古戦場本戦も残すところあと数時間、いかがお過ごしでしょうか?
私はフルオートしながらせっせと書いております、
ジータちゃんが被弾しまくる中で避けまくるシスとビカラを眺めつつ、
やっぱりオーキス欲しいなとも思ったりもしています。
しかしヘイムダル君、こっちが闇属性だから何とか殴りあえるのであって、
もし、風や火属性の時の相手なら物凄い難敵になってそう。
普段は憩いの場所、観光地として大勢の人々で賑わっているであろうオアシスだったが、
今は全くと言っていいほど人気がなく閑散としている。
そんなオアシスの畔に立って香織は再生魔法を行使する、
魔と変じた肉体に詠唱は不要ではあるのだが、人前である、
それっぽい言葉を唱えつつも意識を集中させ、そして一言。
「"絶象"」
それだけを呟き、杖を水面へと突き出す、すると杖の先端より淡い光の雫が、
オアシスへと零れ落ちる。
すると、オアシス全体が輝きだし、淡い光の粒子が湧き上がって天へと登っていく、
それは、まさしく浄化の、悪しき物が天へと召されていくかのような、
神秘的かつ心に迫る光景、誰もが息を呑みただ見惚れることしか出来ぬほどの、
そんな光景だった。
そしてショーは終わり、未だ余韻覚めやらぬそんな表情ながらもランズィは、
部下に命じて水質の調査をさせる。
「……戻っています」
「……もう一度言ってくれ」
ランズィの再確認の言葉に部下の男は、息を吸って、今度ははっきりと告げた。
「オアシスに異常なし!元のオアシスです!完全に浄化されています!」
その瞬間、周囲から一斉に歓声が上がり、ランズィもまた深く息を吐きながら、
感じ入ったように目を瞑り天を仰いでいた。
「あとは、土壌の再生だな……領主さん、作物は全て廃棄したのか?」
「……いや、一箇所にまとめてあるだけだ。廃棄処理にまわす人手も時間も惜しかったのでな」
苦渋の表情のランズィ、棄てるにはあまりに忍びなかったのだろう。
「……まさか……それも?」
おずおずと尋ねるランズィへと、ユエが香織に負けてなるものかと胸を張る。
「ユエと…それからティオも加われば、いけるんじゃないか?どうだ?」
「……ん、問題ない」
「うむ。せっかく丹精込めて作ったのじゃ。全て捨てるのは不憫じゃしの、任せるが良い」
ハジメ達の言葉に、本当に土壌も作物も復活するのだと実感し、
ランズィは、胸に手を当てると、人目もはばからずハジメへと跪き、深々と頭を下げた。
「お、おい」
これは領主がすることではないと直感したハジメはコートを脱いで、
ランズィの姿を周囲から隠すべく被せようとしたが、ランズィは構うことなく、
ますます深く頭を下げ、それに続くかのように周囲の側近たちもまた跪き頭を下げる、
そして、これまで経験したことが無い巨大な感謝の念に戸惑いを隠せない。
そんなハジメの背中をジータが抱きしめた時だった。
不意に感じた不穏な気配にジータが踵を返すと、
遠目に何やら殺気立った集団が肩で風を切りながら迫ってくる様子が見える。
(あの装備は……)
"遠見"で目を凝らしたジータの目に、この国の兵士たちとは明らかに違う装束を
纏った兵士や司祭たちの姿が映る、どうやらこの町の聖教教会関係者と、
神殿騎士の集団のようだった。
ハジメたちの傍までやって来た彼らは、すぐさまハジメらを半円状に包囲し、
そして神殿騎士達の合間から白い豪奢な法衣を来た、初老の男が進み出てきた。
物騒な雰囲気の中、ランズィが咄嗟に男とハジメ達の間に割って入る。
「ゼンゲン公……こちらへ、彼らは危険だ」
「フォルビン司教、これは一体何事か?彼等が危険?二度に渡り、
我が公国を救った英雄ですぞ?彼等への無礼は、アンカジの領主として見逃せませんな」
「ふん、英雄?言葉を慎みたまえ」
フォルビン司教と呼ばれた初老の男は、小馬鹿にしたような態度で、
ランズィの言葉を鼻で笑いながら続ける。
「彼らは、既に異端者認定を受けている、不用意な言葉はですな、
貴公自身の首を絞めることになりますぞ」
「異端者認定……だと?馬鹿な、私は何も聞いていない」
"異端者認定"という言葉に息を呑むランズィ、
いよいよ来るべき時が来たかーと、平然としているハジメたちと、
実に厭らしい笑みを浮かべているフォルピンの顔を見比べつつ、
何かの間違いでは?と、震える声で言い返す。
「ま、信じられぬのも無理はないでしょうな、それもこのタイミングで
異端者の方からやって来るとは……クク、何とも絶妙な、きっと、
神が私に告げておられるのだ、神敵を滅ぼせとな……これで私も中央に……」
ニヤニヤと本音と野心を隠すことなく、フォルピンは慇懃な態度でハジメらへと向き直る。
「さて、私はこれより君たち神敵を討伐せねばならん、相当凶悪な者たちと聞いてはいるが
果たして神殿騎士百人を相手に、どこまで抗えるものか見ものですな、
さぁゼンゲン公は、私と共にこちらへ」
自分は安全な所で高みの見物を決め込むつもりなのだろう、フォルピンはランズィを促しつつ
自身はゆっくりと後ろ去っていく、そしてそれには一切構うことなく瞑目するランズィ。
「ああ、忘れてました、かのジータという娘だけは……」
「断る」
「……今、何といった?」
「こ・と・わ・る・と言ったのだ、耳が遠いな」
口元に笑みすら浮かべ、そしてその笑み同様の涼やかな威厳を以て、
ランズィはフォルピンへと明確な拒絶の意思を叩きつけた。
信じ難き予想外の言葉を耳にし、間抜け面を晒すフォルビンへとさらにランズィは続ける。
「彼らは救国の英雄。例え、聖教教会であろうと彼等に仇なすことは私が許さん」
「なっ、なっ、き、貴様!正気か!教会に逆らう事が、
どういうことか判らんわけではないだろう!異端者の烙印を押されたいのか!」
驚愕の余り言葉を詰まらせながら怒声をあげるフォルビン、
片や、それをいなすような笑みを浮かべるランズィ、
共に相応の立場の身でありつつも、その両者の人間の器の差は明白だった。
「フォルビン司教、中央は彼らの偉業を知らないのではないか?
彼らは、この猛毒に襲われ滅亡の危機に瀕した公国を救ったのだぞ?
報告によれば勇者一行も、ウルの町も彼に救われているというではないか……
そんな相手に異端者認定?その決定の方が正気とは思えんよ……故に」
そこで不敵な笑みを止め、一国の領主としての威厳溢れる表情で
ランズィは高らかに宣言する。
「ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、この異端者認定に異議と
アンカジを救ったという新たな事実を加味しての再考を申し立てる!」
「だ、黙れ!決定事項だ!これは神のご意志だ!逆らうことは許されん!
公よ!これ以上その異端者を庇うのであれば貴様も、いやアンカジそのものを!
異端認定することになるぞ!それでもよいのかっ!」
実に分かりやすい態度で喚きたてるフォルピン、これこそが中世の聖職者の、
ある意味あるべき姿だなと、妙な所で感心してしまうジータ。
「いいのだな?公よ、貴様はここで終わることになるぞ、いや」
いつの間にかランズィを守るかのように、彼の配下たちが周囲を固めていた、
どの顔も覚悟を完了させた、決然とした表情を見せて。
「貴様だけではない、貴様の部下もそれに与する者も全員終わる、神罰を受け尽く滅びるのだ」
「このアンカジに、自らを救ってくれた英雄を売るような恥知らずはいない、
神罰? 私が信仰する神は、そんな恥知らずをこそ裁くお方だと思っていたのだが?
司教殿の信仰する神とは異なるのかね?」
「……ほう?涜神の言を為すか、これで貴様らの運命は決まったわ!」
ランズィの宣戦布告とも受け取れる言葉を、態度で以って応じんとばかりに、
フォルピンは神殿騎士たちに攻撃の合図を送ろうとする、が、その時。
一人の神殿騎士のヘルメットにカツンとどこからか飛来した小石がぶつかる。
その音を皮切りに次々と石が飛来し、騎士達の甲冑を打っていく。
「ふざけるな!俺達の恩人を殺らせるかよ!」
「教会は何もしてくれなかったじゃない!なのに、助けてくれた使徒様を害そうなんて
正気じゃないわ!」
その石を放ったのは神殿騎士たちを包囲するかの如く集結した、
アンカジの住民たちだった、
「やめよ!アンカジの民よ!奴らは~~」
フォルビンが住民達の誤解を解こうと大声で叫ぼうとするが。
「我が愛すべき公国民達よ!聞け!彼らは、たった今、我らのオアシスを浄化してくれた!
我らのオアシスが彼等の尽力で戻ってきたのだ!そして、汚染された土地も!作物も!
全て浄化してくれるという!彼らは、我らのアンカジを取り戻してくれたのだ!
この場で多くは語れん!故に己の心で判断せよ!救国の英雄をこのまま殺させるか、
それとも守るかを!……私は、守ることにした!」
それを掻き消すかのようにランズィの言葉が、威厳と共に放たれ。
それに応じるかの如く、おおお!と、住民たちの叫びが唸りをあげ、
投石の雨はますます激しく騎士たちへと降り注いでゆく。
「何が異端者だ! お前らの方がよほど異端者だろうが!」
「きっと、異端者認定なんて何かの間違いよ!」
「香織様を守れ!」
「領主様に続け!」
「香織様、貴女にこの身を捧げますぅ!」
「おい、誰かビィズ会長を呼べ! "香織様にご奉仕し隊"を出してもらうんだ!」
良く分からない叫びも混じってはいたが、どうやら住民たちはフォルピンの言葉よりも、
目の前のランズィと香織一行を守ることを決意したようだった。
そして事態を知った住民たちが次々と集まっていく、国を、そして恩人たちを、
害さんとする者たちへの怒りを携えて。
「司教殿、これがアンカジの意思だ、先程の申し立て……聞いてはもらえませんかな?」
「ぬっ、ぐぅ……ただで済むとは思わないことだっ」
歯軋りと共にそう吐き捨てると、フォルピンは教会へと踵を返し、
その後を神殿騎士達が慌てて付いていく、その姿にアンカジの民衆たちは歓声を上げる。
「……本当によかったんですか?……別に」
「いやいや、その方が被害が甚大になったのではないかな?主に彼らにとって」
すごすごと引き下がる教会勢の背中を見ながら微笑むランズィ。
「なにせ君たちときたら、信じられないような魔法をいくつも使い、
未知の化け物をいとも簡単に屠り、大迷宮すらたった数日で攻略して戻ってくる上に、
勇者すら追い詰めた魔物を瞬殺したという報告も入っている、違わないかね?
それに先ほども言ったが、これは我らアンカジの意思だ、
この公国に住む者で貴殿等に感謝していない者などおらんからな」
そう言ってまた改めてハジメに頭を下げるランズィ、
照れ隠しで少し所在無げに頬を掻くハジメの手をジータが、そしてユエが握りしめる。
「これはね、ハジメちゃんが寂しい生き方を選んでなかったって証なんだよ」
「……んっ、だからハジメはもっと喜んでいい」
「俺は大したことは何もしていない、きっとそれは皆が導いてくれたからだ」
本当にそう思う、もしも自分の周りに誰もいなければ、
今、自分に付いてきてくれている彼女らの内の一人でも欠けていれば。
きっとこんな風にはならなかった、こんな風には思えなかった。
「じゃあ皆集まって」
と、ジータがまたおもむろにスマホと自撮り棒を取り出した時だった。
「どうやら俺の出る幕はなかったようだな」
ここに本来いる筈もないが、聞き覚えのある懐かしい声に二人は振り向く。
「メルドさん!」
「どうしてここに?」
そこには馬に跨ったメルドの姿があった、しかしその顔色は青白く、
身体は小刻みに震えている……典型的な熱中症の症状だ。
「坊主も嬢ちゃんも……それから香織も……元気で……」
精一杯の笑顔をハジメらに見せつつ、かろうじて自ら下馬すると
そのまま地に頽れるメルド。
「酷い熱……早く鎧を脱がせてあげて、それから水を!」
テキパキと指示を出す香織に言われるままに、ハジメはメルドの鎧を脱がしていく。
「ロギンス卿……まさか砂漠を突っ切って来たのか、何と無茶なことをなさる!」
「これは……」
ハジメがホルアドでの別れの際、改めて仕立て直した鎧と剣は、
さらなる強度と輝きを増している、こんなことが出来るのはハジメの知る限り一人しかいない。
ハジメの疑問に気が付いたか、香織の魔法により体力を回復させたメルドが、
ゆっくりと口を開く。
「良く聞いてくれ……実は」
風雲急を告げつつ、次回はなぜか水着回。