善逸が出久の弟としてヒロアカ世界を生き抜く話   作:冬のこたつのおとも(みかん)

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デタミネーション(後編)

促されるままに出久と共に無人だった控え室の椅子に腰掛ける。

さっきまでの騒音は鳴りを潜めてシンとした部屋に、二人の息遣いだけが音を発していた。

何度かの瞬きの後に、やがて意を決したように出久が言葉を紡いだ。

 

「あのさ、今朝のことなんだけど、どうして個性を使わずにヒーローになれることを証明するなんて言ったの?」

「それは…」

 

俺は相澤先生に言われたことを伝えるわけにもいかず、答えあぐねていると、出久は質問を続けた。

 

「そもそもどうして善逸個性を使わないの…?善逸は何か強い信念を持って個性を使ってないのはわかるんだけど、その、やっぱり理由くらいは教えてほしいというか…」

 

出久は俺の機嫌を損ねてしまったのではないかと懸念したのか、あわあわと付け加えるように自身の気持ちを述べた。いつもならなんとか前世にまつわることは誤魔化そうとしてきたが、今日は口を割ることにした。もちろん前世の部分は暈かすけれど、炭治郎たちと再会して、前世が確固たるものになったことで、俺は少し安心したのかもしれない。

あの熱烈な記憶は俺の妄想ではなかった。

それと、ただ誰かに聞いてほしかったのかもしれない。

俺は一拍置いてから口を開いた。

 

「特別なやつがいたんだ。あいつは俺のことを嫌ってたし、俺もあいつが嫌いだった。けれど心から尊敬してたんだ。あいつは努力家でひたむきで、俺はいつもあいつの背中を見てた。あいつはいつも不満の音を鳴らしていた。なのに俺は何もしなかったんだ。いつかは分かり合える、そう思ってた。だけど、そんな日はこなかった」

「善逸…」

 

一度話し始めると止まらなくて、俺はどんどん当時のことを語った。

 

「あいつが俺たちを裏切ったんだッ!そのせいでっ、爺ちゃんは!!…………その時、俺とあいつの道は完全に分かたれた」

「…その後、その人はどうなったの?」

 

一瞬声を荒げてしまったが、一度深く呼吸をしてなんとか平常の声色に戻して言葉を続けた俺に、出久は恐る恐る問いかけた。

その問いに対し俺は自嘲気味に笑った。出久もまた、なにも言葉を続けなかった。

俺が殺したよ。

俺は出久の問いの答えを心の中でのみ返事した。

どういう状況下で獪岳が鬼になったのかはわからない。兄弟子が鬼となり、その責任も取って師範が切腹した。

俺にとってはそれが事実で、全てだった。

もちろん、全て獪岳が悪いなんて思ってない。むしろ事の発端は俺かもしれない。

俺がもっと獪岳とうまくやっていけてたら。

俺がもっと爺ちゃんの手を煩わせない奴だったら。

俺がいなければ、獪岳もあんな風にならなかったかもしれない。

 

「俺の個性とあいつはよく似てる。だから俺は個性を使わない。これはあいつと同じ過ちを犯さないというケジメであり、戒めなんだ」

 

出久はかける言葉が浮かばないのか、口を開いては閉じてを繰り返していた。少し話しすぎてしまったのかもしれない。

そもそも前提が違うんだ。

敵を捕縛することのみが勝利条件のヒーローと、鬼を殺すことが勝利条件の鬼殺隊。

その差異が、彼らにとって俺を異端者たらしめてしまう。

けれど俺もヒーローを目指す以上、ずっと鬼殺隊の気持ちではいられない。

慣れていかなくてはいけない、この世界に。

俺は何も言えずにいる出久に一言「試合前にこんな話してごめんね。気にしないでいいからね」と残してその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レクリエーションが終わり、第一回戦の俺は早々に入場ゲートで控えていた。もう慣れてきたとはいえ、やっぱり待ち時間というのは緊張する。あの歓声の中、出久と1対1で戦わないといけないと思うと、膝がガクガクなりそうだ。緊張を解すには深呼吸をするといいというのをどこかで聞いたような気がして、俺は深く息を吸って吐いた。もうすでに無意識下で行われている全集中の常中を少しだけ意識して行う。

 

 

入場する時間となり、俺と出久はセメントス先生によって作られたフィールドに足を踏み入れた。

出久と向かい合って立ち止まる。

出久は個性の発現が遅く、まだ個性をうまく扱えていない。

ならば開始早々仕掛けて相手に準備する時間を与えない戦法が妥当だ。

 

「第一回戦、緑谷出久対緑谷善逸!スタートォ!!!!」

 

審判が開始と宣言した瞬間、俺は飛び出した。

出久との距離を縮めて、出久の間合いに入った瞬間、それを見計らっていたように出久は自身の右手の中指を犠牲にして個性を使った。

 

「ッ!!」

 

直撃したわけではないが、発生した暴風に場外まで飛ばされそうだ。俺は必死に足に力を込めてなんとか地面にかじりつく。それでも開始位置よりも後ろまで押されてしまった。これでは安易に近づいてはすぐに場外に押し出されてしまう。

俺はまた出久に向かって駆け出して、出久がそれを個性で防いだ。今度は風を凌ぐようにセメントの隙間に日輪刀を突き立てる。そうすることで先ほどよりは押し出されることはなかった。けれど何度も繰り返せば床の方が抜けそうだ。

 

「どうして個性を使わないんだ、善逸」

 

何度か応酬を続けた後、不意に出久に声をかけられて出久の方に視線を向けた。

 

「善逸は速くて剣術も精強だ。けれど速さや技巧だけでは攻撃力の方はどうしても制限されるんだろう。でもそれは善逸の個性を使えば解決できるんじゃないのか」

「出久…。でも俺は、」

「皆本気でやってる。勝って、目標に近づくために。1番になるために。個性を使わずに勝つ?まだ僕は善逸に傷一つつけられちゃいないぞ…!全力でかかってこいッ!!」

 

ドンドンと鳴り響くような怒号の音を発しながら、出久は吠えるように叫んだ。幼少期の喧嘩以来、腫れ物のように避けられていたものをいきなり鷲掴みにするような言葉に、俺は動揺した。

それでも何かしなければと焦りを募らせた俺は迷った気持ちを隠しきれず、鈍った動きで出久に近づいた。結果、もろに個性をくらってしまった。けれどかなり力は抑えられていたようで、受け身を上手く取り、負傷はそれほどではなかった。けれど、それを皮切りに出久の猛攻は加速する。今まで向こうから動いてはこなかった彼が、今度は個性をバンバン使いながら走っていく。自分を壊しながら、痛みに耐えながら、フラフラになっても足を前に踏み出している。

 

「どうして、そこまでッ!」

 

自分を犠牲にして戦う。

その気持ちは民間人を守るためにしのぎを削ることの多かった俺にも理解できる感情ではあるけれど、聞かずにはいられなかった。

 

「期待にッ応えたいんだ。笑って答えられるようなッかっこいい、ヒーローに、なりたいんだぁ!!だからッ!全力でやってんだっ、皆!善逸の過去も、善逸の決心も、僕なんかには計り知れるもんじゃない。でも全力も出さないで証明するなんて、ふざけるなって今は思ってる!」

 

だから僕が勝つ!善逸を超えて!!、そう叫んで出久は拳を振り上げた。俺は咄嗟に急所を避けたが避けきれず、また体は突き飛ばされた。何度か回転して勢いを殺し、地面に足をつける。

身体中を打ち付けて、あちこちが傷んだ。擦れて血が出た部分はなんとか呼吸で修復したが、圧倒的攻撃力を前に、今の俺ではやっぱりただ攻撃を耐えることでやっとだ。

けれど、それでも、

 

「俺は…、鬼の力を…っ」

「善逸のッ、力じゃないか!!!」

 

 

使わない、その言葉を遮るように出久は叫んだ。祈るような、訴えるような、熱のこもった声だった。出久は自分のことのように苦しげで、悲しい音を鳴らしていた。

鬼の力、獪岳と同じ力。違う、俺の力だ。俺の個性なんだ。確かに俺の個性は鬼化だけど、鬼じゃない。似てるようで全くの別物なんだって、そんなのは都合がよすぎるかもしれない。

そう思うのに、どうしてだろう。

今まであんなにも憎い力だったのに、恐ろしい物だったのに、見るのも嫌だったのにさ、なんだろうこの気持ち。

こんなにも真剣に、願われて、焚きつけられて、答えずにはいられない。

 

俺の中で個性を発動する音が鳴った。体がドンドン作り替えられていくのを全身で感じた。その感覚はまだ怖いけれど、今はそれよりもこの力でどれほど俺はやれるのかを試したいという気持ちの方が勝っていた。だけど俺はこの力には溺れてはいけない。線引きを超えない、その理性こそが俺を人間に留めてくれるものだと知っている。

俺は走り出した。呼吸に鬼化した身体能力が乗り、さっきの速さとは比べものにならない速さだ。

 

シィィィィィィ。

 

『雷の呼吸 漆ノ型 火雷神』

 

俺が技を放つと同時に、出久は個性を使った。漆ノ型は前世の生涯をかけて編み出し、洗練した技だ。俺の誇りであり、生きた証。それを今世で身体強化して放った、そう簡単に破られるつもりはない。

双方の力に耐えきれず、辺りに爆風と共にフィールドを構成していたセメントが飛び散った。砂埃が舞い、目の前が一瞬遮られる。それが霧散して良好になった視界で前を見ると、出久が場外の壁に背中を預けていた。

 

「緑谷出久くん、場外。緑谷善逸くん、二回戦進出!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簡易な設定

 

 

我妻善逸(緑谷善逸)

出久くんの義理の弟

個性:鬼化

基本戦闘スタイル:雷の呼吸

 

鬼化の個性は身体能力、回復力を飛躍的に上昇させるかなり汎用性も高い、強個性。鬼滅時空の鬼のように藤の花の毒が苦手だったり、日光が苦手だったりはない。ただ、使いすぎると暴走して食人衝動に襲われる。トラウマは雷。意識を失った時にいつも以上の力が発揮される。

今回戦闘で初めて個性使用を試みた。まだまだ使い慣れていないため、改良の余地あり。兄弟子のことは爺ちゃんを切腹させたことは恨んでいるけれど、裏切るという行動自体は自分の放置した責任もあると感じている。

 

轟焦凍

 

幼少期に善逸に救われてから、善逸に対してかなり好意高め。原作とは違い、すでに左側の個性も使うし、表情も多少穏やか。いつも隠し事ばかりの善逸の助けになりたいと思っているが、中々うまくいかずにもどかしく思っている。せめて善逸の心を少しでも癒すことができたならいいと思っている。

体育祭、今回こそお前に勝つぞ善逸。

まさか善逸が体育祭の結果で除籍宣告されているとは夢にも思っていない。

 

 

 

緑谷出久

 

善逸のことはちゃんと家族で兄弟だと思ってる。雨の日の一件以来落ち込んでいる善逸を気にかけている、無謀だけど優しいお兄ちゃん。使える物は全て使っていく気概をもっている。まさか善逸が体育祭ry(( 。そして今回壊れ物扱いしていた事案に特攻した。何か悩んでることがあるならお兄ちゃんに相談してねぐらいの心積もりで聞いたら想像以上の重い話に若干気圧されそうになりつつも、なんとか受け入れていこうとしている。

 




次回の更新は2月6日18時を予定してますので、読んでいただけると嬉しいです!
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