『オリ主、ギルドやめるってよ』   作:abc

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コキュートスさんの場合

「見テイマスカ……我ガ主ヨ……」

 

 強い雨に打たれながら、一人の巨大な蟲は空に向けてぼそりと呟く。彼の名はアインズ・ウール・ゴウン第五階層守護者コキュートス。これから行われる戦いにむけて、コキュートスの手に握られているハルバードと刀に力が入る。

 

「化け物が……全員で連携して叩く!行くぞ!」

 

 コキュートスと向かい合うようにして剣を構えている数人の集団は、激しい雨の中であっても決して目標を見誤らない様にコキュートスに狙いをつける。彼らは王国でも名のある冒険者である。冒険者としてのランクも高く、それなりの功績を残していきた一団であった。

 

 そして今回、ギルドで受けた以来の最中に突如この巨大な蟲の襲撃を受けたのである。最初は話が通じるために意思疎通を図ろうとしていた冒険者たちだったが、どうやら狙いは完全に自分たちの命であることを知り止む無く戦闘に入ることになった。

 

 先陣を切った男は決して油断など微塵もしていなかった。武技を重ね掛けし、低位の魔法による補助も付け、最善最短のルートで仕留めに行っていた。

 

 だがその一撃はコキュートスというあまりにも強大な存在の前では意味をなさなかったのである。

 

「遅イ……実ニ遅イ……コノ程度ノ戦イデハ我ガ主ハ満タサレナイゾ」

 

「ガッ!はぁ!………………あぁ……」

 

 切り込んだ冒険者の一撃はコキュートスの肉体を正確に捉えていた。しかし、攻撃が当たったところで力の差が歴然であるため、もちろんコキュートスには少しもダメージなど入らない。

 

 そしてそのまま切り込んだ冒険者はハルバードにより輪切りになる。

 

 その瞬間、残りの冒険者数人は全員理解をする。勝てない、戦えば殺されるというシンプルかつ単純な自然の原理を理解する。

 

 まず初めに動いたのが盗賊の女性であった。戦って勝てないのであれば逃げれば良い、あれだけの巨体であれば機動力でなら負けることはないだろう。そうたかをくくっていた。

 

「あ……れ……?」

 

 足を動かそうとした瞬間違和感に気付く。

 足がなかったからだ。コキュートスは彼女が逃げるよりも早く彼女を輪切りにした。そしてそのまま盗賊は地面に倒れ伏せ絶命する。

 

「逃ガシハシナイ……戦イデ死ヌカ……逃ゲテ死ヌカノドチラカダ」

 

「!!……うぉおおおおお」

 

 残っていた三人の剣士は全速力でコキュートスに向かっていく。彼らは勝てるとも思っていない、生き残れるとも思っていない、ただひたすらに後悔をしないために戦いを挑んでいるのだ。

 

 

 そして三つの死体の山が出来上がる。

 

 

 

 残っているのは回復役であろう女性一人であった。逃げることも戦うことも選択できない彼女は絶望してただ立ち尽くすことしかできない。

 

「安心シロ、痛ミハナイ」

 

「!…………」

 

 一撃で首を刎ねる。コキュートスのやっていることは武勲を立てることであって虐殺ではない。全ては今は消えた主に捧げる戦いなのであると。

 

 

 

 ある日、至高の四十一人の一人である彼が消えた。消える間際に彼は

 

『どこに行くかは言えないかな。それとやめる理由だけどアインズさんだけに有る訳じゃないから……まあ、各々で考えてよ。それじゃあ、さようなら』

 

 と仰ったらしい。

 

 コキュートスも最初は彼という存在を探そうとしていたが如何せん戦闘向きのビルドであるためにどうも上手く探せなかった。仕方なく捜索は他の守護者達に任せて自分はナザリックでひたすら剣を振るっていた。

 

 だがいくら待てども手掛かりは何一つ見つかることはなかった。

 

 見つからないことにおかしくなっていく仲間たちに感化され、コキュートスも少しずつ自分独自の考えを持ち始める。

 

 

 

「武勲ガ足ラヌノデハナイカ?」

 

 

 

 索敵も智謀も持ち合わせていない自分が出来ることそれは戦うこと。消えた彼はリザードマンとの戦いの時や、自らと手合わせしてくれた時などは、コキュートスの強さを必ず褒めていた。戦闘職ではない彼は力を持つコキュートスが羨ましいと言っていた。

 

 ならば自分が出来ることは一つ。

 戦いに、戦いを重ね、きっと我らを見て下さっている彼に武勲を届けること。

 

 それからコキュートスは強者という強者を狩ることにした。ただ純粋に彼という存在に再び出会うために。そして自らの強さを象徴するように。

 

 冒険者の死体から勝利の証を剥ぎ取りながら彼の言葉を再び思い返す。

 

 

 

 

 

 

『俺はコキュートスが羨ましいよ』

 

「羨マシイ、トハ一体ドノヨウナ……」

 

『単純にその力がってことさ。俺は完全な戦闘職じゃないから何をするにしても慎重にならざる得ない。それが窮屈で仕方ないんだ』

 

「ナルホド、ソウ言ウコトデスカ」

 

 そう言いながら持っていた剣を腰にしまう。

 

 今日は闘技場を借りて、コキュートスと彼は戦闘訓練をしていた。共に100レベルではあるものの、レベル外の技術、戦略、戦術、戦闘技術は身につけることが出来るため、時折こうして訓練に励んでいるのである。

 

 そして今日は戦闘技術の向上を目的として剣を合わせていた。もちろん、コキュートスの方が一枚上手であるために実際は彼自身の剣の扱い方の訓練であったのだが。今は訓練の後のミーティングをしている最中である。

 

『……この世界は俺が知っている世界とは違って危険で、危ない所だ。コキュートス、お前の強さで皆を守ってやってほしい。それが俺の願いだ』

 

「ハッ!必ズヤ、ナザリックト貴方様ヲ守リ抜イテミセマス」

 

 コキュートスはこの時心に誓う。

 誰よりも強くなること、誰にも負けないこと、そして彼の希望を叶えることを。

 

『……これから先何があってもアインズさんや皆をよろしくな』

 

 そう言って少しだけ悲しそうな眼をしながら彼。コキュートスは言葉の真意をすべて推し量ることは出来なかった。

 

「アインズ様ヤ僕ダケデハゴザイマセン……必ズヤ貴方様モオ守リ致シマス」

 

『……そっか……分かった。期待してるよ。じゃあ、また後でな』

 

 その言葉に彼は何か言い淀んでいた。本心を答えるつもりもないのか、闘技場を去りながら後ろ姿で適当な返事を打つ。コキュートスは自分がまだ期待されるだけの功績を挙げていないためにあのような態度を取ったのだと思った。

 

 そして、それから少しして彼は消えた。

 

 

 

 

 

 

 冒険者を見事打ち倒し、今日の武勲を至高の御方に捧げたコキュートスは、自身が守護する第五階層にスクロールを使用し転移する。その瞬間、身体中に付いていた雨粒は一瞬にして氷の粒に変わる。

 

 そして。真っ先に第五階層にあるとある一室に向かう。コキュートスがその扉を開けるとそこには大量の武器が安置されていた。一部の武器には赤い血が凍り付いている姿が見られる。

 

 コキュートスは持っていた武器と冒険者プレートをそこに飾るように並べる。

 

 冒険者プレートもかなりの数があり、等級も様々である。

 

 これらはすべて偉大なる至高の御方への捧げものであり。自らの武勲を証明するものである。そして彼という存在がまだ表れていないということは、この程度ではまだ足りないということなのだろう。

 

 

 

 そんな時、同階層に存在する他の僕から連絡が入る。それは冒険者組合やワーカーなどに潜入している者からの情報で、今度は帝国のワーカーが仕事で町を出るらしいということであった。

 

 次に我が主に捧げる相手が決まったコキュートスは再び武器を取り、部屋を出る。戦う準備は出来ている。勝つための執念も、負けて殺される覚悟も持っている。それは武人としての心構えであった

 

「全テハ我ガ主ノ為ニ……」

 

 血に濡れた武人は今日も武勲を求めて彷徨い続ける。

 

 

 

 消えた主人に名が轟くよう、一方的な殺戮が始まる。

 

 

 

どちらか迷っています

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