更新されなくなったRTA小説達に黙祷を捧げつつ初投稿です。
ディアベルは元βテスターだ。だが決してここまで楽に来られた訳では無い。確かに他のプレイヤー達よりも多くの情報を持ちゲームにも慣れてはいたが死と隣り合わせだということには変わりないのだ。
むしろβ時代の知識があったからこそ効率のために安全を犠牲にした場面もあり、大概の初心者プレイヤーよりも苦労したといっても過言ではない。
だからこそ、こうして多くのプレイヤーを集めボス攻略に挑もうとしていることに言い知れぬ高揚感があった。
「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう! 知ってる人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな! オレはディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!」
そんなことを言って笑いを誘う。今日はまだボス攻略を行う訳では無いのだからあまり緊張されていても困る。
どうやら上手くいったようで和やかな笑いが辺りに広がる。
「今日、俺達のパーティがボスの部屋を発見した」
この一言でまた空気が一変する。
「俺達はボスを倒し、第2層に到達してこのデスゲームもいつかきっとクリア出来るってことを、始まりの街で待っているみんなに伝えなくちゃあならない! それが、今この場所にいる俺たちの義務なんだ! そうだろう、みんな!」
周りのプレイヤーから拍手が飛んでくる。どうやら檄は上手くいったようだ。内心で安堵のため息をつく。その後集まってくれたプレイヤー達にパーティを作ってもらったところで一人の男が乱入してきた。
「ちょお待ってんか!」
キバオウと名乗ったその男はボスの前に言わせてもらいたいことがあると告げ、こちらとしては頭の痛くなるようなことを話し出した。
「こん中に、今まで死んでいった2000人に詫び入れなアカンやつがおるはずや!」
「……キバオウさん、君の言うやつらとはつまり、元βテスターの人達のことかな」
「決まっとるやないか! β上がりどもは、こんクソゲームが始まったその日に、ビギナーを見捨てて消えよった! やつらは美味い狩場やらボロいクエストを独り占めして、自分らだけポンポン強なって、そのあともずぅっと知らんぷりや。
こん中にもおるはずやで! β上がりのヤツらが! そいつらに土下座さして、溜め込んだ金やアイテムを吐き出してもらわな、パーティメンバーとして命は預けられんし、預かれん!」
余計なことを言ってくれた。大体、今からみんなで協力しようという時にわざわざ不和の種を持ち込んで何がしたいのか。
宥める方法を考えていると、プレイヤー達の中から1人の女性が出てきた。
ユリと名乗ったその女性は元βプレイヤーだと明かすと、あろうことかキバオウの要求通りに土下座をしてみせた。
他のプレイヤーが呆気にとられている間に言葉を続ける。
「確かに初心者を全員面倒見る、なんてことは出来なかったよ。そのお詫びにアイテムを差し出せって言うなら従う。でも、1つだけ撤回してもらいたいんだ」
「なんや、見捨てたことを認めるんなら何を撤回しろ言うんや」
「それを。βプレイヤーにだって初心者を見捨てなかった人はいた。彼らの努力を無かったことにするなんて、私は許さない」
2人の間に険悪な空気が流れたところで新たに1人のプレイヤーが声を上げる。
「発言いいか?」
エギルと名乗ったそのプレイヤーは街で無料配布していたというガイドブックをみんなに見せ、これを製作したのはβプレイヤーだと言い、少なくとも情報に関しては平等に手に入ったはずだと主張した。
「俺達はどうボスに挑むべきなのか、それがこの場所で論議されるとオレは思っていたんだがな、少なくとも、よってたかって女の子に土下座させるために集まったわけじゃないだろう」
「キバオウさん、君の言うことも理解はできるよ」
この場を収めるためにディアベルが声を上げる。
「オレだって右も左も解らないフィールドを、何度も死にそうになりながらここまで辿り着いたわけだからさ……どうしても元テスターとは一緒に戦えない、っていうなら、残念だけど抜けてくれて構わないよ、ボス戦ではチームワークが何より大事だからさ」
「……ええわ、ここはあんさんに従うといたる、でもな、ボス戦が終わったら、キッチリ白黒つけさしてもらうで」
なんとかこの場をまとめることが出来たようだ。最後にユリにボスの情報の提供を求め後日纏めてきて貰う約束を取り付ける。
「よし、明日は朝10時に出発する。では解散!」
翌日、ディアベル一行は何の問題もなくボス部屋の前まで辿り着くことが出来た。
「改めて確認だ。各隊の動きは事前の打ち合わせのとおりに。アイテムやコル、経験値はドロップした者の物とする。また、ボスの行動がβ時代と大きく変わっているようなら情報を取りつつ撤退する」
ボス部屋の前で今回のボス攻略戦の最後の打ち合わせを行う。
大丈夫、β時代も1層のボスはそこまで強く無かったのだから、40人を超えるプレイヤーが集まった今ならまず負けることはないだろう。
「俺から言うことはたった1つだ、勝とうぜ!」
最後に見栄を切りボスとの戦闘に突入する。
ボスとの戦いは順調に進んでいた。ボスの行動にβ時代との変化も見られず、事前に決めていたとおりに戦闘を分担出来たため、ボスとの戦闘を取り巻きに邪魔される事もなかった。
そのままボスのHPゲージを残り1本まで削り切ったところでボスが武器を投げ捨てる。どうやらβからの変化はないようだ。そう判断し、ディアベルはラストアタックボーナスを狙いに行く。
「ディアベルさん戻って! 武器が違う!」
そんな叫び声が聞こえボスを見る。武器が違う? 途中で武器が変わるなんてことは事前の情報にもあったはずだ。そこまで考えボスの武器を見たことでようやくその事前の情報と違う武器を持っていることに気がついた。
慌てて飛び下がろうとするも若干遅く、ボスの攻撃を喰らってしまう。さらに悪いことにボスの攻撃にはスタンの状態異常が付与されていた。
回復も回避も出来なくなったディアベルの視界に、ソードスキルを発動させようとするボスの姿が映る。
ああ、これもβ出身であることを隠してボスドロップを得ようとした報いか。そんなことを思って死を覚悟した時、前ではなく横から衝撃を受け吹き飛ばされる。
何が起きたのか分からず視線をボスの方に向けると、そこには自分の代わりにボスのソードスキルを受け打ち上げられているユリの姿があった。
不幸中の幸いというべきなのか、ボスの連撃を受けても彼女のHPが削り切られることは無かったようだが、2人も死にかけたという事実が他のプレイヤーに動揺を生んでしまう。だが、
「アスナ!」
ユリが名前を呼ぶのと同時に彼女とパーティを組んでいたもう1人の女性プレイヤーが飛び出し、ボスの武器にソードスキルを打ち込むという神業を見せ攻撃を受け止める。
ディアベルが呆然としているうちにユリは回復ポーションの使用を済ませボスとの戦いに戻る。
自分と同じく死にかけた彼女が再び立ち向かっているのを見て奮い立たないほどディアベルは臆病ではなかった。
「彼女達を死なせるな! CからF隊はセンチネルを止めろ! A、B隊は俺に続いてボスを囲め!」
武器が変わっているという不測の事態はあったものの、結局は1層のボスであるためであろう。ボスのHPゲージが0になるのにそう時間はかからなかった。
一際大きな破砕音とともにボスの姿が消滅した。
「……やった、のか?」
「ボスを、倒せた?」
周りのプレイヤーが呟いてる声が耳に入るが、ディアベルはそれらを無視して自分を助けてくれた彼女に謝罪をするために駆け寄っていく。
「ユリさん、すまなかった! 俺が先走ったばかりにあなたを死なせてしまうところだった!」
勝手に突っ込んで死にかけたあげく彼女に助けられたのだ。ディアベルはどんな罵倒でも受け入れるつもりでいた。だが彼女は、
「いや〜お互い死ぬとこだったね。まぁ、生きてるんだから問題ないでしょ」
などと言って話を終わらせようとする。
しかし……とディアベルも食い下がろうとするものの、
「ボスを倒したリーダーがそんな暗い顔してちゃダメだよ。結局私達は誰も死なずに勝ったんだから、笑顔で締めてくれなきゃ」
そうでしょ? ナイトさん。なんて笑顔で言われてしまえば、ありがとう、と感謝の言葉を残すぐらいしか出来なかった。
「みんな! 危ない場面もあったけど、俺達は誰一人欠けることなくボスを倒した! ……実は、こういう場面があったら言ってみたいセリフが昔からあったんだ。
……勝鬨を上げろ!」
デスゲームの開始から実に1ヶ月、遂に第1層が攻略された。
実際ディアベルさんってなんで突っ込んだんですかね。ラストアタックボーナスにしてはその後もしばらく戦ってたし…アニメと小説で違うのかな?
あっ、そうだ(唐突)そろそろまた死人が出る予定だから苦手な人は気をつけてね!