RIDER TIMEナイト 鏡面界廊のミラージュ 作:あんだるしあ(活動終了)
昨日の探索の成果はゼロだった。
やはり野外には手がかりがないらしい。
となればあとは、象牙色のドレスの女が戦いの開幕を告げたあのホールを探し当てるしかない。
そこでも何も見つからないようならば詰みだ。
浅倉の記憶アリ発言に頼るという最後の手段はあえて却下にしてある。
何故か? 情報と身の安全を引き換えにするなど損得が合わないからだ。
事ここに至って、蓮にとっての「戦いを止める」はイコールで「ライダーバトルそのものをサンサーラに停止させる」になりつつあった。
ミラーワールドに閉じ込められて3日目。
蓮が用意した簡素な朝食を真湖と向かい合って食べ終えてから、二人で『TEA花鶏』を出発した。
まずは初戦の場となった広場の近くにあるビルを調べる。該当する部屋がなければ、探索範囲を広げる。
――分かってはいるのだ。サンサーラを発見し接触できるかなど雲を掴むような確率だと。合理的な調査をしているつもりになっているだけで、こんなことは無駄足だと。それでも自らライダーに変身して他のライダーに戦いを挑むより、蓮の精神的負荷はずっと軽い。
――思えばそれは、そんな蓮の「逃げ」を許さないという天啓だったのかもしれない。
広場に向かう道中。蓮たちをデッドリマーが襲った。
蓮はバイクを地面ギリギリまで傾けてからわざとドリフトスピンさせて、真湖を掴んで道路に転がった。
「らんぼーだーっ!」
「文句を言う余裕があるなら隠れてろ! ――変身!」
ナイトに変身して、ソードベントでダークブレードを掴むなり、ナイトは即座にデッドリマーにその穂先を突き出した。
デッドリマーがたたらを踏んだところに、さらに一歩踏み込み、今度は貫通させるつもりでダークブレードを前へ。
狙い違わず、闇色のランスはデッドリマーを穿ち、爆散させた。
「お疲れさま~っ」
真湖が駆け寄ってくる。まるで飼い主を見つけた忠犬だ、などと益体もない物思い――を、ブーメランのごとく飛来した鋸剣に、断ち切られた。
『伏せろッ!』
「へ」
契約モンスターのダークウィングが、真湖を突き飛ばして鋸剣の射線から外した。
ナイトは伏せた真湖を跳び越して、戻った鋸剣を掴み直した仮面ライダーアビスに立ち向かった。
『モンスターを倒して油断したか!? 甘いな!』
ナイトはあえて両手持ちのランスから右手を離して、アドベントカードの一枚をバイザーに挿し込んだ。
《 ナスティベント 》
ダークウィングが放った嘶きが物理ダメージを叩き出す音域で大気を震わした。
アビスが頭を抱えて怯んだところで、ナイトはランスでアビスを弾き飛ばした。
デッキからファイナルベントのカードを抜き、バイザーに装填する。
《 ファイナルベント 》
ナイトは駆け出した。
装甲へ変形して背中に備わったダークウィング。感触を確かめ、ジャンプする。体が、一連のアクションを知っている。
「! 待って! だめえっ!」
少女の叫びが、世界の外の雑音に聞こえた。
ナイトの飛翔斬は狙いを過つことなくアビスを貫いた。
着地と同時に蓮は変身を解いた。
息が上がっている。全身が熱く、鼓動がうるさいほど打ち、精神が異様な昂揚に包まれていた。
だから、真湖が愕然と、蓮を通り越した背後の道路――アビスの変身者だった男の末路を見ていると気づくまで、タイムロスがあった。
砂鉄と化して、一人の人間が消滅していく。
(俺が――殺した?)
返り血など一滴も着いていないはずの両手が、真っ赤に見えた。
どうしようもなく、とりかえしのつかないことを、してしまった。
「ぁ、ああっ、うあああアアアアアア!!!!」
絶叫し、その場で蹲った蓮に、真湖は駆け寄って呼びかけ続けた。
しかし、蓮はパニック状態から復帰しなかった。
真湖は蓮を宥めながら、カーブミラーをきつく睨みつけた。正確には、カーブミラーの中にしかいない、象牙色のドレスを纏った女を。
(これ以上何を求めるの? 貴女の恋人を止めたいだけなら、すでに真司さんが龍騎の力を取り戻してる。その力を時代最先端の仮面ライダーに託して終わり。それじゃいけないの?)
“――――”
(他のライダーたちまで巻き込んで、またライダーバトルを始めて、何を得ようっていうの!? 何がしたいの!?)
“達也を止めるには、あの人を満足させるしかない。達也を怪人に仕立て上げた、あの男の言いなりになるしか……!”
(あなたは……、……そう、そういうこと。舞台に無理やり引きずり上げられたのは、“彼”もだったのね。世界が戯曲なら、何て愚かな書き手がいたものかしら。彼の願いは、最愛の妹の祈りによって永眠した。それを、まだ彼が渇望していると誤解して黒幕を演じさせるなんて)
“答えを知っているなら、どうか教えてください、
(その答えを知ってるなら、17年前の蓮さんに教えて、恵里さんのための闘いをやめさせてるよ。――分かるのは、今のあたしにもあなたにも、できることは一つもないってこと)
“ごめんなさい……”
(泣かないで、望まずしてサンサーラにされたあなた。あなたが昔の優衣さんと同じ、純粋に犠牲を悲しんでいるのは分かりました。ですので、あなたを信じます)
“え?”
(次に会う時は、こうした思念の送り合いでなく、直接の対話をしましょう。それまで、あなたはあなた自身の延命に注力してください)
“ま、待って! あなたは何を――!”
(まかり間違っても、彼らをこのミラーワールドに閉じ込めたまま永眠などしないように。では、『次』があると信じて。今は何も考えないで――おやすみなさい。サラさん)
原作では芝浦や真司にトドメを刺せなかった蓮が、なりゆきか勢いか、ライダーを、人ひとりを手にかけてしまった。
視聴当時は「蓮の不殺縛り軽すぎない!? ちょっと制作!!」と絶叫したものです。そこは殺せない路線の蓮を貫いてほしかったんです……(´;ω;`)
すんごい蛇足ですが、なぜサラさんを「サンサーラ」、オリ主を「ニルヴァーナ」にしたか。
ちょうどこれを書いてる時期に、FGOで大奥イベがあったからです。分かる人にはこれで分かるはず。