善逸が出久の弟としてヒロアカ世界を生き抜く話   作:冬のこたつのおとも(みかん)

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三話目の後編です。善逸と轟くんの決闘の結果はいかに!?


シークレット(後編)

建物に侵入してすぐに氷の音を俺の耳が捉えた。俺は凍らされる瞬間に空中へ素早く回避して、そのまま走り続けた。そして道に迷うことなく突き進む。俺は1分と経たずして焦凍の元へ辿り着いた。焦凍の後ろには模擬核兵器がある。

 

「随分と早い到着じゃねぇか。そういやいつも善逸は俺を見つけるのが上手かったな。そこにも何か秘密があんのか」

 

焦凍が口を開いてくれたことに俺は微かに安堵した。焦凍とは幼かった頃に時折、かくれんぼをして遊んだことがある。でも俺は音で相手の居場所がわかってしまうから、焦凍は毎回すぐに見つかってしまって、それからかくれんぼはやらなくなった。

 

「今回に限ったことじゃねぇ。善逸はいつも隠し事ばかりだ。本当の個性も、それを使わねぇ理由も、お前を苦しめる存在も、何一つ言わない。善逸の抱えてるもの、少しでも一緒に背負ってやりてぇって思うのに、お前はいつも顔面蒼白にしてるくせに「大丈夫」って言って教えてくれねぇ!」

「焦凍…、俺はそんなつもりじゃ」

「じゃあどんなつもりだよ!!なんで何も教えてくれねぇんだ!俺が弱いからか?頼りないからか?なら、俺が強くなったら善逸は全てを話してくれるのか?それとも、そもそもこの世界の誰にも教えるつもりなんかねぇのか…?」

「…ッ!」

 

焦凍の怒涛の勢いの言葉は止まらず、考えたことをそのまま感情のままに吐く姿はどうにも彼らしくなかった。けれど、らしくないことをやらせてしまっているのは、間違いなく俺だ。

 

「誰ならいいんだ?誰なら善逸を救える?どうすれば善逸は抱え込んだしがらみに囚われることなく生きていけるんだ?

なぁ、ッ教えてくれよ!重いもん全部一人で背負って!抱えきれずに押しつぶされそうになっているッ、俺のヒーローは一体どうすれば救われるんだ…ッ?」

 

あぁ、失敗したな。

前世の絡んだ話のことであるならば、焦凍の言う通り誰にも言うつもりはない。

でもそれはすなわち、俺の抱えているものほぼ全てに該当してしまう。

そんなことをすれば、周りから見れば当然、多くの重荷を抱えているように見える。

だから、周りの誰にもそれを感づかれてはいけなかった。

決して表に出してはいけなかったのに。

俺は焦凍が何も言わないでくれることを良いことに、その優しさに甘えたんだ。

その結果焦凍は積み重なる秘事を前に、ついにずっと抑え込んでいた思いが爆発してしまった。

今回のことは全部俺のせいじゃないか。

俺の甘えが、焦凍の顔を苦痛で歪めてしまった。

もう二度と、彼が苦痛で顔を歪めることがないことを願った俺自身が、彼を今その表情にさせている。

 

「…中断して悪かった。訓練、続けようぜ」

 

焦凍はその言葉から一拍置いて、左腕から炎を放つ。俺は身を捩ることで炎を回避するが、追撃するように氷が迫ってきて、避けきれずに足元を凍らされてしまう。

 

「…ッグ!」

「動かねぇ方がいいぞ。足の皮むけたら満足に戦えねぇだろ」

 

それでも、ここで動かないわけにはいかなかった。

何故かはわからないけど、今ここで終わってしまえばもう二度と焦凍との関係は修復されなくなってしまう、そんな気がした。

シィィィィィ。

 

「…ッ!まさか、お前」

 

『雷ノ呼吸 壱ノ型 霹靂一閃 神速』

 

俺は足を固定する氷を木っ端微塵にしつつ、宙高く跳躍した。

そしてそのまま焦凍の後ろにある核兵器に触れる。

こうして演習は終了した。

足の皮がずる抜けて正直めちゃくちゃ痛い。

立っていられなくて俺はその場に座り込んだ。

焦凍がこちらに駆け寄ってくる。

 

「…どうしてそんな無茶するんだ」

「いやぁ、なんとなく」

 

焦凍と仲直りできなくなるような気がしたというのも、完全に直感だったので説明に困る。俺がヘラリと笑うと、焦凍は思い詰めたように眉間に皺を寄せた。

 

「俺はそうやって善逸が無茶ばかりして、いつか居なくなっちまうんじゃないかって、不安でならねぇよ。……悪ぃ、今日の俺は弱音吐いてばっかりだな。八つ当たりみたく言っちまって」

「でもそれはずっと焦凍が思ってたことなんだよね。…ごめんね隠し事ばかりで。重ねてごめん、まだ内容は言えない。でもそれは焦凍が弱いからでも、ましてや頼りないからでもなくて、俺の中でまだ整理がついてないからというか、上手く言えないんだけど、いつかは、きっといつかはちゃんと話すから、それまで待っててほしい」

 

焦凍ならきっと、俺の突拍子もない話でさえ真面目に聞いてくれるんだと思う。それはもうわかってる。それでも今それを言う勇気はなくて、いつかはなんて逃げ方をする俺はやっぱり卑怯かな。けれど存外俺に甘い焦凍はそれで十分だったようで、張り詰めていた表情に少し笑みを浮かべた。

 

「ならいい。言質は取ったからな、今回はそれで勘弁してやる」

「ありがとう。あ、でも一つだけ」

 

焦凍がキョトンと俺を見つめる。

今はまだ前世のことは話せないけれど、この秘密と言うにはだいぶおざなりなこれくらいは、話してもいいよね。

 

「俺人一倍耳がいいんだ。だから、かくれんぼで俺がすぐに焦凍を見つけたのはそういうこと」

 

それを聞いた焦凍は一瞬目を丸くした。そして一つ疑問が解決したようで少しスッキリした顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから俺は保健室で保健医のリカバリーガールの個性によってすぐに怪我が治ったけれど、立て続けに怪我をしている出久はそういうわけにはいかないようで、応急手当と点滴を施されていた。心配だということもあるし、どうせなら起きるまで待っていたかったけれど、早く教室に戻るように言われたので、そのまま保健室を後にした。

教室に戻ると、クラスメイトたちが今日の授業についての反省会をしていたが、俺はなんだかどっと疲れていたのでそのまま帰らせてもらうことにした。それに合わせて焦凍も一緒に帰るらしい。

 

「抜けるタイミング計り兼ねてたから助かった」

「焦凍はたまに妙なところで協調性発揮されるよね」

 

駅に向かう道すがら、焦凍と隣立って歩いていると、不意に懐かしい音が聞こえた。

 

「え…、この音…」

 

泣きたくなるような優しい音。

その音から連想される人物は俺の中ではただ一人だった。

俺はその音を鳴らす人物がいると思われる建物を見上げた。

 

「何してんだ、電車行っちまうぞ?」

「あ、うん!」

 

俺はなんの建物かを見て落胆した。その建物は裏商売とかで使用されそうなどこか危険な雰囲気を醸し出すバーだったからだ。実際中からいくつか怖い音がする。

そんな場所に彼が、炭治郎が居るはずがないから、聞いた音はどうやら聞き間違いだったようだ。ずっと会えないことで感傷的になっているのかもしれない。

早く炭治郎達にまた会いたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは善逸達が駅へ足を早めている時と同時刻、とあるバーの一角で何やら不穏な会話が交わされていた。

 

「見たかこれ、教師だってさ。なぁヒノカミ、どうなると思う?平和の象徴が敵に殺されたら」

 

顔中に手を貼り付けた闇深そうな青年は、ヒノカミと呼ばれた狐の面で顔を覆っている少年に問いを投げかけた。少年は少し考えた後に、憂うように目を伏せて答えた。

 

「そうだな、もしそのようなことが可能なら、世界は平和の象徴を失った動揺から、混沌で満ち溢れるだろう」

 

ヒノカミはまるでその年齢以上の年数を生きてきたように、どこか大人びた少年だった。

その齢は15、奇しくも善逸達と同い年であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

演習を終えた次の日、出久は朝に保健室に寄らないといけないということで先に家を出たため、一人で学校に向かうと、門の前で何故か人だかりができていた。どうやら連日マスコミが押し寄せているようだ。

 

「通れないじゃん…。どうすんのこれ」

「鬱陶しいことになってんな」

「うわ!?…焦凍か、びっくりした」

 

いきなり後ろから声をかけられて勢いよく振り向くと、そこに居たのは焦凍だった。彼は俺の反応に何か返すこともなく、「ちょっと待ってろ」と言って人混みに近づいていった。焦凍に気づいたマスコミは、彼からなんとか情報を得ようと矢継ぎ早に話しかける。

焦凍は彼らの前で立ち止まり、無言で立っていたかと思うと、ギロリと彼らを睨みつけた。

顔が整っている分睨みをきかせると迫力があって、睨まれていない俺まで肩がビクっと上がる。

それを真正面でやられた彼らが平気なわけがなく、あっという間に蜘蛛の子を散らすように道が空いた。それを見て焦凍がこちらを振り向き、なんでもないような顔をして「空いたぞ」と言って進んでいくものだから、急いでその後を追いかける。

 

「さっきのやり方一体どこで覚えてきたの?」

「親父がよくやってる」

「あぁ、なるほど…」

 

炎司さんマスコミ嫌いだからなぁ。

しかしちょっと天然でいたいけな焦凍にそのようなことを教えるのはやめてほしい、切実に。炎司さんの行動を規範にされては、そのうち俺は恐怖で心臓が口からまろび出てしまいそうだ。おかげで難なく学校内に入ることはできたが、それ以上に朝からやけに疲れた感じがする。

相澤先生が教室にやってくると、まず昨日の講評を軽くした後にホームルームへと移っていった。

 

「急で悪いが、今日は君らに学級委員長を決めてもらう」

 

先生の言葉に皆が騒ぎ出して自分が学校委員をやりたいことをそれぞれがアピールして収拾がつかないことになった。俺はその騒音に耐えきれずに耳を塞いだ。

 

「うるさい…」

「静粛にしたまえ!!」 

 

その時、飯田くんのよく通る声が響いて、皆が声を発するのをやめて彼を見た。

 

「他を牽引する責任重大な仕事だぞ。やりたいものがやれるものではないだろう。周囲からの信頼あってこそ務まる聖務!民主主義に則り、真のリーダーを皆で決めると言うのなら、これは投票で決めるべき議案!」

 

それを言った飯田くんも学校委員はやりたいらしく、彼の右腕は震えるほど上に挙がっている。それでもその提案ができる飯田くんこそ学級委員に向いているのでは、と思ったのでその後行われた投票は彼に入れた。

投票の結果委員長は出久、副委員長は八百万さんとなった。

 

 

昼休み。俺は焦凍と共に食堂で昼食を摂っていた。焦凍は蕎麦を食べていて、俺はなんとなくその日の気分で塩ラーメンにした。焦凍はほぼ毎日蕎麦を食べている気がするけど、飽きないのかな。

 

「そういや、学級委員長善逸の兄貴だったな」

「うん。焦凍は立候補しなかったんだね。俺もしなかったけど」

「俺はそういうの柄じゃねぇ」

 

確かに焦凍は俺以外には結構無口だから、それだと副委員長の負担が大きそうだ。

 

「じゃあさ、焦凍は誰が委員長に向いて…」

ジリリリリリリリリ!

 

向いてると思う?と聞こうとした途中で、辺りに警報音が鳴り響いた。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください』

「な、何何何!!??警報!?避難!?」

「落ち着け。とりあえずアナウンスに従って避難を…、善逸!」

「おわ!」

 

取り乱した俺とは違い焦凍は冷静に対処しようとしたが、押し寄せてきた人垣にのまれて俺たちは逸れてしまった。そのまま押しやられるままに進んでいくと、気づくと職員室近くの廊下まで追いやられていた。そこで人垣から離れて、やっと一息つくことができた。

 

「はぁ…。もう一体何なの?」

 

俺はこの騒ぎで教師がいるかわからないけど、とりあえず職員室を目指すことにした。

少し離れたところではまだ阿鼻叫喚の嵐で、耳が痛くなる。朝からマスコミに迫られるし、今日はとんだ厄日だ。

職員室に向かっていくと、懐かしい音が聞こえた。

以前、バーの前で聞き間違えた音。今回は前よりも近くで聞こえた。聞き間違いなんてありえない。

炭治郎だ、炭治郎がいる。

俺は音の所在目掛けて走り出した。

どんどん音が近くなっていく中、角を曲がるとそこには。

 

「炭治郎…!」

「…善逸?」

 

久しぶりに会った炭治郎は狐の面で顔を隠していたけど、昔と変わらない優しい音がした。俺は感動のままに炭治郎に抱きついた。

 

「炭治郎〜〜!!!ほんっとお前!寂しかったし、ずっと会いたかったんだからな!!」

「どうして善逸がここに…!?まさか、善逸は雄英の生徒なのか…?」

「え、そうだけど。再会して最初の言葉それ?もっと再会を喜んでもいいんじゃない?」

 

炭治郎からは困惑と焦りの音がする。まるで俺とここで出会ったことが都合が悪いようだ。俺はこんなに炭治郎と再会できたことが嬉しいのに、炭治郎はそうじゃないのかな。

 

「善逸!とにかくすぐにここから逃げ」

「何してんの?ヒノカミ」

 

炭治郎が必死の形相で俺の肩をガシッと掴んで言葉を発したが、その言葉は第三者の介入により遮られた。後ろから炭治郎に声をかけたのは、手をいっぱい顔に貼り付けた男性だった。彼の音は憎悪の音で溢れている。俺は思わず震え上がった。

あの男性は(ヴィラン)だ。

なんで敵がここに。さっきの警報、敵が侵入したことを知らせていたのか。

 

「お前の知り合いか?」

「…いいや、知らない奴だ。大方誰かと勘違いをしているのだろう」

「そうか、なら口封じでもしとくか?」

「その必要はない。彼は誰にも報告しないだろう」

「へー、そんなこともわかるのかシンパシーってやつは。便利だね、お前の個性」

 

敵と炭治郎が会話をしている。全然意味がわからない。なんであの(ヴィラン)は炭治郎と仲間のように話しているの?それじゃまるで、

 

「炭治郎は、(ヴィラン)なの…?」

 

炭治郎が敵の仲間みたいじゃないか。俺が言葉を発すると男性は心底面白いと言うように、クツクツと笑った。自分の心臓の音が煩くて、彼らの音が聴きれとない。気を抜くと足から力が抜けそうで、立っているのもやっとだった。答えない炭治郎の代わりに、敵が口を開いた。

 

「君が誰と勘違いしてるのか知らないけどさ。こいつは俺たちの団体の新入りさ」

「……は?」

 

敵の団体の新入り。言葉の意味が理解できなかった、いや、理解したくなかった。

彼は敵に促されるままにこの場を去っていった。

彼が後ろを向く時に面の隙間から微かに見えた彼の瞳は、あの時となんら変わらない安心するような、真っ直ぐで赤みがかった瞳だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簡易な設定

 

 

我妻善逸(緑谷善逸)

出久くんの義理の弟

個性:鬼化

基本戦闘スタイル:雷の呼吸

 

鬼化の個性は身体能力、回復力を飛躍的に上昇させるかなり汎用性も高い、強個性。鬼滅時空の鬼のように藤の花の毒が苦手だったり、日光が苦手だったりはない。ただ、使いすぎると暴走して食人衝動に襲われる。今回炭治郎と再会したが…?

 

 

轟焦凍

 

幼少期に善逸に救われてから、善逸に対してかなり好意高め。原作とは違い、すでに左側の個性も使うし、表情も多少穏やか。いつも隠し事ばかりの善逸の助けになりたいと思っているが、中々うまくいかずにもどかしく思っている。

 

 

緑谷出久

 

この度かっちゃんとの因縁の対決をした。善逸のことはちゃんと家族で兄弟だと思ってる。善逸の雷の呼吸を見るのは初めてだったので、個性把握テスト見て「善逸ってこんなに強かったんだ…」って内心驚いている。

 




次回の更新は1月21日を予定しております。読んでいただけると嬉しいです!
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