王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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まだ、月島たちはでませんでした。


第13話

それは、あの影山達の騒動後の事。

残った道具の片づけをしている際に、菅原が澤村にある事を聞いていた。

 

「いいのか? 大地。こっち側に火神入れて」

「ん? 何か悪かったか? 1年同士の3対3は元々組み込んでいたし、全員で1年は5人いるから丁度いいだろ。それに他の1年が出てるのに、火神だけ仲間外れって訳にもいかんだろし」

「いや、そういう事じゃなくて、俺がもともと火神に対して思ってたイメージと実際に会ってみてのイメージ、結構マッチしててさ。アイツ、大地の言う通り超優等生って感じだし、何より優しいだろ? 影山達の罰の内容も聞いてるし、花持たせようとすんじゃないかな、って。そうなったら、考えものじゃん?」

 

菅原の懸念は、今回の3対3において、特に負けた時の罰を設けられてない火神側が意図的に手を抜いたりするのではないかと言うものだ。あからさまにはしないと思うが、影山と言うより、日向の方を考えたらより思う。中学の時から一緒にバレーをしてきた仲だし、あの最後の試合でも手を何度も差し伸べてる姿を実際に見てる。全員を支えている火神の姿を見ているから。

だから、菅原はそう思ったのだ。

 

それを聞いて、澤村は首を横に振った。

 

 

「スガは見てなかったんだな。あー、清水は見てたよな? アイツの顔」

「ん」

 

にやっ、と笑う澤村。その隣で掃除と道具の整理をしていた清水に話を振った所、清水も頷いていた。大体2人は解っていた様だ。

 

「アレは、そんな事考えてる顔じゃない。すげぇ楽しみな感じ、まるで玩具を前にした子供みたいな顔だ。最初は俺もスガみたいなの少しはあったけど、あんな顔してたの見たら吹き飛んだ。しっかりしているのは間違いないんだが、時折、年相応な感じもして良いじゃないか。うんうん」

 

澤村の話を聞いて、菅原は納得出来た。確か、顔までは見てなかった。どんな顔をしているのかを少しでも見ていれば、きっと自分も澤村と同じ考えに至るだろう、となぜか納得出来た。火神のバレーに対する想いの強さも、知っているつもりだから。

 

そして、それ以上に思うのは 澤村の事。

 

「あー なるほどね。んでも……ほんっと、成長しすぎてる子供を喜びつつも、それでも心配してる保護者かよ、大地」

「……確かに」

「あ、清水もそう思う??」

「お前らな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度同時刻。影山と一緒にいた日向も、澤村と同じ様な話題だった。

 

もちろん、今回の3対3形式の試合の事と火神の事。

 

 

「俺、正直。今回の罰、お前がセッターやれなくなるかもしれない事ってどうでも良いって今思ってる」

「ああ!? んだとコラぁ!! ッ……!」

 

日向の暴言(影山にとっての)を聞いて、物理的に返答をしてやろうとした影山だったが、何か、得体のしれない圧力を前に、身体を止めた。時折見せるこの空気は、日向特有のものなのだろうか、と影山は警戒心をむき出した。

或いは、この精神力も火神が日向に教えた物なのか? とも考えていた。

 

影山の中では、火神は一体どんな怪物になっているのだろうか

 

 

 

 

そして、影山に対して結構タブーな部分に平然と触れた日向。

 

セッターに対する影山の思いは非常に高く、つい先ほど、日向にセッターとはどういうポジションなのか、熱弁を奮っていた所だった。曰く支配者っぽくて一番格好いいポジションだと。

影山は実際にバレーの試合を見にいった時、セッターの面白さ、格好良さに目覚めたとの事だった。

それは、日向の小さな巨人を見た時の感覚と近いものだ、と日向自身も判っていたし、何より 影山は怒ると怖いから、逆鱗には触れない様に……と思っていたんだけど、今回は違ったんだ。

 

 

「―――俺、今回初めて誠也と試合するんだって思ったら、今までの全部吹き飛んだ。バレー部には入りたい。絶対に入りたいってずっとずっと考えたけど、それも飛びそうだ。今まで誠也と一緒に練習して、沢山練習してきたけど。ネットを挟んでの試合っぽい勝負は今回が初めてだから」

 

 

日向は笑っていた。笑っていた上で目の中には小さな炎を見た気がした。

 

「お前ら、試合形式の練習とかやったこと無かったんだな」

「ああ。そもそも人数足りないし。色んな所に練習混ぜてもらったりしてたけど、一緒にいた。高校でも一緒にプレイするからって同じチームで。ってか大体俺が引っ張ってたんだし」

 

日向が火神に抱く気持ち。同学年だが 尊敬の念が強いという事。

その気持ちは影山にも十分わかる。十分すぎる程、わかっていた。

 

「………あの時の借り、返せる。俺は去年の俺とは違う。今度こそ……」

 

影山も内に炎を宿していた。

敵味方問わず、鼓舞してしまう稀有な能力を持っているからこそ、この2人の獣に炎が宿った様だ。

 

「んでも、土曜の3対3は楽しみだけど…… 練習は絶対必要だよなぁ……。体育館入れないし。……どうしよう?」

「知るか!! でもやるぞ! お前のクソレシーブ何とかすんぞ!」

「クソっ!? お前のスゲーヤツ、あげたじゃねーか!」

「アレの何処があげただ!! 教頭のズラすっ飛ばしただけで、殆どホームランだろうが、ボゲェ!」

 

 

 

土曜日の試合の為の練習をどうしようか、と騒がしい中でも真剣にしていた。これは深刻な問題だからだ。少しでも練習しないと、やばいという事をわかっているのだろう。

影山は、火神とやる可能性、それを考えてなかった。

自分達と、2,3年チームでやる、としか思ってなかった。

 

 

 

【負けねぇよ。俺が居る】

 

 

 

もう一度、あのセリフを日向の前で吐けるか? と聞かれれば、素直に頷けない。中学の最後の試合。試合には勝った。でも、勝負には負けた。そんな気分を味わわされたのだから。

 

あの男とやるには、練習時間はいくらあってもまだまだ足りない。自分の足を引っ張る日向がいるから尚更、練習はしっかりとしたものをやりたい、と考えていたその時だ。

 

 

 

「あーー、う、オフンッ! あ、あ゛~~ 喉がいてえなー、声出し過ぎたか~」

 

「「??」」

 

体育館の窓、鉄格子の先にいた田中の声が聞こえてきたのは。

非常にわざとらしいのだが、何にも疑う事なく、2人は聞き入っていた。

 

 

「えーと、明日の朝練は7時からですよねーーーっ!?」

 

不自然な程、大きな声。外に丸聞こえだった。

 

「え、うん、そうだけど。イキナリどうした? でかい声で」

「えっ、いや、ああ、そのきょう、教頭っす。あのズラは無事だったんスかね??」

「おい!! その話ヤメロ!」

「(……その場面、見たかったかも)」

 

 

 

田中達のやり取りは、ばっちり聞こえた。

明日の朝――練習をするらしい。

体育館で練習するとしたら、練習終わった後か始まる前か。終わった後は時間的にも厳しい。校門が閉まってしまって、学校の中に閉じ込められるようなことも有りうる。……その前に、宿直の先生に見つかって大目玉だ。

なら、どうするか。

 

「「明日……」」

 

2人の間では、もちろんもう決まっている。

 

「朝5時だ」

「遅刻すんなよ!」

「おめーだよ」

 

 

2人はしっかりと時間合わせをして、そのまま帰路に就いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを横目で見送る田中。しっかりと自分の声が届いてたようだ、と安心していた。

 

「田中先輩!」

「うおっっ、ど、どした火神!?」

 

日向たちの方を横目で見てたので、全然見てない方からの声に過剰に反応してしまった様だ。

その声の主は、火神だった。

 

火神は、にっ、と歯を見せながら笑っていた。

 

「ありがとうございます! 翔陽たちの為に」

「んん!? こ、声がでけーよ! い、いや違う。なんのことだ~~~? ぴゅ~~♪」

 

口笛に慣れてないのか、或いは咄嗟だったからうまくできなかったのか、わからないが 非常にわざとらしくて、思わず笑ってしまう。

 

「それと、俺 田中先輩とやれるの楽しみにしてます!」

「……おお! 望むところじゃあぁ!! ははっっ、お前ってほんっと良いヤツなんだな。日向は兎も角、影山もいるのに。あのチームをずっと支えてただけの事はあると思うぜ? すげーよ」

 

肩をぽんぽん、と叩きほめる田中。

だが、そのあと少しだけ視線が鋭くなる。

 

「でもよぉ、手を抜いたりすんじゃねぇぞ?? たとえ同中だったって言ってもだ。俺も全力全開でいくからよぉ」

「ん……? ああ、大丈夫ですよ」

「あん? ッ……!」

 

 

薄く笑った後に、火神は目をつむる。そして、開いた時の火神の顔は、何かが違った。

礼儀正しく、優等生で……と言う印象は、最早田中も疑う余地がない程だった。そんな男から、威圧感のような物を感じたのだから。

 

 

 

「バレーの試合で手を抜ける程、俺は器用じゃないんで」

 

 

その威圧感は直ぐに霧散したが、それでも余韻が残るほどだった。

 

 

 

「ッ、……ははっ! 楽しみだな!」

「よろしくお願いします! あ、あと 田中先輩。相談なんですが……」

「おう! なんでも相談しなさい! この田中先輩に!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日 火曜――午前4時55分。

 

まだまだ外は真っ暗。そんな誰もいない筈の学校の第二体育館前で動く影が2つ。

 

「……予想はしてたけど、やっぱ戸締まりしてるよなぁ……」

 

体育館の扉を開こうとしても、固く閉ざされていて、入れない。盗られるような物ないだろ?とも一瞬思ったが、バレー道具を盗られちゃまずいので、日向は口には出さずに飲み込んだ。

 

「なら、入れる窓探す。天窓とか開いてんじゃねぇか?」

「ええっ! 天窓って、登んのかよ! 見つかったらやべえだろ、バカか! 泥棒と間違えられたらどーすんだ」

 

日向の珍しい正論忠告もどこ吹く風。影山は侵入できそうな所を探そうと行動を開始したその時だった。

 

 

「――やっぱ、キッツイなぁ~~5時は。まだ暗えよ」

「俺は久しぶりですね。翔陽の家、めちゃ遠いんで、これくらい早起きしていったこと何度かあります」

「うはっ、中学ん時にこんな早朝連まで 2人でしてたのかよ、お前ら」

「バレーもありますけど、翔陽の妹に結構好かれてて、お呼ばれしちゃったりも多かったりですね」

「ほー、日向の妹かぁ。……無茶苦茶元気な子のイメージがする」

「間違えてないっス。とてつもなくパワフルな小学生です」

 

じゃり、じゃり、と陽気な会話とともに やってきたのは田中と火神。

 

「!? 田中さんとせいやっ!?」

 

見つかった!! と一瞬思ったが、火神も一緒なので、直ぐに安心できた日向。影山も戻ってきた。

 

「ったくよぉ、火神の言った通りだな、日向。てか、影山も単純か。えーと、ちょう、と、なんたら~~か?」

「猪突猛進、ですね。窓から侵入しそうだった影山も大概ですし……」

 

2人の傍までやってきて、笑みを見せる。田中はなかなかあくどい顔をしてるので、日向はビビったようだが、直ぐにその笑みがわかったので、変わった。

 

 

「ほれ、鍵だ。7時前には切り上げろよ?」

 

差し出されたのは、体育館の鍵。―――物凄く必要な、大事な物(アイテム)

 

「田中さぁぁぁぁん!!!」

「あざス!!」

「わははははは! なんて良い先輩なんだ俺! まさに器がでけぇ! 田中先輩と呼べ、お前らも!」

「「田中先輩!」」

「わはははは、もう一回! 火神も混ざれ!」

 

 

 

「「「田中先輩!!」」」

「うはははは!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、朝練の事言わないなんて。水臭いなぁ、俺も混ざる。一緒にやろうぜお前ら!」

「あー…… もちろん、せいやも誘おう、って思ってたけど、試合するってなったら一緒には……」

「何言ってんだ? 散々一緒にやって来といて今更じゃないか。翔陽が、俺を引っ張ってきたんだし、付き合うぜって。人数多い方が練習も色々と出来る。影山は反対か?」

「俺は、お前がいようがいまいが、やることは変わらないんだ。なら、質の高い方を選ぶ。……お前のサーブ、俺に打て。今度は全部取ってやるよ」

「おっ、やるか! いいぞ」

「あ、俺も俺も!! 俺が先!!」

「先ずは俺からだ!」

「なんでだよ! 俺だってしたい! 誠也のサーブ、まだ全然取れてないし!!」

 

 

体育館に入る前から大盛り上がりだった。

田中は正直、この三人でチーム作ればよかったのでは? とも思ったが、澤村の考えは、あくまで日向と影山の連携についてだ。

どんなチームでも適応し、やってのける火神を入れるのも良いが、まずは影山に色々と自覚をさせなきゃいけないという事、日向の速度と影山のトスのコンビネーションが見てみたいという事。そして、その相手が火神であれば より燃えるであろう、という事で、あえてチームを分けたのだ。

 

でも、今の会話を聞いてると、ちょっと不安気味にもなる。

 

 

「おいおい、お前ら。一応 今回の練習は3対3に向けてのものなんだからな? その辺考えとけよ。つーか、とっとと体育館中入れって」

 

 

 

その後――、なぜか体育館にどちらが先に入るかでもめたりして、せっかく早く来たのに練習出来ないし、眠いしで、苛立ちを田中は覚えたりした。

 

 

 

そんな2人を仲裁するのが、やっぱり火神。

2人の背を押して、同時に体育館に入れるという、見事な手際の良さだった。

 

 

 


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