王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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久しぶりに、ショーセツバンネタを入れてみたくなりまして……苦笑

あまり、進んでないのはスミマセン!
少しお付き合いしていただけたら幸いです!


第125話 春高予選開幕 + 番外編②

春の高校バレー

宮城県代表決定戦 一次予選

 

 

第4・5組 試合会場

加持高等学校。

 

 

春高一次予選の場。

IH予選の時とは周囲の話題性が違う。それぞれの会場で話題は変わるだろうが、この加持高等学校の試合会場では、話題性に上がるのは1校だった。

 

 

「アレだよ、ほら烏野!」

「あ、聞いた聞いた。試合見てないけど、この前のIH予選で、青葉城西とフルセットやったんだよな?」

「おう。見てきたヤツが言うには、えらくドラマティックだった、って話だ。烏野の主力が1人怪我で抜けて、結果負けたって」

「へ? それ初耳! んじゃ、勝ってた可能性大って事か?? しかも、その青城は決勝戦で白鳥沢とフルセットだったんだぜ!? 一気に優勝候補!?」

 

 

そう―――場は、烏野の話題一色だった。

IH予選とは明らかに違う。

 

もう、誰一人として【堕ちた強豪 飛べない烏】と呼ぶ者はいなかった。

そして軈て個人の話題になってくる。

 

特に名が轟いている者たちから。

 

 

 

「確か、北川第一の【コート上の王様】が居るんだろ?」

「おう。有名どころで言えば、千鳥山中の西谷も居るらしいよ。中学ん時のベストリベロの」

「リベロ以外でも、スゲーのは烏野他にいたよ。名前知らないけど、11番のヤツ。多分、1年だ。及川のサーブ何本も上げてた。それにもう1人もいた筈。……つまり、チームの半分は、及川のサーブを上げる。レシーブレベルがメチャクチャ高いよ」

「へぇ……。でも高さはやっぱ無い感じ?」

「いや、あんまり目立ってなかったけど、190近いヤツもいたよ」

「顔が怖い髭の兄ちゃんとか、パワーで潰すって感じのスパイカーもいたぞ。途中交代して出てきたボーズ頭のヤツもそんな感じだった。控えの層も厚いのかも」

 

 

IH予選の時は、烏野で目立ちに目立ったのは日向だった。日向が中心だと言って良い。

あの体躯で驚くほどの跳躍、攻撃力。何処からでも速攻を繰り出すあの変人速攻。目立つ要素としては、これ以上ないインパクトを与えていた事だろう。

 

だが、件の青葉城西戦では、それだけでなく更に個々の実力を皆に認めさせたのだろう。

 

 

そして、チームが目立ち始めた……と言う事は、プレイ以外にも光が当たると言う事でもある。

烏野にはもう一つ目立つポイントがあるから。

 

 

「そんで、なんつっても、マネが可愛い!! つーか美人! つーかエロい!!」

「あ、そういや、さっき見たけどマネ1人増えてたぞ! なんかちっさくて、可愛い系!」

「く~~、やっぱ あんだけスゲーのが集まってたら、美人マネ(そういうの)も集まってくるのかなぁ……」

 

 

烏野の光―――と、田中や西谷は称するだろう。

但し、安易に見続ける事なかれ。

 

何故なら、視線を集めようものなら、すぐさま天罰覿面! と田中・西谷は 実力行使、阻止に踏み切るまさに(清水にとっては迷惑な)番犬だから。

 

 

 

「あ、あとはアレだろ……? やっぱ」

「そうそう、忘れちゃなんねーってヤツ? ちっこいMB(ミドルブロッカー)の」

 

 

 

そして―――当然ながら、如何に他の仲間たちに視線が集まったからと言って、最強の囮である日向が、いわば烏野最大の光が消える訳ではない。

 

 

「無茶苦茶な速攻だよな~、対戦したこと無いけど、目の前でアレやられたら、絶対混乱するわ」

「おお! ほら、あのオレンジの髪のヤツ! 烏野の10番!」

 

 

と、まるで日向はギャラリーに紹介されてる演出……かの様なタイミングで振り返る。

そして、ギャラリーは違う意味で吃驚仰天。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? なんか凄いゲッソリしてる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目は虚ろ、頬はこけていて、なんだか老けて見える程だ。

 

 

 

「はぁ……、ゲン担ぎでカツどん。それは全然OKだけど、加減を考えろ、って前々から言ってるのに。―――ていうか、前回のIH予選では大丈夫だったのに、どーして春高予選で?」

「ぅぅ……、ち、小さな巨人が……、それが、春高で……」

「わ!! ひ、日向? 大丈夫!?」

 

 

 

ひょろひょろ、と吹けば飛ぶような細ささえ感じる日向。

日向と付き合いが長い火神も、それなりに釘刺したつもりだ。知っていても、注意しても、どうしても止められない。これはいわば運命の様な物だ。……勿論強引に止めたりはしてないが。

 

谷地も心配そうに日向の顔を覗き込んだ。

 

 

「あ、谷地さん……、大丈夫大丈夫。来る途中で吐いたし、今はスッキリした―――。おなか空っぽだけど……」

「ゲン担ぎって。前日とかじゃないの? 当日朝からカツ丼大盛食べてくるとか、ウケる。そら酔うわ」

「し、試合前は、カツ丼だろっっ!」

 

 

ニヤニヤ、と笑っているのは月島だ。

我関せずを貫いていて、日向のお世話を承った? のは火神と谷地だけだから。

 

そして、そんな日向を見て大盛り上がりを見せるのは、我らが司令塔(セッター)影山。

 

 

「ボゲェ! このボゲェ! 日向くそボゲェ!!」

「は、恥ずかしいから、注目更に集めるから! だから、飛雄も抑えて抑えて」

「ぐっ……」

 

 

ボゲボゲ、と罵倒しながら近づいてくる影山を抑える火神。

火神が抑えているので、それなりに余裕を見せているのは澤村だ。

 

 

「それにしても影山の罵倒ボキャブラリーは【ボゲ】だけだなぁ」

「!! が、がんばって増やします!!」

「………頑張って増やすもんでもないと思うけど、まぁ頑張って」

 

 

あっちこっちにと今日も大変な火神。

次は日向に服を掴まれた。引っ張られた。

 

 

「なぁなぁ誠也。勝負の日はカツ丼、普通だよな?? 普通の事だよな??」

「うん? ああ、ゲン担ぎってだけで、普通ってカテゴリーに入れるのはちょっと違うと思う」

「ガーン!」

「ほら、言った通りじゃん。【普通とはいったい?】って。おとーさんが正しい。流石常識人」

「ツッキーにそう言われても嬉しくない。ってか、山口のフォローしてあげてよ。気持ち悪そうにしてるよ」

「え?」

 

 

さっきからずっと俯いてる山口。

よくよく見てみると、確かに顔色が良くない。

真横にいた月島だったが、そんな山口に気付く事は無かった様子。

 

 

「ちょっと、どうしたの?」

「いや……、日向の、ゲロ……思いだしたら、貰いゲロしそうで……」

「!? なら早くトイレ行きなよ!!」

 

 

日向のゲロ効果は、どうやら伝染する様だ。

まずは山口。そして――――。

 

 

「お……オレも緊張と相まって………ウプッ……」

「って、怖い顔して集中してたかと思ったら。ゲロ我慢してたのかよっ!」

「こ、怖いとか失敬な……。ウププッ……」

「あー、もう良いから、旭もトイレ行けって!」

 

 

面構えは兎も角、中身はピュアでガラスハートな東峰。

精神的な負担も加わって、貰いゲロ効果が直撃。

 

 

「翔陽? バスでゲロるの2回目ってホントか!?」

「エチケット袋いっぱいに溜めて、他人の股間にぶちまけてたよな。それがバス止まるまで我慢するなんて、成長したぞ日向」

「ぅ……」

 

 

「「ブッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」」

 

 

 

そして、日向は田中・西谷の玩具扱い。餌食となってしまった。

 

 

「止めなくて良い?」

「あー、ハイ。……こうやって成長していく。デショ?」

「………どっちかと言うと、お手上げ、って感じに見える」

「――――清水先輩の言う通りです」

 

 

あっちこっちで、同時多発的に起こった問題? を聖徳太子の様に聞き入れて、解決する術など、如何に烏野の火神(お父さん)と言えど無理。

 

 

「まぁ、澤村さんも何も言ってませんし? このままでも良いかな、と」

「……なるほど」

 

 

火神の言う事も一理ある、と清水は澤村の方を見て思うのだった。

 

 

烏野高校は、今大会一のダークホースだと言われており、IH予選での試合内容を知る者なら、十分優勝狙える強豪校。

 

だけど、この場面を目撃した人たちはどう思うだろうか……?

 

 

 

 

「……本当にあいつらが青城を追い詰めたチームなのか……?」

「……一部では優勝候補って声もあるらしいけど……?」

「……まぁ、ああいうチームが、王者を倒したり……するんじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……トイレトイレ」

 

 

色々面倒を見続けていて、自分の事を疎かになってしまえばまさに本末転倒。

 

 

火神は試合前にしっかりと用を足しにトイレへと来た。

そして――出会う。

 

 

火神は知っている。トイレとは、外せない場所。

出会いの場なのだと言うことを。

 

 

「(先客がいる……ん? この後ろ姿って。それにこのユニフォーム……)」

 

 

【OHGIMINAMI】と印字されて、その背番号は1番。

扇南高校 十和田 良樹。

 

間違いない。

扇南をガラが悪い高校だ、と思う事なかれ。彼も、彼らもやるときはやる。そんな男たちだ。それを良く知っている。

 

だからこそ、火神は感激もしそうになるが、流石に場所が場所なので、自重した。それに自分もそろそろ我慢の限界だったから、と言う理由もあるが。

 

 

「ふぅ……」

 

 

お隣さんは、一息ついて手を洗い、外へと出たその時だ。

 

 

 

 

 

「しょんべんじょべーん♪ 尿意ハズカム~~♪」

 

 

 

 

 

聞き覚えのある妙な声に、妙な歌。

そして、出会いがしらにぶつかった。

 

明らかに日向の前方不注意だ。

 

 

「す、すみま「ドコ見てんだコラァ!! クラァ!!」」

「ヒィィ!! スミマセン! スミマセン!!」

 

 

日向と1回戦での対戦相手、扇南の十和田との邂逅である。

 

 

「あー、スミマセン。その子、ウチの子なんで……」

「あん?? なんだ、中学生か? お前の弟?」

「―――世話が妬けるって意味じゃ、似たようなものかもですね」

 

 

火神は後ろから話しかけて、詫びを入れた。

日向はビビってしまって、声が出てない様だったが、火神がトイレにいるのが解って、安堵した様で、冷静に十和田(怖い人)を見る事が出来ていた。

 

そして、日向も確信する。

背後はローマ字で【OHGIMINAMI】と読みにくいかもしれないが、正面からははっきりと書いているから。【扇南】と。

 

そして、1回戦の相手が扇南である、と言うのは事前周知されている。

 

 

「悪かったなー、でも良い弟もって羨ましいぜ。最近ウチの弟、付き合い悪くなってきててよー」

 

 

兄だからか、兄弟がらみ、それも弟がらみになると、見た目に反して良い人の様に見える。

兄の応援に来た兄弟の図だから、尚更なのかもしれない。

 

 

 

たが、それも長くは続かなかった。

何故なら日向も流石にそろそろ許容範囲を超えてきたようだから。

 

 

 

 

「お、オレは弟じゃねーーし!! 烏野高校1年!! 日向翔陽だーー!!」

 

 

 

 

大声で間違えを正した。

 

目を丸くさせる。

 

 

「は? 今弟つってなかったか?」

「あー、みたいなモン、って言いましたね。スミマセンでした。ちょっと説明不足で。ーーでも、世話が妬ける、って意味じゃ似たよなものですよ? ………いや、ほんと」

 

 

火神の姿を見て、何処か哀愁漂ってるその表情を見て、粗方察したのか、十和田は騙された? と思ってムカついていた様だが、綺麗さっぱり霧散した。

 

 

「それで、お前ら烏野っつったか?」

 

 

一息ついて、十和田は改めて2人を見た。

ユニフォームは着てない様だが、嘘を言う理由は無い。

 

 

「アス!! 優勝して、全国へ行きますっっ!!」

「……はっ、世話妬けるっつーのは解る気がするわ。見てたらよ。……簡単に【全国】とか言っちまう所を見ると余計にな」

 

 

十和田は、呆れたように首を左右に振った。

冗談の類だと思ったのだろう。

 

何せ、宮城には―――あの白鳥沢が居るのだから。

 

 

 

 

 

 

「解ってくれてありがとうございます、って言いたい所ですが、勝つ事に関しては オレも翔陽も、本気ですよ?」

「あ? ……っっ」

 

 

 

 

 

十和田は、火神を、そして日向を見た。

火神は先ほどまでの哀愁漂う……苦労人的な顔じゃない。

日向もさっきまでビビっていた顔は一切なかった。

 

 

「全部倒して、東京いきます」

 

 

真っすぐ見据えてくる。

この二人には、得体のしれない何かを感じた。

 

単に威圧しても、意味がない、違う次元の強さを垣間見た気がした。

 

 

「……ハッ。まぁいう分は無料(タダ)だろうよ。万一ラッキーで勝ち進む事があったとしてもな。圧倒的な力、ってヤツで踏みつぶされて仕舞いさ。―――白鳥沢に」

 

 

十和田は、それ以上会話をする気はない、と言わんばかりに背を向けた。

 

 

「ここにきて出来んのは、精々【思い出作り】が関の山だ。楽に行こうぜ」

 

 

そういって、立ち去って行った。

 

日向は、その背中を見送って首を傾げ……。

 

 

「って、誰が誠也の弟だよ! 仲間だろっ!!」

「これまで、日向翔陽君関係で、大変な目にあった事を数えてみたら、ってね? どう思う??」

「―――――……」

 

 

日向は、怒って見せたけれど、火神に痛い所をつかれてしまった様で、何も言えなくなってしまっていた。

 

 

「あ、それとさっきの人。勝ちにきてねーのかな? 折角の大会なのに! まぁ、勝つつもりで来たとしても、オレたちが勝つけど」

「扇南は、IH予選で白鳥沢と当たってたから。有り体に言えば、心折られてしまった……のかもな」

「へぇ……、白鳥沢とやったんだ! 良いな……、絶対オレたちも白鳥沢、ウシワカぶっ倒して、全国行くぞ!!」

 

 

強い力を前に、屈してしまった。

巨大な相手を前に、心を折られてしまった。

 

 

それは恐らく日向には縁のない感性、と言っても良いだろう。

 

 

だって、負ける事以上の絶望を日向は知っているから。

試合に出たくても出られない。……参加したくても参加出来ない。中学のあの3年間があるから。

 

 

それは火神にも言える事ではあるが。

 

 

「まぁ、相手の事情は兎も角、オレたちは全力で当たって、突破するだけ、だな」

「おうっっ!! 戻るぞーー!」

 

 

火神は普通に速足で、日向は元気いっぱいに頷くと、飛び跳ねながら戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そして……試合開始時間が迫る。

烏野 vs 扇南

 

 

 

 

「よし、前の試合が終わった。ウォームアップだ。……行くぞ」

 

 

 

 

澤村の号令の元、烏野は1回戦を行うコートの中へと駆け出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編

 

~もし、烏野高校排球部の女子マネージャーが清水潔子じゃなかったら~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで、時を少し遡ろう。

 

 

それは夏の暑い日差しがジリジリと照り付ける、快晴の空の日の土日練習。

日向・火神・影山は競い合いながら、ロードワークを終えて……体育館へと戻ってきた。

 

 

「はい。しっかり水分補給して」

 

 

駆け込む様に戻ってきて、更に体育館まで戻るのも競争の範囲内、としている日向と影山は、一時清水に止められた。

 

熱い日差しの元、走ってきたのだから、しっかり塩分水分補給をするのは当然の事だ。

 

 

「「アス!!! あざーーす!!」」

 

 

勢いよくひったくる? 様に受け取るとクビクビ飲み込みながら、駆け出して行った。

 

 

「……忙しないな、ほんと。もっとちゃんと感謝しても良いでしょうに。なんかスミマセン、清水先輩」

「ん。……大丈夫。火神は競争は良いの?」

「あははは……。ロードワーク中ならまだしも、流石に細かな競争は良いですよ。因みに、ロードワーク。ゴールの校門までだったら、オレの勝ちでしたので」

 

 

ニコっ、とピースサインを送る火神を見て、軽く微笑む清水。

 

余裕な表情を持てるのは、勝利したが故なのだろう、と何処か納得できた。もしも、負けていたら あの2人の様に子供じみてもおかしくない。……と言うより、そんな火神の姿を見るのも面白いかも、とさえ思える。

 

 

「?? あれ? 清水先輩? 大丈夫ですか?」

「……え?」

 

 

火神は清水の顔をいつの間にか覗き込んでいた。

少々驚いて、のけ反ろうとしたが、いつも以上に反応が鈍い。清水本人でも解る様に。

 

 

「ひょっとして、具合悪いですか? 谷地さん今日は家の用事で休んじゃってて、清水先輩の仕事増えてますし」

「いや、大丈夫」

「……本当、ですか?」

 

 

じっ、と真剣な面持ちで清水を見る火神。

それは、1年リーダーとして、皆の世話を……、色々とみる時にする表情そのもの。

 

 

「今日は日差しも強くて、凄く暑かったです。……水分、塩分取ってます?」

「…………ごめん。ひょっとしたら、熱中症気味……なのかも。なった事無いから、解らないんだけど」

 

 

真剣な面持ちだと言う事。皆にお父さん、と呼ばれている事も相まっていたかもしれない。

強がったりする事なく、正直に告白した。

 

 

「って、大変じゃないですか! 熱中症ってなっちゃったらホント大変なんです」

 

 

火神は、清水が持っているクーラーボックスを素早く奪った。

いつもなら、大丈夫だから、と拒否しそうな所だと言うのに、簡単に清水の肩から外れて、捕る事が出来た。

 

ガチャリ、と開けると一番手前にあるボトルを取り出して、そして冷却タオルも常備しているので、取り出して清水に差し出した。

 

 

「まず、日陰に行きましょう! 水分取ってください」

「でも、それは皆の分だから……」

「大丈夫です。オレが何とかしますんで。先生も呼んできますよ。清水先輩は座ってください」

 

 

てきぱき、と熟す火神を見て、清水は表情を落としていった。

 

 

「………ごめんね。私、先輩で、それにマネージャーなのに」

 

 

初めての事かもしれない。

清水に謝られた。

 

 

「なんだか、清水先輩に謝られるの、ってすごく新鮮ですね。色々と迷惑かけちゃってたのは、オレの方なのに」

「………そう、かな」

「そうですよ。でも、謝罪は不要です。不調なんて誰にでも起こる事ですし。いつもいつも清水先輩にはお世話になってますから。返させてください。……あの時(・・・)、傍にいてくれて、オレ、本当にうれしかったんで」

 

 

あの時、と言うのがどの時を指すのか。

少しぼーっとする頭だが、清水にも解る。……あの惜敗してしまった時の事。ケガをしてしまい、新たなケガまでして、心配をかけさせられた時の事だろう。

 

 

「武田先生を呼んできます! しっかり水分取ってくださいね」

「……ん。ごめ……、じゃなくて。ありがと。直ぐに治すから」

 

 

清水はそういうと、ボトルを開けて中のドリンクを口の中に入れて……更に体内へと流し込んだ。

冷えたドリンクが身体を芯から冷やしてくれる。そして、冷却タオルを首に巻き、木陰に入り……何とか体調を元に戻そうとする。

 

 

清水がしっかりと水分補給をしてくれた事を確認すると、火神は素早く武田の元へと向かった。

 

 

 

「………4番、のボトル」

 

 

勢いよく流し込んで、持たされたボトルにテプラ―で張り付けられている番号を見た。

全てのドリンクボトルには番号が備え付けられているから。管理している清水が誰よりも知っているし、偶然かもしれないが、誰が何番を良く使うのか、まで何故か覚えている。

 

4番のボトルを使っていたのは………。

 

 

 

「ありがとう、火神」

 

 

 

もう見えなくなった火神の姿を思い浮かべながら、再び清水は火神に礼を言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勿論、その後は清水は帰宅。

武田にも説明して、保健室の先生に診てもらって……帰る分に問題ないのなら、自宅療養の方が良い、と判断してもらった為、清水は帰宅となった。

 

「えー烏養君は家庭の事情で午後からはお休みです。それと清水さんは体調不良と言う事で、午後からは僕がマネージャーを務めます。何分不慣れなものですから、至らない所も多々あると思いますが………」

 

今日は烏養も午後から外せない私用があり……と人数不足だがやるしかない、と、説明をすると同時に、絶叫が起こる。

 

 

「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「ジーザスッッッ!!」

 

 

武田が話し終わるのも待たずに、田中と西谷は大絶叫。そして天を仰いだ。

 

 

「き、潔子さんが体調不良だと……、気づく事が出来なかったオレ、一生の不覚っっっ!!」

「それは違うぜ、龍。潔子さんのことだ。きっとオレたちに心配かけまいと気丈にふるまっていたに違いない……っ」

「そ、そんな涙ぐましい努力を……、潔子さんっっ」

「なんで、潔子さんのその想いにオレたちは気づかなかったのだ!!」

「うぅ……、オレたちはいつも潔子さんの優しさに甘えてばかりで……!!」

 

 

にじむ涙、握る拳。魂の慟哭。

2人はくしゃくしゃになった顔を見合わせていた。

 

 

そんな2人を見て、武田は苦笑いをする。

 

 

 

「(火神君が気付いて、適切な処置、応急措置までした事は……言わない方が良いですね……)」

 

 

 

運が良かったのか悪かったのか。

清水の異変に気付いた時、周りには誰も居なかった。影山も日向も知らなかった。

 

でも、清水にとっては良い事だった、と思う。

火神だからこそ、……名実ともに皆のお父さん的な存在になりつつある火神の言葉だったからこそ、そこまで無理をせず、受け入れて、大事に至らなかったかもしれないから。

 

更に言えば、田中や西谷が気にかけていたら……、恐らく言っていた通り気丈にふるまっていた事だろう。

 

 

と、武田が色々考えていた時だ。

 

 

「……なぁ、潔子さんの代わり、オレらでやらないか?」

「ああ。ノヤっさん! オレもそう思ってた所だ。潔子さんの様に出来る訳もねぇが、でもこの期に及んで、武ちゃんにあれこれもまかせちゃいられねぇ」

 

 

いつの間にやら、自分たちがやる! と言う話になっていたのだ。

流石にそれは武田も慌てて止めに入る。

 

 

「そ、そんな。僕はぜんぜん大丈夫ですよ! 君たちには練習がありますし、合宿、大会も近いので……」

「いいえッッ! バレー部はオレたちが引き受けます!」

「先生は、先生の仕事がある筈です!!」

「な、なんて頼もしい……! いや、3人で頑張りましょう! 1本では脆い矢も3本集まれば頑丈になる、と言うものです!!」

「ああ!!」

「おう!!」

 

がっしりと、肩を抱き合う3人。

更に言えば、円陣まで組んで盛り上がってる。

 

 

「……なぁ、大地。あれ大丈夫だと思う? ほっておいて良いの?」

「やめろ、と言っても聞かないだろ。あの二人」

「まあ、確かに」

 

 

何はともあれ。

女子マネージャー2人を有する烏野にて、初めてマネージャー不在と言う事態に陥る。

 

その事態を打開する為、田中と西谷が午後に限り、ハードな練習、そしてマネージャー業を兼務する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

午前、全力でロードワークをし、午後から本格的なバレーの練習。

 

当然、いつもは練習に集中しているから、見逃しがちだが、清水の仕事もハードだ。

 

 

「……ノド、乾いたーーー!」

 

 

日向が天井を仰ぐ。

清水も苦しんだ熱中症予防は、水分塩分補給は欠かせない。

 

体育館は直射日光こそ、あり得ないが蒸し風呂の様に熱くなるので皆瞬く間に汗だくだ。

 

ここで、いつも通りマネージャーである清水や谷地に……。

 

 

「そうか、谷地さんは休みで、清水は体調不良で……ん?」

 

 

澤村は、背中に視線を感じる。

それはもう、びりびりびり、と。

 

そこにはかなり息切れをしている田中と西谷の姿があった。

体力お化けである1年たちに張り合うように、先輩として下を向かない様にし続けていたから、当然ながら相応の体力を使っている。

 

 

「え、遠慮はいらねぇ、です……! 本日は、田中・西谷マネに任されよ!!」

「い、一年の分は、オレもやります、よ? 先輩たちに無理をさせるのは……」

「ぶぁぁか。後輩を、支えてこその、先輩だ!」

「それに、火神君にはポイントとられる訳にはいかねぇんですよぉねぇ? 龍君?」

「ですなぁ、夕君?」

「……へ?」

 

 

汗を流し、タオルで拭い、疲れをどうにか忘れようとしていた時、西谷の声色が変わった気がした。

 

 

「至高の撫でりこ!! 次こそは我らに!!」

「我らに!!」

「火神君、至高の撫でりこ、渡さぬぞ!」

 

 

絶対疲れてる筈なのに、体力馬鹿である日向や影山、火神も息を切らして汗だくになる程のハードな練習をしてきたのに、本当に元気だ。妙に韻を踏んでいるのは気のせいだと言う事にしておこう。

 

 

それにしても……元々2年の中ではトップの体力を持つ2人。部全体を鑑みても上位に食い込む体力を持つだろう。……それでも、午前のロードワークでは1年の体力お化け達に後塵を拝した様だが、今体力勝負をしたら、ひょっとしたら、彼らがトップを飾るのではないだろうか? と思う程だ。

 

 

なんだかんだと、微妙な空気が流れてる気がする。

 

 

「……なんか、やだ。おとーさん、もっと頑張ってよ」

 

 

月島は顔を顰めた。

どうせなら、世話やきな火神の方が余程信頼できるというものだが、あの2人は非常に頑張っているものと思われるのだが、直感で解る。警笛を鳴らしている。

そもそも動機が不純であり、こういう類なのは、空回りするのがお約束である事を月島は解っている。

 

 

「ま、まぁ 口に入れるものだからね……。だからと言って、1年の火神に~~ってのは、流石に立つ瀬ないし、オレも手を上げる~~って言いたいトコなんだけど……」

 

 

菅原も我こそが、と手を上げそうになるのだが……、田中&西谷が止まる気配はない。

 

 

だがしかし、冷静になって考えてみれば、粉末のスポーツドリンクを水に溶かしただけのものだ。何をそこまで気にする必要があるだろうか、とも思う。

 

 

「火神に突っかかっていくトコ見ると、まだ子供だって思っちゃうんだけど……、まぁ、子供じゃないだろうし、その位は大丈夫……だろ?」

 

 

そう、2人とももう高校2年生なのだ。

先ほどから言っている通り、後輩を支えてこその先輩で、綺麗に5・7・5を刻んでいる。大丈夫だ、と願いたい……。

 

 

「はい、そこーーー!! なにコソコソ言ってんスか!!」

 

 

やる気マシマシな2人。もう止めれない。と言うより、止める体力が残っているのなら、バレーに使いたい、とも思えてしまう。

 

 

「……わかったわかった。すまんな、2人とも。ドリンク作って持ってきてくれるか?」

 

「バッチリです!」

「よーろこんでーーーっっ!」

 

 

ついに頼まれた仕事を嬉々として、駆け出す2人。

十中八九……と言うより10割は、清水と同じ仕事が出来る、と言う歓喜だろうが。

 

 

「ぅぅ……、ひどい目にあった」

「個人的には、火神を監督として、2人に――――」

「田中さん達は2年生です。オレは、1年生です。………ですよね? 澤村さん」

「―――だな。冗談だ」

 

 

冗談に見えない、と言いたかったが、それ以上突っ込む事はせず。

 

そして、汗水たらして、今か今かと水分を待っている部員たちも覚悟を決めた様子。

いや、寛大な気持ち。……いやいや、あきらめの胸中。

 

 

取り合えず、ものの数分でカゴに大量のドリンクボトルを詰めたマネージャー代理が戻ってきた。

 

 

「お待たせしましたーーーっ! 田中特製ドリンクでございーーっ」

【と、特製……!?】

 

 

戻ってきた田中の第一声。

それが、全員がハモらせる合図だった。

 

 

なぜ、こうも継ぎ足しただけの言葉なのに、いつもと変わらないドリンクなのに……、禍々しいナニカ(・・・)に見えてしまうのだろう?

 

 

「なーに言ってんだ? 龍。ただのスポーツドリンクじゃねーか!」

「ワハハハハ‼ 気分だよ気分! これで、至高の先へと進めるやも、と思えば心も踊るってもんだぜ、ノヤっさん!!」

「おぉぉ……、ついにオレたちにも至高の撫でりこが……??」

「おう!! ………だよね? 火神君」

 

 

ぐるんっっ、と2人して、こちら側に視線を向けてくるが、何でもかんでも結びつけないで頂きたい、と思うのは火神だ。

 

 

「清水先輩に聞いてください………。オレじゃどうしようもないです」

 

 

それこそが真理だ。

清水自らが行う行為。意思決定は清水にこそある。

 

 

「ぐぬぬぬ、女神の得点を溜めに溜めて、只管溜めるしかないようだぜ、龍」

「もちのろん、だ! だが、まずは、これを―――」

 

 

どさっ、と大量のドリンクを前に出した。

 

 

「おれ、すっごいノド乾いてたんだーーー!」

 

 

何だか大人しく思えていた日向だったが、喉からからで、声に出すのも億劫だった様子。

何はともあれ、皆手に持ったが、一番初めの毒見……それは日向に決定した。

 

ストローを口につけて、勢いよく流し込む日向。

 

 

―――数秒後、日向の顔は青ざめる事になる。

 

 

 

「ううううううっっ、うぅぅぅうううううううっっ!」

 

 

 

うろたえ、唸りながら、最後は口を押えて駆け出す。

行先は? 聞くまでもない。そのままトイレにGO。

 

 

 

「日向翔陽と言う英霊に敬礼を………」

「おとーさんが、日向(子供)犠牲にしてよかったの?」

「うっせー。色々疲れたんだ、オレだって」

「ま、気持ちは解るけど」

 

 

月島もなんだかんだ言いつつも、日向には感謝している。

飲みたくない、と思いつつもこの灼熱地獄で水分補給なしはきつすぎるから。

 

 

「―――一先ず、日向に後で詫び入れてもらうとして……、お前ら。一体何入れたんだ?」

「オレは普通にスポーツドリンクしか入れて……」

 

 

田中は1つ掴み上げて、口に含む。

ごくんっ、と飲む前に、はっきり気付いた。噴き出した。

 

 

「うえっっ、ノヤっさん! これ塩水じゃねーか! あんた一体なに入れてんだよ!」

「え? 塩? 台所の白い粉、スポーツドリンクじゃないのか?」

 

 

どうやら犯人は西谷だった。

2人の会話から、田中じゃないと言うのは明白だ。

 

 

「………塩水、ってか。これ海水レベルだぞ。日向大丈夫かな……?」

 

 

スポーツドリンクとは、体液に近い飲み物……とされていた筈だが、果てしなく遠くなってしまった様だ。

 

 

恐怖に満ちた部員たち。一歩間違えたら、今の日向が自分だったかもしれない。まさしく恐怖そのもの。

 

 

「……そうか、塩だったのか! 悪ぃ、間違えた!」

「……軽い。ってか、間違えるか? でもまぁ、田中の作った方は間違いない、って事だな?」

 

そう確認した澤村の言葉に、田中が胸を張って応える。

 

 

「当然っすよ! 疲れが早くとれるように、特濃5倍ドリンクですからね!!」

【はぁっ!?】

 

 

まさかの濃度。

塩分過多の次は、特濃か。まさに前門の虎、後門の狼、である。

 

 

「飲む前に確かめて良かったよ……」

「塩水と特濃ドリンクだけ。ハズレだけのロシアンルーレットかぁ……」

 

 

東峰と菅原は手に持ったドリンクを眺めながら苦笑いする。

一体どうしたものか……と。

 

 

当然ながら、無言で返却だ。

 

 

色々と言いたくなるのだが、どちらもわざとじゃないのは明白。悪意はない。だけど、それだけにいつ被害にあうか解らないから怖いものは怖い。

 

 

取り合えず、2人にはもう一度作ってもらう、作り直してもらうよう指示。

 

 

 

「……マネージャーいないだけで、こんなスリリングなの? 部活って」

「と言うか、あの2人が齎してるだけだけどな。間違いなく」

「………妙な対抗意識さえなけりゃ、普通に限りなく近くなってくれてたのかねぇ……」

 

 

2年は連帯責任、と言う事で、変な事しないように見張る為、縁下、成田、木下と、駆け出して行った2人の後を追った。

 

 

そして、戻ってきた日向は絶句。

 

 

「え!? まさか飲んだのオレだけですか!?」

「日向のおかげだよ……」

「それやめれーーー!! オレ死んでねーぞ!!」

 

 

 

火神は合掌して、南無南無……と日向を拝むのだった。

 

 

 

その後も大変だ。

マネージャーたちのワイピングに跳ね飛ばされる山口。

田中からのガチガチに巻かれたテーピングで思う様に動けなくなった月島。

濡れタオルを貰ったが、本当に全く絞ってないタオルだったので、水でコートと身体をびちゃびちゃにしてしまった火神。

西谷のタイム測り忘れに気付かず、延々数十分もスパイクレシーブだけ続けた影山。

 

 

被害多発である。

 

 

ただ、これも厄介な事に本人たちの練習量は、その質は一切落ちていないのだ。おざなりになったりしない。注意したくてもできないいつも以上の集中力。本気でカバーしたい、と言う気持ちがしっかり現れている。例え邪な気持ちが100%だったとしても。

 

 

だからこそ、部員たちの災難は続いた。

1日がここまで長く感じるのは初めての事……かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日―――日曜。

今日も朝から部活だ。

 

 

清水潔子は、昨日の遅れを取り戻そうと、いつもより30分程早い6:30に学校体育館へとやってきた。

 

朝の準備を始めようと、用具室に向かう時……早く来ていた筈なのに、もう結構集まっていて、みんなかしこまった顔をしている。

 

 

「清水。いつもありがとう」

「サンキュ、マジで助かってるよ」

 

 

不思議そうに小首をかしげる。

そして―――その理由が判明。

 

 

用具室でボールの空気を確認し……部室に入ってはっきりと。

 

整理整頓されている筈の救急セットの中がモノの無残にぐちゃぐちゃ。乱雑に畳まれたタオル、ビブス。生乾きの匂いがする。

 

何があったのか、と驚いて洗濯場へと向かうと……そこにはホースが抜け、コンセントまで抜かれて、なぜそうなった? と小一時間程問い詰めたくなる程……ひん曲がって(・・・・・・)置かれた洗濯機。

 

 

「おはようございま………す?」

 

 

そこへやってきたのは谷地だ。

昨日、同じく休みだった谷地も……惨状を見て絶句。

 

 

「な、ななな、なにがあったんですか!? まさかのどろぼー??」

「……私にも、何が何だか……」

「あ、あの……さっき火神君に会って、言伝か………」

「え?」

 

 

谷地は、伝言を聞いた、と言う事で言われたままに清水に言った。

 

 

「【しっかり休んでもらおうと思ったのに、余計に忙しくなってしまって、すみません】だそうで……」

「この惨状は火神が?」

 

 

全く想像がつかない。

だが、それは間違いである事がすぐに判明する。

 

 

「おはようございます、清水さん。体調は……もう、大丈夫そうですね。昨日は田中君と西谷君の2人が何人分も頑張ってくれたんですよ」

 

惨状の犯人は判明。

そして、谷地に言伝を残した、と言う事は……武田の後ろにいる2人のせいでもあるのだろう。

 

照れたようにモジモジとしてる2人。

 

ここに火神がきたら、この二人は絶対に暴走するだろうことは解るから。

 

 

 

「………ありがと」

 

 

 

取り合えず、自分のせいだと言うのは間違いないので、そのあたり、体調管理についてはしっかりと反省しなければならないだろう。

 

なし崩し的ではあるが、2人には感謝を伝えると……。

 

 

「「ま、マジっすか………!!」」

 

 

まるで、天へと上るかの様にハイテンションへと変貌し、日向顔負けの弾み具合で奇声を発しながら、戻っていった。

 

 

小さくなる2人を見送る。

 

 

「て、手分けして頑張るっス!」

 

 

そして、心強くも、申し訳ない後輩の谷地も傍にいてくれる。

ありがたいのだが……、本当に申し訳ない。

 

そして、間違いなく大変だったであろう、他の皆。間違いなく一番絡まれたであろう火神の事も思い浮かべながら、清水は小さな小さな声で呟いた。

 

 

 

 

 

「絶対……、もう休まない。体調管理、見直す」

 


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