ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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例年にも増して大盤振る舞い、鬼滅コラボで入った人たちを逃がすまいとする、
強い意思を感じてなりませんね。

しかし巨大エビフライが食用油を撒き散らして放火して回るような世界観に、
果たして皆さん付いていけているのか、少々不安ではあります。


ハイパー檜山大介

「ちくしょう……まだだ……まだ、おわらねぇ…ぞ」

 

魔物たちに取り囲まれる中で、苦悶と、それ以上の執念に顔を顰める檜山、

その周囲には無数の魔物たちの骸が転がっている、必死の抵抗の証だ。

黒鎧に守られているとはいえど、その鎧の上から魔物たちは容赦なく牙を突き立てていく。

その異様な感触と、自分が生きながら喰われつつある事実に檜山は苦悶していた。

 

(結局……俺は最後まで)

 

散々喰い散らかされて、挙句ゴミクズの様になって終わるのか?

そもそもどうしてこんなことになった……俺は……ただ。

その脳裏に浮かぶ物はただ一つ、いや一人、

本来喰われるべき、餌になるべき男、南雲ハジメの顔だ。

 

(本当なら、お前がこうなってなきゃならねぇはずだろうが!)

 

それを安全な場所から笑いながら楽しむのが、自分の本来の立場だった筈、

しかし、事実はどうだ?

今や餌となりつつあるのは自分であり、奴は強さと女を手に入れて英雄気取りである。

 

(認めねぇ……てめぇを英雄になんぞさせねぇ)

 

大体何だ、谷底に落ちて強くなって戻って来ましただぁ?

そんなもんどうせ運が良かっただけだろうが、お前でもなれるなら、

俺でもなれていい筈だ、不公平じゃないか?

 

檜山は全身に牙を突き立てられながらも、まるでそれらを引き連れているかのように、

地を這いつつも、前へと進んでゆく。

 

「てめぇに……守れる物なんて何もねぇ……そんな物……俺が否定してやる」

 

檜山の執着、いやそれのみならず、この地に満ちる負の感情を受け、

むくむくと黒鎧が胎動を始める。

 

「全部壊してやる……お前のせいだ……お前のせいだ……」

 

急激な倦怠感に膝を衝く檜山、そこにさらなる魔物たちが折り重なっていく。

 

「……俺は死なねぇ、まだだ、まだ……」

 

殺したい奴が、己を地獄へと叩き込んだ全ての元凶が生きている限りは。

 

「な……ぐもっ……なぐ……南雲ォ!」

 

その瞬間黒鎧から伸びた根のような物が地面へと突き刺さり、檜山の身体に群がっていた

魔物たちが一瞬で塵と化す、いや塵となったのは魔物だけではない、

逃げ遅れ、家の中で息を潜めていた人々までもが塵となって行く。

 

それら周囲全ての魔力を、生命をも吸収し、

黒鎧に取り込まれ巨大化した檜山の姿はまさしく蟲そのものと言っても良かった。

だが、その悍ましき姿へと変じたにも関わらず、

檜山は街を見下ろし、まさに充実感に満ちた、いや酔った叫びを上げる。

 

「俺の執念が、欲望が叶ったんだぁ~~~~ついに南雲を……

今度こそブチ殺す力を手に入れたぁ~~~っ」

 

 

ユエが降らせた雨により、火勢は収まる兆しを見せつつあるが、

それでも未だ炎上を続ける王都、その上空をティオの背に乗り、

移動するカリオストロと愛子。

恐らく香織たちだろう、王都の縦横を移動していく癒しの光も上空から見て取れる。

 

「あっち側は任せてもいいな、なら……オレ様たちはこの辺りで」

 

ティオに命じ、地上に降り立つと。

 

「後で国に建て直して貰いな」

 

早速カリオストロは腕の一振りで、周囲の瓦礫を一気に薙ぎ倒し、

更地に戻すと、治療用の寝台や休息用の椅子を次々と作り出していく、

寝台も椅子も、即興で、かつ瓦礫や土で作ったとは思えぬほど柔らかく、

そして堅牢に出来ていた。

 

「オレ様はここで治療を開始する、オマエらは被災者をじゃんじゃん連れてこい、

大人がガキどもに負けちゃらんねぇんだよ、違うか?」

「はいっ!」

「承知したぞ」

 

ティオは愛子を伴い宙へと飛び立っては、人々を背中に満載して戻って来る、

さらに愛子は薬草の種を周囲に蒔くと、作農師の技能を使い、

周囲を災いから守るかの様に、緑の風景へと染めていく、

すくすくと伸びた薬草の花は見る者の心を、青々とした葉から漂う香りは、

傷つき疲れた身体に癒しと活力を与えていく、

まさにその姿は豊穣の女神そのものと言っても良かった。

 

そして何度目かの往復の時だった、ティオらが怪我人を背中から降ろし終わり、

お前らも少し休めとカリオストロが駆け寄ろうとした時だった。

 

彼らの間を分かつかのように、黒い光線が地を抉りながら走り、

一瞬魔法陣の様な物が展開したかと思うと、建物を崩しながら、

黒く禍々しき巨体が彼らの前に姿を現した。

 

全長十数メートルはあるだろうか?

そのフォルムは甲虫と甲殻類を組み合わせたような印象をまずは与えた、

肩や胸には目玉の様な紋様が刻まれており、うっすらと光を放っている、

背中にはチューブのような管が大量に生えており、その先端からも、

やはり光が漏れている。

そしてその頭部に、レリーフの様に嵌め込まれているのは……。

 

「檜山君……」

「生きておったか」

 

ほぼ、同時に驚きの声を漏らす愛子とティオ。

檜山の方も二人に気が付いたか、その口元が歪み、

空気が漏れるような、だらしない笑い声が周囲に響く。

 

「ふっ……へへ……へっへへへ、俺は初めて満たされたぁ~~

テメェらが小さく見えるってこたぁな、俺が強ええってことだぁ!」

 

叫びと共に、檜山の黒鎧の背中のチューブがマングローブの根のごとく地に突き立つと、

燃え残った街路樹が干からび、塵へとなって行く。

地脈からエネルギーを吸収しているのだ。

作農師である愛子は本能的に察知する、このままにしておくと王都の土は尽く枯れ果て、

実りなき不毛の荒野となってしまうということを。

 

それに、吸収しているエネルギーは地脈からのみではないようだ、

愛子が眩暈を覚えたかと思うと、その周囲で被災者たちが苦しみ始める。

チートである自分たちですら眩暈を起こすのである、この世界の住人たちに取っては……。

 

「ティオさんっ!」

「承知じゃ」

 

二人は、ほぼ同時に地に掌を当て魔力を込めていく。

カリオストロが避難所の周囲を囲うように描いた魔法陣、

それが愛子やティオの魔力を変換し、強力な防御結界を展開させ、

檜山の収奪を防ぐ。

 

だが、それでも被災者たちの苦しい息が二人の耳元に届く。

 

「聞いてるかぁ、お前らぁ~お前らがどうしてこんな目に会ってるかというとなあ」

 

エネルギーを充填し、黒鎧に刻まれた目玉がひと際大きく輝き。

 

「それは全部神様にケンカ売った南雲ハジメのせいだあ~~~ハハハハ」

 

そこから放たれた黒光が周囲を貫き、破壊していく。

 

「センセェ~~聞いてくださいよぉ、南雲が生まれたせいで皆迷惑してるんですよぉ~

こんな風にィ、ハハハハハ」

「チッ!あの時のツケが今になって返って来やがったか」

 

ならばいっそひと思いに……という考えが一瞬カリオストロの頭に浮かぶが。

そこで変わり果てた教え子の姿を見て、なおその目を逸らさずにいる愛子の姿が目に入る、

それは過酷な現実に何とか向き合おうとしている証、すなわち成長の証である。

 

「……愛子の前じゃまじぃな」

 

こんな愚物一人のために、その成長を妨げさせてはならない、

愛子もまたある意味では自分の弟子と言ってもいいのだから。

もっとも生け捕りにした所で待っている運命は……。

 

それに生け捕りにするにしても、それはそれで殺す以上に難題だ。

今の檜山はカリオストロが見た所、破裂寸前の風船の様な物である。

そう、言うなれば巨大な魔力爆弾である、

ここままだと周囲一帯は更地どころの話では無くなるだろう。

 

(まずは奴の身体の中の魔力を抜かねばならねぇな……それから打つ手は……)

 

カリオストロはもう一人のバカ弟子こと、自分の子孫である少女、

クラリスの姿を思い出す。

錬金術師としては異端とも言える、"破壊"に特化した力を持つ……。

 

「なぁ愛子」

 

カリオストロは愛子に尋ねる、やや改まった雰囲気を帯びて。

 

「あの姿を見て、あの声を聞いて、それでも檜山はお前の生徒だと今でも言えるか?」

「……私は教師です」

 

ズルい答えだなと、口にしてから愛子は思う。

 

「なら、教師として大人として檜山をどうするべきかも、ちゃんと分かってるよな?」

 

この問いには愛子は無言で頷くのみだ、しかしその顔には確かに覚悟と決意が備わっていた。

あの日、なぁなぁで終わらせてしまったことが、今日の禍根を招いた……ならば。

 

「……だったらお前が檜山を止めろ、オレ様にアイツをブッ殺されたくなけりゃな」

「私が……ですか」

 

この目の前の少女はこれまでも散々無理難題を吹っ掛けて来たが、

決して出来ないことを、不可能を押し付けるような真似はしなかった。

 

(私にも……やれることがあるということですか)

 

腰に結わえ付けたポーチが重みを増したような気がする、

その中には数々の穀物や薬草、そして旅路の中で品種改良した植物の種子が入っている。

 

「さて、状況を説明するぞ、今のアイツは際限なく周囲の魔力や生命力を取り込んで行ってる、

テメェの許容量もロクに知らねぇままにな」

「風船みたいなものかの?」

「いい例えだ、このままでは破裂して周囲は消滅、もちろんオレ様たちもろとも」

 

バン!と何かが爆発するような仕草を見せるカリオストロ。

 

「そのためには魔力を抜いてやらねばならねぇ、でないとオレ様が安全に作業できねぇからな

で、その魔力を抜くタネはだな……」

「あ……」

 

何かに気が付いたような素振りを愛子は見せる。

 

「そういうこった、じゃあよろしく頼むねっ、愛ちゃん先生っ♪」

 

ポンポンと愛子の腰のポーチを叩くと、カリオストロは未だ収奪を続ける檜山へと向き直る。

 

「やほ~~っ、久しぶりっ!大介お兄ちゃんっ」

「ガキィ~~テメェまで居てくれるたぁ、都合がいいぜぇ!今日こそはってヤツだぁ!」

 

歯茎を剥き出しにして凄む檜山、いつぞやの怯えた顔しかほぼ記憶にないカリオストロには、

その表情がやけに新鮮に思えた。

 

「全くハジメといい、テメェといい変わり果てるのが好きな奴らが多いぜ、ここは」

 

ゆるゆるといなすような口調のカリオストロ、もちろん愛子たちの準備が整うまでの

時間稼ぎも兼ねている。

 

(ま、そうそうゆっくりもしてられねぇが)

 

「俺の執念の……憎しみの証だぜぇ、どうだぁ!」

 

叫びと共にまた黒光が放たれる、もっとも狙いなど付けていないに等しいので、

カリオストロに取っては脅威はまるで感じない。

ただし自身の背後の被災者たちには気を配ってはいたが。

 

「ちっちゃいね、お兄ちゃんは」

 

ニコリと上目遣いでカリオストロは、数多くの人々を手玉に取って来た極上の笑顔を見せる。

 

「ちっせぇだあ?」

「ああ、高々一個人への執着、小せぇ、実に小せぇ、紙屑以下だ」

 

極上の笑顔が蔑みの邪笑へと変わる。

 

「どうせなら三千世界全ての森羅万象を掌握する、それくらいの欲がなけりゃな……

このオレ様には到底届かないぜ」

「んだとぉ、ガァキィィィィィ!」

 

相手のボキャブラリーの乏しさに失笑しつつ、カリオストロは続ける。

 

「ハジメを、バカ舎弟をブチ殺したけりゃまずはオレ様を越えて行くんだな」

「上等だコラァ!」

 

黒鎧の背中のチューブが槍状に変化したかと思うと、鞭のようにしなりながら

カリオストロめがけ打ち下ろされる。

 

「こわぁっ」

 

ミニスカートを揺らし、片足をひょいと上げて悠々と槍の雨を避けていくカリオストロ。

言葉とは裏腹に余裕綽綽なのは言うまでもなく、檜山の額に青筋が走る。

 

「飛んでけ!」

 

カリオストロは岩塊を錬成すると、叫びと共に檜山へと撃ち出す、

無論、これは牽制目的でしかないのだが、が、檜山はそれを易々と避ける。

 

「チッ!ご褒美だ!」

 

カリオストロが足元を踏むと、檜山の足下から槍が飛び出すが、

それも檜山は耳障りな笑い声を立てながら回避していく。

 

よく見ると檜山の身体がブレていることに、カリオストロは気が付く。

そう、空間魔法による小刻みな移動を繰り返すことにより、

いわば分身めいた挙動を檜山は可能にしていた。

 

「へへへ……この身体になってから呪文いらなくなっちまった、

だからよお、こんなことも出来るぜ!」

 

檜山はカリオストロを取り囲むように、瞬間移動を繰り返しながら魔法を放っていく。

それはあの日、ハジメを奈落へと落とした因縁の火球である。

 

「舎弟とやらと同じ魔法で地獄に行けや、可哀想になぁ、南雲と関わったばかりによぉ~~」

 

もちろんそれは最終形態となった黒鎧によるいわばゴリ押しであり、

魔法を行使する度に全身に激痛が走るのだが、その痛みよりも、

久方ぶりの蹂躙の快感に檜山は酔いしれていた、

やはり高みから弱者をいたぶるのは最高だ、これが南雲であれば尚の事いい。

 

『どうする?私ならば容易いが』

『よせ……迂闊に手を出せばどうなるか分からん』

 

得意げな檜山の顔に辟易しつつシルヴァからの念話に応じるカリオストロ、

ちなみにそのスカートには焦げ一つ付いてない。

 

『ならば早くするのだな、シャレムとユエが焦れている』

『そいつぁコトだな』

 

あの二人なら愛子の心情などお構いなしに、

檜山をとっとと殺すことは容易に想像出来た、

愛子のことがなければ自分もそうする所ではあるのだが。

 

「舎弟思いの師匠に感謝しろよな」

 

ついついグチを漏らすカリオストロ、どいつもこいつも世話を焼かせやがる、

だからこそ面白れぇと、内心で思いつつ。

 




これから先、愛ちゃんには酷な展開になるかもしれません。
そしてなんだかんだと言いつつも面倒見のいいカリおっさん。
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