王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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第112話 烏と梟と猫と

 

「うぇ~~い、かがみん 今日来んの遅かったじゃん? 何してた?」

「あはは、遅れてすみません。ちょっと、烏野(ウチ)のと話してまして。あ、後研磨さんともちょっと話を」

 

 

今合宿が始まって毎日行ってる練習後の自主練。

場所は勿論 第3体育館。

火神は、本日は少々遅れてやってきていた。

月島が来ているのに、火神が来るのが遅いと言う状況に、木兎は勿論、黒尾や果ては赤葦まで目を白黒させていた。火神がこの第3体育館へやってくる事は 最早呼ぶまでも無い決定事項だと。

信じているし、信頼している、と。

 

 

―――知り合って間もないと言うのに、(変な方向性の)信頼度がスゴイと言うのは言うまでも無い話。

 

 

とは言っても、別にそこまで気にしていたワケでも無いし、実際に火神がやって来たので、深くは考えてなかったのだが……、聞いてみたら少々興味深い内容が耳に入る。

 

 

「え? 研磨?? アイツもう寝るって言ってたんだけど? ああ、寝る前にゲームしてると思うケド」

「あ、あははは。はい。烏野(ウチ)の翔陽に捕まってましたよ。【研磨さんのトス打ちたいから上げてくれ】って」

 

 

ほんのつい先ほどの事。火神が第3体育館へと来る前の事だ。

影山と日向が別々の練習をするから、必然的に日向は自分にトスを上げてくれる人を探さないとスパイクの練習が、【誰とでもファースト・テンポ】の練習が出来ない。

 

相手としては、火神が居るが……火神は(日向にとって羨まけしからんが)木兎や黒尾達との練習が有るので、束縛するワケにはいかない。

 

そんな中、日向の視界の中には 小さな猫背の男が見えた。のそりのそり、と戻っていくその後ろ姿、プリン頭を見た途端、目の色を変えて、キランッ! と輝かせて突入したのだ。

 

 

「うはー、めっちゃ嫌な顔してなかった? 研磨」

「はい、それは勿論っ! 何せ初日の時も翔陽は研磨さんにトスを頼んでて、ノータイムで断られてましたし、これが2回目ですからね。……んでも、今回は翔陽の熱意がトンデモなかったみたいで、断りきれなかった、と言うより逃げ切れなかった、って感じでしょうか……」

「うははははっ! んん? あれ? 研磨なら 【誠也に上げて貰いなよ……】って言いそうだけど?」

 

 

黒尾の考察……弧爪の性格等から実に的確に、的を得ているセリフを導き出していた。

短いが、孤爪のセリフ一言一句間違えてないから。

 

確かに、日向と火神は途中までは一緒に行動していたので、孤爪を日向が捕まえた時、その場には火神が居た。

 

 

「あ、それ言われましたけど、【自分は、これから第3体育館で、黒尾さんや木兎さん達と練習するんで】って言ったら、物凄く渋い顔してました。後【研磨さんも行きます?】 って聞いたら、今まで見た事無いくらい頭を横にぶんぶん振って拒否してましたね」

「お~~、そりゃそーだ。研磨も木兎のメチャクチャ長い練習については知ってるからな~? そりゃ、付いてきた事を想像した日にゃ、そーなるでしょーね」

 

 

それも大正解だ。

孤爪は現在2年。

当然この合宿も初めてではないし、木兎とも日向や火神と比べたら当然1年長く知っている。―――味方の梟谷のメンバーでさえ疎遠、敬遠する木兎の個人練習。赤葦くらいしか、最後まで付いて行ってない(赤葦でさえ逃げる時は逃げる)。

 

そんな自主練習の場に、孤爪が引きずり込まれた日には………、某魔○村からの脱出よりも難しい気がしてならない。否、魔界○の方が断然可愛いくらいだ。何せ孤爪はクリアをしているから。2周システムも余裕で突破しているから。

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

「烏野のチビちゃんとは、もうオトモダチって感じとはいえ、逃げ切れないっぽいとは言え、研磨が練習付き合うとは思いにくいけど、どーだろーなぁ……?」

「んー……、まぁ 多分 研磨さんは兎も角、翔陽は……」

 

 

黒尾と火神が話しているその時だ。

 

 

 

「影山は1人で練習! オレは研磨にトス上げて貰おうとしたら5本で逃げられた!」

 

 

 

体育館の入り口が賑やかになっていた。

振り返ってみると、そこには日向がやって来ていて、黒尾は腹を抱えて笑う。火神もニヤリと笑った。

 

 

「翔陽は、最終的に第3体育館(ここ)に来ると思ってました」

「うはーー、あの研磨が付き合ったのかよ。5本も!? 十分スゲーよ、それ」

 

 

間違いなく木兎主催(presents)な自主練習は、誰よりも長く・濃いだろう。

孤爪と日向の自主練習と比べたら雲泥の差。1人になった日向が最後、何処へやってくるかなど、例え知らなかったとしても、解りきった事だと言える。

 

この合宿でも確実に1,2を争うと言って良い木兎(スパイカー)黒尾(ブロッカー)が居るから。そして そこに火神も加わってるともなれば尚更である。

 

 

「オレ、今1人だから「オレも入れて下さいっ!!」」

 

 

 

日向が一歩前に出て、体育館に足を踏み入れたドンピシャリなタイミングで、もう1人の来訪者、リエーフが現れる。日向とは見事にハモった上での登場。

 

 

「あッ! リエーフ!?」

「あ、日向だ」

 

 

互いに前しか見てなかったのだろう。直ぐ傍に、直ぐ横に居たお互いに気付くのが少々遅れたらしく、まるで鏡合わせの様に互いを認識していて、何処か面白かった。

 

 

楽しんでいる所を悪いが、黒尾だけは リエーフがやって来た展開、と言うのは少々頂けない。

 

 

「リエーフお前……、夜久(やっく)んのトコはどーしたよ? レシーブしこたま仕込まれてたんじゃなかったのか?」

 

 

そう、リエーフは現在音駒の攻撃の要……ではあるのだが、同時に穴でもある。音駒の中でも不動のレシーブ下手くそ(出来ない)トップ。

 

攻撃力(スパイク)に関しては申し分なく、その辺りは身体を操る持ち前のセンスに任せていれば、後々に化けてくるだろうが、守備面(レシーブ)はそうはいかない。苦手意識も高まってる様なので、今日もレシーブの自主練を重点的にやらせる予定……だったのだが、此処に現れてビックリ、である。

 

 

「!! お、オレ今日は優秀だったんで、早めに見逃してもらいました!!」

 

 

明らかに動揺しているリエーフ。

嘘をつくならもうちょっと自然な顔でやらなければ、騙すに騙せない。

 

元々良くも悪くも素直な性格だから、仕方が無いと言えばそうかもしれないが……。

 

 

「翔陽くらい解りやすい……」

「うはっ、2人の息の合った登場を見てもな。リエーフ、お前脱走してきたんじゃねーの?? 後で、夜久(やっく)んから、雷落とされてもしんねーぞ」

「っっ!? そ、そんな事ないですっっ! 夜久さんに見逃してもらいましたからっっ!!」

 

 

先ほどより更に動揺の色が目に見えて解るのだが……頑なに認めようとはしないリエーフ。

夜久の教育()は怖い様だが、それ以上に このメンバーでの練習が魅力的だと言う事なのだろう。

どちらの自主練習もキツく、しんどいモノなのに、嬉々として参加したい、と言っている所を見ると。

 

かく言う、火神もリエーフとの練習は楽しい。何をしてくるのかが、ある意味では非常に読みづらい相手だから。

 

でも―――思うところもあったりする。

 

 

「夜久さんとのレシーブ練も凄く魅力的だと思うケドなぁ……」

 

 

リエーフが逃げ出してきたであろう、夜久のレシーブ練習。

火神からすれば、憧れの内の1人である夜久との練習だから。

 

 

と言うより、身体が複数あるのであれば、今現時点で行われている自主練習全てに参加したい気持ちで溢れかえっているが………生憎人間の為、出来る事は限られている。残念ながら……。

 

 

「(今の、かがみんのセリフ、夜久が聞いたらスゲー喜びそう……)」

 

 

そんな火神を見て黒尾は、守りの音駒なのにレシーブ嫌いで、物凄く解りやすいウソをつくリエーフにほんの少しでも、技術もそうだが、何より後輩の鑑(・・・・)だと思える火神を見習って欲しい、と思うのだった。

 

 

「―――何なら、今からでも音駒(ウチ)に来てもらいたいよね~~」

 

 

火神を見て更にそう呟く黒尾……だったが、何故だか途端に悪寒が身体を走る。

この場に居ない筈なのに、何人かに、……カラス達(・・・・)に睨まれるかの様な感覚に見舞われるのだった。

 

 

 

 

 

それは兎も角、折角人数が増えてきたんだから、練習するしかない。

 

 

 

「まぁ、リエーフへの説教は夜久(やっく)んに任せるとして、とりあえず 今からの練習内容だけど――――3対3しない?」

 

 

黒尾の提案、自主練習はこれまで木兎が只管スパイクを打ち、火神や月島、そして黒尾が只管ブロックで止めまくる、の繰り返し。

時折、火神が攻撃(スパイク)側に変わるが、大体はその練習法が主体だ。

 

でも、現在6人以上、此処には7人もいるのだから、その練習内容だと少々味気ないので、実戦形式の3対3を黒尾は提案したのだ。

 

 

「3対3、って事は1人余りますから、ローテで回すって感じですか?」

 

 

月島が黒尾にそう聞く。

 

ここで少なからず感激するのは火神。

 

あの月島が……、明らかにブロック以外を求められている3対3の練習内容に文句の1つも言わず、更には嫌そうな顔すらせず、黒尾に聞いている。練習内容を聞いているのだから。

 

―――何だか嬉しくなってしまうのは、どうしてだろう? 

 

 

「………なに?」

 

 

月島は、そんな邪な考え? を見抜いたのか、訝しげな視線を火神に向けるが、当人は何処吹く風。暖簾に腕押し。

 

 

「別に、な~~んも」

「…………………」

 

 

ニッ、と笑う火神。

火神自身に文句の1つでも2つでも追撃を入れようとした月島だったが、何となく毒気を抜かれてしまった様なので一先ず止めた。

 

と言うより、火神は単純極まりない他の1年メンバー達と比べて、頭の回転が速いから、藪蛇になる可能性も決して捨てきれないので、ある意味回避した、と言う方が正しいかもしれない。

 

 

「う~む……」

 

 

3対3をするのであれば、7人いる現状では1人余る計算になる。

月島がやる気を出してる以上、待ち時間を喜ぶ者は、恐らくここには居ないだろう。

 

どうすべきか、を黒尾が模索していたその時だ。

 

 

「待機時間も勿体ないんで3(+1)対3(+1)で、交互にローテしていくのはどうです? ラリー形式でグルグルと! 何なら、発案者なんで オレがどっちのチームも入りますよ! ………まぁ まだ、チーム分けもしてないですけど」

 

 

火神の提案。

3対3だと、先ほどの通り1人余る計算だ。3では割り切れない数の7人が今ここにいるから。

ただの3対3であれば、余った1人が点付け係や主審等、やる事はあるにはあるが、正直それでは待ち時間が勿体ない、と言うのが火神の提案。自主練習とはいえ、木兎式・エンドレス練習とはいえ、時間は限られてるから。

 

 

「ふむふむ。4人でも、とは思ってたが当たり前だけど、4人側が有利になるしな。かがみんが言う通り、行ったり来たりでグルグル回してきゃ殆ど五分か」

 

 

黒尾は腕を組んで、火神の案について考える。

4人居る側が当然有利。

ラリー形式で入替るとなれば、4人が延々と点を重ね続けない限り、グルグルと入替る。

確かに4人が有利なのは動かない事実だが、この面子で満遍なくチーム分けをすれば、例え不利(3人)側になったとしても、十分勝負出来るだろう。点を獲り返す事が出来たなら、文字通り見た通り連続得点の(ブレイク)チャンス。

 

何せ発案した火神が入れ替わりをするのだから。

極めて技術も身体能力も高い選手だから。

 

 

「でも、頻繁にチーム代わってたら、合わせるのも結構大変だと思うけど。大丈夫? 一癖も二癖も……………兎に角、色々とある人(・・・・・・)も居るし」

「赤葦!! 地味にヒドイ事こっち見ながら言わないでください!!」

 

 

そして、もう1つの難点?は、交互に代わる火神の方にあるだろう。

赤葦が言う通り、実力は折り紙付きではあるモノの、物凄く癖のあるチームの出来上がりだ。

 

日向やリエーフと言う技術力ワーストコンビも然り、木兎は全国5本の指に数えられる程のスパイカー。実力は極めて高い……と言えるのだが、赤葦は 少々引いた目を木兎に向けている。 抗議されてるのも軽くスルーしながら。

 

 

「あ――何なら、普通に3対3で ボクが観てる「大丈夫ですよ!」…………」

 

 

つい先ほどまで、それなりにやる気はあった月島だった。

……だが火神に変な目で見られた事や冷静に考えたら、1人待機して3対3で回す方が圧倒的に楽な事等、色んな事が、思惑が頭を巡り、いつも通りの低負荷運転にチェンジしようとしていた。

 

 

―――が、月島の思惑を遮るかの様に一歩前に出て返事を返したのは火神。晴れやかな笑顔で月島を牽制。そして月島は顰めっ面。

 

 

「何処ででも合わせれる自信はあります」

「!」

「おお~~、言うね~~」

「へいへいへーーい! 気合入んじゃん!」

 

 

バレーとは団体競技。

個人のスキルも当然重視するが、やはり一番はチームプレイ、全員バレーだ。3度のボレーで攻撃へとつなぐ。仲間を信頼し(ボール)を繋いでいくスポーツ。

 

そんな競技で何処ででも(・・・・・)、とは恐れ入ると言うモノだ。

 

赤葦は、当然知っては……いた。

 

ここ数日で。烏野が初めて梟谷グループ内に入り、共に合宿をし始めた初日から知っていたつもりだったのだが………、こうも笑顔ではっきりと、何の含みも裏表もなく言い切ってしまう火神に、そして間違いなくやってしまうであろう火神に、思わず身震いをしてしまう。

 

 

「うおおーー、誠也に負け――ん!!」

「オレもオレも!! 仲間だったり敵だったりな、誠也! 新鮮で面白そうっっ!!」

 

 

日向&リエーフも盛り上がりを見せた。

そんな2人を見て、(主にリエーフ)今度は自然な笑顔……ではなく、明らかに狙った(・・・)笑顔を見せながら言う火神。

 

 

「じゃんじゃん拾ってやるからな2人とも。そんでもって レシーブ練習だって大切だ、って事も見せるつもりだから、頭に入れとく様に、翔陽」

「「ふぐっ!!」」

 

 

攻撃大好き、スパイク大好き、跳ぶ事大好き、な日向。

リエーフも当然ながら、日向と同じだ。跳ぶ事こそは身長が有るので 日向程こだわりはないが、チームのエースである事を常に意識し、一番点を獲る者がエース、と豪語するだけあり、攻撃へのこだわりは、守りの音駒にとって異端な程に突出している。

 

 

だが、それだけでは駄目、足りない。後衛に行ったら基本西谷&夜久(リベロ)と交代な2人であってもレシーブも大事。と火神は言い聞かせているようにみえた。

 

 

「はいはーーい、そこんとこは、全面的にかがみんに同意。リエ~~フ~~?」

「う……、打ち抜いてみせますよっっ!! 獲られない様に!!」

「いや、それは良いから、レシーブもヤレ、って言う意味だっつーの。試合でも何本か取られてるだろ? それに音駒でレギュラー張りたいんなら尚更だって、何度言わすんだ」

 

 

守り意識高い系高校の主将である黒尾は、火神にお株を奪われた様な感覚に見舞われてしまったが、リエーフの意識をまた変える布石の1つにでもなれば、ほんの僅か、攻撃大好きリエーフにとって、それは小石だったとしても、水面に投げ 波紋として リエーフの中で大きくなれば……と考えていた。

 

 

「おおお! かっけぇな!? おい! 誠也のセリフ、オレも言ってみようかな!??」

「止めておいた方が良いと思いますよ」

速攻(ノータイム)で止める様に言うのも止めて!!」

 

 

火神に関しては、木兎と同意……だが、木兎が火神の様に言って、行動しようとしてたら、チームの皆さんが困惑を通り越して呆れてしまう。

何処でも合わせる……ある程度は大丈夫だと思うが、とある現象? が起きた時、木兎を制御するには、やはり 何処ででも……とは言えないと赤葦は思っていたから。

 

 

火神だったなら、例えどんな場面でも………、と少なからず嫉妬に近い情念を覚えていたが、直ぐに気持ちを切り替えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

色々とあって、チー厶分け完了。

 

 

フクロウチーム vs ネコチーム

with どこでも火神。

 

 

最初は火神は梟谷側からスタート。

チーム名の通りだ。梟谷と音駒の選手で基本分かれて、夫々に月島・日向が分けられてる構図。

 

4人で有利なスタートだ……とはいえ、赤葦は顔を顰めた。

 

 

「……あの、コレ。すげぇバランス悪くないスか?」

 

 

自身のチームを見てそう言う赤葦。

コロコロ入替る火神は置いといて、3人だけで計算してみると……。

 

 

フクロウチーム

□ 木兎 (185.3㎝)

□ 赤葦 (182.3㎝)

□ 日向 (162.8㎝)

 

=平均身長 約177㎝

 

 

 ネコチーム

□ 黒尾 (187.7㎝)

□ リエーフ (194.5㎝)

□ 月島 (188.3㎝)

 

=平均身長 約190㎝

 

 

番外編として

□ 火神 (180.0㎝)

 

 

どちらでも入れる火神だが、身長面で貢献できるのはフクロウチームのみ。

圧倒的にネコチームがデカいのである。

 

6人での試合ならまだしも、少数での試合は 高さがある方が圧倒的に有利だ。

ブロックの上から打たれたら、狙う箇所は幾らでもあるし、止められれば そもそも人数が少ないからフォローが間に合わず決まる確率の方が高い。

火神は、リエーフや日向にレシーブについて言っていたが……難しいものは難しい。

 

 

 

だが、高さ(そこ)に関して不平不満の意があるのは赤葦だけだった。

 

 

「いーじゃねーか! 4人側が明らかに試合バランス崩す様なら、そこも考えねーとだし。まぁ、何より昼間やれない事やってみよーぜ!」

 

 

黒尾のその言葉。

赤葦は、【そりゃ、そっちは高さ的に有利だから】的な顔を見せていたのだが、追撃をしてくれる人が居ない。

 

 

「フォオ!! 東京の強豪、エースとセッターと一緒だっっ!! そんでもってVS月島ッ!」

「オレも最初はフクロウチーム! 思いっきりやってみようか!」

「もちろんだーーー!! うおおお!!!」

 

 

日向と火神は元気いっぱい。

どっちかと言うと、日向が元気いっぱいで両手で何故かガッツポーズを決めながら飛び跳ねていた。

 

 

「へいへいへーーーい! オレ達が勝――つ!」

「勝―――つ!」

 

 

そして、我らがエース、木兎も全く気にしてない様で、日向と同じ様に遊んでいた。

 

 

「……………」

 

 

言うだけ無駄、時間と体力の無駄だと赤葦が悟るのに時間はかからないのだった。

 

「取り合えず、火神が居る方がサーブ権って事で始めますか。じゃあ、火神」

「アス!」

 

赤葦から(ボール)を託される火神。

位置的にも丁度火神が打つローテだ。

 

 

「んじゃあ、リエーフの所をビシバシ狙いますね~。夜久さんに代わって!」

「え゛!?」

 

 

火神に ニッコリと良い笑顔を向けられるリエーフ。火神のサーブがヤバイ事くらい、もう重々承知なリエーフは顔を引き攣らせた。

 

 

「だいじょーぶだいじょーぶ。3対3だし、際どいコース、とかより本人を狙う様に打つから」

「ぜ、ぜんぜんダイジョーブじゃないって火神それ!!」

 

 

大声で抗議するリエーフの背後にはいつの間にか、大きな大きなネコ(・・)の影。

リエーフの方が身長的には大きい筈なのに、何故だろう? リエーフより身体が大きく見える。

 

 

「仮にも音駒(ウチ)にサーブで狙ってくる宣言してんだ。………出来ませ~ん、やめてくださ~~い、なんて言わねぇよな?」

「……………」

 

 

勿論、黒尾である。

火神のサーブで狙う発言を聞いて、音駒スイッチON! なのである。

 

いつも飄々として、何処か掴みどころが無かったり、ふざけてたりとしている音駒の主将・黒尾だが、流石に守りの音駒として、表向きは別にしても、真の意味では 火神の発言は許容できるものではない。音駒の名を冠しているリエーフにも、その辺りは強制だ。

 

 

「何処打ってくれても良いよ~~、かがみん」

「ウス!」

 

 

ニコニコと笑ってる黒尾は、何処となく恐い……と言うのが心情ではあるが、火神にはそれも(・・・)大好物。バレーに関してかかる恐怖は大好物。自分自身に被害が及ぶ類のモノなら兎も角、こう言った場面ではワクワクの方が圧倒的に勝ってしまうから。

 

試合が終わった後、自分で自分を呆れちゃったりもするが、後悔は一切なし。

 

 

「アハハハハハ! だせーーぞ、リエーフ!」

「うぐっ………」

 

 

ここぞとばかりに、日向はリエーフを煽っている様だが……、忘れてしまったのだろうか?

その強打が、自分自身にも飛んでくる、と言う現実を……。

 

 

 

「しょーよー? 向こうに行った時のオレのサーブん時、その余裕、見せて貰うからな~?」

「ほぎゃあっ!??」

 

 

 

日向は本当に忘れてしまっていた。

火神が一緒だと言うのは、もうずっと変わらなかったから、ずっと一緒のチームだったから。(厳密には違う。試合形式の練習の時とかで、分かれる事は多々あるが 日向にとっては一緒、らしい)

 

だから、火神はフクロウチームで頑張る! と言う事を疑ってなかった。最初に説明した筈なのに、と言うのはご愛敬。

 

 

そんな感じで、気合入っていた筈なのに、どんよりとした2人は置いといて、試合は始まる。

 

 

「ホレ、リエーフ! いつも夜久(やっく)んに怒られてる事思い出して、かがみんのサーブとって見ろ!」

「ふぎっっ!! ういっっっす!!」

 

 

どんより、としたと称したが、流石に試合が開始されるとスイッチは入る。

リエーフにしろ日向にしろ、だ。

 

確かにレシーブよりスパイク、そっちの方が断然良い……のは変わらないが、それ以上に思う事があるから。

 

 

勿論、それは 試合をするなら、【絶対に勝ちたい!】 と言う気持ちである。

 

 

 

「しゃあああ! 一本決めろよ、誠也―――っっ!」

「ナイッサー」

「ひっさつさーーーぶ!!」

 

 

初めて梟谷の2人からエールを貰った火神。

こう言う時の火神の単純さは日向を超えるかもしれない。

 

3(+1)対3形式とはいえ、木兎や赤葦と共に、同じチームとして試合が出来る事への喜びが、そのまま身体能力に直結する。

 

つまり、気持ちと身体が合致する! と言う事である。

 

 

 

火神は大きく深呼吸をすると……当然狙いはリエーフ。思いっきり身構えているリエーフに狙いを定める。揺さぶったり、色々として見たい気持ちは持ち合わせてはいるが、最初、本当の最初の最初は思いっきり景気よく力を込めたい………と言う事で、エンドラインから下がる歩数は6歩。

 

 

「6歩、ね」

 

 

勿論、黒尾はそれを見逃さず、リエーフ狙い宣言しているけれど、警戒心を最大にして、月島やリエーフに下がる様に指示。

 

そして、合図(セルフ笛)と共に火神は動き出した。

 

 

助走・跳躍・空中姿勢………、一糸乱れぬ、と言うのはこういう時に使うのだろう、と黒尾は思う。

何度も何度も見てきた火神のサーブ。この身に染みていると言って良い。

だからこそ解るのだ。

 

この一本は、間違いなく絶好調の代物が来ると。……打たれる前に解るのだ。

 

 

 

「ぶつかれ!! リエーフ!!」

「うぁいっっ!?」

 

 

 

そして、想像通り、想定通り、……轟音を纏った(ボール)が弾丸の様に放たれた。

真っ直ぐリエーフに伸びてくるビッグサーブ。精度と威力の両立。狙いも威力も申し分なく、会心の一撃と言って良いかもしれない。

 

 

「ほぐぅっ!?」

 

 

精度が良すぎたのか、或いは黒尾の一言のおかげなのか。

リエーフは、そのサーブに正面から衝突した。

 

正面衝突なので、当然 ナイスレシーブとは程遠いモノであり、レフトよりに居たリエーフに正面衝突し、反対方向へ。

 

 

「くっっ、おおおっ!!」

 

 

それを見事に繋いで見せたのは 黒尾。

これまた見事な反応速度と即座に体勢を整い直す回転レシーブだ。そして、その返球位置も見事。

丁度月島の前付近、ややネットに近いが特に難しいトスではない。問題なく無く打てる位置。

 

 

「ラスト頼む!!」

「はい!」

 

 

あの強打の後と考えれば最高の2段トスだ。月島は助走から跳躍まで行う時間も問題なくあった……が。

 

 

「ブロック3枚!」

 

 

木兎・赤葦・日向の3人が一斉に月島のブロックに着いた。

3人であれば2人がブロックで1人はレシーブ、と言う形になるだろうが、今は火神が居る4人構成だ。レシーブは1人に任せる。

 

……つまり、ブロックで仕留める!と言う意識の現れでもある。

 

「止めるぜーー、赤葦! チビちゃん!!」

「はい」

「月島カクゴーー!」

 

 

木兎も勿論ブロックで仕留めるつもりでいる。

 

そして日向はやや私怨が籠ったブロック。

 

練習ででも、何度も月島にはブロックで止められた苦い経験を持ち合わせている日向。

スパイクの最高到達点よりは助走が無い分劣ってしまうが、どうにか頑張って合わせたら、月島の長身相手でも勝負出来る自信を日向は持っている。

 

 

「うげっっ!? 4人居るのずりーー!!?」

 

 

と黒尾が最初の取り決めを忘れてそう愚痴ってしまうのも無理はない。

我ながら、ナイス2段トスだと自画自賛をしたい気分でもあったと言うのに、3人で取り囲まれたスパイカーを見たら……。

 

 

だが、そこで魅せるのは月島だ。

 

 

「…………」

 

 

当然、高身長なのが取り得なだけじゃない。

何処までも冷静。例えブロック3人に囲まれたとしても、冷静沈着。どんな大きな壁にも穴は必ず存在する事を知っているから。

 

戦い方は無数にある事を知っているから。

 

助走・跳躍・空中姿勢。……本日疲れている筈なのに、自分でも驚く程スムーズにそれらを行う事が出来た。

 

 

更に言うなら、(ブロック)だけでなく、コートの向こう側がいつもより見えてる気もした。

 

 

数多のブロッカー泣かせなブロック・フォローをしてきた火神が控えている。

だが、地上(フロアディフェンス)に、……火神に注目し過ぎたら(ブロック)に捕まってしまう事も解っている。

 

 

なら、今出来る最善のスパイクは……1つ。

 

 

 

 

「あ゛ッッ!!?」

 

 

 

 

狙うは当然、3枚の中で一番到達点が低い日向。

狙うは日向の手。

 

 

後ろに控えている火神(お父さん)を躱すには、日向(子供)を利用するしかない。

 

 

 

日向の右手に器用に引っかけた(ボール)は、そのままサイドラインを超えて落下。やや中央よりで構えていた火神だが、流石に届かない。

 

 

「ふふん」

「くっそーーー!!」

「ドンマイ」

「ヘイヘイ、チビちゃん! 次だ次!」

「今、月島バッチリこっち見てたな……? 3人で捕まえられた、って一瞬でも思ったオレの負けかぁ」

 

 

黒尾の2段トスが良かったとはいえ、タイミングもバッチリ、3人も揃えてのブロックだったが、思い込むべきでは無かった事と、月島の得意とする技術のサイドラインへのブロックアウトも火神は頭に入れつつ反省。

 

 

 

「ウェーイ! かがみん、次こっちこっち!」

「アス!」

 

 

 

本日。

何にでもなれる火神()は、梟と猫行ったり来たり。

実に楽しそうにコートの両方で飛び回るのだった。

 

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