原作知識なしでルルーシュの兄   作:まただ

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サバイバル開始

 母マリアンヌから指示された学園破壊。まず初めに思ったのは、別に命令無視してもよくね? ということだ。3年間どこかでゆっくりと過ごして、死んだことにされて、裏世界で仕事するよう誘導されても、それもまた無視できるのでは? 世界のどこかで隠れて過ごせばいかにブリタニアでも見つけられないのでは? 裏の世界よりもさらに人目につかない世界で生きていけばいいのだ。俺がつまらない生き方をしていれば、母が俺から興味を無くし、そもそも裏世界に勧誘することもなくなるかもしれない。問題は、俺がそのつまらない生活に耐えられるかどうか。はっきり言って余裕で耐えられる。前世の日本は平凡な人生だったしな。女や子どもは欲しいがまあどこかで引っかければついてくるだろう。俺はハイスペックなイケメンだからな。もちろん楽に学園破壊できるならそれに越したことはない。だが、俺のこの身体はまだ発展途上で全盛期ではない。こんな時期に無理して死んだらもったいない。キャッキャウフフな貴族生活には魅力を感じるが、死んだら元も子もない。

 だから、身の安全を確保して気楽に過ごしながら、戦力を集め学園破壊の隙を伺っていく。という方針で行こうと思う。戦力については、このエリアで集めていくのもありだが、本国に帰って本国で集めた方が効率がいいと思う。母は本国の貴族の権力を無くすと言っていたが、友人の手を借りてはいけないとは言われていない。いや、友人というほどの人間はいないけども。血縁なしで一番仲がいいのがアッシュフォード伯爵? だしな。だが、ジェレミアとかコーネリアあたりのクソ真面目な貴族に連絡を取れば、何らかの形で協力をしてくれると思う。そしたらこんなチンケな学校一発で終わりだ。母がそれを認めてくれるかは知らないが。

 

 よし、方針はこんな感じでいいだろう。となれば、まずは本国に帰るための資金集めだな。儲けやすい仕事をしよう。ホストあたりがいいのかな? 年齢的には問題だがこんなクズみたいなエリアなら余裕で雇ってくれるだろう。だが、遊びで麻薬を吸わされてアヘアへにされるリスクがある。まともな仕事となれば、まずブラジルで思いつくのは大規模農業だが、これは薄給奴隷労働の代表格だ。こんなことはやりたくない。食材関連なら、日本だとクロマグロ一本釣りで大もうけとかいう番組があった。ブラジルと言えばアマゾンの広大な自然。アマゾンのグルメで一発当てて、大儲けとかできないだろうか。俺の身体能力ならワニにも勝てると思う。ふつうの中一ではありえないことだけど俺は既に前世だとあらゆる競技で世界チャンピオンになれる程の運動能力を誇る。この世界の野生動物の強さが前世並みならば行けるはずだ。武器もあるしな。100kgくらいある巨大ワニ一匹で、本国に帰れるくらいの金にならないだろうか。まあ、その辺は政庁で調べればいいだろう。

 

 ……調べてみると、どうやらワニ肉は安いみたいだ。川にしかいないから同業者が集まっていて競争も激しいし、乱獲を防ぐための制限もある。大儲けは難しいようだ。残念。というかこの国には日本やブリタニアのような馬鹿げた値段のグルメが存在しない。観光客向けの高級店はあるが、そういう場所でバイトしても俺が望むようなペースで金は手に入らないだろう。そもそも高級店は俺を雇ってくれないだろうしな。怪しい所は知らんけど。技術系の仕事はもっと雇ってくれないだろうな。

 そう考えると、結局ワニ猟が一番儲かりそうだな。麻薬とか殺し屋とかを除けば。物は試しだ。アマゾン入ってみるか。しかし、その前に今日の宿だな。もう学園の寮では寝られんし、ホテルで寝泊りすると金がしんどい。野宿だと身包みはがされそう。いや、野宿でいいか。どうせ俺のこと舐めてる雑魚しか寄ってこないだろうし。ストリートチルドレンを装えば、金を持っているとも思われないだろう。俺もスラム暮らしは長いんだ。どういう身なりや行動をしていればストリートチルドレンっぽく思われるかは知っている。ラテン風にアレンジはしないといけないかもしれないが。

 

 善は急げ。質屋で貴族っぽい服、靴、を売却し、古着屋でボロボロの服と靴を購入する。これだけで本国までの格安チケットの半額が手に入った。移動方法によってはそのまま本国まで行けそうな気もするが、アマゾンを攻略したいという欲があるので保留する。その後、髪を水溜りに突っ込んでボロボロにし、身体を草にこすりつける。ストリートチルドレンっぽい見た目と匂いを手に入れる。と、ここで運よく怪しげな若者から盗んだと思わしき自転車を購入。移動手段が安く手に入った。予定変更。果物ナイフと冷蔵ボックスを買い、早速森へ向かう。

 俺の恐ろしい身体能力なら、自転車でも常時50km/hくらいは出る。多少疲れるが、休めばすぐに復活する。喉がかわいたから、川を目指しておく。

 

 移動を開始してすぐ、後方から車が近づいてきた。何かと思ったら、俺に自転車を売った2人組みだった。運転席、助手席に座る2人の顔は分かりやすいほどにやついている。

 

「おいお前、人の自転車盗んで何してやがる?」

「オラァ! 返せよ自転車」

 

 ……この2人組、売った自転車を盗まれたと言い張ってまた手に入れる気のようだ。手にはナイフを持ち、俺に差し向けている。ふつうのガキならビビって差し出してしまうだろう。

 

「そうですか。残念です」

 

 俺は自転車から降り、下を向く。手にナイフを持ちながら。

 

「ぷくくくくっ。そうそう、そうやって大人しく返せばいいんだよ」

「くくっ、所詮はバカなストチルよ。大金持っても何もできねえ。どうせ他人から盗んだか物乞いして手に入れた金だろ? お前の金は俺達が有効に使ってやるからよ、喜べや」

 

 2人はにやつきながら車を降りる。隙だらけだ。

 

「ナイフを向けたってことは、正当防衛だよな?」

「あん? っ、あぐっ」

 

 踝の少し上、カーフにローキック一発。それだけで20歳くらいの若者が倒れこむ。

 

「てんめっ、えぶっ」

 

 もう1人には、顔面に右ストレート。10mくらい吹っ飛んだ。我ながら恐るべきパワーだ。吹っ飛んだ男は立ち上がれない。どころか痙攣している。

 

「つ、つええ。なんてガキだ」

 

 ローキックで倒した男が、寝たまま俺を見上げている。

 

「ほら、財布寄越せよ。お前は俺にナイフを向けたんだ。俺に殺されたくないなら、誠意を見せないとダメだよな?」

「な、舐めんなよクソガキ! 俺はマルシアのメンバーだぞ!」

「いや、マルシアとか知らんし」

「バッ、んなわけねえだろ! どうせビビってんだろうが! オラ、泣いて謝るなら今のうち、ぐあっ」

 

 俺は男の後頭部を殴った。男は気絶し、動かなくなった。

 動かなくなった男2人の服を脱がし、ポケットに入っていた財布、携帯電話、車のキー、ナイフ、コンドーム等を手に入れる。車まで手に入ってしまった。酒と麻薬の匂いがきつい車だ。売れるだろうか? 売り方がよく分からんが。いい値で売れたら飛行機代は手に入りそうだ。財布に入っていたお金は、自転車代の5倍くらい。これでも格安チケットなら買えそう。アマゾン攻略の必要性が本格的になくなってしまったな。こんなんでいいのだろうか。今まで俺は暴力を金儲けに使ってこなかったが、案外簡単に儲けられるんだな。運がいいだけな気もするが。

 また政庁に戻り、飛行機のチケットを予約してみる。

 

「18歳未満はご両親、または保護者の同意が必要です」

 

 保護者か。……あっ、エルバ子爵は親じゃなくなったから、ひょっとして今の俺って戸籍上親なし? 保護者なし?

 

「……国際電話を使わさせてください」

「はい」

 

 もう一度子爵家に電話する。また使用人が出た。

 

「マリアンヌ様につなぎます」

「はい」

 

 しばらくして母が出る。

 

「どうしたの? 何かの確認?」

「いやあ、飛行機のチケットを買おうとしたんだけど、保護者の同意が必要と言われてしまって。俺の今の保護者って誰なの?」

「本国の力を借りるのはダメだって言ったでしょ。当然あなたに保護者なんていないわよ」

「ココロ母さんは?」

「どこにいるかも生きているかも知らないし、そもそも今は赤の他人で保護者じゃないわよ」

 

 うーん、やはりそういう条件だったか。あまり聞こうとするとコーネリアやジェレミアルートを完全に閉ざされてしまいそうだし、黙っていた方がいいかもしれないな。

 

「分かったよ、こっちの人だけで勝てばいいんだね」

「そういうこと。報告楽しみに待ってるわよ。ああそれと、ズルしようとしても無駄だから。ルーベンには一切協力するなと言ってあるからそのつもりでね」

 

 くぅー、一気に条件が苦しくなってしまったか。まあいい。俺は、アマゾンを攻略したかったからな。しばらく山で遊んでやるよ。

 なんだか物悲しくなりながら、車でアマゾンを目指す。携帯電話は、GPSを追跡されると面倒だから電源を切った。自転車にもGPSらしきものがついていたから、外しておいた。

 

 移動中、道端に露出の多い若い女がポツリポツリと立っている。売春してください的なアピールだろう。中には10歳かそれより下に見える子もいる。なんだったら男もいる。荒れ放題なこのエリアでは、当然こうなるだろう。本国で目が肥えている俺だが、2人買いたいと思えるいい女がいた。金に余裕があれば遊んでみよう。

 その後、何事もなく目的の森に到着する。少し探すと道の下に小川が見えた。ワニがいるかは分からないが、川には色んな野生動物がつきものだ。とりあえずここを拠点とすることにする。空き缶を手に車を降り、川の水を汲む。

 

「くぅー、生き返る」

 

 公害とは無縁の川の水。全身に力が漲るようだ。川原の石の隙間にはヤドカリやカニやカエル、それによく分からない小動物がたくさんいる。とりあえず片っ端から拾って、冷蔵ボックスに入れてみる。アマゾンの基本は虫食。土を掘れば幼虫が出てくるし、木にはアリがいる。食べればいい。川原のよく分からない小動物も、とりあえず食べればいい。植物も若葉ならたいてい食えるから小さい葉っぱを狙う。木の実は不味かったり美味かったりで当たり外れが大きいが、とりあえず食べてみて判断すればいい。これがアマゾンを攻略するというものだ。大型動物だけがサバイバルではない。

 食べる時には、例によって木を擦って火を起こしてもいいが、俺はそういうワンパターンなことはしない。食べられる物は生で食う主義だ。若葉は当然生で食べる。生野菜サラダみたいなものだ。カエルは皮膚の毒で有名だが、皮膚を剥いで足だけならば、生で食べられるだろう。幼虫はよく分からんが、生で食べられるだろう。アリもそうだ。蟻酸があるからあまり多く食べない方がいいと思うが、あんな小さいサイズは多少生で食べても問題ないはずだ。木の実も当然生で食べる。ヤドカリ、貝類は生だと恐い。これは焼いておく。

 テキトーに今夜の料理完成。さて、いただきます。

 

「うんうん。うん? おー、カエル柔らかくてうめー」

 

 幼虫は、何かクリームっぽい感じ。たぶん生で大丈夫なはずだ。その辺にあった若葉は、まあ多少苦いサラダだな。酸っぱいのもあるが。この味なら大丈夫だ。アリは小さすぎてよく分からないが、大丈夫な気がする。

 しかし、量が少ないなあ。カエルもっと探してこようか。

 

 腹いっぱい食って自信をつけ、就寝。そして起床。今日は、大物を探そうと思う。具体的にはワニだ。別に蛇や鳥でもいいけど、狙いはワニだ。

 川沿いを車で進んでみる。車が手に入ったのは本当に運がよかった。移動もそうだが、夜の蚊とか蛇を気にせずぐっすり眠れる。と、早速ワニ発見。小型だな。重さで言うと10kgくらいしかなさそうだ。だが、今日の食糧には十分。ある程度のお金にもなるだろう。問題は、勝てるかどうかというより、逃げられないかどうかかもしれない。ワニは小川の向こう側にいる。こちらまで呼び込む必要もある。

 

 車を降り、ナイフを片手にワニに近づいていく。向こうもこちらに気付いた。シーッとか言って牽制している。さあ、来い。

 俺は、わざと背中を向ける。少し逃げるそぶりをする。野生の本能なら、逃げる獲物を追おうとするはず。ワニは一歩こちらに踏み込んだ。だがそこで止まる。思ったより警戒心が強い。まあこのワニ大人の人間より大分小さいしな。

 俺はまた近づき、背中を向け、逃げるそぶりをする。ワニは、まだ来ない。もう一度ワニに近づく。今度はワニから目をそらし、川の水を飲もうとしてみる。動物番組を見るに、ワニは水を飲んでいる獲物を狙う習性があったためだ。俺の狙い通り、ワニが大きく動いた。ニョロニョロッと全身をうねらせて、川に飛び込む。音はほとんどない。プロの殺し屋のような静かな所作。俺も緊張感が高まる。隙を見せるとやられるのはこちらだろう。黒い影がこちらに近づいてくる。まだだ、まだ逃げてはいけない。相手はこちらに恐怖している。できるだけ油断させなければ、食いついてこない。黒い影が、いよいよ2mくらいまで近づいて、一端スピードを緩めた。隙を狙っているな。いいだろう、あえて隙を作ってやる。俺は頭を川に突っ込み、後頭部をワニに見せる。パシャン、僅かな音と共に影が差した。ワニが突っ込んできたのだ。

 

「シッ」

 

 俺は姿勢制御の要領で、ナイフを前方に向けながら頭を後方斜め上へと反らす。ワニの大口は目の前にあった。ここで失敗すれば顔を嚙つかれてしまうだろう。神経を集中し、ワニの鼻っ面を殴るように、ナイフを振るう。

 

「シャーッ」

 

 やはり小型のワニ。ナイフ一発でワニの顔面が逸れ、歯は俺の顔に届かない。また、俺のパワーが凄まじいので、ナイフの刃でワニの鼻が骨ごと抉れている。しかしワニは痛みをあまり感じないようで、もう一度顔をこちらに向けてきた。動きは先程よりも遅い。

 

「シャーッ」

「ウラァ!」

 

 今度は防ぐためではなく、捉えるためにナイフを振るった。上方から下に一線。ワニの顔の上側を串刺し、下まで貫通させる狙いだった。その狙い通り、ナイフはワニを串刺しにし、完全に下まで貫通した。

 

「かわいそうだが、世界は弱肉強食なんだよ」

 

 こうして俺は初のワニ肉を手に入れたのだった。

 売るのは、明日の朝がいいかな。たぶん朝だとマルシアとかいう不良共は寝ていて主婦とかジジババが主だと思うんだ。売り方は、自転車の移動販売で。から揚げとかにすれば生より高く売れるかな?

 この日は運よくもう一匹ワニが手に入った。ワニが二匹とカエル、幼虫たくさんを連れて、翌日の朝、街に戻った。

 

 街で肉を売る場所を探す。市場では、名誉ブリタニア人とナンバーズが並び、商品を売ろうと声を張り上げている。ブリタニア人も少しはいるが、割合は少ない。この中で明らかにブリタニア人の俺が混ざると目立ってしまう。マルシアにも一発でバレるかもしれない。なのでやめておく。

 ブリタニア人が多い住宅街に入る。名誉ブリタニア人がチラホラと出店をしている。主婦のブリタニア人は人当たりがよさそうだ。丁寧な物腰で購入している。不良共とは縁がなさそうな場所。ここで売ろう。服は、あの不良の服でいいか。そこそこいい生地だし、違和感ないだろう。多少長いが折れば許容範囲だ。

 車に乗っていると免許違反がバレそうなので、自転車に乗り換える。自転車で移動販売だ。買い物に出ている主婦に狙いを定め、近づいていく。

 

「ワニの丸焼きいかがっすかー。カエルゥー、貝もー、ありますー」

「あら見ない子ね。どうしたのこんな場所で?」

「いやあ、親から仕事を手伝えと言われてしまいまして。こうして移動販売してます」

「まあ、大変ね。手伝いも大事だけど、お勉強おろそかにしちゃダメよ」

「はい、ありがとうございます」

「じゃ、このお肉2つもらおうかしら」

「ありがとうございますー」

 

 よし、売れた。この調子で早めにどんどん行こう。たぶん朝8時頃にはおっさんも動き出すから、その前に森に戻った方がいいからな。ガキが学校行ってないと目立つからな。ストリートチルドレンと思われると警察を呼ばれる可能性がある。マルシアにも情報が渡ってしまうだろう。慎重に行かないと。

 

 ふむ、ワニ二匹でも一月は暮らせそうな金が手に入ってしまった。このエリアで暮らすの思ったより簡単かもしれないな。まあワニ肉は乱獲を防ぐための制限があるから、あまり目立つと警察が出張って捕まっちゃうのだろうけど。今日目立ったことでマルシアに見つかる可能性も上がっちゃったし、軍学校からの追跡もあるかもしれないし、このままスルスルとは行かないのだろうな。

 とりあえず夜まで待って、手に入ったこの金で道端に立っている女の子を買ってみよう。勘違いするなよ。仲間集めのためだぞ。今後ワニを販売する時に、俺本人ではなく誰かを仲介した方がいいというのもあるしな。


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