ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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総合評価1000pt突破!これも皆さまの応援のお陰です。
ありがとうございます。

王都編では、これまで出番の少なかったキャラが主体になる予定なので、
ハジメパーティーは主役コンビを除いて出番が少なめになります。
ご了承下さい。


変遷するモノたち

王都近郊の宿場町。

 

「清水さん、そろそろ宿に戻りましょう……夜風は身体に触ります」

「ああ、でももう少しだけ……見ておきたいんだ」

 

清水幸利は、友人でもあり自分の身元保証人でもある、

ウィル・クデタへと険しい表情で応じる。

 

ウルの街での騒動から数ヶ月。

冒険者ギルドの庇護の下に進められた、清水への取り調べはほぼ一段落し、

いよいよ彼は王都での最終的な審理へと臨むことになっていた。

 

審理と言っても、清水自身が取り調べに協力的で、数多くの情報を得ることが出来たこと、

かつ、その能力の殆どを喪失したとはいえど、労役代わりとして与えられた、

ギルド内の実務も、異世界人ならではの高いレベルで処理しており、

慣習通りの審理が滞りなく行われれば、それらを考慮し、

晴れて釈放という流れになるだろうとの話だった。

 

しかし、王都の手前まで来て、何故か彼らは、いや彼らだけではなく、

他の商隊や一般の旅人たちまでもが関所にて足止めを食い、

そして現在……。

 

野次馬たちに混ざり高台から炎上する王都を眺め、歯噛みする清水。

その周囲には、かつて自分が集めた魔物たちをも凌駕する軍団が、

次々と王都へと突入していく様も見える。

 

今、自分にあの力があれば……闇術を使えれば、王都の人々に取って、

クラスメイトたちに取って、どれほどの助けになるだろうか?

との思いが頭の中を走る。

 

だが、それでも今の清水は思う、力を失った代償に、誰かを大切に思える心を、

人々の、仲間たちの無事を素直に願える心を得ることが出来たのならば。

きっと、それはそれでいいことなのではないのかと。

 

(もう俺は……持ってない物を妬んだりはしない、だから)

 

だから清水は炎の王都へと力いっぱい叫ぶ。

 

「南雲ぉ!蒼野!お前らいるんだろ!最強を目指すって約束してくれたろ!

だからあんな奴ら全員、俺の代わりにブッ飛ばしちまえ!」

 

 

そして神山上空では。

 

「まぁそうなるわな」

 

表情こそ焦りを浮かべてはいるが、どこか達観した口調で自身に群がり始めた

堕天司へと、ハジメはトリガーを淡々と引いていく。

シュラーゲンを群れに向かい斉射した以上、こうなるのは仕方がない。

それでも、こちらに引きつけることが出来た数はそう多くはないように思える……。

 

ハジメの視線の先には炎上する王都へと降下していく堕天司たちの姿が

はっきりと捉えられていた。

 

「それにしても空爆とはね」

 

あちこちで炎上を続ける都は、まるで戦争映画のような光景だった、

確かにロクな防火設備も、防火建造も為されていないであろう、

この世界に於いては、これ以上はなく有効な手段に違いない。

 

しかし、これは少なくとも自分が調べたところの、これまでの魔人族の戦とは、

やはり大きく異なるように思えてならなかった。

そう、これはまるで……。

 

日本人ならば必ず教えられ、知っておかねばならぬ、

あの歴史の中に刻まれた光景そのもののように、ハジメには思えた。

 

魔人族側も自分たち異世界人を召喚したのだろうか?

檜山か?いや、違う、これほどの有効な作戦を、魔人族側に教えることが出来たならば、

あんなにあっさりと切り捨てられることは、無かった筈だ。

 

「それとも……まさか」

 

その時、自分の背後、そう神殿の方角から激しい閃光が走った。

 

 

そして王都上空では、ユエとフリード自ら率いる魔人族空戦部隊が火花を散らしていた。

 

「お前たちは我々の戦いに加担するつもりはない、そう聞いたはずだが」

「……んっ、だからといって無辜の人々を巻き込むというのならば容赦しない」

 

(……ハジメは、私たちを悲しませないと約束してくれた)

 

ならば、自分たちもハジメを悲しませるようなことはしない。

関係ないの一言で、無力な人々が目の前で焼かれて行くのをむざむざ見過ごせば、

きっとハジメは怒り、悲しむだろうとの思いがユエにはある。

そう、ハジメだけではなく、ユエもまたジータの影響により変わっていったのかもしれない。

 

「ほざけ、異教徒どもに一切の慈悲は無用だ」

 

一方のフリードは魔人族であることに誇りを持っており、例に漏れず、他種族を下に見ている。

魔人族が崇める神に対する敬虔な信者でもあり、価値観の多様性を認めないタイプの男だ。

 

しかし、そう口ではいいつつも、やはり思う所はあるようにユエには見えた。

王都の火勢が弱まったとみるや、自ら押し出して来たのがその証拠だ。

魔人族であることと同じく、一軍の将、そして戦士としての誇りもまた高いのだろう。

こういうタイプは例外なく、自身の手で決着を着けたがるのだ。

 

「ところであのもう一人の金髪の……ジータとかいう娘はどうした?」

「お前には関係ない、なんでそんなことを聞く?」

 

互いに魔法の応酬を続けながら、問答もまた続く。

 

「ふ、中々見どころのある娘と見た、人間族に加担せぬというなら、

我が魔人族の将として迎え入れたいと思ってな、ただしあの白髪の男には、

死んでもらうことになりそうだが」

「お前にハジメは倒せない!」

「ほざけ!」

 

同時に発動したユエの風刃と、フリードの光弾が空中で衝突するが、

やはりユエの風刃の方が威力が高いのか、相殺されきれなかった余波が、

フリードの身体を掠め、さらに追撃の風刃が迫るが、

それを紙一重で避けていくフリード、やはり腐っても大迷宮攻略者である。

 

「無詠唱か……同じ術師として羨ましいぞ」

「……ふっ、けど、あれを全部避けられるとは思わなかった」

 

素直に互いの実力を称え合うフリードとユエ、

そこには憎しみは無く、ただ倒すか倒されるかの純粋な敵としての関係があるだけだ。

ただし、ユエとしては例えばハジメが傷ついた分お前は苦しんで死ねとでも、

目の前の男に言うべきではないかとの思いはある。

 

しかし白竜の光線を受け、傷つくどころか、

あのお尻丸出しの、いわゆる貧ぼっ〇ゃまスタイルとなった、

ハジメの姿を思い出すと、憤りよりも、むしろ笑いが込み上げて来るのだから仕方がない。

 

そんなユエの表情を見て、バカにするなよとでも思ったか、

フリードは自身の上空を旋回する数十匹もの灰竜へと、攻撃指示を下す。

そんな折だった、横殴りの雨に混じって、堕天司の大群が王都へ襲い掛かったのは。

 

「キャハハハ」

 

醜い鉄仮面の下から耳障りな笑いを響かせ、手斧を振り回し、

自分の範囲内全ての存在に無差別攻撃を仕掛ける堕天司―――エグリゴリ。

そいつらは、まずはユエめがけブレスを斉射しようとしていた灰竜たちへと襲い掛かる。

横合いからの奇襲を受け、算を乱した灰竜たちは次々と喉を切り裂かれ、

一気に二十体近くが地へと落ちてゆく。

 

「くっ……これは一体」

 

それでも流石にフリードは狼狽しつつも白竜を操り、

かつ自身の魔法でエグリゴリどもを返り討ちにしてゆき。

ユエもまた雷の竜を召び出し、一気に群れもろとも焼き尽くしていく。

 

しかし続々とエグリゴリたちは王都の上空へ集結しつつある、

まるで死の臭いを嗅ぎつけたかのように。

 

「フリード様!ご無事……ぐわああああ!」

「な……何だこいつらわぁ~」

 

突然の戦況の変化に対処できず、次々とエグリゴリの手に掛かる部下たちの叫びが、

フリードの耳へと届く。

 

そして初撃こそ成功したが、本来接近戦が苦手なユエにとっても、

高速かつ集団で斬りかかるエグリゴリは、あまり相手にはしたくはない類の敵だ、

それに、自分の足下に広がる王都の炎は勢いこそ失ったが、

それでもじわじわと延焼を続けている。

 

仕方ない、聞き入れてくれるかは疑問だが……。

 

「……ここは一時休戦」

「何だと?」

 

意外とも言えるユエの申し出に、怪訝な表情を浮かべるフリード。

そこにさらに彼の部下のものであろう悲鳴が響く。

 

「……いやしくも一軍の将が同胞を見捨てるの?」

 

魔人族は人間族以上に、同胞意識が強いと聞く。

死の淵に於いても、誇らしげにフリードのことを語っていた女魔人族のことを思い出すユエ。

それに、身分なども関係しているのかもしれないが、目の前のこの男は、

少なくとも将として、魔人族の間では多大な尊敬を得ている様だ。

何より将の、戦士の誇りを持つ者ならば、おそらく選りすぐりであろう、

配下たちの想定外の、無駄死にと言ってもいいこの状況は、

決して受け入れられる物ではないだろう。

 

「……私にとっても奴らは敵、それでもどうしても、というなら日を改めて、

全力で挑むがいい、私たちも全力で相手してやる、そしてその時こそ殺してやる」

 

こうしている間にもエグリゴリの斧がユエの服を掠め、肌にかすり傷を与えていく。

その中には、内心冷や汗を覚える物もあったが、それでもユエは動じる素振りを見せない。

ここで弱みを見せてしまえば、全ては水泡だ。

 

その一方、普段ならば一笑に付すであろう、ユエのその申し出を受け逡巡するフリード。

その目の前でまた一人、自身がこの乾坤一擲の聖戦、義挙に抜擢した戦士が、

地に落ちてゆく姿が目に入る。

そして何より目の前の少女も容易ならざる強敵である。

そこでフリードはやや奇妙なことに気が付く、目の前の……ユエのその身の傷が、

傷を受けた端から自動的に治癒していく様子が…いや、この状況では些末事だ。

 

「……くっ!」

 

フリードは苦渋の表情を浮かべながら大声で何やら指示を飛ばすと、

伝令であろう鳥のような魔物が方々へ飛び、そして生き残りの灰竜たちが陣形を整えだす。

 

「……受けるということ?」

「……か、勘違いするなっ、いいか!これはあくまでもお前個人への休戦であり、

私個人の判断だ!魔人族全体の判断ではないっ!人間族への攻撃も継続するっ!

我らが放った魔物どもや、都の炎はお前らで何とかするのだな!出来るものならな!」

 

あくまでも自身の判断、全体での戦闘自体は継続するということか。

 

「それでいい、ただし向かってくる者は殺す、お前もせいぜい死なないようにしろ」

 

妥協も止む無しである、今の状況で堕天司とフリード、

双方を相手にするのは、ユエにとっても避けたかったのだから。

 

ともかく、それだけを口にし、ユエもまた踵を返す、

これはフリードの行うであろう攻撃に巻き込まれないためと同時に、

自身の攻撃にもフリードを巻き込まないという、一種の紳士協定のようなものだ。

 

そして十二分に距離を取ったとユエが判断したと同時に、

自身へと追いすがるエグリゴリの群れへと、氷雪の竜巻が吹き荒れるのであった。

 

 

「ちくしょう……」

 

一方、城下で雨に打たれ、炎と魔物に追われながら逃げ惑うのは檜山大介だ。

 

「聞いてねぇぞ」

 

魔人族が大挙して王都に襲撃を仕掛けることは聞いていたし、

そして自分がその先鋒、案内役を恵里と共に務めるという手筈であったことも、

 

失態を重ね続け、魔人族からも見限られた自分にとって、

これが最後のチャンスだったことは理解できていた。

ここで何らかの結果を出さねば、神はもう自分を生かしておくことはないだろうと。

だが事態は檜山の、彼の想定を超えていた、

恵里に言われた通り、王都の裏路地に潜んでいたらこの始末だ。

 

(あのアマァ、俺を最初から……)

 

魔人族どころか、自分がその神にすら完全に見限られたことは明白だった。

今の彼は、目の前に現れた魔物と迫る炎からただ逃げ惑うだけの、

無力な存在だった。

ここでまたしても全身を襲う悪寒と疼痛に顔をしかめ、檜山はうずくまる。

それでもその目は、生への執着を、そしてハジメたちへの憎悪を失ってはいない。

 

(ここまで……ここまでしたんだからよ)

 

檜山は、さらに禍々しい姿へと変化した黒鎧に手をやる。

この姿、きっと上から見たらゴキブリそのものなのだろうと、我ながら思わずにはいられない。

自嘲気味に独り言ちる檜山、だがそれでも。

 

「まだ死ねねぇ……このまま」

 

自分には何も届かないのか?何の痕も残すことができないまま、

ゴミクズのように、ゴキブリのように扱われたまま、

誰からも顧みられることなく、このまま死ぬのか、御免である。

それは自分の求める死に様ではない、そんな惨めで無残な死をくれてやるのは、

ただ一人、南雲ハジメだけでいい。

 

「どこだ……どこにいるんだ、南雲ォ」

 

己の肉体の不調に耐えながら、炎の中で、ひたすら宿敵の姿を追い求める檜山、

その時であった。

 

「やあっ!ですぅ」

 

可愛らしい気合と共に、魔物たちを薙ぎ払いながら突き進んで行く、

シアの後姿を視界に捉えたのは。

 

(あれはあの時の、ウサギ女……)

 

檜山は思い出す、それはハジメの関係者であり仲間だと、

ならば自分が殺すべき、ハジメの心に痕を残せるに相応しい相手だと。

彼にもっと余裕があれば、その生来の狡猾さを生かし、

十二分に致命の傷を与えられるチャンスを待ったかもしれない、しかし。

もう彼にそんな余裕は、猶予など残っていなかった。

 

それはまさしく通り魔の、いわば誰でもいいからという思考に酷似していた。

 

「南雲ォ、お前が悪いんだからな、大事な大事なウサギから目を離したお前がよ」

 

檜山は繋げたはいいがイマイチ扱い勝手が悪い左手ではなく、

右手に拾った剣を握る、黒鎧の背中の装甲が開き、

そこから透明の翅が振動しながら広がってゆく、その様はまさしく蟲、

ゴキブリそのものだった。

 

そしてシアがおそらく未来視で察知したのだろう、

空中から自身へとやや奇襲めいたタイミングで飛び掛かった魔物を迎撃するため、

ドリュッケンを振りかざした時だった、その無防備な背中へと、

彼女にとって完全に想定外の位置、速度から檜山の凶刃が迫ったのは。

 

それでも辛くも察知したか、シアが振り向くが、遅い。

勝利を確信したような、歪んだ檜山の笑顔と白刃がぐんぐんと迫る、

その時何かが横合からシアを庇うかのように立ちはだかり、

檜山の凶刃をシアに代わり受け止める。

 

「か……おりっ、さん」

 

シアのすぐ横の塀の陰に、たまたま檜山の視界からは隠れるように立っていた香織は、

障壁を展開するのが間に合わない、よしんば展開しても防げない可能性を察知し

自らの身体で、その刃を受け止めることを選択したのであった。

 

あまりのことに言葉も出ないシア。

一方で思わぬ"収穫"に狂喜の表情を見せる檜山。

 

「ひひっ、やっと、やっと手に入った……やっぱり、南雲より俺の方がいいよな?

そうだよな? なぁ……香織ぃ」

 

そんな獣の呟きが耳に届く中、シアは驚きの中にも違和感を覚えていた。

何故ならば、背後から抱きしめられるようにその刃を、

背中から胸へと突き立てられているにも関わらず、

香織が平然と笑みを浮かべているのを。

 

そんなことも露知らずにさらに檜山は得意げに叫ぶ、ついに一矢報いてやれたと。

 

「南雲ォ、奪ってやったぞぉ、テメェの大切な物をよぉ」

 

 

「て、思うよね♪」

 

その、ありえない声に檜山の表情がさらに歪む、喜びから驚愕に。

そこで檜山はようやく気が付く、香織へと突き入れた刃のその手ごたえが、

まるであらかじめ鞘に収まったかのように、スカスカだということ、

そして何より、香織の身体から血が一滴も流れ出ていないということを。

 

檜山に串刺しにされたまま、その檜山へと笑顔で振り向く香織、

明らかに致命の一撃を受けていながらも、まるで何事もなかったかのように。

 

「な……なんで」

「どうしてですかぁ!」

 

ほぼ同時に疑問の声をあげる檜山とシア、無理もない話だ。

 

「えっとねぇ……内緒かな」

 

種明かしはこうだ、あの日、シャレムの一撃を浴び、焼け焦げ白く煙りながら、

波間に沈みゆくクリオネの、後でシーマンに聞いた話だと悪食と言うらしい……の、

その濁った肉を、香織は誰にも見られないよう、咄嗟にポケットの中に忍ばせたのだ。

 

魔物の肉は決して食べるなと、ジータからキツく言いわたされていたが、

それでも香織は躊躇することなく、悪食の肉を口にした。

もちろん皆が寝静まった夜にこっそりとだが、

 

そうすることで愛しい人と、同じ存在になれるのなら、

僅かでも近くに行くことが出来るのなら……。

また肉体が、そして心が造り変えられる歓びを味わえるのなら。

 

流石にシーマンいわく、太古の伝説の魔物だけあって、その効果は劇的だった。

あらゆるステータスがさらに跳ね上がり、かつ光魔法のみならず、

水魔法に関しても適性を得ることができ、そして何よりも固有魔法が極めて強力だった。

 

その固有魔法は、肉体変形[+液状化]、

自身の肉体に魔力を行使することで、その形状を変化させる能力だ。

これにより香織は、檜山の刃を受けた際、

骨や筋肉、神経、臓器などを瞬間的に移動させ、本来ならば

致命の一撃である筈の、檜山の一撃を無傷でやり過ごしたのであった。

 

もっとも肉体の変形・操作には相応の魔力が必要であり、

今の香織の魔力を以てしても、そうそう多用は出来ず、

特に液状化に関して言えば、その効果はわずか数秒間、

さらに言うならば、服まで液状になってくれる筈もなく、

解除し、固体に戻ると常に裸になってしまうという欠点があった。

 

「でもでもホラ!こういうことだって出来るんだよ!」

 

香織の豊かな髪が一瞬広がったかと思うと、意思を持ったように動き出し、

檜山の肉体を拘束し宙吊りにする、

その様はどこぞの海の家で働く、海からやって来た女の子のようだった。

 

檜山の全身が軋み、喉が痙攣し、その口が酸素を求めパクパクと喘ぎだす。

 

「ば……化け物……」

 

苦しい息の中、そう言い返すのがやっとだ。

しかし、その悪態を聞いて、むしろ我が意を得たかのように香織は嗤う。

 

「そうだよぉ、私ハジメくんと同じバケモノになったんだあ!

檜山くん!私の言ってほしかったこと、やっと言ってくれたね!」

「ヒィ!」

 

焦がれて焦がれ続けたその笑顔が、ようやく自分の方へと向いたのに、

肝心の檜山は引き攣った表情で、ガタガタと歯を鳴らしている。

香織の笑顔は、もはや彼にとっては恐怖の象徴以外何物でもなかった。

 

(魔女でも……いや化け物ですらねぇ、この女はもっと悍ましく

汚らわしい何かだ!)

 

しかし香織はそんな檜山の内面には一切忖度することもなく、

眼下に広がる魔物たちと、そして炎の海を、次いで檜山の顔を見る。

 

ハジメたちに苦難の道を歩ませた、いわば元凶といってもいい、

この男の顔を見ても、憎いとも何とも、もはや感じることはなかった。

そう、南雲ハジメだけではなく白崎香織にとっても、

檜山大介とは、やはりその程度の存在でしかなかったのだ。

 

「生き残れるか試してあげる、まぁ檜山くんには無理だろうけどね」

 

香織は檜山を絡み付けたまま、その髪をブンブンと振り回し、

そして遠心力をつけて思い切り振り飛ばした、魔物の群れの中へと。

 

群れの中に落ちながらも、檜山はあがく。

 

「俺は脇役じゃ……ねぇ、俺は、まだ何も……」

 

あらゆる全てに否定されてなお、いや否定されたからこそ、

彼のその目は、その執念は、まだ消えてはいなかった。

 

事が終わり、怯えた目を向けるシアへと、

香織は、やや身体をふらつかせつつも、何事もなかったかのような笑顔で振り向く、

ただし、己の唇にそっと人差し指を添えて……。

 

その笑顔は、私は南雲ハジメのためにここまで出来るのだという優越感に満ち、

そしてお前はどうなのだと、問いかけているようにも思えた。

だから否応なしにシアは頷くより他なかった、その身体を震わせ、目に涙を浮かべて。

 




色々なキャラが原作とは多かれ少なかれ変化していってるんだなと
今回書いていて思いました。
一見変わってなさそうだったユエもジータの影響で、
原作での好戦的で冷酷な部分が薄くなって、よりヒロインらしくなったのかな?と。

ところで悪食の肉を食べた二次作品って、自分の読んだ中ではないんですよね。
だから香織ちゃんに食べて貰いました、固有魔法は勝手に考えました。

で、その香織ちゃんですが、日常や学園を差し引いても、
ちょっと変え過ぎだったかも……。
ですが、それを差し引いてもハジメがユエがいながらどうしてシアに惹かれたのかって、
分かる気がするんですよね。

ハーレムメンバーの中で唯一、普通の感性に近い物を持った女の子って感じなので

次回は対〇忍ごっこの続き。
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