善逸が出久の弟としてヒロアカ世界を生き抜く話   作:冬のこたつのおとも(みかん)

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今回は心操くん視点から始まります。


デタミネーション(前編)

幼い頃から、敵向きの個性だねって間接的によく言われた。俺の個性は『洗脳』。俺も他人が持ってたらまず悪用を思いつく。だからそう言われるのは仕方のないことだ、わかってる。

でもさ、憧れちまったんだよ。

皆を助ける、ヒーローってやつに。

この体育祭、結果によってはヒーロー科移籍も検討してもらえるって話だ。それが普通科であろうとこの雄英高校に進学することを決めた決め手だった。他にもヒーロー科はたくさんある。ここじゃなきゃ俺でも受かったところがあるだろう。それでも、学ぶならやっぱりヒーローの最高峰であるここで学びたい。

俺はもう他の奴らに一歩も二歩も先行かれてんだ、ここで足止めされてるわけにはいかないよな。

たとえ、ヒーローっぽくないといわれても。

第一種目もなんとか潜り抜けた。

第二種目は騎馬戦。

普通科の生徒はほとんど残っておらず、俺の個性は伝えればどうせ一線引かれるに決まってる。

それなら俺がこの種目で勝ち残るにはこれしかねぇんだ、俺はそう自分に言い聞かせて適当に辺りでまだ騎馬戦の組を作っていない人を見繕い、そいつに声をかけた。

皆俺の個性にどんどんかかっていって、順調にチームを作り上げた。

あと一人、一人くらいは寄せ集めではない実力のありそうなのをメンバーに加えたいと思ったとき、太陽の光を反射して輝いて見える派手な金髪頭が目に映った。

こいつは確かヒーロー科の緑谷善逸ってやつだ。個性はよくわかんねぇけど一次予選の順位も悪くなかったはずだ。

よし、最後のメンバーはこいつにしよう。

 

「なぁ、俺と組まないか?」

「え?俺はその…」

 

かかった。

緑谷はそこまで声を発したあと、顔を伏せてピクリとも動かなくなった。

これでいっちょ上がりだ。

 

「じゃあ早速、他の二人と一緒に騎馬を作れ」

「…」

 

俺は緑谷に指示を出した。

しかし、いつまで経っても動き出す気配がない。俺の個性、洗脳は俺の問いかけに返事を返すことを条件に発動する個性だ。

こいつはさっき俺の言葉に反応を示したはずだ。

なのに何故、こいつは動かない?

何か妙だ。

 

「おい、聞いているのか?」

 

俺の意図しないところで、こいつに何かが起こっているような、そんな異様な雰囲気だった。

俺は痺れを切らせて緑谷の肩をガシっと掴んだ。

すると緑谷はやっと電源が入れられた電化製品のようにピクッと体を動かして、伏せ気味だった顔を上げた。

その表情はなぜか、両目が固く閉じられていた。

おかしい、こんな指示は出していないはずだ。

 

「それが君のやり方?どうして普通に誘わないの?」

「は?」

 

緑谷が勝手に話し始めた。こんな事態は初めてで俺は困惑を露わにした。

おそらくこいつには俺の洗脳が作用していない。

 

「それがお前の個性か?」

「なんのこと?」

「とぼけるなよ。俺の個性が全く効いてないじゃないか。お前は個性を消す個性なんだろ?」

「俺は個性を使っていないよ」

 

個性を使っていない。そいつのその言葉に俺は焦りを覚えた。

そんなはずはない、そう思いたいが実際緑谷に俺の個性は効果を発揮してはいない。

それではつまり、まだ俺の知らないこの個性の発動条件があるということになってしまう。

今まで何度も試してきたこの個性、今更違う条件が見つかるなんて冗談じゃない。

 

「じゃあなんで俺の個性はお前に聞かない!あの時、確かにお前は俺の問いに返事を返したはずだ!例外はない!!」

「それは俺にもよくわからないけれど、可能性があるとするなら俺が今眠っているからじゃないかな?」

「はぁ!?」

 

何を言っているんだこいつは。

だって今立って俺と会話してるじゃないか。

それが睡眠状態だと?馬鹿げてる。

個性以外でそんな芸当ができるのか?

そんなの、なんでもありじゃねぇか。

 

俺とお前は、そんなに違ぇってか?

 

「ハハ…。なんだよそれ、強個性持ちは芸当にも優れてるってか?」

 

俺は乾いた笑いを漏らしながら片手で顔を覆い、天を仰いだ。

人は生まれながらに不平等だ。

生まれ持った個性で、今後の人生が大きく左右される。

なりたい職業、叶えたい夢、それを叶えるのはいつだって強い個性を持った奴らだ。

 

「君こそすごくいい個性を持ってるじゃない」

「なんだと?」

 

俺は自身の眉間に皺が寄るのを感じた。緑谷はそんなのお構いなしなのか、目を瞑っているから見えていないのか、気にせず悠々と語り出した。

 

「ヒーローの勝利条件は敵の捕縛、ただそれだけでしょ?でもその裏腹に敵は殺人、監禁、薬なんでもありだ。誰も傷つけることなく敵を捕縛できる君の個性こそ、最も向いている職業だと俺は思うよ」

「!!」

 

ヒーローに向いている。

そんなことを言われたのは生まれて初めてだった。犯罪に使われそうなこの個性を前にして、そのような考え方をできる奴が居るなんて、俺は眼から鱗が落ちたような気分になった。

 

「でも、今回の使い方には俺は賛同できないけどね」

「…」

 

その言葉を聞いて、俺は静かに目を伏せた。

緑谷の言う通りだ。

俺はこのチーム作りの場面で仲間になってくれと頼みもせずに、どうせ俺と組んでくれる奴などいないと決め付けて個性を行使した。

その方が効率がいいからと。

仲間を洗脳するなんて、ヒーローのやることじゃないよな。

 

ビィィィィ!!!!

アラーム音が鳴ってタイマーに目を向けると、それはもう0秒となっていた。

早く騎馬を作らなくてはと、緑谷の方にチラッと視線をやると、既に他の二人と組んで騎馬を作り上げていた。

 

「準備万端じゃねぇか…」

 

俺がそう言うと、緑谷は少し口角を上げて不敵に笑ってみせた。

俺の思考まで先読みされているようで、何を取っても今はこいつには勝てないのだと思い知らされた気がした。

それは個性の差なんかじゃない。

後天的に埋めることのできる差だった。

俺は皮肉を込めて言った。

 

「せめて体のいい当て馬くらいにはなってくれよ?緑谷善逸」

 

いつか必ずお前を追い抜いてやるからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二種目の騎馬戦、そのチーム分けの時間となったが宣戦布告をした手前、善逸と組むわけにはいかず、俺は組む相手を決めあぐねていた。その時、上鳴に声をかけられ、俺はそれに応じることにした。善逸の方をチラッとみると、見かけねぇ奴と会話をしていて、何故個性を知っているクラスメイトと組まないのだろうかと不思議に思ったが、なにか作戦でもあるのだろうとすぐに目を逸らした。

 

第二種目が始まると、俺はすぐに善逸の与する騎馬の元へ向かった。

一体何を思って善逸は見ず知らずの奴と組んだのか、それが知りたかった。

善逸に手があと少しで届きそうな位置まで近づいたとき、背中にゾクッとする感覚が走った。

この感覚には覚えがある。

これは、あの敵襲撃事件のときの雰囲気が急変したときの善逸の気配だ。

 

「下がれ!善逸から距離を取れ!」

「善逸と組んでる奴のポイントを狙うんじゃなかったのかよ!?」

「駄目だ!今近づいたら狩られるぞ」

 

俺の言葉に善逸の異様な様を少し感じたのか、苦言を潜めて後退する上鳴たちに、ホッと張り詰めた息を漏らした。少し近づいただけで、まるで猛獣に睨まれているように全身の肌がピリピリした。

今はまだ、追随どころか、触れることすらままならねぇってことか。

それでも、俺は諦めねぇけどな。

俺は頬に冷えた汗が伝うのを感じながら、無理やり口角を上げた。

お前に勝って、今度こそ言うんだ。

 

お前が抱えてる物、俺にも背負わせてくれ、って。

 

その為に、この場は善逸から踵を返し、緑谷の鉢巻を狙いに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界を割るような歓声に少しずつ意識がはっきりしていって、辺りを見渡すと既に第二種目が終わっていた。

どういうこと????

第二種目の騎馬戦のチーム決めのとき、出久に声をかけようとしたところまでは覚えているけれど、それ以降の記憶がない。

これはまるでかつての任務中に気絶していた頃に似ている。

もしかして俺はまた気絶してしまっていたのだろうか。

それなら当然俺は負けてしまったのだろう。

こんな訳がわからないまま俺は脱落してしまったのか。俺は悔しさからグッと下唇を噛んで肩を落とした。

これでは相澤先生にも、宣戦布告をしてくれた焦凍にも合わせる顔がない。

そのまま他の生徒たちに合わせて観戦席に行こうとした時に、誰かが俺の肩に手を置いた。

 

「善逸、昼飯食いに行こう」

「あっ焦凍…。焦凍は多分勝ったんだよね、」

 

今考えていた人物がいきなり目の前に現れたことで、言葉に詰まった俺を、彼は不思議そうに見つめた。

俺は語尾が弱くなるとともにどんどん顔も下向きになっていった。

 

「なんか落ち込んでるのか?…あぁ、そうか。善逸も三位で第三種目進出だぞ」

「へ?」

 

急に納得したように焦凍から告げられた衝撃的な言葉に、俺は伏せていた顔を上げた。信じがたい事実を噛み砕く前に、焦凍がズンズンと食堂の方へ行ってしまうため、慌てて彼の背中を追いかけた。もっと詳しく事情を聞きたかったけれど、焦凍から鳴る激しい闘志の音が耳にガンガン響いて、それを不思議に思っている間に聞きそびれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みが終わると早速第三種目の説明がされた。第三種目はトーナメント形式の1対1の戦いらしい。

その組み合わせはクジで公正に決められる。

トーナメント自体はレクリエーションを挟んだ後に始まるらしいが、そのレクリエーションは第三種目に進出した生徒は参加するもしないも自由だそうで、俺は参加しないことにした。

第二種目のこともあって、今はどうしてもレクリエーションに参加する気分にはなれなかった。

今回はまだ体育祭だから良かった。けれど、もしまたあの襲撃事件のときのような大事の時に気を失ってしまったら、俺はまた何もできない足でまといになってしまう。

次に意識が戻った時大切な人たちの誰かが欠けてしまっていたら。

そう思うだけで心が凍えるほど恐怖で頭がいっぱいになる。

でもそれを恐れてただ震えるだけの自分でいたくない。

そのために俺は強くなる。

だからまずは、このトーナメントも勝ち抜いて、相澤先生に認めさせて雄英高校に在籍しなくてはいけない。

今世に於いて、この学校ほど力をつけやすい場所はそうそう無い。俺は学んでいかなくてはいけないことがまだ山ほどある。

俺は拳を強く握って司会役の先生をキッと見上げた。

先生が組み合わせを発表しようとした時、一人の声がそれを遮った。

 

「あの、すいません。俺辞退します」

 

それはクラスメイトの尾白くんだった。その言葉で辺りに動揺が走った。尾白くんの話によると、普通科の人の個性により、騎馬戦の記憶がほとんど残っていないらしい。

俺はそれを聞いてハッとした。

焦凍が昼飯中にぽつりと言った話によると、俺もたしかその人と同じチームということになっていたらしい。もしかしたら今回の俺の状態もその人の個性によるものなのかもしれないと思い至った。今日のは気絶ではなかったのか。

そしてそれを理由に尾白くんは辞退し、俺は居た堪れない気持ちになった。

俺も同じ状態だったかもしれないのに、俺は第三種目に参加する資格があるのかな、と心が揺らいだ。

けれど、ここで辞退すれば俺は除籍処分だ。

俺は心の中で葛藤して肩を震わせていると、小刻みに震えている右手を軽く押さえられてそちらをバッと見た。

そこには焦凍がいて、焦凍は俺の手を押さえてただ俺のことを力強い眼光で睨むように見つめていた。

言葉は発していなかったが、その目が「逃げるな」、と言っているように見えた。

俺はたらりと汗を一つ落としてそっと一度頷いた。

それを見ると満足したのか焦凍は俺の手から自身の手を退けた。

そうだ、俺はこの体育祭で自分の真価を示さなくてはいけないんだ。迷ってなんかいられない。

尾白くんの辞退が認められて、代わりに誰をくり上げるかの話が出た時にまた一人、手を上げた。

 

「俺も辞退する」

 

今度は尾白くんに個性を使用したはずの生徒だった。今更お前は何を言うんだと言うように辺りが目を見開いて彼を見つめたが、彼はそれをものともせずに悠々と俺の方に一直線に近づいてきた。

 

「別にお前に言われたからじゃないからな。ただ俺が今回やったことはヒーローらしくなかったと思っただけだ。俺は俺のやり方でヒーローを目指す」

 

彼にもいろいろあるのはわかったが、なぜそれを俺に言うのかが些かわからない。俺の記憶上では、彼と俺は初対面のはずだ。

 

「君はなんでそれを俺に…?」

「君じゃねえ、心操人使だ。第三種目、勝てよ」

 

心操くんは何故か俺を激励して、背中を向けて片手をヒラヒラさせながら観客席の方へと歩いて行った。言っていることの意味が半分以上わからなかったが、くり上がる人が決まり、トーナメントの組み合わせの発表が始まったため、俺は前を向いて気持ちを切り替えた。

 

「抽選の結果、組はこうなりました!」

 

モニターにトーナメント表が映し出され、そこから自分の名前を探す。

俺の一回戦の相手は出久だ。

そのことに俺は苦い顔をした。

出久の個性は自身を強化するものだ。それは俺の最も苦手とする相手かもしれない。

けれど、対オールマイト用敵のときの二の舞いになるつもりはない。俺だってこの日のために鍛えてきたんだ。それに今日は前世使ってきた日輪刀もある。俺は日輪刀をカチャッと一度鳴らした。

 

「善逸!」

「出久?」

「善逸はレクリエーションって参加する?」

「しないよ」

 

俺は後ろから駆けてきた出久を、目をパチクリさせながら見つめた。出久は少し速くなった息をフーッと深く吐き出しながら整えた。そして彼は何か決意したような音を鳴らしながら口を開いた。

 

「じゃあさ、少し話さない?」

 




次回の更新は2月4日18時を予定しておりますので、読んでいただけると嬉しいです!
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