王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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とうとう来ました……100話!

これもこの作品をご覧になってくださってる読者様方の支えがあったからです………。割と、本気で思ってます……。
最初は中学時代、王様にぎゃふん! と言うあのシーンで終わらそう、って思ってたので。(笑)

でも、ここまで来れました! 今後も原作で言う45巻目指して頑張ります!


後、1月で100! 目指せ! 頑張ろう! と思ってたのですが……、流石に月末、本当の月末は無理無茶でした………。月初は月末頑張った分、何とかなった様なので、これからも頑張っていきます!











100話記念……まで考えれてなかったのが残念ですが…… 苦笑


第100話 起源

「―――飛雄」

「……………」

 

 

田中のお陰もあって あの騒動もとりあえず一段落。

だが、収まったとはいえ 流石に取っ組み合いの後に日向と影山が会話をする事は無く、それぞれが背を向けて別方向へと歩いていた。(無論、家が反対方向、と言う理由もあるが)

 

影山は振り返らりはしないが、歩く足を止め、立ち止まった。

 

 

「1個だけ訂正しておく」

「?」

 

 

影山は、状況が状況だったので、今は火神の言葉に耳を傾ける気はあまり無かったのだが、【訂正】と言う言葉を聞いて振り返る。

頬に数枚の絆創膏が見えた所で、火神は続けた。

 

 

「つい、あの時は あの頃(・・・)に逆戻り、って言ったが―――お前は戻ってないよ。戻ってる奴が【チームのバランス】なんて言葉、使わないよな。悪い」

「……………」

「だが、翔陽の件については、オレは意見を変えない。(暴力は反対だけど)アイツも間違ってない。………(セッター)じゃないオレが言っても説得力無いって思われるかもしれないが………」

 

 

火神は、1つ間を置くと影山に背を向けつつ―――言った。

 

 

 

速攻での主導権(・・・・・・・)は、セッターじゃなくスパイカーにある。もう一遍、考えてみてくれ。じゃあな」

 

 

 

火神の言葉を聞いて、影山は暫く動かずその背を目で追っていた。

 

どのスパイカーを選ぶか? 

どの攻撃法を選択するか?

(ボール)の高さは? 

(ボール)の位置は?

 

 

考えれば考える程、それらは全てセッターに委ねられている事だ。

セッター次第で、如何なる攻撃にも姿を変える。……この状況でセッターではなくスパイカーが主導権を握っている?

 

影山の頭の中では、はっきりと否定したが、それが言葉に出る事はない。

火神は(セッター)ではないが、そのセットの上手さは十分過ぎる程知っている。火神の2段トスを何度も打った事がある影山だからこそ解る。

(セッター)として、負けるつもりは毛頭ないものの、仮に別チームだったとしたら、そのポジションについていた、としても何ら不思議ではない。

 

 

「………(セッター)じゃないオレが言っても……か」

 

 

影山はそう呟く。

ならば、(セッター)に聞けば解るのだろうか? 疑問が解消されるのだろうか?

 

影山が信用に足る(セッター)と言えば、無論 菅原もその内の1人だが………やはり、一番気になる男の事が真っ先に頭に浮かんだ。

 

会う――と言うのは正直ハードルが高いだろう。

脳裏に浮かんでいる男にも、当然ながら練習がある。……そもそも別チーム。

 

そして、何よりも思うのは………会った所で教えてくれるとは思えない(・・・・・・・・・・・・・・・・・)、と言う事だろう。

 

 

影山は、それ以上は考えるのを止めて、家へと帰宅する為に歩き始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日向・火神・谷地の3人は影山と違い、帰る方向は一緒。

谷地の場合は、家が離れているが、帰りのバスに乗る為のバス停は同じ方向にあるから。

火神は、影山と話をする為に、少し残ったが(トイレに行く、と誤魔化しつつ)……谷地も日向も待っていてくれた様だった。

 

 

「あ、谷地さん。待っててくれてありがとう。翔陽も」

「ん、んーん! やっぱり、皆で一緒に帰る方が……良い、から」

「……………」

 

 

雰囲気があまりにも悪かった。谷地はどういえば良いか解らず困り果てていたから、火神が来てくれた事、一緒に帰ってくれる事が何よりも心強かった。

 

それに、【火神を待たない】と言う選択肢はそもそもない、と言うのが正しい。

 

そして、それは日向も同様だ。

 

だが、如何せん言葉が見つからないし、何も喋らない。

日向が火神相手に、ここまでなるのは初めてだと言える。

 

日向は、自分で戦える力を得る為に。

火神の力量に近づきたい、と言う気持ちも勿論強いが、……何より もう、あんな火神(・・・・・)を見たくない、と言う理由の方が大きいかもしれない。

 

 

だから強くなる。チームプレイだが それでも頼らない(・・・・)様にする為に、自分でも点が獲れるように。……独り立ちすると豪語した。

 

 

それらの想いを胸に秘めていた日向だった。

でも、あの場で 譲れない思いを胸に抱えて、葛藤を抱えて 暴走してしまった。

 

譲れないモノがあれば、ぶつかり合うのは当然だと思ってる。ケンカだってしたって良いと思ってる。……でも、だからと言って 迷惑をかけて良いワケではない事くらい日向は解っている。

 

 

 

 

でも―――帰り道。

 

何を話して良いか見つからなかった。

 

暫く会話が無く、3人はやや、谷地が後ろに居るがほぼ並んで歩いて……、とうとう別れ際に来た。谷地は自分が乗るバス停、火神は横断歩道を渡り、日向は反対側……山越えコースに。

 

「じゃあ、谷地さん。今日はゴメンね? 何だか色々巻き込んじゃって……」

「ッ!! う、ううん! 私だってマネージャー……だから。巻き込んでもぜんっっぜんっっ! ………で、でも……」

「いやいや。流石に あんな場面(・・・・・)に巻き込んじゃダメでしょ? 注意しなきゃ、だよ。もちろん自分達(こっち)が」

「っ……」

 

 

火神の言葉に ぴくんっ、と反応したのは日向だった。

そう、谷地を巻き込んでしまった事を改めて認識していた。火神、影山の事だけじゃない、と言う事を。それに、止めてくれた田中だって……。

 

 

「ほれ、翔陽」

 

 

先ほどまで、会話と言う会話が無かったというのに、火神は何でもないかの様に日向に促す。これでは、本当に親子の様だ。息子の不祥事? を同伴で謝る構図。……これで何も言わないのはそれこそ迷惑かけてしまう、独り立ちから遠のいてしまう、と日向は思い。

 

 

「うん。谷地さん、オレの方もごめんね? と言うか、ほぼオレの問題だったし」

「い゛!? いいよ! そんな!! ほんとに、いいんだよ……、私は、なんでも、無い……から」

 

 

如何にバレー部に入って日が浅いとはいえ 谷地も日向の葛藤くらいは解る。

火神と日向は同中である事も知っている。素人目から見ても、その実力差が解る。日向のあの凄く早い速攻や類稀なるバネ、スピードも十分過ぎる程スゴイのだが、日向はそれを良しとしなかった。

 

重要なのは、1人でも点を獲れる強さ(・・・・・・・・・・・)だから。

 

 

「……オレさ、中学の時。最初で最後の大会で……影山にボロ負けしたんだ」

「!」

「オレ()、な? 翔陽」

 

 

中学時代の頃を、日向が谷地に話す。

火神が、日向だけでなく、自分も居た事を挟むと 苦笑いしつつ頷いた。

 

忘れていたワケではない。……あの日、火神は誰よりも輝いていたし、誰よりもチームの為に頑張ってくれた。――――もし(・・)、火神と同じだけの……ほんの少しだけでも、その力量に近づいていたとしたら? 

 

結果はきっと変わっていたと思う。

 

歴史に たら、れば、は存在しないけれど、日向はそう信じているのだ。

 

 

「それでさ。リベンジ誓ったんだ。―――高校に来て、もっともっと上手くなって、誠也にも負けないくらいの力つけて、って。……でも、来てみたら本人居るし、予想以上に感じ悪いしで散々だったけど」

 

 

俯かせていた日向は顔を上げる。

谷地の方を見て軽く微笑みながら、視線を火神に向けつつ。

 

 

「誠也以来だった。試合になった時 何考えてるのか解る様な感覚。………誠也以来だった。こんな【相棒】だ、って思える感覚が出来たのは。相棒が2人、って何だか変だけどさ。兎に角、そんな感じがしたんだ」

「…………」

 

 

 

そうとだけ言うと、日向は自転車に跨る。

 

 

「じゃあ、谷地さん。誠也。……また!」

「……うん」

「翔陽が帰ったタイミングで電話するから起きとけよ」

「うん」

「居留守なんかしたら、コールしまくるからな!」

「うん」

 

 

何処か上の空な日向が、そのまま返事は返すものの、振り返る事なく自転車を漕ぎだした。

培われてきた脚力は、この自転車通学から、と言って良い。山を越え烏野まで毎日なのだから当然。それは中学時代も同じ。

 

朝はバレーボールの練習をするのにうってつけだったから、と言うのもあるが、日向は基本的に無遅刻・無欠席。常人……中学・高校生には 明らかに険しすぎるこの通学路を毎日ノンストップで駆け抜ける。

 

その脚力を遺憾なく発揮し、日向は あっという間に見えなくなった。

 

 

 

「…………」

「谷地さん? 大丈夫大丈夫。泣かないで。絶対大丈夫だから」

 

 

目を見開き、リュックのベルトをぎゅっ……と握り締め、流れこそはしてないが、目をうるわせている谷地に、安心できるように微笑みかける火神。

谷地は、それを聞いて ハッ! としたのだろう。すぐさまぶんぶんと左右に首を大きく振って。

 

 

「な、泣いてないっス! 蚊が目に入っただけっス!!」

「(蚊っ!? おーー、蚊か!)あはは。そっかそっか。うん、了解」

 

 

火神は谷地の言葉に笑いながらも、先ほどの表情に比べたら断然良い事だけはしっかり確認して、自身も家に向かう。

 

 

「じゃあ、谷地さん。またね?」

「う、うん! じゃなく!! はいっス!!」

「いや、なんで敬礼?? 敬礼しなくても良いよ? そもそも同級生、同じクラスじゃん」

「う、ウッス!!」

 

 

谷地までお父さん発言してくる?? と一瞬身構えた火神だったが、とりあえず無さそうだ。……だが、何だかんだ否定しているのだが、今日みたいな2人を見てたら お父さん、と呼ばれても良いから、頼って欲しい……と少なからず想う火神も居た。

 

如何に通る道だとは言っても………、手は差し伸べたい。自分自身も皆には貰っているモノが沢山あるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして―――日向・影山・火神……だけでなく、他のメンバーもそれぞれ想いを胸に抱えて……一晩が過ぎた。

 

 

 

 

 

今日も学校のチャイムの音が鳴る。

いつも恒例であり、生徒たちにとっては学業終了、若しくは部活動の始まりの合図として。

 

そして、此処――――坂ノ下 商店 では、生徒たちが押し寄せてくる書き入れ時の合図として………と言っても、勿論お財布事情が豊な学生は少数派なので、ムラはある。

 

 

今は比較的客足も少なく、考える時間にはうってつけなので……昨日に続いて 色々と考えふけっている烏養。

 

 

 

そう昨日も、ずっと考えていた。

あの変人速攻の進化系を。空中戦の覇者になれる可能性が高まるのは解ったが、あくまでそれは机上の論。

 

 

机上で良いのなら、全国大会優勝、果ては日本人ウン10年ぶりの金メダルだって取る方法を語れる。

 

 

どうにもこうにも、答えが出ない、と言うのが実情だ。

 

 

現時点で強力な武器である事は烏養も重々承知。

改善する余地があるのも承知だが、改善する~と言うよりは、菅原が言っていた様に、あの速攻を起点に多種多彩な攻撃手段、攻撃法を構築していく……と言う方が幾らか現実的だ。

 

でも、日向の想いを聞き 火神の断言を聞き……それでヨシとするには中々に躊躇う。

 

 

 

「――――さて、……どうしたもんか………」

 

 

店番しながらも考えてみるが……どうしても考えが纏まらないし、有効と言える練習法も思いつかない。

体育館が休みで、練習が出来ない今こそ、頭を最大限フル稼働して、最善な練習法を考え出すのがコーチ……大人である筈なのに、恥ずかしい事極まれり、だ。

 

だが、烏養を責める……と言うのも酷な話でもある。

 

 

「(元々見た事も無ぇ速攻だったからなぁ……、それを更にパワーアップさせるなんて一体どうすれば………、くっそー、個人技に頼りっぱなしだったのが完全に裏目に出ちまったか、うーむ……。……む)」

 

 

 

ちらっ、と烏養はカレンダーを見た。

壁に掛けられているカレンダーは、今 7月を示している。

 

外が暑い筈だ。夏休みの始まりの月であり、暑さがより増していく過酷とも言える月。

クーラー万歳、と思いたい気分だったが……、今は違う事を考えていた。

 

この季節は――――とある場所に、より沢山集まってくる(・・・・・・・・)季節でもあるから

 

 

 

思案していた時だ。

坂ノ下商店、来客を知らせる鐘の音が響き渡ったのは。

 

「っと、いらっしぇー……って」

 

入り口の方を見たら、そこには2人の男が居た。

 

 

「日向、それに火神か。坂ノ下(ウチ)に来るにゃ 結構珍しい組み合わせかもな」

 

 

日向と火神は同じ中学だし、仲の良さも知っているし、色んな意味で日向に影響を与えている人物の1人だし……、つまり 2人で居たって何ら珍しくも無い筈なのだが、この坂ノ下商店に2人だけで訪れる、と言うのは珍しい。……いや、初めてだとも言える。

2人だけ、ではなく大体他にメンバーがいるからだ。

 

 

「コーチ、すみません」

「あん? いきなり何の謝罪だよ??」

 

 

ぺこっ、と頭を下げる日向に目を白黒させる。

色々と考えてみるが、チームに不和を齎す結果になりそうなのを謝罪しているのか? と思えた。だが、自己主張する事は成長する上で大切な事だ。指示待ちの人間の成長速度とは比べものにならない事くらいは烏養にも解る。

 

自分自身で動くか否か、そこが分かれ目だと言って良い位だから。

 

だから、問題ない―――と言おうとしたのだが、寸前で改めた。

日向1人なら或いは言っていたかもしれないが。

 

 

「えっと……その………」

 

 

日向に聞いた烏養だが、口籠ってしまってはっきりしない。

その辺りからも、恐らくはブレーンとなったのは直ぐ横に居る火神である、と烏養は思った。

そして、ほぼ同時に 烏養と火神の視線が合わさったので。

 

 

「翔陽とちょっと話をしてみまして……。今の(・・)烏野コーチである烏養コーチには、正直申し訳ないって思うんですが………」

「うん??」

「……小さな巨人(・・・・・)にバレーを教えていた、烏養()監督の意見も聞いてみたくないか?って」

「………!」

 

 

烏養は火神の言葉を聞いて、驚き目を見開いた。

 

それと同時に、謝罪する意味もその気持ちも理解した。

それはそうだ。まだ期間は短いとはいえ、コーチを引き受けた烏養が居るのに、その祖父……烏養一繋前監督に助言を、となると 烏養繋心に対して罪悪感に似たモノを抱くだろう。それを理解すると同時に、驚きを通り越して呆れ果てる。

 

 

「―――ほんっと、色々すげーよ」

「「??」」

 

 

烏養が ぼそっ、と一言。

火神も日向も、はっきりとは聞き取れなかったのだろう、首を傾げていた。

烏養はそんな2人を見ながら、右手を前に出して、蝿でも追い払うかの様に プラプラと左右に振る。

 

 

「謝罪なんざ要らねーよ。必要も無ぇ。オレ自身が未熟だって事を改めて解らせてくれてんだ。感謝こそ有れど、それ以外言う事なんざ無ぇ。……それに、オレもジジイ(ソレ)に関しちゃ、丁度考えていたトコだ」

 

 

そう言うと ニッ、と笑って烏養は立ち上がった。

烏養の了承を得た、と思った日向は表情が明るくなる……が、直ぐにとある事を思い出して また顔を顰めた。

 

 

「あ、でも 体調崩したって聞いてましたが……?」

 

 

日向は、心配そうに聞く。

体調面は、影山経由ではあるが 復帰して直ぐに倒れたと言う話は聞いていたので、病み上がりでは無いか、突然押しかけて大丈夫なのか、と思ったのだ。

流石に火神から、今も練習教えてる、なんて事までは聴いていない。火神も当然言っていない。

 

火神が知ってたらおかしいし、何より100%そうだ、とも言えないから。

 

 

そして 日向の心配を他所に 烏養は 笑みを崩さなかった。

 

 

「あのジジイなら、とっくの昔に退院して、毎日のように暴れまわってんよ。―――もう直ぐ店番終わる。連れてってやるから待っとけ」

「!! あ、アス!!」

「アスっ!」

 

 

烏養の返す言葉を聞いて、日向は勿論、火神も表情を和らげる。

どうやら、こちらの烏養も現役バリバリ……とまでは行かないが、大丈夫そうだと思えたから。

 

そして 火神はもう1つ。………もう1つだけ言いたい事があった。言いたい事、と言うよりは お願い(・・・)だ。

 

 

「っと、話聞くってのは、日向がメインの様だが、火神も行くんだろ? オレのジジイんトコ」

「はいッ!勿論です!宜しくお願いしますっ!」

「目ぇ輝かせやがって……。そんな良いもんじゃねぇぞ?。あの妖怪ジジイは、音駒んトコの猫又先生と言い、あの年代はどうして こうバケモンが多いのか……」

 

 

 

こうして、火神と日向は、烏養(孫)に連れられて、烏養(祖父)の元へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方 影山はと言うと………。

 

 

「…………(オレはここに来てどうするつもりだったんだ……?)」

 

 

昨夜 家に帰った時 回覧板の中に紛れていた【プロが教えるちびっこバレーボール教室】なるチラシを見つけて、烏野市民体育館へと足を運んでいた。

 

正直、来た意味は無い、と言う方が正しいかもしれない。

午前中はほぼ間違いなく烏野の体育館は使えないだろうから、もし 工事が早まって使えるとしたら、午後。……部活始まる時間帯だろう、と当たりをつけていて、それまでどうするか、どう過ごすか、を考えていた。

 

昨日の1件。

 

火神に両方間違えてない、と言う余りにも優柔不断な答えを聞き、もう1人の日向にはわがままを言われて……、一晩考えてみたが、やはり納得は出来なかった。

少なくとも、自分が間違えているとは思えなかった。……間違えてない、と言われはしたが……。

 

 

 

その後、影山はその凶悪な顔(暴言)で、ちびっ子たちを威圧(自然に)しながら歩を進め――― 被害者を1名(大泣き)出した所で 足を止めた。

 

 

子どもが沢山外に出てきている……と言う事は、もう終わっているという事だから。

 

プロだったら……もし、誰かまでは 当日のお楽しみだったのか、書いてなかったので解らないが、その誰かが自身と同じ(セッター)だったなら、この悩みを聞いてもらえるかと思ったのだが……。

 

 

「(……終わってんじゃねーか、いよいよ何しに来たか解らん……)」

 

 

と、頭を抱えていたその時。

 

 

「徹! サーブ教えてくれよ!!」

「ちょっ!? まず呼び捨てやめようか!」

 

 

曲がり角でバッタリ……ではなく、出入り口でバッタリ。

ほぼ至近距離で、互いに認識し合った。

もしも、遠方からだったなら……、紛れもなく知らないフリして回避されそうだったが。

 

 

 

「ア゛ッ?」

「ゲッ!!!」

 

 

「及川さん」

「飛雄!!!」

「???」

 

 

出会ったのは、影山の嘗ての先輩であり、ほんのつい最近烏野を負かした相手である、青葉城西の及川徹だった。小さな子供を連れた……。

 

 

あまりの展開にさしもの及川も状況が読めなかった様で、正直混乱していたのは否めない。

ちびっ子バレーボール教室に影山が単独でやってくる、それも終わりを見計らってやってくる、なんて誰が想像出来るモノか。

 

―――だが、出会ってしまったのは仕方が無い。非常に複雑な及川だったが気を取り直して表情を引き締め戻した。

 

 

「お……及川さん、何してるんスか」

「甥っ子の付き添い」

「オス!!」

 

いつも通りの不愛想。性格悪いのが顔に出てる……と影山にさえ思わせる程の顔でぶっきらぼうに応える及川。

取り合えず、会話のキャッチボールはしよう、と影山は続ける。

 

 

それに、及川は(セッター)だ。

 

 

間違いなく、宮城県No.1(セッター)

 

話を聞いてみたい、聞いてもらいたい、と影山は強く思ったから。

 

 

「部活は――?」

青城(ウチ)は基本、月曜はオフなの」

「しゅ、週1で休みが!? 勿体ない………」

 

 

自他共に認めるバレー馬鹿の影山は、休む暇が合ったらバレーの練習をする。そう言う所も及川は、その辺りは しっかりと解っているし、何より、解ってない(・・・・・)ようだから、しっかり釘をさす。

 

 

「【休息】と【サボり】は違うんだよ」

 

 

週1のオフ。

まだまだ身体も精神も育ち盛りな高校生。しっかりと身体を休め、細胞を修復させ、身体を強く大きくさせる。その為に、間違いなく休息は必要なのだ。

 

そんな事も解らないのか、と及川は見下した表情を決めると。

 

 

「じゃ」

 

 

そのまま影山の横を通り越した。

普段の影山なら、そのまま見送った事だろう。及川は バレーのスキル、チームを纏めるスキルは兎も角、月島よりも性格が悪い、と称する程なのだから。 所謂触らぬ神に祟りなし、と言った感じで。

 

 

だが、今回に限っては影山は引かない。

 

 

「及川さん! あの……」

「嫌だね! バーカバーカ!」

「(まだ何も言ってねーよ!)」

 

 

話を聞いてもらおうとしたのに、ノータイムで返事が返ってきた事に悪態をつく。それも子供みたいにあっかんべー、と軽く煽りながら。

 

 

でも、それでも引くに引けない。

影山にも事情があるから。

 

 

だから、仮に今は敵であっても……、物凄く苦手な相手であっても……。

 

 

「………お願いします。話を、話を聞いてください」

「!」

 

 

影山は頭を下げて教えを乞おうとした。

流石の及川も、頭を下げる影山には驚いたが、それは殆ど一瞬。直ぐに回れ右。

 

 

「なーんで、わざわざ敵の話聞いてやんなきゃいけないのさ」

 

 

それも至極当然の意見。

及川は影山を認めている。憎たらしい程に認めている。

 

強敵(要注意人物)である―――と。

 

それも今の烏野は ひょっとしたら あの王者:白鳥沢以上に警戒しなければならないかもしれない相手だとも思っているから。

 

何より、烏野にはもう1人天才が居るから。

 

 

「(―――あれ? でも、なーんで誠ちゃんのトコ行かないんだろ、飛雄。一通りの事は聴いてくれそうな気がすんだけどなぁ。まぁ、この及川さんに頭下げて教えを乞いたくなる気持ちは解るけどね~。なんかあった? ………ま、どーでも良いか。つーか、好都合とも取れるかな)」

 

 

前々から及川自身が言ってる通り、火神の事は憎めない。

例え影山よりも強敵(要注意人物)で、忌むべき天才だったとしても、影山の様な扱いは抵抗がある。――――が、それを踏まえた上でも、天才たちに亀裂が走っているのであれば好都合なのは間違いない。

 

そう思いながら、及川は甥っ子の(たける)と共に帰ろうと歩き出したその時だ。

 

 

「お……お願いしアアアアアアアアス!!」

「わぁぁあああ!?」

 

 

腰を90度曲げて、しっかり頭を下げている姿勢だと言うのに、物凄い速さで影山は、回り込んできた。

バケモノじみた動きに、及川は驚き声を上げる。

 

そして、ずっと頭を下げたままにしている影山を一瞥すると。

 

 

「猛」

「なに?」

「写真撮って。ほら、こう持って…… ここ押して―――んで 飛雄は動くな」

「?」

 

 

猛にスマホを渡してカメラ画面を起動。

そして、ぶっ倒したい相手筆頭クラスである影山の前に立ち、後ろ向き様にVサインを作って。

 

 

「イェ~イ! 飛雄、及川さんに頭が上がらないの図」

「…………」

 

 

カシャ、とシャッター音をしっかり聞き、撮れたのを確認すると、満足気に、性格悪そうに笑う。

 

それを感じ取ったのか、或いはただの偶然? 日頃の行い? なのか……、スマホを構えていた猛は、及川の方を見ながらズバリ一言。

 

 

「徹。こんな写真が嬉しいのか? ダッセー!」

「はっう!! うぐぅっ……!」

 

 

正直口は悪い。

でも、まだまだ子供で純粋無垢と言って良い少年 猛。

 

強敵認定、及川は認めないだろうが ライバルと認めている相手を蹴落とし、上に立ち、優越感に浸る……と言う感性は、猛にはまだまだ早過ぎた様子。……それは解るんだけど、あまりにストレートな物言いに流石の及川も傷ついた様子。

 

 

ここまでやっといて、【じゃ、またね~☆】とするワケには流石に行かないので。

 

 

「――で、何? オレ忙しいんだよね」

 

 

取り合えず、さわり部分だけでも聞いてやろう、と言う事にした。

 

でも、此処でも甥っ子が黙ってない。内緒の話なんて甥っ子には解らないし、プライバシーの侵害! とかも全くない。ただ聞いた情報を善し悪し関係なく拡散するのみ。

 

 

「カノジョにフラれたから暇だって言ったじゃん!」

 

 

及川とて、歳頃。思春期真っただ中。バレーに青春を捧げているとはいえ、恋もしたいし、そのパワーもバレーにぶつけて……とも思っているというのに、この非常に可愛らしい甥っ子はものの見事につかれてほしくない部分を、突き刺して抉ってきた。大声拡散と言うオプション付きで。

 

 

「猛! ちょっと黙ってなさい!!」

「…………」

 

 

正直置いてけぼりを喰らっていた感が否めない影山だったが、一先ず話は聞いてくれると言う事は解ったので、安堵しつつ……考えながら話し始めた。

 

 

「……あ~~、えっと。あの もし大会が近いのに、えーと、……あ、岩泉さんが無茶な攻撃を急にやるって言いだしたら―――」

「チョット。何か相談したいならヘタクソな例え話ヤメテ直球で来なよ。飛雄が例え話 超ヘタクソなのは十分解ったから」

「………」

 

 

【ヘタクソ】と言う単語は影山大嫌い。それをこう何度も言われたら、表情に出てくるものがあるが……、今は落ち着いて続けた。今は前に進まないといけない、と強く思っているから。例えヘタクソと言われようと、頭下げている所を写真に撮られようと。

 

 

 

「……今まで、(ボール)見ずに打っていた速攻を、日向が【自分の意思で打ちたい】って言いだしました」

「……それだけ??」

「?? はい。そうですが……」

 

 

 

何が出てくるか、正直解り兼ねていた及川だった。

あの影山が 何度も頭を下げて 倒すべき相手である筈の、青葉城西の及川に教えを乞う―――のだから、相応のモノだと思っていたのだが、とんだ肩透かし。

 

 

「ナニソレ。いきなり頭下げて何聞いて欲しいかと思えば、そーんな事。全然大した問題じゃないし」

「…………ッ。その、言い出しまして。……それで、そんなの無理だってオレは言って……でも、火神は【どっちも間違えてない】って言ってきて……」

「!……へぇ、誠ちゃんが、ねぇ。やっぱ 彼はすっごく優しいんだね。ポンコツ飛雄も間違えてないって言っちゃう辺り?」

「ッ……!!」

 

 

流石に、暴言?も許容範囲を超えそうだったので、頭を下げ気味で話をしていた影山は頭を起こして、及川の目をはっきりと見た。

 

だが、及川の表情は一切変わらない。

ただただ呆れている様子しか見えない。

 

 

「誠ちゃんが言いたい事、通訳してやるよ。飛雄にも解るように。―――間違えてない、でも正解でもない(・・・・・・)、ってトコかな?」

「な、なんでですか??」

「飛雄。お前アレだろ? チビちゃんが自分で打ちたいって言ってきた時、チーム全員に迷惑が掛かる~~、とか殊勝っぽい事言ったんじゃないの?」

「……(しゅしょう、ってなんだ??)??  チームに……みたいなのは 言いました、ケド……」

 

 

若干ニュアンスは違うが似た様なモノだ。

影山は殊勝の意味は解らないが、チームのバランスが崩れる、日向のわがままのせいで、とは言ったから。

 

 

 

及川は、それを聞くと 飄々としていた表情が一転。笑っている筈なのに 何処か冷徹な顔つきになった。

 

 

「違うだろ? 迷惑云々は、ただの上辺っ面。―――お前、本心じゃ、チビちゃんにこう言ってんだよ。【お前はオレの言う通りにだけ動いてろ】って感じ? ……まるで、独裁者だね?」

「!!」

「ほーら。……図星だ」

 

 

及川の言葉は、影山に突き刺さるモノだった。

 

言い方は違えど、影山は確かに言った。

 

【あの速攻に、お前の意思は関係ない】

 

そう言ったのだ。

それは、及川の言う通りに繋がらないだろうか? 

 

断言できる……かもしれない。

及川に対し【それは違う】と反論出来ていない自分がいたから。

 

 

「あのさぁ、飛雄。お前の周りには誰が居ると思ってんの? 中学ん時の試合動画で見せて貰ったケド、あの時から誠ちゃんの事見てて、今じゃ同じチームで。……マジで何にも判んないってんの?」

「何が……ですか?」

「及川さんが、他人の事を、他人(飛雄)の前で ここまで褒めちゃうのは異例中の異例だって言ってんの。………誠ちゃんの凄いトコはね、誰に対しても、100%の信頼、それに仲間に対して尊敬の念を持ってプレイしてるトコにあるんだよ。……出来る・出来ないは一先ず関係ない。でも、自分は100%応えるやる、っていう努力は目に見えて解る。対戦相手のオレが断言できる程にね。……(なんせ、試合中に誠ちゃんはずっとオレ達にも………)」

 

 

及川は、あの試合の最中、火神に対して感じていた事を脳裏で浮かべ、頭の中で言葉にする。

 

 

 

 

 

 

青葉城西(あなた達)はこんなものじゃないでしょ? 烏野(自分達)もまだまだ行けます。青葉城西(あなた達)はもっと、凄い。もっと強い。……もっともっともっともっと】

 

 

 

 

 

 

 

そして、それは絶妙な距離感だと言える。

前を行く相手は手を伸ばせば直ぐにでも届く距離。

だから追いぬいて、それでまた追いぬかれた……その絶妙な間隔でのデッドヒート。

 

手が伸ばせる距離に居るからこそ、付いて行ける。

追いぬける位置にいるから、何度だって追いぬく。互いに高め合ってゆく。

 

そうやって、延々と続けた。これ以上無い程有意義で……何より楽しかった。

 

あの感覚は未だに頭の中に残っているのだ。

 

 

【チームの100%を引き出す】

 

 

それはどんな癖のある仲間であっても例外でなく、その実力の100%を出す。それこそが司令塔(セッター)の仕事だと思っている及川にとって、火神が体現したモノ、青葉城西(自分達)が体感したモノは、似て非なるものだった。

同系列だとは思うが 全くの別物だと感じた。

 

味方だけでなく、対戦相手をも影響を及ぼすのだから。相手の心を折る事が重要だと言うのに、全く折れない。折らされない(・・・・・・)

 

だから白鳥沢の牛島が、相手の心を折る男ならば、烏野の火神は、相手を活かす男だ。

 

 

正直 異端すぎるし、言葉で表すとあまりにも突拍子もない事で、少なくとも公式戦ではデメリットしかない。火神自身も恐らく直接聞いたら否定するだろうけれど……、それでもそう考えてしまうのだ。

 

 

「(あの国見ちゃんでさえ、引っ張られて、背中押されて、気合入ったプレイ何本かしてたしね……)」

 

 

及川は苦笑いをする。

本来なら、自分がチームの100%を引き出し続けなければならないのに、火神が加わる事で120%、と呼べる力を出せてしまったのだから。胸中穏やかではいられないのだが……、そこは火神の人成りのせいもあってか、憎めない男No.1なのである。

 

 

だから、その鬱憤を影山で晴らしてる面があるとか、無いとか……。

 

 

 

 

 

「それで、お前はどうだ飛雄。お前は少しでも考えたの? チビちゃんが欲しいトスに100%応えているか? その努力をしたのか? 仲間(チーム)がやってる事を、烏野の司令塔(セッター)のお前がやらなかったのか? あ~~んな、強烈な烏野(環境)に居るのに、現状がベストだって思い込んでる時点で、すんげーー、ビビリで笑っちゃうね」

 

 

影山の話になると途端にニヤニヤ笑顔を浮かべる及川。

これまた精神に来る笑みを見せられ続ける影山。

 

 

でも、これは何も言い返せなかった。

何一つ否定できない。心に来るものが、刺さる物を感じたからだ。

 

 

それを見て、及川は更に追い打ちをかける。

 

 

「そもそも、チビちゃんが【自分の意思で打ちたいって言い出した】とか言ってた時点で、お前は根本的に誤解してるよ。―――ああ、勘違いの方が良いかな?」

「??」

 

 

 

及川の笑みが完全に消え、影山を睨みつける。

 

 

 

 

 

「――――勘違いするな。攻撃の主導権を握ってんのは、お前じゃなくチビちゃんだ。それを理解できないなら、お前は 独裁の王様に逆戻り(・・・・・・・・・)だね」

「………ッッ」

 

 

 

 

 

 

【……それじゃ飛雄。中学時代(あの頃)に逆戻りだ】

 

 

 

 

 

 

 

この時、影山の頭の中では 及川の言葉と同時に、火神の言葉も延々と巡った。

自然と視線が及川の目線から外れ……下に向く。

 

及川は、それを負け犬の思考だと取ったのだろう。そこからはもう足を止めるつもり無く、猛を連れて歩き出した。

 

 

 

 

「行くよ猛。―――まぁ、理解出来ないって言うんなら、そのままでも良いんじゃない? 他人がどーこー言おうが、最終的に決めるのはお前なんだし」

 

 

 

 

 

そう最後に言葉を添え、影山を置き去りに及川は歩く。

 

 

 

 

 

影山はその場を動かない。ただただ、視線がずっと下に向いて、頭も傾いたまま―――暫く動けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

及川は、影山が完全に見えなくなった、居なくなったのを確認すると、先ほどの表情や雰囲気は何処へやら。

鼻歌交じりの陽気な顔になっていた。

 

 

「フンフフーーン♪」

「ゴキゲンか徹」

「フンフンフーーン♪、まっ、猛が敬語使わないの許すくらいにはね。なんたって、思ってた以上に飛雄がポンコツだったから、嬉しいね~~、それに秘蔵のコレクションが出来たから」

 

 

及川は、自身のスマホを確認。

影山を凹ませて、頭が上がらな図、と言う事で青葉城西の皆に広めよう!と画策していたのだが。

 

 

 

「!!! チョット! 全部写真、オレだけブレブレじゃんか!!」

 

 

 

ピントがボケボケで、影山の方は映っているが、肝心の頭を下げている対象である自分が映っておらず。

結局使える写真じゃなく、ほぼタダ働きも同然となり、意気消沈するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影山と及川が場外戦? を始め出した丁度その頃。

烏養の運転する車が、自然豊か、のどかな郊外へと到着。

木造の平屋だが、田舎の大きな大きな屋敷、と言う印象。

 

何せ、庭には屋外バレーボールコートまである程の広さ。

 

 

そして何より、その家の表札には【烏養】とあり、そして―――。

 

 

「オリャ! オリャ! もっともっと足動かせ足!」

「よっしゃ! カズちゃん、行ったよ!」

「おーらーい!」

 

 

随分と賑やかな声が聞こえてきた。

丁度今、練習中の様だ。

 

 

 

 

「な? 言った通りだったろ? ほんっと、この爺さん入院してた癖に、毎日暴れまわってんだよ……」

 

 

烏養(孫)が半ば呆れながら説明してくれて……、凄く聴力が良い地獄耳なのか、その声が届いた様で、一度ボールをこちら側へと止めてやって来た。

 

 

「ア゛!? 【元気になったから暴れても大丈夫ですよ】が退院の意味だろうが!」

「…………無茶だっつーの。ああ、それは兎も角、……いった通り、これがウチのじいさんな」

「う、ウス!!」

「アスっ!!」

 

 

 

 

顔立ちは、烏養(孫)にそっくりだ。

 

だが、その迫力は――――正直段違い。

 

 

 

ご高齢とは思えない程の身体つき。

 

そして 何より驚きなのは……まだ、カラスが帰ってくるには早い時間帯だと言うのに、上空を飛び回ってるカラスが、烏養(祖父)の動きに連動したかの様に、鳴き声を上げた。

 

 

 

それも一般的なカラスの鳴き声。

 

 

 

【カァー! カァー!】

 

 

 

ではなく

 

 

 

 

【ギャア!! ギャアアッ!!】 

 

 

 

 

 

である。

まるでこの上空で命を賭けた縄張り争いでもしてるのか、そんな様子……。

 

 

偶然なのか必然なのか、そのカラス達を背景(バック)に降臨した烏養(祖父)を見れば、以前 田中が言っていた言葉が真実である、と言う事が理解できる。

 

 

 

【無名だった烏野を全国へ導いた名将。【烏養】って名前がもう有名だった。【凶暴な烏飼ってる】っつってな……】

 

 

 

「あわあっっ!!?」

「おおおっっ!!!」

 

 

 

 

目を輝かせている男が1人、完全に委縮している男が1人。

 

 

それぞれを ジロリ、と一頻り見た後。

 

 

「とっとと要件話せ。話半分にしか聞いてなかったんだよ」

「わ、わーってるよ、くそじじい……」

 

 

 

 

 

 

烏養(祖父)と烏養(孫)。

烏野の新旧 コーチ&監督、ここに揃う。

 

 

 

 

 

烏養(うかい) 一繋(いっけい)

 

 

 

 

 

それは小さな巨人の生みの親。

日向翔陽のバレーの原点であり、火神誠也の………◯◯◯◯のバレーの原点。

 

 

烏野の起源にして頂点の存在。

 

 

 

 


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