王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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書き忘れ。
処女作です。宜しくお願いします。


第2話 初めての公式戦

はじまった。

 

中学最初にして、最後の公式戦。

日向が待ちわびた……否、火神も同じく待ちわびた公式戦。

 

初めての筈なのに、懐かしささえあるこの雰囲気。

失われた過去の記憶が鮮明によみがえってくるかのようだ。

 

大きな声、シューズの擦れる音、そして何よりバレーボールの音。

 

 

 

 

「ひとがいっぱいだ……!」

 

 

日向の衝撃、感動はきっと誰よりも大きいだろう。ここに来れると100%確信していた火神とは違うのだから。

 

「体育館、でけえっ……! それに、エアーサロンパスのにおい……!!」

「ぷっ……」

 

火神は日向の台詞を生で聞いて、少し吹き出したのと同時に感動もした。

自分自身もよくわかってるから。あの臭いは本当によく。他の皆にはきっと解らないだろうけど、日向のこの台詞を見てから、意識し出した火神は本当によくわかる。

 

 

「そうだな。やっと来た」

 

 

感慨深さ、ここに極まる。

日向と知り合い、軈て来るであろうこの場所にまで来た事に対して。

 

 

 

雪ヶ丘中学の初の晴れ舞台に。

 

 

 

「ちょっと2人とも、なんか2人だけで違う世界に入り込んでない? それに何?エアーサロンパスって」

「なんか、2人見てると保護者と子供って感じがするぞ。キャプテンなんだからもっとしっかりしてくれよ翔陽」

 

 

感動真っ最中の2人に苦言を呈してくれるのが、本日の助っ人で同級生の【泉 行高】と【関向 幸治】。

 

 

本当はバスケ部とサッカー部の2人。それぞれの総体が終わったから応援に駆けつけてくれたのだ。……というよりは日向が引っ張ってきたと言うのが正しい。

 

「うんうん。息子を見守るっていうのはこんな感じなんだろうなぁ、と思ってたところだコージ」

「誰が息子か! で、でも仕方ないじゃん! 初めての公式戦、初めてちゃんとした大会にでれたんだから!! ……3年目にして! うおおおっ………」

「うんうん」

 

横で頷きながら見守ってる火神を改めてみてもやっぱり保護者に見えると思わず噴き出す泉と関向。

 

 

「それにしても、マジで誠也の言ってた通りになったな。ピタリ賞じゃん。3年目に出場って」

「よく粘ったよね、ほんと。せいちゃんをバスケ部にって、ずーっとキャプテンが交渉しにいってたんだけど、ずっとバレーだって言ってんだ。しょうちゃんに負けず劣らずだね。この光景が見えてたのかなぁ」

 

皆がそれぞれ感慨に耽っているんだけど、それもそろそろ終わりにしよう。

 

3年生は日向を除いてそれなりには慣れてるんだけど、1年生たちは慣れないようでソワソワしだしていたから。森、川島、鈴木の3人の新入部員。日向と一緒に頑張ってきた火神も入ってきてくれた3人には本当に感謝している。

 

「よし、そんじゃキャプテン。そろそろ行動開始だ。思い出作りに来た訳じゃないだろ? もうすぐ試合だしアップアップ」

 

何度も感謝してると伝えてるので、火神は言葉ではなく行動で示す。

皆の背を軽く叩きながら言っていた。少しでも固さがほぐれるように。

 

「ほらほら、副キャプテンが頑張ってるんだから、しょうちゃんも」

「そーだそーだ。俺ら殆どルールもわかんない状態なんだからちゃんと仕切ってくれよ」

 

ここまで、言われたところで漸く日向も頷く。

 

 

「わ、わかってるよ! やっと出れた大会なんだ。出るからには勝つぞ!」

 

 

日向の台詞を聞いて、また自然と笑みが出る。

初戦の相手がどこなのか、当然ながら知っている。遥か格上であると言うことも。

 

 

でも、日向はブレることはない。勝ちたいから。その気持ちはよくわかるから。

 

 

 

「うえぇ……マジで? この即席チームで?? 確か誠也が言うには相手優勝候補らしいじゃん。それでも??」

「せめて、ウチみたいなチーム……いや、創部1年目、みたいなチームならねぇ。そんな相手ならまだしも、ちょっと難易度が高すぎないかな……?」

 

泉と関向がそう言うのも無理はない。

畑違いとはいえ同じく運動部。解らないはずはない。経験が足りない、練習時間が足りない、指導者もいない。更に相手は最強の候補。条件はまさに最悪の一言。

 

ラッキーパンチ、一発逆転の無いスポーツで、ここまであからさまなジャイアントキリングは正直無理だと言える。

 

 

「あ、当たり前だろ! ほら、副キャプも思い出作りに来た訳じゃない、っていってたじゃん!」

「あー、まあな」

 

だからと言って、諦めるなんて言葉は一切ないのが日向だ。そして、火神をちらりとみた。

 

「確かに誠也だけみたらなぁ。誠也が後3人いればなんとか……」

「こらっ! せいやだけじゃねー! 俺だって飛べるんだ!」

 

「うーん、でも せいちゃんは 背高いし。しょうちゃんは……」

「うぐぐぅぅ……」

「やっ、ちがうちがう。どんな運動でもさチームプレイなら1人2人だけしかなんじゃ難しいんじゃないかなーって。もちろん俺も出るなら頑張るし、なげやりって訳じゃないけど、ちょっと……ねえ? その辺はせいちゃんはどう?」

 

火神の方に皆の視線が集まる。

日向は何かを訴える様な眼差しを向けてくるが……生憎精神論だけじゃどうにもならない壁が有ることはよくわかってる。

 

「確かに2人の言う通り。こっちは即席ツギハギ、時間もちょっとしかなかったし、相手も強い。勝つのは無茶もいいとこ」

「ふぐおぅぅ……」

 

日向は、ダメージを受けた。

まさかの今日までずっと一緒に頑張ってきた相棒と呼べる火神からの一撃に。

 

でも、火神はただ一撃入れるだけじゃない。

 

 

 

「――だが、やりようがないわけじゃないぜ?」

 

 

 

不敵に笑う火神をみて、日向は回復した。

 

「そ、そーだそーだ! 俺は翔べるし、せいやは せ、背も高いし、全部上手い! 俺たちは勝てる! それに秘密兵器もあるんだぞ~」

「は? ひみつへーき??」

 

子供のように目を輝かせてる日向をみた後、ちらっと関向が火神をみた。

軽く苦笑いをする火神をみて、日向を乗せるためのものかな?と判断して両手を上げた。

 

「わかったわかった。俺らもやるなら全力だ。だけど、試合の直前まで秘密にしといて大丈夫なのか?」

「ん? ああ。大丈夫だ。チームプレイに影響はないよ。まあ、もう良いか。簡単に言ったらな……」

 

 

 

 

 

火神は時間もないので簡単に説明しつつ、行動を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その雪ヶ丘中の姿を見ていた他のチームがいた。

 

「あいつらだぞ、いきなり初戦で北川第一と当たる可哀想なチーム」

「背がめちゃでかいのが1人いるけど、できたばっかの所らしいじゃん。たぶん初心者だろ? 聞いたことないし。……それにバレーは1人だけすごけりゃ勝てるってものじゃないしな」

「うへー。無名校って知ってたけど創部1年目ってのは知らなかった。運悪すぎじゃん。……おい、噂をすりゃでてきたぞ」

 

 

 

そんなざわついているチームが多い中、周りなど物ともせずに闊歩するチームがあった。

威風堂々、という言葉が似合いそうな雰囲気を出してるその風格は同じ中学生とは思えない。

 

 

 

【北川第一中学】

 

 

 

文句なしの優勝候補の一角である。

 

 

 

「(あっちもでけー。それも人数多すぎ……)」

「(威圧感がハンパないって……。ほんと同い歳??)」

「(あ、あいつは確か例の……)」

 

 

凄まじい威圧感を出してるものたちの中で、一際殺気立っている者がいた。……様な気がするだけだが、表情が険しすぎるのが事実である。

 

 

 

 

【コート上の王様 影山飛雄】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

威圧感は確かにあるだろう。だが、あくまでも中学生のものだ。

春高のあの超高校級がゴロゴロいるような世界を戦ってきた記憶を共有し、体感した感覚まで残っている火神にとっては、まだまだ発展途上と言えるものだ、と思っていた。

 

 

だが、実際に会うのと 越えることのできない隔たりを通して見てみるのとでは違いすぎた。

 

 

影山(かげやま)飛雄(とびお)……」

 

 

回りが本当に中学生か?と口々に発しているが、確かに同じ気持ちになっていた。

一朝一夕で得られるようなものじゃない雰囲気、オーラといっていいものを身に纏ってる。

 

「面白いな。ここに、これてよかった」

 

火神は、アップにいく道中、ずっと笑っていた。

確かに現時点では無理。チーム力に差がありすぎる。だが、一泡吹かせるくらいはいけるだろう。日向もまだまだ雛鳥、いや生まれる前ほどのものでは有るが、できる範囲では一緒に頑張ってきたつもりだ。

 

「っ……! ―――――……せいや?」

 

日向は、笑っている火神から何か得体の知れない威圧感を、普段とは違う何かを感じたのか、思わず振り返った。

 

「確かに現時点では無理。でもどうせやるなら……、強いところの方が燃えないか? 翔陽」

 

そして 一瞬、ちりっと何か火花のようなものを感じた日向。

だが、それはほんの一瞬だ。決して気圧されることはない。

 

 

「おうっ!!」

 

日向は同じく笑顔で返事を返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、清水。田中はまだ来てないか?」

「ん。まだみたい」

「ったく、もうちょいで試合はじまっちまうのにこんな時に遅刻とか。清水、一回カツ入れてやってくれない?」

「……無駄だと思う」

「清水になら、なに言われても喜ぶだけだべ」

 

 

真っ黒なジャージを羽織り、市立体育館前に集合している者たちがいた。

 

 

その背には、【烏野排球部】とある。

 

 

それは日向が目指す先であり、火神の憧れでもある場所。

 

 

「コート上の王様か。楽しみだな」

 

 

目的の選手以外にも、とてつもない逸材がいるということを今はまだ知らないから。

 

そして、それを知ったその時 彼らは今日という日を忘れることはないだろう。

 

 

因みにバレー以外でもとある事があって、更に忘れられない状態になるのはこの後の話。

 

烏野スタメン落ちアンケート

  • まだまだレギュラーは早い 火神
  • チームの大黒柱 澤村
  • リードブロック月島
  • 強メンタル田中
  • サムライ兄ちゃん東峰

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