ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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鬼滅コラボだと!そういえば同じ時期に、
去年はガチャピンとコラボしてたわけで。
もうあの世界なんだか分からないよ。



再びアンカジへ

 

 

エリセンで数日間の休息や装備の補給などを行った後、

ハジメたちは赤銅色の世界に再び足を踏み入れ、アンカジ公国を目指していた。

代り映えのしない砂と岩の光景が続くと、否応なしに口数が多くなるのは仕方がないことか、

ハジメたちはエリセンでの思い出話に花を咲かせていた。

 

「エリセンって浮島だったんだよな、ちょっと驚いたぜ」

「南米の湖に同じような島があるんだけど、あれよりずっと凄かったよね」

「……あの造り直した桟橋、皆喜んでた」

 

ハジメによって修復された桟橋は開閉式となっており、

これで湾内への大型船の出入りや、それに伴う積み荷の上げ下ろしも、

段違いにスムーズなものとなる。

もっとも、建立記念の銅像を、それがダメならせめて記念碑をと食い下がる、

サルゼ隊長の申し出を断るのには一苦労だったなと、苦笑するハジメ。

 

しかし各人、口数こそ多いが、意図的に触れまいとしている話題があった。

 

「なんだお前たち、ロス状態ってやつか?」

 

やや微妙な車内の雰囲気を慮ったのことか、それとも空気が読めてないのか、

いずれにせよ、意図的にミュウたちのことを話題にしようとするシャレム。

 

「そんなだと、折角送り出してくれたあの母子に笑われるぞ」

 

確かにハジメの心中を慮ったこととはいえど、

無理に触れないのは少し不自然だったなと思い直すジータ、何より。

 

「また、一つ約束しちゃったしね」

「ああ、それもとんでもないのをな」

 

笑顔の中に必死で涙を堪え手を振るミュウの顔をハジメは思い起こす。

メドゥーサといい、立て続けに親しき者との別れを経験することで、

この不敵な少年にも何か思う所があったに相違ない。

 

『なら、いってらっしゃいするの、それで、今度は、ミュウがパパを迎えに行くの』

 

何より、あんな顔でそんなことを言われれば、男として何も返さないわけにはいかない。

 

『全部終わらせたら必ず、ミュウのところに戻ってくる、みんなを連れて、

ミュウに会いに来る、約束だ』

 

別れ際の約束、いや誓いをまた思い起こし、決意を新たにするハジメ。

流石に自分の故郷に、日本に連れて行ってやるとまで、口にしてしまったのは、

やりすぎだったかもしれないが、だからといって無しよと言うつもりはない。

むしろ新しい目標、乗り越えるべき壁へと向かい、ハジメは闘志を漲らせていた。

そう、例え世界を隔てても……。

 

「戻るさ……何が何でも、それに」

 

このトータスは、もう自分にとって何の関わりもない場所ではない。

たくさんの出会いが、そうでは無くしてしまった、だから。

 

「……皆の故郷だからな」

 

ハジメが言う、その皆はユエやシアたちだけを意味しているわけでは決してない筈だと、

ジータは確信する。

 

「うん、みんなが生きてる世界だもんね」

 

四輪のハンドルを握るハジメの横顔を見つめるジータ。

確かに少し大きすぎる約束をしてしまった、させてしまったと思う。

だがその約束が、誓いが、きっとハジメの巨大すぎる力を鎮め、

人としての生きる標となってくれるに違いない。

 

そんなどこか充実した気分で、少し眠ろうと目を閉じようとしたところで、

 

「しかし、いいのかそれで?」

 

舌っ足らずなシャレムの言葉が耳に届く。

 

「確かにエヒトなる輩は神を名乗るに烏滸がましいクソ野郎だが、

そのクソ野郎の培った秩序の中で、この世界の人々は生きているように、

わたちには思える、それをいきなり否定したらどうなる?」

 

幾多の出会いの中でずっとハジメたちが抱えて来た命題を突きつけるシャレム。

 

起床時、いわゆる男のメカニズムによって屹立した、ハジメの下半身を、

興味深く見つめるミュウへと、

 

"大丈夫だ、おまえが大きくなったら、

向こうの方からたくさんやってくるから、好きなのを選べばいい"だの。

 

"いいか人間にもおしべとめしべがあってな"だのと、

 

真面目かつ面白半分に、性教育を施そうとしていた、

下ネタ大好き褐色少女の面影は、少なくとも今のシャレムからは感じられなかった。

 

あのメルジーネでの光景を思い出すジータ、

恐らく解放者たちも同じ思いを抱えていたに違いない、

だから人々を一つに結集させようとした、神に依らぬ新たな価値観を与え、生み出す為に。

それこそが神が最も恐れ忌むことだと知っていたから……しかし。

 

「……どうにもならないと思います、だから割り切ることにしました、

私たちの邪魔をしたら速やかにやっつける」

 

事を構えるなら、よそ者のアドバンテージを生かすだけのことだ、

体裁や大義名分などお構いなし、居場所を掴んで殴り込みだ。

いや、よそ者の解決方法としては、むしろ妥当なのかもしれない、

世界の秩序や理は壊さないに越したことはないのだがら。

 

「そうでないなら触らないって」

 

そう口にしつつも、それはもはや望み薄だなと思うジータ、

檜山の件からして、もう邪魔はされているも同然なのだから。

 

「それに、無責任かもしれないけれど、やっぱりこの世界のことは

この世界の人々の選択であって欲しいかなーって」

「お前たちの戦いを、あの解放者たちのように否定されたらどうする?」

「その時は大人しく尻尾巻いて地球に帰るさ、もちろん皆でな」

 

はっきりと宣言し、アクセルを踏みこむハジメ。

赤銅色の景色の流れがまた一段と早くなる、

砂嵐やサンドワームにも今のところ遭遇してない、

この分だと予定よりも早く到着出来そうだなと、ジータはウルでの別れの際、

愛子らと互いに交わした行程表とにらめっこを始める。

 

「グリューエンで少し時間がかかったけど、でも私たちの方が一足先に着くね」

「一足先って?」

「多分三日くらい、うん?香織ちゃん何かあるの?」

「うん、実はね、再生魔法を使ったらオアシスを元に戻せるのかもしれないって思ったの、

だから時間があるなら、試してみたいなって」

 

回復魔法が効かなくとも、あらゆるものをあるべき姿へと復元する再生魔法ならば、

オアシスを元に戻せるはずだと、香織は踏んでいた。

そして太陽が中天に差し掛かる頃、彼らの目にアンカジの門が映り始める。

 

「随分人が多いな」

「うむ、妾たちが戻って来た頃から救援物資が届き始めてきたからの、多分あれは

他所からの隊商なのじゃろう」

「救援部隊に便乗したってところか、で、入国まで随分掛かりそうだが…」

 

荷馬車の列を最後尾から眺めつつ、ハンドルを手放し伸びをするハジメ、

フューレンでの経験から考えるに、この分だと夕方までは掛かりそうだ。

なら、昼食でも先にと思ったところで香織が声を弾ませる。

 

「こんなこともあろうかと手形貰ってるから、正面からじゃなくって東側に回り込んで」

 

香織の指示に従い、ハンドルを握ろうとしたハジメの背中をジータが軽く叩く。

あ……と、肝心なことを忘れてたとばかりに、ハジメは香織へと向き直る。

 

「気が利くな……香織、サンキュな」

「うんっ!こちらこそどーもだよ、ハジメくんっ!」

「でも、中に入る前に香織ちゃん、髪とか染めとかなくっていいの?」

「あ、そっかこれじゃみんな驚くよね」

 

覚えたての力を試したいという気持ちはあっても、急ぐ必要はない、

一旦四輪を止めて貰い、香織は真紅の瞳にハジメに作って貰ったカラコンを入れ、

ジータに手伝って貰いながら、白髪を黒く染め始める。

 

「色が抜けてるから凄く発色いいよ」

「ダブルカラーみたいなものだもんね」

 

香織の髪を染めてやりながら、自分らパーティーの陣容からいって、

次は赤く染めるのなんてどうだろうと、ふと思ってしまうジータ。

 

「天之河くん驚くよ、香織が不良になったって」

「言いそう、でももうすぐ愛子先生たちもやって来るんだよね」

「でも、香織ちゃん大丈夫?」

「へ?何が」

 

ジータのやや唐突な問いかけに、きょとんとした声を上げる香織。

 

「メルジーネから戻った後、少し体調崩してたでしょ?」

「ああ、あれ……うん、ちょっと旅に慣れてなくって疲れが出たみたい

ホラ、砂漠から海……だったから」

「ホントにそれだけ?」

「それだけだよ、ジータちゃんだって私の天職知ってるでしょ」

「……」

 

なんか怪しいと、ジータの勘が告げてはいるが、しかしながら、

治療の専門家たる香織の診立てに、それ以上文句を言える筈もなく、

元より深く追求するようなことでもないので、この話題はここで立ち消えとなる。

 

「医者の不養生だけは止めてよ、シャレにならないから」

 

そんな他愛ない会話を交えつつも、洗髪が終り、

ジータはタオルで香織の髪を拭こうとし、

 

「はい、ジータちゃんタオル」

「もー、持ってるなら自分で拭いてよね」

 

当の香織から手渡されたタオルを、苦笑しつつ本人に突き返すのだが。

 

(あれ?タオル……香織ちゃんの手の届く場所に置いてたっけ?)

 

そんな疑問がふと頭を過ったが、

ともかく、体型こそより女性らしくはなってはいたが、

そこにはカラコンと染髪により、ほぼ教室と変わらぬ姿となった香織がいた。

 

「ね?ハジメくんは……どっちがいいかな」

 

ふぁさと黒髪を靡かせ、試すような笑顔と共に香織はハジメへと向き直り、

 

(また答えにくいことを……)

 

そしてジータはその言葉に苦笑し、ユエはむっと頬を膨らませる。

 

「そりゃ、今の香織に決まってるだろ、色々な経験や選択を繰り返した上での今の、な」

 

(ちょっと……違うかな、その答えは)

 

香織を除く女性陣全員が、少し物足りないといった風な表情となり

代表してジータが、香織の背中越しにハジメへとアイコンタクトを送り、

ああ、今のじゃ足りないかと、ハジメは少し考えてから付け加える。

 

「でも……時々は元の香織の……いや、色々な香織の姿が見たいな」

「うんっ!」

 

色々なという所が特に気に入ったのか、大きく頷く香織と、ほっと一息つくジータ。

 

(ま、いいでしょ、それで)

 

もっとも、そこでもう今は自分と香織は、ハジメを巡るライバルなのだと、

思い直すのではあったが。

 

(それ以前に親友だもんね)

 

 

事前に香織たちが話を付けてくれていたおかげで、アンカジへの入国は

思った以上にスムーズに進んだ。

 

「久しい……というほどでもないか、無事なようで何よりだ、ハジメ殿、

香織殿とティオ殿に静因石を託して戻って来なかった時は本当に心配したぞ、

貴殿は、既に我が公国の救世主なのだからな、礼の一つもしておらんのに、

勝手に死なれては困る」

「まぁ、見ての通りピンピンしてますので、どうかお構いなく」

 

待合室にて自ら出迎えたランズィの姿と言葉に、恐縮したかのような体を見せるハジメ、

それを見て目を細めるランズィだったが、

一行の顔触れや様子が少し違っていることに、目敏く気づくあたりは、

流石といったところか。

 

「おや、お連れ様……メドゥーサ殿?でしたか?見当たらないような

それにこちらの方は」

「ああ……それについては」

 

取り急ぎ、メドゥーサが去ったことや、シャレムの紹介を済ませつつも、

話は続けていく。

 

「それに正門の様子を見る限り、救援も無事に受けられてるみたいだし」

「ああ。備蓄した食料と、ユエ殿が作ってくれた貯水池のおかげで十分に時間を稼げた、

王国から援助の他、商人達のおかげで何とか民を飢えさせずに済んでいる」

 

そう言って、ランズィは穏やかに笑うのだが、その表情にはやはり疲労の色が濃い。

 

「領主様、オアシスの浄化は……」

「使徒殿……いや、香織殿?」

 

そこでまた怪訝な表情を見せるランズィ。

 

「失礼ながら少し雰囲気が変わられたような…あ、いや、申し訳ない、オアシスは相変わらずだ

新鮮な地下水のおかげで、少しずつ自然浄化は出来ているようだが……中々進まん、

このペースだと完全に浄化されるまで少なくとも半年、土壌に染み込んだ分の浄化も考えると、

一年は掛かると計算されておる」

「そこでですね」

 

憂鬱な表情を隠せないランズィへと、香織が今すぐ浄化できる可能性があると伝え、

それを聞いたランズィは、驚愕の表情と共に、香織へと唾を飛ばして確認する。

 

「あくまでも可能性ですから」

 

掴みかからんばかりの勢いのランズィを、笑顔でいなす香織、

その笑顔は、ハジメたちにとってはどこか蠱惑的に見えて仕方なかった。





をや…また香織の様子が?

それはさておき、このあたりの箇所は、
軽く触れる程度にしておいてもと思ったのですが、
多少なりともハジメたちのキャラクター性が変化した以上は、
やはり書いておく必要性があると判断しました。
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