どうしてこいつらはやたらと私に関わってくるのだろうか。昔から人の心は理解は出来ても分かってはいなかった私には、当然その答えは分からない。
「ユリさんじゃないですか! マッピングするんだったら俺達も誘ってくれればよかったのに!」
「……ん、そうだね。まぁ今回はレベリングのついでだったからさ。許してよ」
そんな言葉で納得するとも思わないがとりあえず言い訳を並べてしまう。罪悪感がある訳でもないが……あまり問い詰められると何故だろうか、何となく落ち着かない気持ちにさせられる。
だから、と言っていいのかは分からないが、そこに乱入者の存在があったのはある意味助けではあったのかもしれない。
「私はアインクラッド解放軍、コーバッツ中佐だ。君らはもうこの先まで攻略しているのか? もしそうなら、そのマッピングデータを提供してもらいたい」
「タダで提供しろだと!? てめぇマッピングする苦労が分かって言ってんのか!」
「我々は一般プレイヤーに情報や資源を平等に分配し、秩序を維持すると共に一刻も早くこの世界からプレイヤー全員を解放するために戦っているのだ! 故に、諸君が我々に協力するのは当然の義務である!」
「てめぇ……!」
なんだろう、私を置いてヒートアップしている気がするのだが。そもそも当事者は私とこの軍のおじさんだけだろうに。
どうして他人のためにこんなに怒っているのかが分からない。でも多分、これを普通は優しいと、そういうのだろう。
「いいよ、クライン。どのみちマッピングデータは公開しようと思ってたしね」
「協力、感謝する」
それだけ言い残すと軍のおじさんは迷宮区の奥へと進んで行った。ボス戦の偵察にでも行くつもりなのだろうか。まぁどうでもいい事だ。私には関係がない。
「災難でしたね、ユリさん。それにしても軍の連中、すっかり攻略からは手を引いてたのになんでこんな最前線に来てるんですかね?」
「さぁ……流石に評判が悪くなりすぎたんじゃない? 人数が増えすぎて色々とやらかしてるみたいだしね」
聖竜連合といい、アインクラッド解放軍といい、どうして巨大ギルドというのはこうも悪評ばかり流れているのか。大きな組織に属しているとそれが自分の力だと勘違いする人がそれだけ多いということなのだろうか。
軍の目的についてあーでもないこーでもないと話している風林火山の面々をぼんやりと眺めていると、迷宮区の奥の方から悲鳴が聞こえてきた。
「この声……さっきの!?」
「あー……そうかな。ボスにでも挑みに行ったのかな? もっとちゃんと情報集めてからにすればいいのに」
まさか初見でボス攻略に挑むとは……無謀を通り越してただのバカなのでは無いだろうか。あのやたらと偉そうな中佐とやらは、せっかくなら私が殺したかったのに。勝手にモンスターに殺されるのは獲物を盗られたようでちょっと嫌な気分になる。
そんな事を考えていると、なにやらクラインが真剣な顔をしていた。
「……クライン、もしかして助けに行こうとかしてる?」
「……はい。アイツら嫌な連中だったけど……ロクに情報も無いボスと戦うなんてスゲー怖ぇけど……それでも見捨てたくないんです」
なんでこんなに他人の為に必死になれるのだろう? さっきまで悪態をついていたのに。助ける理由より助けない理由の方が多いだろうに。
「分かったよ。じゃあ、さっさと行こうか。ただし、私たちの安全を優先でね?」
別に人助けをしようと思った訳じゃない。ただ獲物を盗られるのが嫌だっただけ。せっかくここまで関係性を構築したのだから、それをモンスターなんかに盗られるのは癪だ。ただ、それだけのこと。
私達がボス部屋に到着した時には、既に軍は壊滅と言っていい状態だった。
ボス部屋に入った私達の目に最初に入ってきたのは、ボスにやられて吹き飛ばされたプレイヤーのHPがゼロになる様子だった。
「何やってるんだお前ら! とっとと転移結晶で離脱しろ!」
「だ……ダメなんだ! 結晶が使えない!」
「なんだと!?」
そんな会話が聞こえてくる。結晶無効化空間か。ボス部屋でそのトラップが仕掛けられてるのは初めてだな、なんて頭の片隅で考える。
とりあえずボスの行動パターンを把握したいのだけれど、流石に軍の人達を囮にするのは助けに来たという名目上無理だろうし……さて、どうしたものか。
とりあえず武器での攻撃は特に問題は無い。ただいなしているだけで問題なく捌くことが出来る。
問題は特殊行動だ。例えば咆哮、例えば震脚。多くは状態異常を伴うボスのそれらは常にプレイヤーを苦しめてきたものだ。
「く、来るぞ! 気をつけろ!」
そんな事を考えているとタイミングよく後ろから声が聞こえてくる。見た目的に咆哮だろうか。それともブレスとかだろうか。
吸い込む動作が見えたので思いっきり横に跳躍すると、さっきまでいた方へとブレスのような、瘴気のような物を吐いているボスと巻き込まれている何人かのプレイヤーが見えた。
そのうち何人かはHPがゼロになっていたが……それ以外、つまり状態異常が発生しているプレイヤーは1人たりともいなかった。
武器攻撃とブレスしか出ていないのにここまで削られるあたり、軍のプレイヤーというのは余程平和ボケしていたのだろう。
「クライン、とりあえずこっちで適当に削っとくからさ。逃がせそうな人がいたらボス部屋の外まで運んどいてよ。あ、ブレスにだけは気をつけてね」
少なくともゲージ1本削るぐらいまでは行動パターンはこんなもんだろう。面倒事は押し付けて、プレイヤーの命を奪うというある意味ライバルのような存在との戦いに集中する。
「最近はすっかりボス攻略でも死人が出てなくてさー、有難かったのに。私の獲物を盗らないでよ」
自分が如何に罪深いことをしたのか、分からせてやらなくっちゃ。
結論から言うと、ボスは至極あっさりと倒せた。
軍の生き残り──と言っても数人しかいないようだったが──を避難させたあと戻ってきた風林火山を説得してそのままボス攻略に協力してもらったのだか……なんと、結局武器攻撃とただの範囲攻撃であるブレス以外の行動パターンが無かったのだ。
なんだろう。こんな雑魚に獲物を盗られたというのは私がすごくマヌケな気がしてきてしまう。まぁなんでもいいか、勝ちは勝ちだ。と言っても、私にとってモンスターをいくら屠っても大した喜びにはならないのだけれど。
「そんじゃ、後はそっちに任せていい? 転移門とか攻略したって報告とか。私は軍の人達送ってって、あとまぁ……ちょっと野暮用済ませてくるからさ。ね、お願い!」
上目遣いで申し訳なさそうな雰囲気を纏って。こういう事は私の十八番だ。
無事面倒事を押し付け、風林火山の姿が消えたところで軍の人達とお話を始める。
「……さて、それじゃさっさとこんな所からは帰ろうか……って言いたいんだけど、その前にちょっとだけ聞かせてもらいたいことがあるんだけどいいかな?」
話したい相手は軍の……というより、こんな無謀な作戦を実行に移したお偉いさん。露骨な焦りが透けて見えるこんな作戦を立てたその人とはきっと面白い話が出来るだろうから。
久しぶりに訪れたはじまりの街。そこに拠点を構えるアインクラッド解放軍の、実質的なリーダーであるキバオウ直々の命令であったと軍の生き残りくんは証言してくれた。
命を助けて貰ったという恩義を感じているのだろうか、キバオウと話がしたいと言うと彼らはすぐにキバオウと話せる場を作ってくれた。
案内された部屋へと向かいノックして数秒、入れという声を受けて久しぶりにトゲ頭君とご対面する。
「久しぶりだねキバオウ。最近は随分と頑張ることにしたんだね。びっくりしたよ」
「けっ、イヤミを言いに来たんか? ずいぶん暇そうで羨ましいこっちゃなあ。ワイは忙しいんや、用がないならさっさと帰ってくれへんか」
「あはは、もちろんそんな訳ないじゃない。ただちょっとした失敗をしてたみたいだからさ。手助けが欲しいんじゃないかって思ってね」
「……なんや、イヤミったらしく言ってないで、もっとはっきり言ってくれんか」
イヤミったらしいとは心外な。まあでもそっちがそういうならお言葉に甘えて手早く進めさせてもらうとしようか。
「じゃあ言わせてもらうけど……軍のもう1人のトップ……シンカーだっけ? あいつ、邪魔じゃない?」
「それは……いや待て、なんでそんな事を言って……何が望みなんや?」
おいおい、馬鹿は馬鹿らしく与えられた餌をただ食べていればいいものを……まあいい、何か適当に理由をつけとけば納得するだろう。
「そうだね……ギルド内部が統一されれば軍はアインクラッドで最強のギルドになるだろうから、そこにでかい貸しを作っておきたいっていうのは理由にならないかな?」
「……ええやろ、それで納得したるわ。それじゃもっと詳しく話を聞かせてもらおうやないか」
詳しくと言われてもそれほど話すことがある訳でもないが、主な話は2つだ。
現在アインクラッド解放軍をキバオウと共に仕切っているシンカーを排除してキバオウに指揮系統を集中させ強靭な組織とすること。
その方法はこちらが担当するから彼を安全圏の外に連れ出してもらいたいこと。
シンカーの排除というのをどの程度まで考えているのかは分からないが、とりあえずはこちらの要求を飲んでもらうことが出来た。たとえ後から手段について文句を言われたとしても、実行さえしてしまえば最早どうにもなるまい。あとは、実行する日付、場所だけ決めてお開きだ。
何日か経って、話し合いの当日。選りすぐりの3人を連れて私達は会場に先回り。
「姐さーん、この辺でいいっすかねー?」
「んー……ま、いいんじゃない? それじゃ今回の確認だけど、シンカーと取り巻きの3人が話し合いのために向こう向いたらスタート。今回は手加減する必要も無いから各人好きなやり方でさっさと殺すように。シンカーは私が担当するから後は適当に一人一殺でよろしくね。なんか質問ある? ……ないなら、とりあえず待機で」
とりあえずはここをしくじらない事が肝心だ。ここで失敗したらキバオウは攻略失敗と暗殺失敗の2つを犯したことになる。流石にギルドには居られなくなるだろうし……そうなったら、精々殺人を正当化する前例にでもなってもらおうか。
そんな事を考えているといよいよ交渉の時間となりキバオウ他3名とシンカー他3名が事前に決めておいた地点にやってきた。
「お、来たね。じゃああいつらが足を止めて話し込みだしたら行こうか。ま、大したことない相手だし、気楽にね」
やってきたシンカー達はキバオウ達から距離をとって足を止めた。彼らもキバオウ達が何かしてくるかもしれないという想定ぐらいはしているのだろうか? どうでもいい方に注意を向けて本命を見逃すというのは滑稽で笑えるから、それはそれでいいのだけれど。
「それじゃあ合図で。3……2……1、今」
合図と共に駆け出す。取り巻きどもは任せてシンカーの首を狙う。充分接近したところでようやくこちらに気付いた彼が驚愕の表情を浮かべ──首を落とした。
アインクラッド最大のギルドのリーダーも呆気ないものだ。他のメンバーも上手くやったようで、ここに来ていた4人とも悲鳴の一つも上げさせずに殺すことが出来た。……少しつまらないが、今回は仕事のようなものだし仕方ないだろう。
「お……おい! お前ら……アイツらを殺したんか!? 排除って、そこまでするんか!?」
今更何を言っているんだコイツは? 私達が代わりに殺してあげるって事前に……言ってなかったっけ。そういえば排除としか言わなかったか。
「……うるさいなぁ、こうなるかもってホントは少しぐらいは思ってたでしょ? ……ああ、もしかして、自分たちは悪くないとでも思いたいの? だとしたら残念だったね。これは、君達の同意の結果だよ」
まだ何か言いたげな顔をしているが付き合うのも面倒になってきたので話を打ち切る。オレンジの解除は手間がかかるからなるべく早く取り掛かりたいし。
「とにかくさ。これで軍は君の物になったんだから、もっと喜びなよ。ほら、笑顔笑顔。……あ、そうだ。私達のことは内緒だよ? もし話したりしたら……まぁ分かるよね?」
一緒に来たメンバーに声をかけてその場を後にする。これが火種になる事を祈ろうか。しばらくは様子見かな。
オレンジ化も解除して、数日後。面白い話を手に入れた。なんでもシンカーの恋人がお相手を失って復讐を企んでるそうだ。1番の容疑者は馬鹿馬鹿しいことにキバオウらしい。あのトゲ頭くんにそんな度胸があるはずもないだろうに。
とりあえず、その人に会いに行くとしよう。上手くすれば楽しいお祭りが開けるかもしれない。
そして再びはじまりの街。死んだシンカーの恋人、ユリエールと会うことが出来た。
「私に会いたいと言っていたのは貴女ですか?」
「そうだよ。初めまして、ユリエールさん。いや、可愛い復讐者さんかな?」
「……貴女も私を馬鹿にしに来たのですか? だったら、お引き取りを」
「違う違う。むしろ逆だよ。殺人処女にちょっと手解きをしてあげようと思ってね。まぁあれこれ語るより見せた方が早いでしょ」
腕装備を解除して刺青を見せる。それだけで彼女は露骨に雰囲気を変えてくれた。
そして語りかける。復讐の為なら何処までもする覚悟があるのかを。関係ない人間を巻き込んででも自分のエゴを貫き通す覚悟があるのかを。
「言うまでもありません。仇を取れるなら、たとえ私の命だろうと惜しくはありません」
「おっけー。そこまでの覚悟が出来てるなら、私達が手伝ってあげるよ。人殺しのプロ、ラフィンコフィンがね」
これで役者は揃ったかな? それじゃあ祭りの始まりだ。イッツ・ショウ・タイム、なんてね。
彼女と手を組んだ私達が最初に行ったのは羽虫の掃除だ。
軍のプレイヤーの中でもまだ入隊したての、はじまりの街周辺でレベルを上げているような奴ら。そいつらを引率している中堅プレイヤーを含めて皆殺しにする。
それと同時進行で、元MMOトゥデイのメンバー達がシンカーの恨みを晴らすために軍のプレイヤーを殺して回っているという噂を流す。
元々大した仲間意識もない連中だ。誰が元メンバーかなんてことも覚えておらず仲間内で疑いあっててくれるだろう。
ある程度恐怖心を煽ったところで再びキバオウに会いに行く。
数日ぶりに会った彼は何処と無く怯えている様子が見て取れた。
「……今度は何の用や?」
「やー、なんでも天下の軍のリーダー様が毎晩怯えて眠れもしないって噂を聞いたもんでさ。ちょっと様子を見にね?」
「わざわざ馬鹿にしに来たんか! 随分と暇そうで羨ましいこっちゃのう!」
「あはは、そんな怒んないでよ。軽いジョークじゃんか」
顔を真っ赤にして怒り出したキバオウを宥めて本題に入る。
「そんな事よりさ、本題に入るけど……護衛、欲しくない? アフターサービスだとでも思ってくれればいいからさ。こっちとしても、せっかく恩を売った相手が殺されちゃ困るんだよね」
嘘はついてない。キバオウが殺されたら困るというのは本当だ。少なくとも今はまだ。
話を進めて、ラフィンコフィンからキバオウの護衛を行うプレイヤーを数名派遣するという形で合意した。
要は、これで軍のメンバーとして行動できるようになったわけだ。
内心笑いを堪えながらその場を後にする。戻って護衛に出すメンバーを選び、それ以外のメンバーにも指示を出さないと。忙しいが、大きな愉しみのためなら安いものだ。
まずは軍に派遣するメンバーへの指示を出す。内容は軍のプレイヤーのフリをして適当にメンバーを狩って欲しいというものだ。但し、ある程度のプレイヤーは殺さずに敢えて逃がして欲しいという一点を付け加える。
目指すのは軍の内部分裂。元々アインクラッド解放戦線とMMOトゥデイのメンバーで派閥があったのだ。些細なきっかけで派閥争いは起こせるだろう。
他のメンバーに出すのは殺人の指示。……と言っても、いつも通りにただ暴れれば良いだけとはいかないから面子は選ぶ必要があるけれど。
今回やらせたいのは圏内での殺人だ。やり方は単純、寝ているプレイヤーの腕を勝手に操作して、全損決着でデュエルを挑むだけ。
メンバーの中でもきちんと周りを警戒できて、隠密が得意な人を選ばないと。それと後のために人の選別出来て欲しい。
……こういう時、快楽主義者の多いラフィンコフィンは若干不便だ。
指示を出して数日、早くも軍が真っ二つに割れていると派遣したメンバーから報告が入ってきた。最早派閥の内輪だけで集まって、情報のやり取りすらもろくに行われていないそうだ。
疑いが膨れ上がった集団への最後の一刺しをさせてもらおう。
軍のメンバーへと圏内PKのやり方を流す。怯えてる人や怨みの深い人を選んで。
案の定、というかそうなるよう誘導してきたのだからそうなってくれないと困るのだが、恐怖と怒りに支配された馬鹿どもが勝手に殺し合いを始めてくれた。まあ軍からしてみれば、元々死人が出ていたのだから何も変わってはいないとも言えるのだけど。
ここまで来たら私のやることはあと少しだけだ。軍に派遣したメンバーへと伝言を託す。
『随分と大変なことになってるみたいだね。私なら対立派閥の頭と話をつける手伝いをしてあげられるけど、どう? お代は高くつくけどね』
そんなメッセージを送り付けて、すぐに返事が返ってきた。余程怯えてくれているようで何よりだ。
キバオウに少し待つようにメッセージを送り、ユリエールの元へと向かう。
復讐の初心者さんは、キバオウについて話したいことがあると言うとすぐに会ってくれた。
「はろー、復讐者さん。キバオウを殺す算段が付いたけど、興味ある?」
「……有るに決まっているでしょう。それで? 私は何をすればいいんですか?」
「話が早くて助かるよ。とりあえず説明させてね」
そして彼女に伝える内容を簡単に纏めるとこうだ。
まずはキバオウに余計な死人を出さないためにこの対立を終わりにしたいとMMOトゥデイの代表として伝えてもらう。
その際に手打ちの条件としてシンカーの死に関わったメンバーを処刑させて欲しいと伝える。その時に相手の隙をついてキバオウの首を取ればそれでおしまいだ。
「……そう簡単にいくでしょうか。不意打ちがあるかもしれない事ぐらい向こうも考えているのでは?」
「んー、こっちを信じてくれとしか言えないかな。まあ別に気に入らないならそれでもいいよ。キバオウ達に最後の一人が殺されるまでのんびりと良い機会が巡ってくるのを待ってればいいんじゃないかな」
軽く挑発をするだけで、分かりやすく顔色を変えてくれる。今回ばかりはその愚かさが愛おしい限りだ。
「……分かりました。乗りましょう。貴女の言う通り、待っていても未来はありませんから」
「そうそうその調子。じゃあ、さっさと終わらせちゃおうか」
ユリエールとの話を終えて、再びキバオウへと連絡をとる。
シンカーの死に関わったメンバーの命で手打ちにする、という条件を伝えると、案の定拒否してきた。まあ自分の命を差し出せと言われて素直に従う人の方が少ないだろう。
だから、別に本物を差し出さなくても適当な奴を身代わりにして殺させてやればいいだろうと提案してやるとすぐにその案に飛びついてきた。
……どいつもこいつも愚か過ぎて愛おしくなってきてしまうじゃないか。
話がまとまれば、さっさとこの問題にカタをつけたい2人の利害が一致したのか、あとは早かった。
はじまりの街の外のフィールドへと役者が揃う。キバオウとユリエールと身代わりにされた哀れな見知らぬ誰か。それに加えてシンカーを殺した時もキバオウと一緒にいた、腹心であろう3人。
「……あんたがMMOトゥデイの代表とやらか?」
「……そういう貴方はアインクラッド解放戦線のリーダーで間違いありませんね? 大人数で来たようですが、ソイツらが全員シンカーの仇ということですか?」
「アホ抜かすなや。シンカーはんの死に関わってたのはコイツ1人や。……許してくれとは言わんが、コイツの命で手打ちにしてくれんか」
「ええ、1人の命で充分です」
その言葉と同時にユリエールがキバオウに斬りかかる。キバオウと共に来ていた1人が剣を防ぎ、キバオウが距離を取ろうとする。
それと共に残った2人が私に剣を向ける。
「やはり裏切ったな! 糞女!」
ここまでは恐らくここに集まっていた全員が想像していた事態だろう。
そして、転移結晶で逃げようとしていたキバオウを、後ろから刃が切り裂いた。
「丁度いいタイミングだね。期待通りだよ、ジョニー、ザザ」
倒れ伏したキバオウの奥から2つの影……というか、事前に潜ませておいた2人がやってきた。
「姐さーん、言われた通りやりましたよー! って事で約束通りそこの地蔵は俺の好きにさせてもらいますからね!」
……何も分からず身代わりとしてここに連れてこられ、更にはジョニーに目をつけられた彼は、恐らく今日1番不幸な人間だろう。
そんな哀れな彼のことは置いておき、向かい合っていたうちの1人に斬りかかりながら2人に声をかける。
「ジョニーはとりあえず最後に殺しといてくれたらもう好きにしていいよ。ザザはちょっとこっち手伝ってくんない?」
「……分かった」
1対1の形になってしまえば特に言うことも無く、あっさりとキバオウの護衛の3人は命を散らした。
「それじゃあ復讐者さん。好きなように殺しちゃってよ」
ジョニーに麻痺毒を盛られ動けなくなったキバオウに抵抗出来るはずもなく、ユリエールは見事本懐を遂げたようだ。
感慨深い物でもあるのか、キバオウが死んだ後のエフェクトに包まれて彼女は立ち尽くしていた。
そんな彼女の首を刎ねる。
「……相変わらず……容赦が……無いな……」
「ん? んーまぁ生かしとく理由も無いしね。そんな事よりありがとねザザ、今日は助かったよ。ともかくこれで軍を纏められる人間はいなくなったわけだし、目的は達成かな」
「……これから……どうする……何をすれば……いい?」
「んーとね……お祭り?」
翌日、ラフィンコフィンのホームへと戻り、メンバーを集め指示を出す。
「みんな待たせちゃってごめんね! 今日から楽しいお祭りをはじめよっか!」
今回集めたメンバーはラフィンコフィンの中で殺人を愉しめるメンバーを厳選した……つまりは、ほぼ全員だ。
「今まで長いこと我慢させてきたけど、今回は期待していいよ。なんと、軍の人間なら殺し放題! やったね!」
集めたメンバーの中から口笛や歓声が聞こえる。反応が良くて喜ばしい限りだ。
「やり方は単純、軍のメンバーを適当に捕まえてきて、仲間を呼ばせて殺す。新しく来た人にも仲間を呼ばせて殺す。これを繰り返して、殺して殺して殺して……最後の一人までぶっ殺そう!」
それからは……語るまでもないだろう。統制する者のいない羊の群れが、狼に食い尽くされた。
それだけの話だ。
少しずつ継ぎ足しながら描いてったから文章がおかしくなってそうですね不安が凄いゾ、あとアンケートに回答してくれると嬉しいゾ
追記
アンケート終了しました、ご協力ありがとナス!