カリおっさんは天才ではあるけれど、かといって
全てを見通すようなキャラじゃないんだなと、イベント見てて認識。
「さ、メドゥーサ、あなたはそろそろここを去る時よ」
「……」
薄々何かを感じていたのか、いつものように威勢よく言い返すわけでもなく、
メドゥーサは俯き、ただ小声でやっぱり…どうしても?と口にするのみだ。
「あなたは正規の手順で召ばれたわけじゃないから……私たちのような力を持っていれば
別だけど、でもあなたの力はそこまで強くないのよ、だからエグリゴリ如きに、
容易く認識を狂わされた」
いわゆる"未遂"に終わった日、潜水艇の甲板でメドゥーサの身体が、
一瞬ブレたように見えたのを、ジータは思いだす、思えばあれが兆候だったのかもしれない。
『ほう、お前たち程度の力があれば、この地に向かっても構わぬということか』
今、何か声が聞こえたような……首を傾げつつ、ジータはガブリエルに質問する。
「メド子ちゃん消えちゃうんですか……このままだと」
「私たち星晶獣は不滅の存在、けど、この世界ではそうとは限らない、
そしてそうなってからだと遅いの、分かるでしょ?」
いつもの慈愛の眼差しで、メドゥーサを優しく諭すガブリエル。
「今、この時、この場所でなら、あなたはちゃんと帰ることが出来るわ」
「……」
「お別れも言えないまま、いきなり送還されるのってきっと寂しいと思うわ、だから、ね」
ガブリエルが指し示す先には、朧気ながら青空の世界が広がっているのが見える。
が、その輝きは余りにか細く、そして少しずつ小さくなっていっているようにも思えた。
恐らくこの機会を逃せば、次はいつ、どこになるのか分からないのだろう。
「サテュロスやバアル、それにアテナもあなたを心配してる」
「でも……ハジメたちはこれからもっと悪い奴と……」
「……大丈夫、あなたに代ってハジメくんやジータちゃんの助けになってくれる子は
きっといるわ」
『ならば、わたちも力を貸してやるぞ』
また聞こえる、妙に舌ったらずな、まるでおしゃぶりでも咥えてるような声が……。
ともかく、逡巡するメドゥーサの背中をそっとジータは押してやる。
「帰りなよ、メド子ちゃん」
「ジータぁ……」
振り向いたメドゥーサの紫の瞳が、今にも泣き出しそうに潤んでいるのが分かる。
このまま泣かれるとまた面倒な、いや、別れが辛くなるとばかりにハジメがフォローを入れる。
「別にいらない子とかそういうんじゃなくてだな……やっぱり故郷に戻れるなら
戻った方がいいって、まぁそれだけというか、俺たちだって故郷に、地球に帰る為に
こうして迷宮巡りをしてるんだしな」
気恥しさか、それとも喪失感を隠す為か、ポリポリと頬を指で掻きながら、
ハジメは言葉を紡ぎ。
「……帰れる場所が、迎えてくれる誰かがいることは、きっとそれだけで幸せ」
ユエもまた自身が失った何かを思い起こすように、メドゥーサを諭してゆく。
「アタシがいなくなって、寂しくないの?」
「寂しいに決まっているですぅ!」
「そうじゃ!お主ほど騒がしくて生意気な娘はそうそうおらんからの」
感極まったシアがメドゥーサを抱きしめ、豊かな胸の谷間に埋まったその頭を、
ティオがくしゃくしゃと撫でる、そしてメドゥーサは、ガブリエルに向かって、
静かに頷くのであった。
「ミュウとレミアに……これを渡したげて」
メドゥーサは自身の髪を梳くと、二房の髪をジータに託す。
「お守り、きっと役に立つはずだから」
少々過ぎたスキンシップ気味ではあったが、ミュウを可愛がるメドゥーサの姿を
ジータは思い起こす。
「分かった、必ず渡すから」
ジータが力強く頷くのを見てから、メドゥーサは今度はユエへと向き直る。
「ねぇユエ、最後に何か言うことあるんじゃないかなあ」
「……何?」
「大事な六文字、ホラ言いなさい、お・ね・ぇ・ち・ゃ・ん・って」
「……断固拒否」
「アンタねぇ、最後くらいは……」
「言ってやれよ、最後なんだし」
ハジメからの思わぬ言葉にハッ!とした表情を浮かべるユエ。
さらに間髪入れず香織が手拍子を始める。
「お姉ちゃん」ぱん!「お姉ちゃん」ぱん!「お姉ちゃん」ぱん!
「お姉ちゃん」ぱん!「お姉ちゃん」ぱん!「お姉ちゃん」ぱん!
さらにハジメがジータがシアがティオが、さらにはガブリエルまでもが手拍子に加わり、
ユエとメドゥーサの周囲に輪を描いていく。
「……お」
身体を震わせながらユエは絶え絶えの言葉を口にする、白い顔を真っ赤に染めて。
「お……おね……おね……ちゃ……おねしゃ……」
そこまでが限界だった、ふしゅーと頭から湯気を出しそうな、そんな感じで、
ユエはふらふらとその場にへたり込み、羞恥に震える小さな身体をハジメが支えてやる。
普段とはまるで違うその姿に、新鮮な気分を覚えながら。
仕方ない、けど最後にその顔を見れて満足、そんな表情でハジメたちに手を振ると、
しっかりとした足取りでメドゥーサは世界の境界線へと向かう。
「ハールート!マールート!この子を故郷に送って頂戴」
ガブリエルが手を叩くと、片や白髪に白翼、片や黒髪と黒翼の双子の天司、
ハールートとマールートが姿を現し、笑顔でメドゥーサの手を取る、
黒髪の方、マールートがジータに何かを言おうとしたが、
ガブリエルの表情を見て口を噤む。
そしてもう一度メドゥーサが今にも泣きそうな、それでも満面の笑顔で手を振り、
天司たちが翼を大きく広げると、彼らのその姿は急激に遠ざかり、
青空の彼方へと消えていった。
「……行っちゃったね」
「ああ」
騒がしくも頼もしかった仲間との別れに、暫し感慨の時を過ごすハジメたち。
とはいえど、大迷宮の探索もまだ途中だ、立ち止まってはいられない。
『さあ、旅を再開するぞ』
「うん、そうだね」
何気なく言い返してから、ハッと周囲を見渡すジータ、いや、ジータだけではなく、
ここにいる全員がその声を聞いたようだ。
ハジメたちも不審な表情を隠せず、ジータ同様にキョロキョロと視線を巡らせている。
「あれを見い!」
ティオの声にすでに閉じようとしていた、世界の境界へと全員の視線が集まる。
見ると亀裂を押し広げるかのように内側から褐色の腕が伸び、そして。
「通らせて貰うぞ」
そんな舌っ足らずでいて、ぶっきらぼうな声と共に、足元まで届く豊かな金髪を靡かせた
黒衣の少女が世界の境界を越えて姿を現した、その口におしゃぶりを咥えて。
黄金の髪に褐色肌、さらにゆったりとした漆黒のワンピースに、
数々のアクセサリーをじゃらじゃらと揺らす、そんなどこかエキゾチックな印象の美少女は、
閉じつつあった世界の境界線を力技で潜り抜け、澄ました顔でハジメらの前にかしこまる。
怜悧と言っていいその端正な外見の割りに、醸し出されるゆるい雰囲気から見て、
どうやら味方らしいので、ハジメたちも驚きこそしたが特に警戒はしない。
一先ず名前くらいは先に教えておいて貰おうと、
ガブリエルの方へと顔を向けるジータだったが、ガブリエルの顔は緊張に包まれ、
かつ、その身体と声が小刻みに震えている。
その震えは恐怖ではなく、畏怖と敬意によるものであろうとジータは思った。
(この子、ガブリエル様よりも格上?もしかして)
「かつての天司長様の対の存在たる貴方様が……このような」
「そういわれても、わたちにはそうだったっけ?程度の記憶しかない、
それに今の天司長はルシフェルではなく、サンダルフォンとかいう小僧と聞いたぞ
だからそういう態度は止めてくれるとありがたい」
「あの~ガブリエル様、この人は?」
「ジータちゃん!」
この人、という言葉に反応したガブリエルが窘めるような声を出すが、
褐色の少女が目元を緩めながら制する。
「冒険者たちよ、わたちの名はシャレム、気軽に敬意と崇拝を込めて
"シャレム様"と呼んでいいぞ」
ぶっきらぼうに名乗りを済ませると、そのままシャレムは自分のことを語っていく、
聞くところによると彼女は古代遺跡の棺の中で、数千年ほど眠りについていたのだそうだ。
「目覚めたらこれが博物館の中でな、しかも寝すぎたせいか記憶の大半が欠落しておって」
かつて自分がとても偉かったということくらいは覚えていても、
そのとても偉い自分が、どうして遺跡の中で封印されていたのかなど、
重要っぽいことは、すっかり忘却の彼方なのだと説明するシャレム、
もっとも掴みどころのない口調や態度ゆえ、どこまでが本当なのかは分からないが。
「お前たち程度の力があれば、世界を越えても問題ないとのことだったのでな、
遠慮なく出向かせて貰ったぞ」
チラとガブリエルを見るシャレム。
「それに、この地に幽世の蛇どもを、この世界に招く種を撒いたのは、
もしかするとわたちの責任かもしれんからな」
「心当たりがおありで……」
「いや、ない、というか、あったかもしれんが忘れた」
とりあえず何となく面白そう、いや違う、昔の自分の責任っぽいなと思えるようなことには、
相応に関与して、記憶を取り戻す糸口にしたいのだとシャレムは語る。
「どの道、あの連中は捨て置けば必ず災いを地に撒き散らす、
他の世界に迷惑をかけるわけにもいかん」
あの醜悪な斑色の怪物を思い出すジータ。
カリオストロも言っていた、死や絶望、何より嫉妬や傲慢といった、
人々の邪悪な欲望を蛇は好むと、だとすれば、ここトータスは絶好の苗床なのだろう。
「それに世界の綻びも放置は出来ん、わたちのような模範的かつ善良な徒ならばともかく」
「……」
「オイ、その沈黙は何だ、蛇どもに誘われた色々と物騒な輩どもが、
この地に目を付けぬとも限らぬからな」
そんな会話を交わしている中、倉庫の一番奥で魔法陣が光を放ち出し、
そして一度はこじ開けられた世界の境界線が、また閉じようとしていき、
それに伴い、自力での顕現が出来なくなったか、ガブリエルの姿が薄くなっていく。
完全に姿を消す前に、もう一度問いかけるような目をガブリエルはシャレムへと向ける。
「数千年眠っていたのだ、わたちにとってはいつの時代、どこの場所でも
夢の続きのようなものだ……だから」
シャレムはややダウナーな口調ではあったが、はっきりとハジメたちに宣言する。
「わたちも力を貸そう、冒険者たちよ、この"宵の預言者"へレル・ベン・シャレムが」
魔法陣をくぐると、そこには吹き抜けの神殿のような建造物があった。
神殿の中央の祭壇らしき場所には精緻で複雑な魔法陣が描かれており、
そこから通路が四方に伸び、その先端にも魔法陣が描かれていた。
その四方に配置された魔法陣の一つの上に、ハジメたちは立っている。
「あれが神代魔法習得の魔法陣?」
「だろうな、もしかすると残り三つの魔法陣についても、
何かしないといけないのかもしれないが」
最後にあのクリオネモドキくらいは出てくると覚悟をしていただけに、
少し拍子抜けした感を隠せないハジメ。
「ここまで色々体験してるから、そう思えるのであって結構大変だったと思うけど」
「そうだよ、潜水装備無しだと、魔力のみであの海底や海流を突破しないとだし、
それからやっぱり物理が効かない亡霊たちの軍団と戦わなきゃいけないんだよ?」
そう言われてみると確かにキツイなと思い直すハジメ。
「ここで問われるのは魔力を中心とした戦闘力と」
「狂気に耐えきる精神力、かな」
ともかく、試練が不完全ならば弾かれるであろうから、その時、
残り三つの魔法陣の攻略に向かえばいいということで、
ハジメたちは中央の魔法陣へ足を踏み入れる。
いつもの通りに脳内を精査され、記憶が読み取られ、そしてどうやら彼らは攻略者として、
認められたようである、ハジメたちの脳内に新たな神代魔法が刻み込まれていった。
「ここでこの魔法か……大陸の端と端じゃねぇか、解放者め」
「……見つけた"再生の力"」
手に入れた【メルジーネ海底遺跡】の神代魔法が"再生魔法"だったことに、
ハジメが悪態をつく。
【ハルツィナ樹海】の大樹の下にあった石版の文言には、
先に進むには"再生の力"が必要だと書かれていた。
つまり、東の果てにある大迷宮を攻略するには、
西の果てにまで行かなければならなかったということであり、
最初に【ハルツィナ樹海】に訪れた者にとっては面倒極まりない。
「まぁまぁ私たちは"逆打ち"で進んでるようなものなんだし」
「本来の攻略順なら、ここはおそらく序盤だしな」
地理的、そして何より攻略フラグ的に考えると、
グリューエン→メルジーネ→神山→ライセン→ハルツィナ→オルクスというルートが、
正解のようにハジメには思えた。
「ここに氷雪洞窟がどこに入るかだが」
「多分最初じゃないかな、フリードさんでもクリア出来るんだし」
かなり失礼かつ辛辣な意見を口にするジータ。
ちなみにそのフリードさんでもクリア出来る氷雪洞窟で、
後に彼らは大苦戦することになるのだが、
それはさておき、これから魔人領に向かうのも手かもしれないと一瞬考えたハジメ、
しかし、カリオストロや愛子らとの合流の約束を思い出す。
「ま、推奨ルート通りで行くか……と」
そこでハジメたちの前に、床から小さな祭壇のようなものがせり上がって来る。
その祭壇は淡く輝いたかと思うと、次の瞬間には光が形をとり人型となった、
どうやら、オスカー・オルクスと同じくメッセージを残したらしい。
「おいジータ、録画しとけよ」
ジータがいそいそとスマホを取り出す間にも、光の人型は次第に輪郭をはっきりとさせ、
ジータがアルバムで見た通りの、エメラルドグリーンの長い髪と扇状の耳を持つ、
海人族の女性となり、彼女はオスカーと同じく、メイル・メルジーネと自己紹介した後、
解放者の真実を語っていく。
「このエヒトとかいう不愉快な奴が本当に神ならば、随分と下らん神だな
神ならば為すべきことを為した後は、また無から有への創世の旅路に赴けば良いものを、
……時の変遷を受け入れられず」
不快感を隠そうともしない呟きをシャレムは漏らす。
「……ただ造って壊すを繰り返すのは、子供の砂遊びだ」
一方ハジメは、嫌らしい迷宮のギミックとは相反する、憂いを含んだ柔らかな雰囲気を纏う、
メイルの姿に何か不思議な気分を抱いていた。
「どっちが本来の姿なんだろうな?」
「オイ、白いの」
「ハジメ……」
「ハジメ、男はこういう女にヘタに見込まれてしまうと大変なことになるぞ」
女ってやっぱわからねーといった感のハジメに、シャレムが冗談めかした声を掛ける中、
やがて、オスカーが彼らに告げたのと同じ語りを終えると、最後にメイルは言葉を紡いだ。
「……どうか、神に縋らないで、頼らないで。与えられる事に慣れないで、
掴み取る為に足掻いて。己の意志で決めて、己の足で前へ進んで、
どんな難題でも、答えは常に貴方の中にある。貴方の中にしかない、
神が魅せる甘い答えに惑わされないで、自由な意志のもとにこそ、幸福はある、
貴方に、幸福の雨が降り注ぐことを祈っています」
そう締め括り、メイル・メルジーネは再び淡い光となって霧散して行った。
「録画出来たか?ジータ」
「うん、バッチリ、これで皆に見せることが出来るよ」
攻略の証である、紋章が描かれたコインを拾いながら応じるジータ。
「これで、樹海の迷宮にも挑戦できます、父様たちはどうしてるでしょう~ホントに」
「ホ、ホントにねぇ……ハハハ」
懐かしむようでどこかトゲを感じさせるシアの言葉に、ジータは申し訳なさげに言葉を濁す。
自分の薬物投与と、ハジメによる非人道なスパルタ特訓により、
ヒャッハーを通り越し、刻か何かが見えるようになってしまったハウリア族の姿を、
シアと同様に思いだしてしまったその時。
神殿が鳴動を始め、周囲の海水がいきなり水位を上げ始めた。
「うおっ!?チッ、強制排出ってかっ!全員、掴み合え!」
というわけでシャレム登場です、メドゥーサもそうですが、
どうせ出すなら原作にはいないタイプのキャラにしたいなというのが、
ありまして。
本当は別のキャラの予定だったのですが……
その、おはガチャで引いちゃったので。
それにバブさん好きやねん。
本人は封印中の上、今どきガチで世界征服を企んでるような奴なので、
流石に出せませんが。