「頼む! 俺に払えるものなら何でも払う! だから、仲間の仇を取ってくれ!」
そんな事を叫んでいる男は、最近最前線のこの街に現れるようになったある種の名物だ。そんな男に周りが示す反応は大まかに2種類、無反応か嘲笑だ。
元々最前線まで上り詰めるような攻略組のプレイヤーなど周りを出し抜いてトップまで駆け上がったような連中ばかりだ。そんな人間が集まる場所で、全財産を結晶一個と引き換えた男の依頼を受けるようなやつがいる訳が無いだろう。
「ねぇ、その話詳しく聞かせて?」
「ああ……! 引き受けてくれるのか! ありが……って、あんたはまさか『死神』ユリ?」
だからこそ、その依頼を受けてみようと思った。他人のために必死になれる彼なら、きっと面白いものを見せてくれると思ったから。
男の事情自体はそう大したものでは無かった。オレンジギルドに加入しているグリーンプレイヤーがカモを誘い出し、メンバー達がそこで待ち構えるというよくある手口。ウチ以外で殺しまでするオレンジギルドというのは珍しいと言えなくもないが、些細な事だろう。
「それで、貴方は私に何を望むの? 貴方が望むなら私はそいつらを皆殺しにする事も出来る。でもそれは、貴方の殺意によって成されること。貴方は死神に何を望むの?」
「俺は……」
結局彼は仇討ちといっても殺人までは望まなかった。回廊結晶で全員を牢屋送りにして欲しいと。
引き受けてしまったからには依頼主の意向には従うべきだ。今回は殺人はお預け。ただ、少しだけ自分好みに変えさせてもらうぐらいは構わないだろう?
……それはそれとして、死神とかいうやたら厳つい通り名がついてしまったのはどうにかならないだろうか。言われるのも名乗るのもだいぶ気恥ずかしいのだけれど。
依頼のためにやってきたのは35層。依頼の目標であるオレンジギルド、タイタンズハンドのリーダーは現在この層で活動しているらしい。こういう時、犯罪者同士のつながりという物はとても便利だと改めて感じる。
依頼者から聞いた特徴の女は案外すぐに見つかった。その女は既に次の獲物を見つけたのか、数名のグリーンプレイヤーと一緒に圏内で過ごしていた。
ソレを殺すだけならラフコフのメンバーでも呼び集めて周りのどうでもいいゴミと一緒に掃除してしまうだけなのだが、殺しては駄目となるとさてどうしたものか。
ひとまずは付け回して見失わないようにしつつどうするかを考えるしかないだろう。
そんな事を始めてから数日間、幾つか使えそうな情報を集めることが出来た。例えばあのパーティーに居るうちの1人はドラゴンテイマーのシリカという中層では名の売れたプレイヤーであること。獲物とされているのは恐らくそのテイマーであること。そのパーティーの関係性はかなり悪く間もなく崩壊するであろうこと。
これだけ分かれば充分だ。あとはどうやって掻き回したら面白くなるかを考えるだけだ。
そんな事を思いながらいつもの様に動向を観察していると、とうとうと言うべきか、遂に喧嘩別れする瞬間を目撃した。
ただ、よりにもよって迷いの森で地図も持たずに1人で飛び出すのはどうかと思う。やはり子供は子供ということだろうか。
どちらを追うか迷ったが結局テイマーの方を追いかけることにした。どのみちアレの最終目的もあのテイマーなのだから結局はこれが一番の近道のはず。
そうして追いかけて行った先でモンスターに追い詰められているテイマーの姿を見たところでこれからの方針は決まった。さぁ、精々劇的な出会いでも演出するとしようか。
テイムモンスターが消滅したところで戦闘に割って入る。この辺りのモンスターなら何の問題も無く武器の一振りで終わりだ。
「……君の友達、助けられなくて、ごめんね……」
「……いえ、私が悪かったんです……」
全く思ってないことだろうとそれらしい顔をして音に乗せればそれだけで信じる馬鹿は多い。言葉というのは実に便利なものだ。
そこから一緒に街まで帰ろうと提案をして、道中で情報を1つ与えてやる。
「ところで、アイテム欄にテイムモンスターの名前がついたアイテムはない? もしあったら、復活させる方法が無くはないんだけど……」
その言葉を聞いた途端に生気を取り戻す姿を見て、扱いやすそうだと感じる。自分にとって都合のいい情報を細部も確かめずに簡単に信じてくれる相手は騙しやすいから。
ひとまず詳しい話は街に帰ってからと宥め、森を抜ける。街に辿り着くと、先に帰ってきていたのであろう今回の標的が話しかけてくる。
「あら、シリカじゃない。1人で飛び出して行ったからどうなったかと思ったけど生きてたのね」
「……ええ、おかげさまで」
「あら? いつも連れてるあのドラゴンちゃんはどうしたのかしら? 姿が見えないけど」
「……ピナは、今はいません。でも、必ず生き返らせます」
「へぇ、じゃああの蘇生アイテムを取りに行く気なんだ。精々頑張る事ね」
「どうも。それじゃ、私たちは急ぐので」
私たち、という言葉に反応したのかソレはこちらに顔を向けてくる。
「あら、私達と別れたと思えばもう新しい相手を見つけてたのね。とうとう女まで誑し込むなんてやるじゃない。きっと貴方売春婦の才能あるわよ」
……どうでもいい争いに私を巻き込むのは止めてもらいたい。面倒だから、もうさっさとこの場を離れることにする。
「うん、私達これから宿に行って楽しむからさ、貴方に構ってる暇はないんだ。ごめんね?」
それだけ言い残してテイマーの手を引っ張ってその場から離れる。後ろから雑音が聞こえてくるが、まあ無視しても構わないだろう。
「ちょっ、あの! ユリさん!」
「ん、ごめん、ちょっと待ってね?」
そのまま手を引いて宿へと向かい、1階にある酒場部分に着いたところで手を離す。
「引っ張ってきちゃってごめんね。じゃあこれからの話をしようか」
「これからって、あの、私女の子だし、まだ心の準備が出来てないっていうか……!」
「は……? あぁ、いや冗談のつもりだったんだけど……もしかして、期待してた?」
……思春期の子供なら、まぁそういう事に興味があってもおかしくは無いのだろうけど、それにしてもといった感じで、まさか本当に売春婦の才能があるのではなかろうか。
そんなどうでもいい思考は脇に置いておき、肝心のテイムモンスターの蘇生についての話を進める。
47層にある思い出の丘。そこに心アイテムを持ったモンスターテイマーが行くとプネウマの花というテイムモンスターの蘇生用アイテムが手に入るという話。ただし──
「ただし、そのための制限時間は3日。それ以上時間が経つと心アイテムが形見に変化して蘇生は不可能になる──らしいよ。私はテイマーじゃないから、試したことは無いけどね」
「そんな……」
ショックを受けているところ悪いが、自分好みの展開にする為にもう1つ情報を付け加えさせてもらう。違うのは、こっちは根も葉もない嘘だということだけだ。
「それから、そこに向かうテイマーは装備してる武器防具以外のアイテム欄を空にしておく必要がある……多分、パーティーで挑むのが前提になってるんだろうね」
すっかり意気消沈してしまったようで静かになったテイマーを眺める。あとは手を差し伸べてあげるだけだ。
トレード欄に不要な、それでいて中層プレイヤーからしたら強いと言えるような装備を放り込んでいく。
「……とりあえず、これで何レベル分かの底上げにはなると思う。あとは私が一緒に行けば何とかなるんじゃないかな」
おそらくそんな言葉を期待していたのだろう。その申し出をした途端に表情が明るくなった。
もうすぐ仕込みも終わり。あとは明日を待つだけだ。
47層の思い出の丘までの道中には特に何の問題も起こらなかった。現れるモンスターを適当に切り伏せて進む、ただそれを繰り返すだけで蘇生アイテムの所まで辿り着くことが出来た。
アイテムも手に入れ、あとは街に帰ってからテイムモンスターを生き返らせるだけとなった。うん、そろそろいいだろう。
「……そこで待ち伏せてる人、そろそろ出て来なよ」
「私の隠蔽スキルを見破るなんて、中々高い索敵スキルしてるじゃない。その様子だと首尾よくプネウマの花を手に入れられたみたいじゃない。それじゃ、早速花を渡してちょうだい」
「そうはいかないよ。オレンジギルド、タイタンズハンドのリーダーさん?」
「へぇ、そこまで分かってるんだ。それなのにわざわざその子に付き合うなんて、貴方馬鹿じゃないの? それとも、本当に体でたらしこまれてるのかしら?」
「ん? いや、どっちでもないよ。私も貴方たちを探しててさ。シルバーフラグスって覚えてる? そこの生き残りの人から仇討ちを頼まれててさ。貴方たちを牢屋に叩き込んで欲しいって毎日最前線で頼み込んでたよ。泣ける話だね」
「は? そんなことでマジになっちゃってるの? 馬鹿みたい。ここで人を殺したってほんとにそいつが死ぬ証拠なんてないし。それより、自分たちの心配をした方がいいんじゃない?」
その言葉とともにギルドのメンバーであろうオレンジプレイヤー達が姿を現した。
「ユリさん……! 人数が多すぎます! 逃げないと!」
「大丈夫。後ろに下がってちょっと待っててね」
あいつらが終わったら、次は君の番だから。
結論から言うと、ここでも何一つ問題は起きなかった。7人がかりでこちらに切りかかってきたものの、レベル差がありすぎるのか合計ダメージ量とスキルでの自動回復量が釣り合ってしまっている。これではたとえ全ての攻撃がクリティカルで命中しようともHPがゼロになるまでは相当な時間がかかるだろう。勿論そんな事は起きるはずもないし、そんな退屈な事をする気もないが。
「あんたら、何やってんの!? さっさとそいつを殺しなさいよ!」
「クソ! なんなんだよコイツ!」
離れているとHPゲージも見えないのだろうか。無茶振りされてこの人達も可哀想に。
そんな事をぼんやりと考えていると戸惑いが勝ったのか、切りかかってきていた人達が武器を下ろしていた。まぁ飽きてきたし、そろそろ終わりにするとしよう。
「……さて、なんなんだコイツ……だっけ。まぁ初対面だしとりあえず自己紹介でもさせてもらうね。レッドギルド、ラフィン・コフィンのユリです。よろしくね」
装備を外して刺青を見せつけながらそう宣言する。大半はそれだけで戦意を失ってくれたようで、明らかに狼狽え出した。だが、標的の女だけは偽物に決まってるだとか元気に騒いでいた。頭が弱すぎて現実が理解出来ていないのかもしれない。
「……だそうだけど、ラフィン・コフィンのリーダーさんはどう思う?」
集まり終えたメンバー……というよりPoHに声をかける。
その声と共に何人かのメンバーが現れ、そこでようやく自分達が囲まれる側になったことに気づいたようで、目に見えて態度が変わり出す。
「さぁ、どうだろうな? 試しに偽物だと信じてそいつと戦ってみたらいいんじゃないか? ラフィン・コフィンを騙ってるだけならきっとあっさりと殺せるだろうさ」
「……まぁ、それでもいいんだけど、せっかくだから生き残る道をあげるよ。殺してくれとは頼まれなかったしね」
コリドーオープン、と回廊結晶を使用してから8人に語りかける。
「1つはさっきうちのリーダーが言ったみたいにこのまま私達と戦う道。まぁ今度は反撃させてもらうけどね。もう1つはこの回廊に入って私達に降参する道。こっちなら命は保証してあげるよ。レッドギルドの言う事を信じてくれるかは知らないけどさ」
力の差を見せつけられた上にそんな事を言われてはそれ以上逆らう気も起きなかったのだろう。7人は大人しく従ってくれた。
「わ、私はグリーンだ。私を傷つけたら──」
「私達が今更そんな事を気にするとでも思ってるの?」
最後の一人も問題なし。これでやる事も終わり……とはいかない。まだ肝心の1人が残っているのだから。
「さて、じゃああなたも回廊に入ってくれないかな? まぁ嫌だって言っても無理矢理叩き込むだけだけどさ」
目の前で起こった事態が未だに呑み込めていないのか、どこかぼんやりとしているテイマーに呼びかける。
……が、反応がないので宣言通り無理矢理叩き込むことにする。その時に何か喚いていた気がするが、どうでもいい事だろう。
「さて! みんなお疲れ! じゃあ私達も帰ろっか!」
都合9人に回廊を通ってもらってやる事はもう終わった。ギルドホームへと繋げておいた回廊を通って私達もホームへと帰り、ホームで待機していたラフィン・コフィンの仲間たちと合流する。
「姐さん、お疲れ様です!」
「ん、ただいま。じゃ早速だけど、コイツらをどうするか決めよっか」
そう宣言してそれらの方へ向き直る。とは言っても、もうどうするかは決めてあるのだけれど。
「私はね、君たち7人は本当に可哀想だと思ってるんだ。私達の事を知らなかったばっかりにこうして敵対して捕まっちゃってさ。でもそれって、悪いのは、というか責任を取るべきなのは命令を出したリーダーだと思うんだよね。だから、今回の事を反省してくれるなら私達の仲間に迎え入れてあげてもいいと思ってる。まあどうするかは君たちに任せるけどさ」
それだけ言って、後のことは他のメンバーに任せる。どうせ行き場のないオレンジプレイヤーだ。向こうからギルドに入らせてくれと頼んでくるだろう。
そうして残ったのは2人の女だけ。
「さて、君達2人には頼みたいことがあるんだ。なに、そんな難しい事じゃないよ。ただ倫理コードを解除してくれればいいんだ。そうしてくれたら、……まぁそれなりの扱いは保証するよ」
そんな事を伝えると、倫理コードの意味がよく分かっていないのであろうテイマーはともかく標的の女の方が騒ぎ出した。別に、大人しく従ってくれると思っていた訳でもないけれど。
「私に従っておいた方がまだマシだったと思うけどなぁ……いや、どうでもいっか。ジョニー、後は任せたよ。いつも通りに、よろしくね」
人が嫌がることをするのを誰よりも楽しめる彼に任せておけば、すぐに心を折っておいてくれるだろう。その過程を見ておきたい気持ちが無い訳では無いが、メインディッシュの前にはお腹を空かせておくべきだろうと思うから。
あれから数日後、今回の依頼の達成報告をシルバー……なんとかのリーダーさんにする為に連絡をとった所、わざわざこっちまで出向いてくれるとの事だった。
すぐに到着した彼と軽い挨拶をした後に、すぐに本題に入る。
「俺の依頼を終わらせてくれたとの事だったが……なんでわざわざこんな所に呼び出したんだ? あいつらを……あの女を牢屋に入れてくれたならはじまりの街にでも呼んでくれれば良かったのに……それとも、殺しちまったのかい?」
「あはは、わざわざそうやって聞くって事はやっぱり殺して欲しかったんだ。でもごめんね、そういう訳じゃなくて、今回は見てもらいたいものがあるだけなんだ」
それだけ言って彼をギルドホームへと招く。
「ああ、この部屋だ。さ、入って入って」
「一体何が──」
部屋に入った途端に絶句してしまったが無理もないだろう。そこには鎖に繋がれた裸の女がいたのだから。
「ほら、目を背けてないでよーく見て。さて、その女は誰でしょうか……?」
そこまで言えば気づいたのだろう。だがどうやらまだ困惑の方が強いようだ。
「死神……じゃない、ユリさん。俺は牢屋に入れてくれと頼んだはずだが、なんでこんなことになってるんだ?」
「なんでって……サービスだよサービス。貴方は確かに牢屋に入れてくれって言ったけど、それは本当の本当に本心だった? 人殺しにはなりたくないとか、そんなブレーキのかかった思考からじゃなかった?」
「そ、それは……」
「本当はこう思ってるでしょう? 『あいつらをこの手で殺してやりたい、いや、死ぬ程度で許しちゃ駄目だ。生きてる事を後悔させてやりたい』ってね」
「そんな事──」
「そんな事ない? 本当に? 今貴方の憎い仇が目の前にいる。しかも抵抗もできない姿でね。まぁ貴方が何もしないって言うなら私達が楽しませてもらうけどね。この世界、女は貴重だしさ。いや、私は楽しめないけどね?」
「そんな事許されるはずがないだろう!」
「許されない? 誰の許しが必要なのさ。別にゲームの中でアバターをちょっと動かすだけでしょう? 大体このゲームでそういう事が出来るようになってるんだから、それこそ許しなんて要らないってことでしょう? その証拠に、人のものを盗ったり人を傷つけたりとかは、ちゃーんとシステムで出来なくなってるじゃんか」
「それは──だけど……」
「ねぇ、素直になりなよ。心の声に耳を傾けてあげな。『俺達を酷い目に遭わせた奴が目の前にいる』『復讐は当然の権利だ』『俺の手で報いを受けさせてこそ仲間も浮かばれる』……ってね」
「……俺は」
「まぁどうするかはゆっくり考えなよ。とりあえず私も部屋から出てくからさ」
「……最後に1つだけ教えてくれよ。私達って言ってたよな? 一体あんたらはなんなんだ?」
「あー、そういえば名乗ってなかったね。私達はラフィン・コフィン。人間の欲望に従って生きる。取り繕うことをやめた正直者の集団だよ。
仲間になりたければ何時でも歓迎するよ、人手はいくらあっても足りないからね」
それを言い残して部屋から出る。どうなったかは、それからさほど時間をおかずに分かった。部屋から聞こえてくる憎悪の声と嬌声は、つまりはそういう事だ。聞き耳スキルがこんな所で役に立つとは思わなかったけど。
「……こうして仲間思いの純粋な青年は悪の道に堕ちてしまったのでした! ってね。これは喜劇なのかな? 悲劇なのかな?」
そんな独り言を呟きつつ他のメンバーが集まっている大部屋へと向かう。
「みんなー、そっちはどう? 楽しんでる?」
「あ、姐さん! ええ、もちろんですよ。13歳って聞いた時はどうなるかと思いましたけど、結局みんな同じですね。すっかり堕ちてくれましたよ」
それはそうだろう。SAOでは痛覚は遮断されている上に純粋な快楽が電気信号として脳に叩き込まれるのだ。むしろ若い方が堕ちるのは早いだろう。
「……そういえば、あの『説得』の仕方ってジョニーさんが考えたんですか? それとも、姐さんが……?」
「『説得』? ……あー、アレか。別に睡眠と食事を許さないなんて誰でも考えつくことでしょ。SAOで強制される欲求なんてその2つなんだから。それに代償としてやらせてる倫理コード解除の云々も……まぁ慣れればお互い楽しめるでしょ……」
私が考えたと理解した途端に納得した顔を浮かべるのは……解せないと言い切れ無くなってしまったあたり、立ち振る舞いにはもう少し気を配った方がいいのだろうか。
「あ、あと姐さん、これは俺達全員からの意見……というか頼みなんですけど……」
「ん? 何、珍しいね。言うだけ言ってごらんよ」
「その、です、ね。……姐さんも俺達と、楽しみませんか?」
「……言い淀んでるあたり、言うのを押し付けられたんだろうから、今回は許してあげるけどさ……殺すよって伝えといて」
「了解しました! 申し訳ありませんでした!!」
そういうのが嫌だから何匹かペットを飼うようにしてるのに、舐められ始めてるのだろうか……? だとしたらそろそろ引き締めのために見せしめでも行うべきかもしれない。
「なんだユリ、相変わらず身持ちが固いじゃないか。どうせデータなんだから1回ぐらいヤラせてやればいいじゃないか」
「冗談でもやめてよPoH。……そうだ貴方に1つ言っておきたいんだけどさ」
「おや、死神様からのご神託か?」
「冗談はやめ……ないだろうからもういいけど……貴方もうしばらくしてギルドが拡大してきたら、うちの情報攻略組とかに売ろうとしてない? だとしたら、止めて欲しいんだけど」
「……何故、そう思う?」
「別に根拠はないけどさ。プレイヤーを救おうとしてる攻略組にプレイヤーを殺させる、とか貴方が好きそうだなって思っただけ」
「それは認めよう。それで? もし俺がそうしようとしてたとして、それを止めたらどんなメリットが俺にあるんだ?」
「ん、単純なメリットだけどね。もっと大きな戦争を起こしてあげるよ。全部のプレイヤーを巻き込めるような、そんな戦争を」
そんなやり取りも終わって結構な時間が経ってから、シルバーなんたらの人が部屋から出てきた。
「あ、終わった? どう? 満足出来た?」
「……いや、どうにも怒りが、憎しみが収まりそうもない。あんな淫売以下の豚に仲間が殺されて……この恨みをあの女1人にぶつけても……晴れないんだ」
「だったら私達と一緒においで? 世界に、私達の悪意を刻み込んであげようじゃないか」
他人のためになりふり構わず頭を下げて、仇ですら死を望まなかった彼も、一皮剥けばこれこの通り。
私自身が悪意を持って人を貶めるのも好きだけど、誰かを唆して同類になってもらうのも悪くない。
結局のところ、私は人でなしなのだろう。
1日に1文字も書けない時もあれば一気に進む時もある。もうこれ(投稿頻度が自分でも)わかんねぇな