原作知識なしでルルーシュの兄   作:まただ

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養子になって貴族パーティを楽しむ

 養父となったエルバ子爵に連れられて、ブリタニアの首都ペンドラゴンにやってきた。街の風景は、石でできたヨーロッパの王城をさらに巨大化させ、コンクリートのビル群を付け加えたもの、という感じだ。

 

「ここが今日からお前の家だ」

「はえーっ、ひっろい」

 

 目の前には人が100人くらい泊まれそうな大豪邸が。庭もとても広い。馬や牛が見える。

 

「ハハハ。ま、これでも貴族だからな。家くらいは立派にして、見栄張らないとな」

 

 こういうことやってるからすぐに金を失うのだろう。

 

「使用人は昔から家にいる連中と、軍で仲良くなった部下がいる。俺は勉強は好かんからそいつらに教えてもらえ。マリアンヌ様の弟なら頭もいいんだろ? つっても、6歳じゃあ頭がいいも何もないか」

 

 いや、あるぞ。神童は6歳で微分積分するぞ。前世の俺は神童じゃなかったけどな。今世の俺は、前世の記憶というズルにより偏微分も多項式行列演算のコンピュータ処理も行けるぞ。まあ、教科書見ないとちょくちょく抜けてると思うが。

 使用人との挨拶を済ませ、家を案内される。農耕用の牛、貴族のたしなみ的な乗馬、剣の訓練所、風呂、便所、俺の部屋、その他いろいろ見て回った。金はないらしいがここでは上流階級の生活が約束されている。今までと違い腹いっぱい食える。にぎやかな街で遊べる。祖母には悪いが、こちらの方が気分はいいかもしれないな。

 

 貴族で小学校に通う者もいるが、義務はないらしい。養父に「行きたいか?」と聞かれ「行きたくない。簡単すぎて退屈だから」と答えると「家で勉強するなら行かなくていい。手をぬくなよ」と言われた。小学校の勉強なんていまさらやってられないからね。仕方ない。なお、俺は使用人に勉強を教えられるうちに、とてつもない数学能力を持った神童であることがバレてしまうのであった。無知の振りするのも疲れるからね。仕方ない。実は思考速度自体はそこまですごくないけどね。

 

 それからの俺の日常は、午前中勉強し、午後訓練し、養父が帰ってきたら一緒に訓練、という感じだった。俺は1歳の頃から訓練しているし、マリアンヌの血も入っているから、この訓練でもとてつもない才能を持った神童であることがバレてしまうのであった。何せ、6歳にして12歳の平均を超える身体能力である。育てばどれほどの化け物になってしまうのか。武人肌の養父は優秀だからと言って訓練の手を抜かず、むしろ最強のラウンズに育てると言って厳しくされたが、仕方のないことか。

 

 とまあ勉強と訓練が日常のほぼ全てだが、パーティに招待されることも多かった。養父の属するマリアンヌ派の後ろ盾、ルーベン・アッシュフォード伯爵は大のパーティ好きで、暇さえあればパーティを開くからだ。これが毎回派手で、料理も豪華だが、ダンスや催し物も凝っている。踊り子を集めたり、皆で女装男装したり、猫の変装したり。我が母マリアンヌも派手なことが好きなので、時々このパーティには来ていた。なお、久しぶりに会った時の会話はこんな感じ。

 

「あれ? この子あいつに似てるわねえ」

「すみませんマリアンヌ様。弟さんを養子にしてしまいました」

「あー、ルーベンがそんなこと言ってたっけ。でもこいつ、私はもう縁切ってるのよ」

「それでもマリアンヌ様の弟さんですからね。あんな場所に放ってはおけません」

「ふーん。好きにすれば?」

「はい。そうさせていただきます」

 

 なお、その会話の後、養父は上機嫌だった。あのマリアンヌ様とこんなに長く会話できた、と。養父は母に惚れていたのだった。

 それから数年経つと、母に男の子が生まれた。俺の弟なわけだが、戸籍上は他人だ。しかも相手は皇子。直接出会うことは、なかなか叶わなかった。

 

 パーティでアッシュフォード伯爵を喜ばせると、アッシュフォード派での覚えがよくなるし、養父も喜ぶ。俺の肉体はとても優れており、曲芸じみたことができるので、本当に曲芸の練習をするようになった。逆立ちでジャンプしたり、逆立ちしたまま足で皿を回したり、空中ブランコしながら笛で演奏したり。毎回違う曲芸をやってのける俺はいつしかアッシュフォード家パーティの名物の地位を得ることになるのだった。

 

 そうして堕落とも真面目とも言いづらい生活を続けて、俺は早くも12歳となった。ブリタニアには12歳から入る全寮制の軍学校がある。軍人の家系であり俺を最強の騎士するつもりの養父は、絶対に軍学校に入れる気だった。アッシュフォード伯爵からもそう言われているらしい。つまり、この楽しい日々は12歳で終わってしまうのだ。

 軍学校入学前、最後のパーティとなった日、俺はアッシュフォード伯爵に呼ばれた。

 

「今日はマリアンヌ様の長子であられるルルーシュ殿下が来られる。そこで、ちょっとしたサプライズをしようと思ってな。新しい曲芸を披露した後に、空中ブランコでこのクス玉を割ってくれないか?」

 

 ルーベンは俺に大人がすっぽり入れそうな巨大なクス玉を見せた。ヒモがついており、それを引くと割れて中から何かが飛び出すのだろう。

 

 アッシュフォード家のパーティはいつもわいわいがやがや、身分を問わず酒飲ませたりダンスに誘ったりする。皇帝の女であるマリアンヌもまた、見るだけではつまらないと言って男とダンスを踊ることもある。しかし、この日は皇子であるルルーシュがいた。

 マリアンヌは彼にはいい母親だと見せているので、男がマリアンヌをダンスに誘ってはいけないし、昔の上官を殴った頃の話をしてもいけない。酒も嗜む程度でなくてはならない。そういう制約があるので、この日のパーティには緊張感が漂っていた。

 パーティの席では、マリアンヌとルルーシュ、及びアッシュフォード伯爵とその息子夫婦と孫娘が同じテーブルを囲い、他の客は少し離れた場所に座った。貴族はルルーシュに挨拶するが、時間はとても短い。こういう場所は初めてなので、彼を疲れさせないように気を使っているのだ。

 

「よし、ケケラ。俺達も挨拶に行くぞ」

「はい。義父上」

 

 そして俺達の挨拶の番になった。

 

「殿下、こちらはエルバ子爵。優秀な軍人ですぞ。お母様には敵いませんがね」

 

 まずアッシュフォード伯爵が紹介する。

 

「そうですか。確かに立派な筋肉をお持ちで強そうですね。僕はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。初めましてエルバ子爵」

「初めましてルルーシュ殿下」

 

 ルルーシュはとても物腰の柔らかい、理知的でやさしい男の子という感じだった。あの母や皇帝からは想像もつかないような性格である。

 

「こちらはエルバ子爵の息子のケケラ。彼も父に似て優秀でしてな、曲芸が得意なのでここ最近はわしのパーティで最後の催しを任せています」

「そうですか。それは見てみたいですね」

「本日もパーティ終盤に彼に曲芸をさせます。どうぞご覧になってください」

「はい。楽しみにしています」

「ほれ、ケケラ。挨拶せい」

「初めまして殿下、ケケラ・エルバです」

「初めまして」

 

 俺はチラと母の方を見た。血縁関係言っておく? みたいな。母は少し考えるような仕草をして、口を開いた。

 

「そう言えばあなた、多少は強くなったのかしら?」

「剣ならば幼年学校に敵はいないと自負しております」

 

 俺は義父から拳骨を食らった。昔は座り込むほど痛かったが、今では筋骨が強くなり過ぎてあまり痛くない。

 

「コラ! これから幼年学校に入ろうというものが、何も知らんくせに自惚れるんじゃない!」

 

 まあ自惚れではあるけど、たぶん事実だよ。だって母は現在断トツの世界最強らしいし、祖母曰く俺も母と同じくらい才能あるらしいから。

 

「私は気にしないわよ、エルバ子爵。だって私も軍に入る時は自分が一番強いと思っていたんだから」

「い、いや、しかしマリアンヌ様は特別ですからね?」

「この子も特別だって言うのなら、私が見てあげてもいいわよ。アリエスの離宮で」

「ほ、本当ですか!」

「私は嘘が嫌いなの。知ってるでしょ?」

「は、ははー。おい喜べケケラ。マリアンヌ様が特別に訓練をつけてくださるそうだぞ」

「そ、そうですね。ありがとうございます」

 

 あの母が、急に俺の世話をするだと!? まあいつもの気まぐれだろうけど。

 

「君、すごいね。母上が人を気にいるなんて、滅多にないのに」

 

 ルルーシュに話しかけられた。

 

「そうですね。運がよかったのでしょうかね」

 

 俺は兄だが、7つ下で5歳の弟相手に敬語で話すとは妙な気分だ。

 

「武術が得意なの? チェスの方は?」

「同年代では負けたことがありませんね、両方とも」

「ほんと!? 実は僕、チェスには自信があってね。今度一勝負やってよ」

「いいですよ」

 

 こういう反応はかわいらしい弟なんだがな。皇族が弟で癒されるとかほんと奇妙だ。

 ルルーシュとの挨拶はそこで切り上げ、自分の席に戻る。しばらくパーティを楽しんでから、いつものように曲芸の準備を始める。

 

「本日の曲芸は幼年学校入学前の最後となります。しばらくパーティには出席できませんから、最後にふさわしくストーリーを凝ってみました。題して不良から赤子を守る祖母です。どうぞお楽しみください」

 

 今回の曲芸は、祖母が俺を抱いて逃げた日々から思いついたものだ。あの祖母の動きは俺の命を守るためのものだったが、アクションシーンとして見てもとても興奮するものだった。使用人に不良役を手伝ってもらい、俺は赤子の人形を抱いたまま彼等の攻撃をかわしていく。できるだけ派手にジャンプしたり逆立ちしたりして、かわしていく。時には螺旋階段の手すりを駆け上がり、時には壁を蹴ってジャンプ。天井の付近のロープで空中ブランコ。余裕を見せるためにルルーシュ殿下に手を振ったりする。

 

「す、すごいです! 母上! 同じ人間とは思えません! あんなにすごいことができるのですね!」

「ふふっ、ルルーシュ。あれくらいは私もできるのよ」

「そうなのですか? 母上はすごいですね!」

 

 ルルーシュは大興奮。曲芸は成功と言ってもいいだろう。

 そして曲芸の閉めは、アッシュフォード伯爵に言われた通りクス玉を割る。

 

『祝! ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下とミレイ・アッシュフォードの婚約決定!』

 

 こんなことが書かれてある横断幕が出てきた。

 

「ほわぁ!」

「えっ! ど、どういうこと! おじい様!」

 

 下からルルーシュとミレイの絶叫が聞こえた。

 

 アッシュフォード家はブリタニアの大財閥で、自動車や医療器具を販売し学校経営もしている。武器商人でもある。前世の感覚からすると武器商人というだけで恐いイメージだが、ルーベン・アッシュフォード伯爵は気さくでお祭り好きな人。庶民にも見下すとかは一切ない。

 そのルーベンの惚れ込んだ女が我が母マリアンヌ。我がままですぐ軍の上官に暴行する彼女を長年庇い続けたのもこのアッシュフォード伯爵。母は早い段階で大貴族に目をつけられて運がよかった。母は見た目がいいし、単に強さに惚れ込んだのではなく女として手に入れたかったのかもしれないが。しかし残念、母は皇帝の女になってしまったのだった。さすがに皇帝の女には手を出せまい。だが、ルーベンは諦めていなかった。自分が叶わぬなら孫娘と長男を結婚させる、と。たぶんそんな感じなんじゃないかな。

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