板に立っていた。

周囲に視線を巡らせば何百隻という帆船が二組に分かれて相対し、

その上で武器を手に雄叫びを上げる人々の姿があった。

しかもどの人々の目も血走っており、シアとメドゥーサが怯えたようなそぶりで

ハジメに縋るような視線を向ける。

 

「……落ち着いて、多分これは過去の映像だから」

 

墓場の中に、やや特徴的な紋章が描かれた船があったことをユエは覚えていた。

そしてまさに彼らの真正面にその紋を描いた船が、帆先に魔法使いをずらりと並べ、

今まさに吶喊せんとばかりに、帆を広げている様子が見える。

 

そして、開戦を告げる火花が打ち上げられると共に、双方の船団が一斉に突撃を開始し、

無数の魔法が宙を飛び交う。

 

「凄い迫力……」

「戦争はロマンだって言った人がいたけど……分かる気がする」

 

しかし、一大スペクタクルに感心してもいられない、早くここを抜け出す算段をつけないと

と、ハジメが思った時だった、流れ弾の火球が彼めがけ飛来する。

幻影と分かっていても身体は正直に反応する、ハジメは火球を霧散させるべく、

ドンナーで核を撃ち抜くのだったが。

 

「なにぃ!?」

 

確実に核を射抜いた筈の弾丸はそのまま火球をすり抜け、彼方へと消えていき、

そしてハジメの足元に着弾した火球は、確実に熱を感じさせた。

 

「ただの幻影じゃないってことか……」

「今度は私にやらせて」

 

続いて二発三発と続けざまに飛来する火球へと、ならばと今度は香織が障壁を張る、

もちろん万一に備えて距離を置いた上だったが、ハジメらの予想に反し、

香織の障壁はしっかり火球を防いでいた。

 

少し腑に落ちないような表情を浮かべながらも、その後何回か火球を撃ってみたハジメだが、

その何回かで確証を得たのか、軽く頷く。

 

「どうやら、ただの幻覚ってわけでもないが、現実というわけでもないようだ

実体のある攻撃は効かないが」

 

ハジメはドンナーではなく"風爪"で火球を迎撃する、と、

火球は事もなく真っ二つになり霧散する。

 

「つまり、魔力を伴った攻撃は有効らしい、全く、本当にどうなってんだか」

「は……ハジメくん」

 

首を傾げつつも、泡を喰ったような香織の声に振り向くハジメ、聞くところによると

ケガをした兵士に回復魔法をかけたら、その身体が光になって消えてしまったのだという。

 

「俺の考えが正しいなら魔力さえ伴っていれば、魔法の属性や効果は関係ないってことか」

「回復魔法で人が消えたりなんかしないもんね」

 

もしかしたら誤って人を殺してしまったのかもしれないという不安を抱えていたのだろう、

ハジメの説明を聞き、胸を撫でおろす香織。

 

「全ては神の御為にぃ!」

「エヒト様ぁ!万歳ぃ!」

「異教徒めぇ!我が神の為に死ねぇ!」

 

聞くに堪えない狂気に満ちた叫びが耳に届くと共に、魔法に混じって兵士たちまでもが、

ハジメらに殺到してくる、それらを軽くあしらいながら、彼らは物見台へと跳躍する。

 

「まるでゾンビだな」

 

血走った眼でハジメ達を見上げる、狂気に彩られた兵士たちの姿を、

勘弁してくれと言わんばかりに眺めるハジメ。

 

「ゾンビなら、回復魔法効くかもよ」

「じゃあじゃあ私にやらせてよ!」

 

赤い瞳を大きく開いて、回り込むようにジータへと懇願する香織、

その姿はジータに取っては、まるで覚えたての芸を披露する子犬のように思えた。

 

確かに、脱出口が何処にあるのか、脱出方法がいかなるものかは分からないが、

いずれにせよ眼前の戦場を、まずはなんとかしない限り、

それらを落ち着いて探ることは出来そうにない。

 

「じゃあ、供養しちゃって!香織ちゃん」

「任せて!」

 

『聖典』

 

天に翳した香織の杖の先から、眩いばかりの光の波紋が一気に戦場を駆け抜けた。

 

光系最上級回復魔法"聖典"

 

領域内にいる者を全員まとめて回復させる効果を持つ、超広範囲型の回復魔法だ。

その効果範囲は最低でも半径五百メートルにも及ぶという。

もちろん普通は数十人掛りで行使する魔法であり、

長時間の詠唱と馬鹿デカイ魔法陣も必要だ。

しかし、回復魔法に高い適性を持ち、かつ魔物の血肉を取り込み、

魔力の直接操作が可能となっている香織には、それらの下準備は一切必要ない。

 

香織が舞うように杖を閃かせる度に、半径数キロにも及ぶ浄化の光が、

戦場を包み込んでゆき、兵士たちの幻影は光を浴びた途端に霧散していく。

 

「……凄い」

 

その様子を眺めながら素直に賞賛の言葉を口にするユエ。

その声が耳に届いたか届いていないか、輝くような笑みを浮かべる香織。

 

かくして二国の大艦隊は、一人の治癒師によって殲滅されたのだった。

 

 

最後の兵士が霧散すると同時に、再び景色が歪み、それが収まると、

ハジメらは元の場所に戻っていることに気が付く。

 

「終わってみるとあっけなかったのう」

「今のは一体何だったんですか?」

 

口調こそのんびりしていたが、ティオとシアの顔色はやや青く、

そんな内心を流し込まんとばかりに、手にした水筒の水を飲み干していく。

いや、彼女らだけではなく、戦場の只中に放り込まれたという精神的ダメージは、

ここにいる誰もが多かれ少なかれ負っているように見えた。

 

「おそらくだが、昔あった戦争を幻術か何かで再現したんだろうな、ジータ今の撮れてるか?」

 

ハジメに促されてスマホを確認するジータ、だが無言でただ船の墓場のみが映し出される

画面を答えとばかりに一同に示す。

 

「多分だけど、直接魂とかそういうのに働きかけてるんだと思う」

「体感型VRみたいなもんか……まぁ、迷宮の挑戦者を襲うという改良は加えられている様だが

あるいは、これがこの迷宮のコンセプトなのかもしれない」

「そのココロは……狂った神がもたらすものの悲惨さを知れ……かな?」

「ああ、そんな気がするよ」

 

香織がそっと目を伏せ、この地で散っていった全ての者たちへと祈るような仕草を見せる。

 

「昔、じゃないよ、きっと今だって」

「……そうだな」

 

ジータは思う、どれほど時代が文明が進もうとも、戦争の悲惨さは何ら変わりはない筈だと。

エヒトの名を叫び、剣を振り上げる兵士たちの姿をジータは思い起こす。

彼らが全員、最初から狂っていたということはありえないと思いたい……

そう、きっと自ら狂気に染まらねば生き残ることは難しいのだろう。

 

香織も同じ心境なのか、祈りを終えてもまだその場に立ち尽くしたまま、動こうとはしない。

 

(もし……ハジメくんたちが帰ってこなかったら、私たちも)

 

いずれは、あんな場所に送り込まれていたのだろうか?

そして、自分のみならず光輝や雫や龍太郎たちも、狂気に飲み込まれ、

ただ憎しみと恐怖に駆られ、刃を振るっていたのだろうか?

 

「皆で帰ろうね、平和な世界に……私たちの故郷に」

「ああ、そのためには一歩でも先に進まないとな」

 

ハジメの言葉に強く頷く香織だった。

 

そしてついに彼らは巨大客船の元へと辿り着く。

 

「さて、次は何にお目に掛かれるのやら」

 

そこかしこに荘厳な装飾が施された、十階建て構造の巨大船の威容に、

思い思いの感想を浮かべながらも、ハジメたちは"空力"を使い一気に甲板まで跳躍し、

豪華客船の最上部にあるテラスへと降り立った、すると案の定、周囲の空間が歪み始める。

 

「ん?これは」

「パーティー……だよね?」

 

やはり過去の光景であることには、違いは無いのだろうが、

空を見上げるとそこには満月、豪華客船はまさに月光と笑顔に溢れ、

キラキラと輝き、甲板には多くの人々が豪華な料理と音楽とダンスを楽しんでいた。

その人々の中には人間族だけでなく、魔人族や亜人族も多くいる。

その誰もが種族の区別なく笑い、言葉を交わしていた。

 

彼らの背後では船員たちが寛ぎながら、ようやく平和が訪れるなと口にしている。

どうやら、この海上パーティーは、終戦を祝う為のものらしい。

 

「こんな時代があったんだね」

「全てのわだかまりが消えたわけでもないだろうに……あれだけ笑い合えるなんてな……」

 

あの壮絶な海戦の記録を垣間見ただけに、ハジメたちの言葉にも感慨が籠る。

 

「きっと、あそこに居るのは、終戦のために奔走した人達なんじゃないかな?」

 

確かにパーティーの招待客であろう彼らの服装から見るに、

ある一定の身分以上の人々であろうことは察しがついた、

おそらく国政や軍事に直接関われるレベルの。

 

「皆が皆、直ぐに笑い合えるわけじゃないだろうし……」

「そうだな……」

 

確かに彼らの表情や態度は、単に宴を楽しんでいるというよりは、

これまでの苦労を互いに労いあっているようにも見えた。

 

そんな人々の様子をしばらく眺めていると、

甲板に用意されていた壇上に初老の男が登り、周囲に手を振り始めた。

それに気がついた人々が、即座におしゃべりを止めて男に注目する。

彼らの表情には男への大いなる敬意が浮かんでいる、

きっと彼こそがこの和平の中心人物なのだろう。

 

しかし、ジータはその光景に、似つかわしくない存在を見とがめずにはいられなかった。

初老の男と、その側近らしき男の傍に控える、何故かフードをかぶった人物を。

 

所詮、ここで起こっていることは、過ぎ去った過去の話と理解してはいても、

それでもその人おかしいですよと声に出したい、そんな僅かな違和感を感じつつ、

ジータは初老の男の演説に耳を傾ける。

 

「諸君、平和を願い、そのために身命を賭して戦乱を駆け抜けた勇猛なる諸君、

平和の使者達よ。今日、この場所で、一同に会す事が出来たことを誠に嬉しく思う、

この長きに渡る戦争を、私の代で、しかも和平を結ぶという形で終わらせる事が出来たこと、

そして、この夢のような光景を目に出来たこと……私の心は震えるばかりだ」

 

その前置きと共に始まった演説は、和平への険しい道のりを次々と語っていく、

すれ違い、疑心暗鬼、友の死……堂々とした中にどこか郷愁を誘う初老の男の声に、

宴の参加者のみならず、ハジメたちも引き込まれずにはいられない。

 

どうやら初老の男は、人間族のとある国の王らしい。人間族の中でも、

相当初期から和平のために裏で動いていたようだ。人々が敬意を示すのも頷ける。

 

演説も遂に終盤のようだ、どこか熱に浮かされたように弁舌を奮う国王。

それに釣られて聴衆たちの雰囲気も盛り上がっていく、

しかしハジメはそんな国王の表情を何処かで見たことがあるような気がして、

ジータと顔を見合わせる。

 

「これって……」

「イシュタルにそっくりだね」

 

そんな二人の懸念を他所に、暫しの溜めを置いた後。

 

「――こうして和平条約を結び終え、一年経って思うのだ」

 

国王はゆっくりと口を開く。

 

「………………実に、愚かだったと」

 

その言葉に、一瞬、その場にいた人々が明らかに疑念の表情を浮かべ、

隣にいる者同士で顔を見合わせる、しかしその間も、国王の熱に浮かされた演説は続く。

 

「そう、実に愚かだった、獣風情と杯を交わすことも、異教徒共と未来を語ることも、

……愚かの極みだった!わかるかね、諸君!そう、君達のことだ」

「い、一体、何を言っているのだ!アレイストよ!一体、どうしたと言うッ!がはっ!?」

 

国王アレイストの豹変に、一人の魔人族が動揺したような声音で前に進み出たが。

それ以上の言葉を発することは叶わず、哀れ背中から心臓へと刃を突き立てられる、

己が誰に刺されたのかを知り、振り向いたその顔が苦痛以上の驚愕に歪む。

恐らく彼らは親友、もしかするとそれ以上の関係であったのだろう。

 

場が騒然とする中で、アレイストはさらに陶然と言葉を紡ぐ。

 

「さて、諸君、最初に言った通り、私は、諸君が一同に会してくれ本当に嬉しい。

我が神から見放された悪しき種族ごときが国を作り、我ら人間と対等のつもりでいるという

耐え難い状況も、創世神にして唯一神たる"エヒト様"に背を向け、

下らぬ異教の神を崇める愚か者共を放置せねばならん苦痛も、今日この日に終わる!

全てを滅ぼす以外に平和などありえんのだ!それ故に、各国の重鎮を一度に片付けられる、

今日この日が、私は、堪らなく嬉しいのだよ!さぁ、神の忠実な下僕達よ!

獣共と異教徒共に裁きの鉄槌を下せぇ!ああ、エヒト様!見ておられますかぁ!」

 

叫びが終ると同時に、パーティー会場である甲板を完全に包囲する形で、

船員に扮した兵士達が現れ、甲板目掛けて一斉に魔法が撃ち込まれ、

乗客たちは次々と倒れていく。

船内や海に逃れた者もいるようだが、海には舟に乗った船員が無数に控えており、

やはりすぐに殺されて海が鮮血に染まっていく。

 

「なんでよ!なんでコイツら石になんないのよ!」

 

涙を流しながらメドゥーサが兵士たちに向かって、石化の光を放つが、

もちろん幻影ゆえ効果はない。

 

そして狩りでも行う気分なのか、完全武装のアレイスト王が部下を伴い

船内へと入っていく、そこでフードの人物が甲板を振り返る、

その拍子に、フードの裾から月の光を反射してキラキラと光る銀髪が一房、

ハジメには見えた気がした。

 

そしてその映像を最後に、再び景色は歪み、

彼らは朽ち果てた豪華客船のテラスの上に戻っていた。

 

「あれで終わりかな? 私達、何もしてないけど……」

 

その香織の言葉には、これ以上先があってたまるかというニュアンスが多分に含まれていた。

 

「この船の墓場は、ここが終着点だ。結界を超えて海中を探索して行くことは出来るが……

普通に考えれば、深部に進みたければ船内に進めという意味なんじゃないか?

あの光景は、見せることそのものが目的だったのかもな、

神の凄惨さを記憶に焼き付けて、その上でこの船を探索させる……

中々、嫌らしい趣向だよ、特にこの世界の……信仰心の篤い連中にとってはな」

 

信仰心の、神の名のもとに戦う人々が、その信仰心の行き着く果ての惨たらしさを、

見せつけられれば、相当精神を苛むだろう。

そしてこの迷宮は精神状態に作用されやすい魔法の力無くしては攻略できない。

よく考えられたものだと、ハジメたちは思わざるを得なかった。

 

「でもこれで、神がもっとも恐れていることも分かったね」

「団結か」

「そ、ハジメちゃんもバベルの塔の話は知ってるでしょ」

 

バベルの塔、地上全ての人々が団結し、神の住まう天にまで届く塔を建てようとした神話だ。

無論、その目論見は神の雷により粉砕され、それのみならず神は、

人々が永遠に一つになれないように、彼らの言葉を別ったと伝えられている。

 

きっと解放者たちも同じことを考え、計画したに違いない。

そしてその計画は成功寸前まで持っていくことが出来た、だが、しかし……。

 

「きっとあれは、ミレディさんたち解放者が実際に見た光景なのかもしれないね」

 

そんなことを口にしながらも、ハジメたちは船の中の探索を開始する、

一様に重い表情のままで。

 






スマホ録画はやりすぎかもしれなかったなと書いてて思ったりもしましたが
いかがでしょうか?
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