ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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…思ったより長くなってしまいました。
そしてそんなに無双してないカリおっさん


開闢の錬金術師・吠える

(わかったわかった、カリオストロちゃんは物知りなんだね、すごいね)

 

「このオレ様を物知り…か、ククク」

 

光輝に言われたことを思い出して邪悪に笑うカリオストロ。

最初からそう決めてかかっているのだろう、自分の中の真実だけが総てのタイプだ。

最初はカリオストロも抵抗しようとしたが、却って話が拗れるとすぐに思い直し、

 

それ以降は光輝が思い描く"ちょっと背伸びした物知りのよい子"を、

精一杯演じ続けている。

しかし話を聞く限りアイツの爺さんは人物だと思うんだが…。

なんで孫はああなんだろうか?。

 

「…たく」

 

今日も益体もない話に付き合わされて思ったよりも、

時間が掛かってしまった。

 

『カリオストロぉ何でも知ってるからハジメお兄ちゃんのお手伝いしてるのぉ、

みんなのお手伝いもぉ天之河お兄ちゃんのお手伝いもさせてぇ~』

『キミは危ないことをする必要はないんだよ、俺が守ってやるよ!(キラッ)

だから俺の事は光輝って呼んでくれないかな!(さらにキラッ)』

 

最初の頃の余りに不毛で悍ましい一幕を思い出して、

ブルブルと頭を振るカリオストロ。

 

「状況分かってんのか、あのバカ勇者は」

 

守るとか言っておきながらアイツには命を背負う重さが理解出来てない、

いや出来たつもりでいるだけだ。

ホントに誰かを守りたいなら藁にでも縋れといいたい。

 

結局、最後はたまたま近くにいた中村恵里に半ば強引に光輝の相手を任せ、

なんとか離席したのであった。

しかしあの娘、えりちと呼ばれることに激しい拒否反応を示したのはどういうことか?

(賢くって可愛い呼び名だと思うんだけどなー)

 

 

と、そこでカリオストロの表情が変わる、工房の様子が変だ…。

 

すると中からフラフラと遠藤が姿を現し、傷ついた身体を必死で動かしながら

カリオストロの方へと向かう。

 

「ご…ごめん、南雲が…あいつらに」

「檜山どもか?」

 

コクリと頷く遠藤。

全身傷だらけだが背中が特に酷い、覆いかぶさって必死でハジメを守ったんだろう。

半ば脅しで協力をさせていたにも関わらず…。

遠藤の傷を癒してやりながら心の中で呟く。

 

(やるじゃねえか…予想外だったぞ)

 

「結局…連れていかれて…多分あっち側の方の訓練場…」

「よくやった!よくやったぞコースケ!後は任せろ!」

 

鍵を掛け忘れていたのは迂闊だった、オレ様も緩んだか…。

「さーてガキども、オレ様のカワイイ舎弟どもに手を出しやがったんだ、ただじゃおかねえぞ」

 

 

見つけた…別棟の普段はあまり使われない訓練場の隅で、

例の四人に取り囲まれているハジメ。

その身体は殴打の痕のみならず、魔法による傷までもが刻まれていた。

 

噂の天才少女のお出ましだぜと誰かが言う。

天才はいいが、美が抜けてるなとカリオストロは思う。

 

「俺たちはただコイツに稽古つけてるだけだよ、ハハ」

 

また誰かに上ずった声を掛けられる。

無言ですでに失神しているハジメの傷を癒すカリオストロ。

 

「こんな石いじりしか出来ねぇ無能とは手ェ切ってオレたちと組まねえか」

「ホントはあの薬だって、おじょーちゃんが作ったんじゃねーの」

「このロリ無能のためによ」

「ハハハ」

 

「そっか、錬成師が無能か…武器と魔法がつかえりゃ有能か、

カリオストロちゃんそんなの初耳だよっ」

 

ハジメの傷の治療を終え、ゆっくりと振り向くカリオストロ。

 

「ねぇねぇ~じゃあ今からぁみんなにぃカリオストロちゃんが直々に

石いじりしか出来ない錬成師の戦い方を教えてあげるぅ♪」

 

ニコと笑うカリオストロ、何故かつられて笑う四人。

 

「授業料は」

 

天使の笑顔がサメの如き邪笑へと変わる。

 

「テメェらの命だ」

 

四人の足元に地割れが走る、その中には鋭い石の返しが付いている。

檜山は逃れたが、いやわざと逃した。

────近藤と中野と斉藤は地割れに飲み込まれ、

さらにそのまま挟み込まれる。

万力のごとく全身を締めあげられ舌を出して悶絶する三人。

 

「簡易版、いしのなかにいるってヤツ、どうかな?」

 

声も出せないのか、はひはひと呼吸音だけで答える三人。

 

 

ダンジョンに赴くことが決まった際、武器が無い、

錬成のスキルのみでどう戦う?とカリオストロはハジメに聞いたことがある、

果たしてその答えは。

 

「地面や外壁を加工し、陥穽etcを状況に応じて使うだったか…いいぞ正解だ」

 

 

「さてお次はぁ~」

「ひ…」

仲間たちを見捨て、背中を向け脱兎のごとく逃げ出そうとしていた檜山だったが。

 

バゴン!

 

「おっ…ご」

 

いきなり訓練場の壁から現れた杭に側頭部を思いきり強打し、思わず頭を抱える。

そこにカリオストロの拳が檜山の鳩尾へとつき込まれる。

くの字に腰を屈めた檜山の顔面にさらに膝が入る、前歯の何本かが飛び散った。

 

「ああスマねぇ、石いじりだけで戦うんだったか、わりぃな」

 

全然悪いと思ってないカリオストロ。

 

「鉱物、金属だけじゃねぇ、液体、気体、そして肉体…さらには生命、魂をも錬成、創造する」

 

ハジメに言い聞かせるようにカリオストロは続ける。

 

「つまり錬成師には~ハジメお兄ちゃんには無限の可能性があるの、わかるぅ♪」

「だから、武器振り回していい気になってるテメェらとはそもそもの格が違うんだよ!」

 

もちろんこれはもはや錬金術師、いやもはや神(つまりオレ様)の領域であり、

誇張が多分に含まれているが、これくらいフカしておいた方がいい。

それにハジメは必ずその領域に、世界の深奥に辿り着ける逸材だと、

カリオストロは確信していた。

 

たった一つだけ致命的な欠点があったが。

 

先ほどのハジメの姿を思いやる…きっとされるがままだったのだろう。

錬金術は渇望の学問だ、明日を掴みたい、真理をこの手にせんという、

その渇望が、生きたいという意思がハジメにはあまりに備わってない、

つまり希薄に思えるのだ。

それこそ他者の為ならあっさりと命を投げ出せる程に…。

 

それはそれで得難い美徳ではあるのだが。

生きたい…という、ただそれだけで地獄の日々から這い上がった、

カリオストロに取ってはそれだけが物足りなかった。

 

(オメェも地獄に落ちりゃ、ちったあ変わるかもしれねえがな…いや)

(そこまで一緒になる必要はねぇな)

 

胃の内容物を吐き出しうつ伏せに倒れる檜山、さらに。

「ぐぎゃあ!」

両手足の甲に地面から突き立った杭が突き刺さる。その鋭さはもはや刃と言ってもいい。

 

「好きなんだろぉ? こういう女の子がさぁ~もっとぉ~お稽古ぉしよしよ、ね」

 

カリオストロは地面に磔状態となった檜山の首筋を容赦なく踏みつける。

メキメキと骨が軋む。

 

「こ…これがテメェの本性か」

「あ?テメェ?」

 

カリオストロはさらに足に力を入れる

 

 

ジータに先行して第二訓練場にかけつけた雫が見た者は

まずは何人かのクラスメイトと一緒に呆然と立ち尽くすハジメ、

その身体に傷一つないことを確認し、

雫はホッと一息…つこうとして目の前の凄惨な光景に絶句する。

 

そこにあったのは畑のキャベツの如く頭だけを地面に出し、

白目を剥いてうめき声を上げる近藤、中野、斉藤の三人と、

 

「はひぃぃぃ」

 

と、カリオストロに鎖骨を踏み砕かれ、

情けない悲鳴を上げているズタボロ状態の檜山の姿だった。

 

皮膚呼吸が阻害されているのだろう、

生き埋め状態の三人の顔色が異様な色に変化していく。

野菜みたいだと不謹慎ながらも雫はそう思った。

 

助けないと…しかしカリオストロから放たれる余りの鬼気に、

雫といえど動けない。

只物ではないことは雫とて紹介された時点で悟っていた。

だがそれでもせいぜいちょっとワルぶった物知りの天才少女くらいの、

認識でしかなかったのである。

 

騒ぎを聞きつけさらに多くのクラスメイトらも集まる中、

カリオストロの檜山へのお稽古は続く。

 

「他に言う事あるんじゃないかなぁ♪カリオストロちゃん激おこプンプン状態だよっ♪」

「ゆ…ゆるして…八重樫ぃ…助けて」

 

血と泥と涙と吐瀉物に顔を汚しながらカリオストロに、

そして雫に助けを求める檜山。

 

「違う!そうじゃねえだろ!こっちだ!」

 

檜山の髪を掴んでそのまま地面に叩きつけ、ムリヤリ顔の向きを変えさせる

その先にはハジメの姿があった。

 

「な…南雲…」

「南雲?…良く聞こえなかったなもう一度だ」

 

八重歯を覗かせニィと笑うカリオストロ。

 

「次はね、ちゃんと"さん"を付けるんだよーでないと…檜山お兄ちゃんのことついうっかりぃ~♪」

「殺しちまうかもな」

「な…南雲…なぐ…」

 

 (チッ…やべぇな)

 

やはり今のジータとハジメの脆弱な魔力では十全に能力を発揮できない。

回復を短時間に2回も使ったために今にも意識が途切れそうだ、

身体が動く間に早くこいつの心を折らないといけない。

 

(言え!早く言え!折れちまえ!)

 

くらあ~

しかし眩暈に膝をつくカリオストロ。

 

(オレ様としたことが怒りで我を忘れちまった…クソッ)

 

さすがに殺しちゃならねぇと檜山への石杭と、石棺に閉じ込めた近藤ら

三人は解放してやる。

あとは雫がいかようにもしてくれるだろう、ジータも来るだろうし。

 

そこに。

 

「何をやってるんだ!」

 

と、我らの勇者が到着する、ある意味両者にとって絶妙のタイミングだった。

 

「天之河ぁ~助けてくれえ~あの子にころされる~ぅ」

 

恥も外聞も捨てて光輝にすがりつく檜山。

 

「俺たちは南雲を特訓してやろうとしてたんだよお~それを南雲がこの子をけしかけてぇ~」

「はぁ!ちょっと…」

 

言い返そうとする雫を手で制する光輝。

 

「南雲!多少やり過ぎはあったかもしれないが、檜山たちも君を思ってあえて、

厳しくしたのかもしれないのを…それを…こんな小さい子に頼るなんて最低だぞ!」

 

(え…な、何?)

 

その余りに見当違いな解釈に誰も理解が追いついてない。

ハジメもカリオストロも当の檜山ですらあんぐりと口を開けている。

雫は、いや光輝を除くこの場の全員がジータがまだここに到着してないことを心から安堵した。

もし今の言葉を聞いていれば、この訓練場は血の海と化すだろう。

それを止める自信は雫にはなかった。

 

「もうカリオストロちゃんをお前たちに預けて置くわけにはいかない!

このままだとカリオストロちゃんが不良になってしまう!」

 

いや…もう不良どころの話じゃないですやん、手遅れですやん。

 

「行こう!愛子先生に躾けて貰わないと」

 

果たして誰がどっちに躾けられることになるのやら…。

ともかく夕日を背景にカリオストロをお姫様抱っこする光輝、

その仕草は騎士物語のごとく実に美しく、故に却って非現実的に見えてしまう。

茶番劇とはまさしくこうであるべきだろう。

 

「さ、もう大丈夫だよ」

(…大丈夫じゃねぇよ、生涯の恥辱だ…)

 

結果的に守られてしまい、光輝の腕の中で憤懣やるかたないカリオストロ。

そしてようやく収穫、もとい救出される近藤ら三人。

 

「……くせに……くせに…フヒヒ」

 

未だ涙を流しつつもなにやら不穏な雰囲気を醸し出す檜山。

そしてそんな彼を見つめる周囲の微妙な視線。

 

 

 

こうして彼らはいよいよオルクス大迷宮に挑むのであった。

 

 




さて団イベまであと2日…
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