『オリ主、ギルドやめるってよ』 作:abc
「何言ってんのマーレ!至高の御方は必ず帰ってくるよ!」
「……無理だよぉ。もう帰ってこない……絶対に……」
「この!至高の御方はあたし達を捨ててなんかいない!」
「!!……うぅ……」
そう言ってアインズ・ウール・ゴウン第六階層守護者のアウラ・ベラ・フィオーラは、同じく第六階層守護者で弟のマーレ・ベロ・フィオーレの頬を思いっきり叩く。現在二人は自身達が守護する第六階層において消えた至高の御方を探す作戦を立てているところであった。
今現在まともに消えた至高の御方を探しているのは、実質アウラとマーレの二人だけであった。他の者はそれぞれが探すことを諦めて別の方法を取っているのが現状である。
そして今回の捜索作戦を立てている最中にマーレが突如として呟いたのだ。
「もう、僕たちはきっと捨てられたんだよ……」
その言葉にアウラの中の何かが切れた。それからは冒頭の会話をした後にマレーの頬を叩いて現在の状況に至る。マーレは姉に叩かれたという精神的な痛みと、肉体的な痛みの二つに涙を流している。
一方のアウラもつい手を出してしまったことに、深い罪悪感を感じていた。本来であれば姉として弟であるマーレを励ます側である自分が、あろうことか一番やってはいけない暴力の方法を取ってしまう。それが情けなかった。
「ご、ごめん、マーレ……つい、カッとなっちゃって」
「……ぼ、僕の方こそごめんなさい……」
二人はともに自分が悪いと思っている。それはお互いがお互いの心の状態を察しているからであった。
二人は彼が消えてから今日まで一日も休むことなく探し続けている。例え他の者が諦めても。それでも二人だけは決して諦めることはなかった。
「さあ、探しに行こうマーレ」
「う、うん」
至高の四十一人の一人が消えた。消える間際に彼は――
『どこに行くかは言えないかな。それとやめる理由だけどアインズさんだけに有る訳じゃないから……まあ、各々で考えてよ。それじゃあ、さようなら』
と言ったらしい。
アウラとマーレはた高い索敵能力を生かし彼という存在を必死に探したが、結局これまでで手掛かりという手掛かりは何一つ見つかることはなかった。
二人は必死に考える。どうしていなくなったのかを。
そして一つの答えにたどり着く。
「消えた彼はナザリックという存在が嫌いになったのではないか?」
それが今二人が考えている結果である。いくら自分たちが彼を至高の御方として崇めようともその本人が自分達のことを嫌悪していたのでは意味がない。
二人はそれでも探し続ける。嫌われてると思っていても会いたいのだ
いつかまた出会えると信じて今日も探す。
二人が本日の捜索を終えてナザリックに帰ってくる。収穫はない。今日も昨日も。それでも自分たちのできることを精一杯やっているつもりである。
自分たちの階層に戻り、しばしの休憩を取る。
アウラとマーレは並ぶように座りながら空を見上げる。消えた至高の彼もこうして星空を眺めることが好きであったからだ。
「お、お姉ちゃん……もう、やめない?」
「え?」
「……探すのもうやめない?」
アウラは今朝と同じように怒りを露にしようとしていたが、マーレの顔を見て思わず何も言えなくなる。泣いていたのだ。
「だ、だけどあたし達が探すのをやめたらもうナザリックは……」
「……た、探索を完全に打ち切ったことになるね。だけど……至高の御方にとっては嫌われている僕たちに探されることなんて迷惑なんじゃないかな……」
「……そんなこと」
ないとは言い切れない。
もしかしたら自分たちという僕の存在が嫌になってナザリックを抜け出て消えたのでは?それが事実なら今自分たちがやっていることは本当に正しいのだろうか?そして何より実際に再会して拒絶されるようなことがあれば、もう立ち直ることなどできない。
「……マーレの言う通りかもしれない。あたしたちが探すこと自体が至高の御方の意志に反していたのかも」
見つからないものを探し続けることは辛いことである。マーレと一緒に探し続けているアウラにはその気持ちが痛いほど分かった。
「アインズ様は違うと仰っていたけど僕たちは……本当は……」
「……マーレそれ以上は」
「す、捨てられたんだと、お、お、思うんだ……」
今まで必死に考えないようにしていたことを突きつけられる。自分たちは捨てられた。今まではアインズや消えた彼の言葉でそれが事実ではないと思っていた。だが今は違う。彼が意思を持って消えたことで自分達が捨てられたということがより現実味を帯びてしまったのだ。
「うぅ……うぅ……うあああああああ」
アウラは泣きながら思い返す。彼が消えていく少し前のことを。
◆
第六階層には満天の星空が輝いている。それはかつて至高の四十一人のが作り上げた架空の星空であったが、その輝くは本物以上に美しく見えた。そんな星空の下で一人空を見上げる異形種がいた。
『いつ来てもここの星空は素晴らしいな……見ていて飽きないよ』
そう言いながら、草むらに寝転がるのは今は消えた至高の彼である。仕事を終わらせた彼はアウラとマーレの下に遊びに来ていたのであった。彼は、守護者の中では一番アウラとマーレを可愛がっていた。まるで自分の本当の弟と妹のように。
「ゆっくりしていってください!」
「あ、あの、お茶が入りました……どうぞ」
上半身を起こしマーレからお茶を受け取る彼。マーレは、アウラと自分の分も用意して三人でお茶を飲みながら一息入れる。この階層には土屋木々の匂いがあふれていた。それを感じるのが好きだと彼が良く言っていたことをマーレは思い出す。
『ありがとう、美味しいよ……ここは何でもあるな。食べ物だって、生き物だって、星だって、自然だって……本当に沢山ある』
「そう、ですね?」
「は、はい」
『本当に良いところだよな………本当にさ……』
アウラとマーレはイマイチ彼が何を言いたがっているのかを理解することは出来なかった。彼も別に理解させるつもりはないのか自分の思いを自分に言い聞かせるように、更に話を続ける。
『出来ればもっと俺も異形種に染まっていれば悩まずに済んだのかもな。アインズさんやアルベド、デミウルゴスやシャルティアみたいになることができたらもっと楽に生きれただろうに…………ごめん、変なこと言っちゃって』
「い、いえ、構いませんよ」
アウラは慌てて相槌を打つが話の意図は何も読めてはこない。彼は異形種であるのに更に異形種に染まりたいと言っている。アウラとマーレにはよくは分からなかった。
『変わったのは……世界か、俺か…………』
「あの、何か悩んでいることでもあるのですか?」
『うん、ちょっとね。でも、アウラやマーレに話すことじゃないから。大丈夫、自分で解決するよ』
話はそれで切られた。結局それ以降は普通の会話に終わったのだ。
それから少しして彼は消えた
◆
あの時彼はもしかしたら自分たちに何かを伝えようとしていたのではないかとアウラは思った。だが、もう全ては過去の出来事である。今から言葉の意味を必死に考えたところで答えにたどり着くことは永久にない。彼という存在が消え去ってしまったからだ。
「ねえ、お姉ちゃん。これからどうする?」
「……どうするって何がよ」
「ほ、他の皆はそれぞれで至高の御方と会えるよう色んな方法を試してるみたいだけど、僕たちはもう……探すのをやめようと思うから……」
「何をするかは分かんない……でも……」
「でも?」
「あんたはいなくならないでよね……マーレ」
「……うん、約束する」
捨てられた二人は寄り添い泣くことしか出来ない。
どちらか迷っています
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ハッピーエンド
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バッドエンド