善逸が出久の弟としてヒロアカ世界を生き抜く話 作:冬のこたつのおとも(みかん)
ヒーローたちがきて、敵連合は撤退していった。
そのあと善逸の知り合いらしき奴らは身元調査のために雄英高校の校長室へと連れていかれた。
俺は他の生徒達と共に教室に戻って、保険室で休んでいる善逸の分の荷物もまとめて保険室へ立ち寄った。
そこには既に身元調査が終わったのか、善逸の知り合いらしき二人と善逸の兄貴がいた。
善逸の知り合いの俺と対峙した方の奴に「君も一緒に善逸が起きるのを待たないか?」と聞かれたが、俺は善逸の荷物だけを置いてその場から立ち去った。
俺はこれ以上俺の知らねぇ善逸を見るのが怖かった。
敵連合と行動を共にしている奴らと知人のように話すあいつ、対オールマイト用の敵に意識を失くした状態で果敢に挑むあいつ、どれも俺の知らねぇ善逸だった。
俺の知っている善逸は本当に上面でしかないことに、今日気づかされた。
それに気づいて俺の知ってる善逸がどんどん遠くに行っちまうような気がした。
俺の中で、善逸は出会ったあの日からヒーローだった。
けれど、その本人は俺に自分の抱えている悩みや、気持ちは何一つ教えてはくれねぇ。
別に善逸が何者であったとしても関係ねぇんだ。俺にとってはいつまでも善逸はヒーローだからな。
けれど善逸の中での俺が、ただの知り合い程度じゃ我慢ならねぇよ。
なぁ善逸、
「お前にとって俺は、一体なんなんだ?」
俺の声は放課後の夕日が照らす静かな廊下に木霊して、返事がかえることなく消えていった。
朝学校に着くと、教室内での会話は昨日の話題で持ちきりだった。
それがなんだか日常に戻ってきたって感じを強く抱かせた。俺は先日先に帰ってしまった焦凍を見つけて声をかけた。
「おはよう、焦凍。焦凍は怪我とか大丈夫だった?」
「あぁ、俺はなんともねぇよ」
表面上はいつも通りだったが、その心中で鳴っている音は複雑そうで、そういえば俺は焦凍の制止の声を振り切って炭治郎の元へ向かったんだったと思いだした。それを謝ると、彼はより一層複雑な音になって「気にするな」とぽつりとこぼすように返した。
それが追求を嫌がっているように感じたので、会話はそこで終了して俺は席についた。
時計の秒針が8時24分を指すと、飯田くんが皆に席に着くよう呼びかけたけれど、その時席に着いていないのは彼だけだった。
飯田くんは真面目なのはわかるけど、時々ズレてるんだよな。
「おはよう」
ガラっと教室の扉が開いて、一人の男性が姿を現した。しかしその姿は包帯でグルグル巻きにされていて、俺は思わず叫んだ。
「いぃぃぃやぁぁぁぁ!!!!ミイラ男ーーーっ!!!」
「緑谷弟静かにしろ」
その俺の叫びに周りの皆はビクッと一瞬肩を震わせて驚いていた。それを見かねたミイラ男に咎められて、やっと彼がこのクラスの担任の相澤先生であることに気がついた。
「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ、戦いは終わってねぇ」
戦いという言葉にクラスの皆の空気がピリッとしたが、先生の次の言葉でそれは霧散して、興奮へと変わった。
「雄英体育祭が迫ってる」
「「「くそ学校っぽいのきたー!!!」」」
雄英体育祭といえば、数多くのプロヒーローたちもスカウト目的で観覧するという、この雄英高校に在籍している生徒たちからすると一年に一度の一大イベントだ。
しかし、そこで当然の疑問が浮上する。
「敵に侵入されたばっかなのに、体育祭なんかやって大丈夫なんですか?」
「また襲撃されたりしたら…」
その生徒達の不安に対する返答に、相澤先生は体育祭を開催する理由と、変更点などを述べた。雄英高校側も今回の事件をふまえて、その対処法を考えているらしい。それに対して、生徒たちはまだ完全に不安を取り除けてはいないものの、各々が体育祭を前向きに考え始めていた。
初めて敵という狂気を間近に見たというのに、この切り換えの早さは流石だな、と俺は感心した。
「ホームルームは以上だ。それと緑谷弟、後で職員室にこい」
「え…?あ、はい」
いきなりの呼び出しに驚いたが、よくよく考えれば俺は前の敵襲撃事件で一人相澤先生の元へ飛び出したり、いろいろやらかしているためそれについての話かな、と見当をつける。
出久に大丈夫?と心配されたへけれど、俺はヘラリと笑ってみせた。
放課後になって、俺は職員室を訪ねた。ホームルーム以降も焦凍は表面上いつも通りだったから俺もいつも通りに接することにした。だから焦凍は今日も先生との話が終わるまで教室で待っていてくれている。
出来る限り早く戻ろうと思って俺は足を速めて相澤先生の元へ向かった。
「来たか。早速だが、敵と対峙してどう思った?」
「どう、とは?」
質問の意図がわからず、俺は聞き返した。俺の反応に彼は合理的じゃないと感じたのか、眉間の皺を少し深めて言った。
「個性が扱えていれば、と思わなかったか」
「!!」
核心をつく言葉に俺は目を見開いた。
確かに俺は思った。前からわかっていたことだ。けれどそれは俺の努力不足だと納得して、いや誤魔化して考えないようにしていた。
「今回の一件で断言できる。今のお前じゃ、万人を救えるヒーローにはなれない。個性を使わずして犠牲が出たとき、お前は必ず後悔する」
相澤先生から突きつけられる現実、それは俺が心の何処かでずっと引っかかっていたものと合致している。
もし今回のように、俺が個性を使わないことで、俺が持っている力を行使しないことで、俺のせいで誰かが傷ついてしまったら。
それを考えたことは何度もある。使うべきじゃない力だと思うと同時に、使わないと救えない命があるんじゃないかと、この学校で学ぶ間に思い始めていた。
けれど、俺の体に絡みついた前世の業というものは、そう簡単に切れるようなものではなく、俺を掴んで離さない。
これがお前の罪だ、これがお前の怠慢の結末だ、と突きつける。
俺にその蔦を断ち切る権利は、ない。
「俺は…個性を使いません」
「…お前は何かに囚われて雁字搦めになっているように感じる。そんなにそれはお前にとってそれほど大事なものなのか?まぁいい、お前がそのつもりなら此方もやり方を変える」
相澤先生が決意したような音を鳴らして俺の目を見た。包帯だらけの中からひっそり窺えるその眼光は義勇の心を宿している、ヒーローの目だった。
「今後も個性を使わないつもりならば、次の体育祭で結果を残せ。総合結果3位以内に入り表彰台に上がること、それがお前の有用性を示す条件だ。それを為せたなら、お前のやり方を認めよう。
しかし為せなかったら、
そのときはお前を除籍処分とする」
波乱の体育祭が、もうすぐそこまで迫っている。
簡易な設定
我妻善逸(緑谷善逸)
出久くんの義理の弟
個性:鬼化
基本戦闘スタイル:雷の呼吸
鬼化の個性は身体能力、回復力を飛躍的に上昇させるかなり汎用性も高い、強個性。鬼滅時空の鬼のように藤の花の毒が苦手だったり、日光が苦手だったりはない。ただ、使いすぎると暴走して食人衝動に襲われる。トラウマは雷。意識を失った時にいつも以上の力が発揮される。
轟焦凍
幼少期に善逸に救われてから、善逸に対してかなり好意高め。原作とは違い、すでに左側の個性も使うし、表情も多少穏やか。いつも隠し事ばかりの善逸の助けになりたいと思っているが、中々うまくいかずにもどかしく思っている。せめて善逸の心を少しでも癒すことができたならいいと思っている。
善逸にとって自分という存在はどうなっているのかを疑問に思い始めた。
緑谷出久
善逸のことはちゃんと家族で兄弟だと思ってる。雨の日の一件以来落ち込んでいる善逸を気にかけている、無謀だけど優しいお兄ちゃん。伊之助がヒーロー候補生と知った時の反応は納得した感じだった。
竈門炭治郎
今世でも賑やかな六人兄弟の長男
個性:爆血
基本戦闘スタイル:ヒノカミ神楽、水の呼吸
前世で善逸が目の前で死んだことはかなりショックだった。なまじ失うことの多い人生を歩んで来たため、仲間が傷つくことがトラウマとなっている。現在義勇さんの創設した事務所にインターン生として所属しており、敵連合の潜入任務中。潜入任務では顔を隠しており、極力個人情報も伏せているため離脱はわりかししやすい状況。父が存命のため、花札柄の耳飾りは受け継いでいない。
嘴平伊之助
全力で周りを振り回す末っ子気質兼、親分
個性:??
基本戦闘スタイル:??
前世での善逸の死はショックではあったが、自然の摂理というものを大切にしている彼は炭治郎ほど引きずってはいない。それでも今世ではばっちり守りきるつもり。
なんていったって俺様は親分だからな!!
本文内で触れられなかった設定
禰豆子には個性を改変するという個性が宿っていて、それを悪用しようとする輩が度々現れます。全く違う系統の個性には変えられなかったり、一日一回しか使用できなかったり、失敗すると対象者が無個性になったりといろいろ制約のある個性だが、それでもそれを悪用したがる敵は山ほどいる。それを見かねた義勇さんの厚意により、禰豆子及び竈門家には毎日プロヒーローが二人護衛として付いているため基本的に安全。
炭治郎の実家竈門ベーカリーはパンを焼く火加減が絶妙で大繁盛してるとか。
伊之助の育て親のひささんは実は元プロヒーローだとか…?
次回の更新は1月30日18時を予定しておりますので、読んでいただけると嬉しいです!