王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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今回の話は、半分がおまけ話だったりします。




第40話

「いや~~、よくわかんない事も多かったけど楽しかったよ。THE・青春って感じか?」

「【トスを呼んでくれエース!】とかね~っ。かっこいいなぁ、高校生!」

「【エースの道をお前が切り開くんだ!】も良いよなぁ。言ってみてぇ! かっけぇ! うーむ、次はセッター練してみるのも悪くないか??」

 

 

「「……………」」

 

 

色々と褒めちぎっているけれど、後々想像したらかなり恥ずかしい。特にそのセリフの渦中でもある影山と西谷は思いっきり顔を赤くさせていた。

 

「それに加えてチームの保護者(・・・)だよなやっぱ! 大黒柱、とか大エース、とかはおれらも馴染みあるし、判るんだけど、保護者はなぁ。面白い感覚だったわ!」

「うんうん。この子ならうちの子任せれる! みたいな?」

「子供いねぇけどな!」

「血気盛んなガキだったってのもあると思うねぇ」

 

 

「……………」

 

火神も違う意味ではあるが殆ど同じく、である。

 

「俺らおっさん組、頑張ってたけどおいてけぼりも多かったなぁ。スガちゃん」

「す、スミマセンッ!」

「はははっ、ほんと楽しかったよ。なんつーかアレだ。まだまだ改善の余地あるし、伸び代も飛んでも無く長ぇってのはオレにも十分わかった。……お前ら、良いトコまで行けるぜきっと」

「「「!!!」」」

 

 

最後の激励はただただ純粋に嬉しかった。

恥ずかしかった面は当然あるが、それ以上に嬉しかった。

澤村が、全国大会が現実のモノに帯びていく……と言ってた事はある。信じていなかった訳では絶対無いが、やはりチームキャプテンだからそれくらいの気概は当然! 程度だった部分が何処かにはあったのだろう。

チームの外の人が、それも大人が そう激励してくれるのは自信にもつながるし、何よりも嬉しい。

 

 

「ありがとうございました!!」

【あざーーっしたーーっ!!】

 

なので、しっかりと澤村が指揮を執って礼をする。礼に始まり礼に終わるは当然。

 

そして、その後体育館に戻って新コーチとなる烏養の元へと向かった。

 

 

「あー、大体わかった。全部考えた上でお前らに言えるのは、とにかく まずはレシーブだ、って事だ。それができなきゃ始まんねぇ。明日からみっちりやるからな!!」

【オース!! あざした―――ッ!!】

「おう。んでもってストレッチしてから帰れ。サボんなよ」

 

 

一先ずしっかりとストレッチをさせてからの解散指示。

練習試合を見る事、そこから課題を洗い出して、的確なコーチング。頭では色々と考えを練っているが、それでもまだまだ大変だった。

バレーのスキルもそうだが、まずは何よりも 【選手】を見て、選ぶ事だ。

 

「ハァ………」

「?? そんなにレシーブ酷かったですかね?? ため息が出る程に?」

「いや、それは置いといてだ。……自分が選手として【選ばれる側】に居た頃は考えもしなかった。【選ぶ側】ってヤツをさ。……それ考えてたら色々悩むもんが出てくるんだよ」

 

烏養が一番頭を抱えるのはその部分。

そして、視線の先に居るのは 菅原と影山。……その周辺にいる火神、東峰や田中、縁下………etc。

 

強烈な才能が間近で居るのは選手達自身が誰よりも強く感じている事だろう。そこから奮起し、進化すれば太刀打ちできる程の実力を身に着ける事が出来るかもしれないが、今日たった1試合分の練習を見ただけで判る程、あの1年生たちはバケモノだった。

選手の気持ちが痛い程判る。でも、そこは非情になってでも決めなければならない。時として損な役回りではあるが、引き受けた以上面倒はしっかりと見なければならないだろう。

 

武田が、あれほど迄に通い詰めて、懇願した理由もはっきりと判ったから。

今の烏野は間違いなく磨けば輝くダイヤモンドの原石だ。武田は自分では力不足であると言う焦りもあったのだろう。その一縷の望みをかけて通い続けた。……そして 請け負った。

 

「(仲良しこよしで出来るもんじゃねー事くらい、コイツらも判ってる筈……って思いてぇな。強い方が、上手い方が、勝てる方が試合に出られるんだってな。……そんでもって、控えは単なる補欠って訳じゃねぇ。チームのバックアップであり、厚みだ。選手に何かがあっても直ぐに駆けつける事が出来、繋ぐ事が出来る人員。それは決して戦力外なんかじゃねぇって事を)」

 

烏養は、烏野のメンバーを改めてみた。

色々と問題を抱えていたのだろうことは、あまりよく知らない自分でもわかる。エースと呼ばれる男が遅刻してきた事も、試合中に色々と言っていた事も。

そして、今まさに解決したであろう事も。

 

東峰が日向を称賛しつつも【負けないからな】と言った。まだエースに憧れを捨てきれない日向も笑顔で返事を返していた。

火神は西谷とレシーブの件で意見を出し合い、そして上を見続けている。

 

そんな中で澤村が菅原に話かけていた。

 

「よし。スガもちゃんと復活出来たな。よかったよかった」

「……うじうじくよくよいじいじしててすみませんでした」

「……ヤメテ。オレそこまで言ってない。また、火神が誤解する」

 

ぺこっ、と謝る菅原を見て 改めて止める澤村。副将でもある菅原がこんな腰を低くして、何度も何度も頭を下げる場面が合ったら、またまた火神に要らぬ印象を植え付けてしまいそうで嫌だった。……半分以上は冗談のつもりだとは思うのだが…………、万が一でもあまり好ましくないのである。何せ、創部始まって以来(澤村の中で)の優等生で好青年で可愛げがあって、……つまり、稀に見る大当たりな男だから。

 

ちらっ、と澤村は火神の方を見た。まだ、西谷と話をしている様で、こちら側を見てない様だ。澤村は一安心しつつ、改めて皆を集合かける。

 

「頼れる西谷も戻ってきた」

「オス!!」

「……でも、教頭を突き飛ばしたりするのは二度とナシね?」

「………………」

 

教頭に手を出したのは、影山&日向だけでなく、西谷もだった……と言うのは、周知の事実。だが、改めて釘を刺さないと またまたあの粘着質な所もある教頭は目ざとく見てくるのが判る。ある意味、こちらも教頭の頭頂部の秘密を握ってるので、下手な事はしてこないとは思うが、常識の範囲内、教師の業務内では妥協してくれないだろうから、要注意なのである。……普通にしてたら、こんな心配する必要は無いんだけれど、何せバレー部には問題児が多いから。

 

「あー、あと 名ばかりエースのへなちょこWSも戻って来たな。そういえば(・・・・・)

「………やっぱ優しくした方が」

「あ?」

「……ナンデモ ナイデス」

 

有無を言わせぬ澤村の一言。

思わず脊髄反射で東峰にはそう返事を返した。それは仕方のない事なのである。……そして勿論、火神がそれを見てしまっても仕方ない。また、あらぬ誤解を……とも思えたのだが、火神は笑っていたので、良しとした。

 

 

色々と問題があったであろうこのバレー部は、今まさに纏まりを見せているんだろう、と烏養は感じた。

 

「んじゃ、お前ら。帰れっつったけど、やっぱ一発くらいシメとけ。そんでもってあがれ!」

 

 

烏養の一言もあり、澤村は全員で円陣を組ませる様に指示。

逃げようとしてる東峰や月島のこともしっかりと捕まえて(別に逃げてる訳ではないが……)。

 

 

「烏野ファイ!」

【オ――――ス!!!】

 

 

 

 

と、締めるのだった。

 

それを見届けた後、大人たちはさらなる力を入れる決意を胸に抱く。

 

 

「……さて」

「次は……」

 

「「合宿」」

 

「だな」

「ですね」

 

それは当然ながら選手側だけでは到底出来ない事。大人が気張らなければならない事。

存分に力を出し切れる様に、存分に個々を、チームを鍛える事が出来る様に。存分に身体を鍛え上げれる様に。

 

出来うる最高の舞台を整えてやらないといけないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ。

 

 

 

 

「ちょっと帰る前に良いか? お前ら!」

「え? どうかしたんですか?? 西谷さん」

 

円陣も終わって、武田先生や烏養に挨拶も済んだ。入念なストレッチも済んで、後はもう帰るだけになったのだが……、そこで呼び止めたのは西谷。

いつの間にか、体育館に持ってきていた段ボールをもって、全員の前に立っていた。

 

「オレがよく行ってる店で作ってもらったTシャツだ。全員揃った記念にもなって良いって思ってな!」

「……西谷の中じゃ、アサヒが帰ってくるのは決定事項だったんだな。何があっても。……まっ、実はオレもなんだけど」

 

Tシャツを配ってる西谷の姿をみて思わず笑うのは菅原だった。此処にいる全員分揃っているTシャツ。……つまり、東峰の分もあると言う事だ。もしも―――東峰がバレーを本当にやめていたとしたら……、無駄になるかもしれないから、作ってもらったりはしないだろう。でも、しっかりと用意している所を見ると そういう事なのだろう、と笑った。

 

そして、日向が大歓声を上げる。

 

「うほ―――っ!! すごいっ、カッコイイです!」

 

しっかりと着ている日向のTシャツ。

勿論、西谷が用意したTシャツはただのTシャツではない。

これは所謂【文字Tシャツ】と呼ばれるもので、購入の際 希望があれば文字を入れてもらう事が出来るのだ。

日向のTシャツには【大器晩成(??)】と有った。(……勿論、文面上では【?】マークがあるが、実際にTシャツには入ってない。これには理由があるので後程)

 

「あ、えーと、これってどういう意味でしたっけ??」

「はは……、翔陽。国語の問題だぞ。中学でも習ってる筈」

「うっ……、た、ただ忘れただけだし!」

「ってか、知らないで喜んでたのかよ日向」

 

火神に笑われ、そして田中にもニヤニヤと笑われる日向は顔を赤くさせていた。

そこに解説にやってきてくれたのは菅原。【不撓不屈】の文字が入っている男! である。

 

「それはな、日向。大きな器がすぐできないのと同じで、大物は大成するまで時間がかかるってことだよ」

「お、おおお! おおおっ!! オレ、オレって大物!? 大物になるのか!? せいやっ!!」

「そりゃ、本人次第だ。大物になるのか小物で終わるのか、……何処で満足するのかは翔陽次第」

「よっしゃぁぁぁ! 大物になる!! 小物で満足しないぞーー!」

「はっはっは。面白いなぁ、日向」

 

菅原と火神は、子供の様に燥ぐ日向を見てまた笑う。

大喜びな日向。

……でも、そんな日向の後ろでは黒い影が近づいてきていた。

 

「字、間違ってるけどね」

「ぶすーーっ!!!」

 

「!??」

 

月島と山口である。

文字Tシャツの文字は、大きい分間違えてたら物凄く見つけやすいし、何より恥ずかしい。

月島や山口が見つけたのは、大器晩成の【成】の字。成の5画目が無い、のである。部首である【ほこづくり】の部分のはらいが無くなってるのだ。……目立つし見つけやすい。

他のメンバーもそれとなく気付いていたのだが、喜ぶ日向を見て……後々気付く事とはいえ、ちょっぴり空気を読んでみたのだが、月島はそんなのお構いなし、である。

 

「よりによって、【成る】の部分が一画足りてないとか。まさに成るに成ってない、的な?(笑)」

「うぐぬぅ!!」

「なーにしょげてんのぉ?? 直ぐに指摘してあげたんだから良かったデショ?? そのそれ着て燥いでたら、みーんなに見られたかもなんだよぉ?? 学校のw ていうか町中だったり??」

「はぐぅっ!?」

 

月島の口撃。

日向 こうかはばつぐんだ。

 

である。

 

 

「それにしても、ナイスな嫌がらせですね! 西谷さん!」

「うるせぇ! ほんとに間違えたんだよ!」

「へぇ~~。火神君も確か一緒に行ってたんだよねぇ? 日頃鬱憤とか溜まってての行動だったり??」

「あ、ははは……。いや、確かに西谷さんが行くところ、オレも通ってるから一緒にいったけど、別にそんな事は無いって。行くついでの荷物持ちでもしようかな、って行ってただけだし」

「せ、せいや!? オレに!? オレを!??」

「そんな小動物みたいな目で見ないで翔陽。んなの無いから。オレ、多分その時別の事してたから気付けなかったんだって」

 

何とか宥める火神。

月島のあくどい笑みはまだ変わらない様だった。

 

そんな中で、横やりを入れてくれるのは影山だった。

 

 

「【草食軟体動物】よりはマシじゃねぇの」

「「!」」

 

 

他人の文字を嘲笑するが、そっちもどうなの? と言う事である。影山が指摘するのは月島や山口の文字。1つに纏めてたが月島が【草食動物】で山口が【軟体動物】なのである。

因みに、影山が【単細胞】だったりする。―――ほんとどっちもどっち、どんぐりの背比べ、目糞が鼻糞を笑う、である。

でも、そんなのお構いなしだ。ゴングは鳴らされたのだから。

勿論ファイターは月島。山口は出る幕無しだった。……口撃力は圧倒的に月島が上なので。

 

「それなら草食軟体動物も、【単細胞】に比べたら大分マシだと思うけどねぇ?」

「ア゛!?」

「1人だけ3文字だし、何なの? 嫌われてんの?? 仁王立ちしながら、【単細胞】って、やめなヨ」

「テメェの何倍もマシって思うがなぁ!?」

「へぇぇ、同じスゲー1年でも格差がやばいねぇ。火神くんなんか、【一騎当千】だよ?? 名前負けじゃん。ダブルスコアつけられちゃってんじゃないの?? あーあ、やーーっぱ 影山は火神君には勝てないって事なんだよねぇ~」

「ア゛ア゛ッ!!? 誰が勝てねぇんだボゲ! 文字で勝敗なんざつくか!」

 

何故か、此処で飛び火するのは火神。と言うより、いつも通りな所もある。

ギンッ! と睨みつけられてしまった火神は、頭を手で押さえながら左右に首を振る。

 

「まーた、オレ巻き込んで……。ってか、ほんっっっと、喧嘩のネタ尽きないなぁ……お前らは。影山と翔陽もそーだけどさ。……ってか一騎当千って……。バレーってチームプレイなのに?」

「はっはっはっは! 火神は1人でもやりそうだーー! って色々と聞いてたからな!」

 

苦笑いする火神、そして西谷もいつの間にかやってきてて腰に手を当てて笑っていた。

 

それにしても 一難去ってまた一難、とはよく言ったもので、仲裁した所で、新たな争いが生まれちゃってるから、さぁ大変、なのである。

 

 

 

 

そして、そんな中―――。清水の話題になった。なぜか、清水はTシャツを2枚持ってる。――――なぜだか、そのどちらも着てなかった。

 

「あの…… 清水先輩は着ないんですか? 良い記念になると思いますが」

 

 

その話題に振れたのは縁下だった。そのシャツに書かれているのは【一期一会】。

 

更にそこへやってくるのは東峰。彼は【謹賀新年】。年賀状とかに書くアレであり、……あんまり脈略の無さそうな言葉だった。

それはそれで寂しい気もするが、当の東峰は気にした様子はなかった。

 

「清水のは何て書いてあったの? 才色兼備とかかな?」

 

「………………」

 

 

 

清水の脳裏に浮かぶのは、このTシャツを渡された時の事。……因みに、2年、3年の一部はこのTシャツを渡されたのはちょっと前の部室でだったりする。

 

【見て下さい! 潔子さん! 皆の分のTシャツ作ったんス!】

【そうっス! 皆で来て写真撮りましょう!!】

 

バンッ! と文字を見せるのは田中と西谷。

夫々、田中が【弱肉強食】 西谷が【猪突猛進】で、相応の四字熟語を背負っていた。

 

【皆の言葉、オレ達で考えてみたんだ~~】

【そういえば、清水のは西谷と田中が考えてたな】

 

澤村と菅原も笑っていた。この手のイベントは好ましいから最初から乗り気だ。より、一丸となれる気もするから。因みに、澤村は【七転八起】。まさに転んでも転んでも、どんな逆境でも起き上がる! と言う意思の籠った物で、澤村に相応しいと思う。……転ばしてきそうな連中をしっかりと教育しそうな所も。

 

【どうぞ! これが潔子さんの分です!!】

【……ありがとう……】

【わぁっ! 潔子さんにお礼を!!】

【おおっ、直接手渡し出来て羨ましいぜ、ノヤ!!】

 

いつも、無視する事が多い清水だが、流石にプレゼントされる時に無視する事はしない。ちゃんとお礼を言ってシャツを受け取っていた。

これ以上ない至福の時に、昇天しそうな2人だったが まだ感想を言って貰えてないので、しっかりと持ち直していた。目を輝かせながら。

 

そして、しっかりと受け取った清水は、そのTシャツを広げてみてみる。

 

そこに描かれていたのは――――。

 

 

【……………………なんでフルネームなの】

 

 

ショッキングピンクに加えて、非常に達筆に書かれている【清水潔子】の字。これは職人さんたちも大変だっただろうなぁ、と思ってしまう程の力作だった。……本人が気に入るかは別として。

 

【【?】】

 

無表情で疑問符を浮かべてる清水。そして、何故疑問を浮かべてるのかわかってない2人。

どうどうと胸を張ってこたえていた。

 

 

【一般に存在する言葉などでは、潔子さんの美しさは言い表せません!】

【その通り! 表せるのは潔子さんの名、そのものだけですから! その名を前にすれば他の全てが色褪せてしまう事でしょう!】

 

 

ここまで堂々と言われたら、最早反論するのも馬鹿らしくなってしまうものだ。

と言うより、もともと清水は、この手の話は田中西谷コンビにはあまり討論する気は起きてない。

普通の事ならまだしも。

 

そして、矛先は当然ながら、話の通じる主将・副将の元へ。

 

 

【……アンタたち、自分のばっかマトモに作って】

【【こっちに来た!?】】

 

 

作ったのは西谷と田中。自分達は関係ない! と思っても仕方ない。

 

【ま、まってくれ。違うんだっ!】

【違くない】

【てっきり、才色兼備かと思ってたんだよっ!】

【思ってるだけ、でしょ】

 

【【うわああああああ!!】】

 

 

いつも物静かな人程、大人しめな人程、温厚な人ほど……怒った時が怖い。

それが世の常だった―――と言う事を改めて思い知りつつ、2人の絶叫が部室内に響き渡るのだった。

 

 

その絶叫は当然ながら部室の外にまで及ぶ。

色々と部活の準備をしていて、往復していた火神がその悲鳴を聞いたのは決して偶然の類ではなかった。なので、ぎょっとしつつ、部室の中を覗いて――――そして、秒で理解した。いったいナニが起きたのかを。

 

 

【一体何が……、って、はぁ………】

 

【か、かがみぃ………】

【おふぅ………】

 

 

死屍累々なお2人といまだ奉ってるお2人。……勿論全てを知っている火神。これに関しての対応策も勿論考えている。

 

なので、……この後の対応を見て、神!! と澤村と菅原が断言する事になる。

 

 

【清水先輩のはこれですよ】

【え?】

 

ひょい、っと取り出したのは、もう1枚のTシャツ。段ボールの一番下に入っていたヤツである。もし、皆が揃ってる場所で配布していたら、不自然に1枚余るので、そこで気付けたと思うのだが……、今回の様に部分配布だったら気付かないのも無理はないな、とため息を吐く火神だった。

 

火神から受け取ったTシャツ。それを広げてみると、そこに書かれていたのは 澤村や菅原が予想してた通りの【才色兼備】、である。

 

おおおっ!! と歓声が上がるのと同時に疑問が生まれる。

 

【いったいこれはどーしたんだ!? 火神!!】

【いや、田中さんや西谷さんが、店で絶対に名前を! って騒いでるのみてまして……。その上 店主もノリノリだったんで、ちょっと……。清水先輩は絶対こっちの方が良いっていうかな、っと思って余分に作ってもらったんですよ。流石にフルネームは……なので】

【えええっ! 金とか大丈夫だったのか?? 皆の分しか徴収してなかったと思うが】

【はい。オレ、クーポン券持ってるんで、そこは大丈夫ですよ。丁度あの日に期限切れだったのでタイミングも良かったです】

 

ははは、と頭を掻きながら笑うのは火神。

 

 

【……火神ありがとう。何だか恥ずかしいけど】

【いえいえ。……ま、まぁ 田中先輩や西谷先輩には怒られちゃうかもですが……(流石に仲間外れはダメだって思ってたし)】

【そこは気にしなくていい。……今回くらいは対応するから】

 

 

そして、……才色兼備を受け取った清水。

その名が一番合う、と言う事は火神も知っていた事だったが、それを渡した結果に関しては当然ながら一切知らなかった。少し照れたような清水をみれたのはちょっぴり意外だったが、それも良し、である。

 

その後、火神が考えていた通り、怒れる邪神となった田中と西谷が迫ってきていたが、善神?を前にしたら浄化するしかないので、被害はほぼ無し。

 

【あのぉ……今回くらい、ではなく 出来ればいつもして欲しいんですが…どうでしょう?】

【………ふふふ】

 

火神の懇願に対し清水は、ただただ笑っているだけなのだった。

 

【ほんっと、お前が一緒に行ってくれてよかったよ! 火神!!】

【さすがっ、オレたちのお父さん!!】

オレたち(・・・・)!? 何でですか、それ!】

 

 

清水関係に関しては、3年の2人も思う所が無い訳ではないが、田中や西谷が盛大に自爆しているのを見て 一歩引いてみていると言うのが実情だ。……いや、それに加えて火神が良い子であるのは疑いようもない事実に加えて、清水もまんざらではない態度なので、より火に油……火に火薬状態になりそうだから引かざるを得ない、のかもしれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

……と言う出来事があって、清水は2着持っているのだ。

で、2着持っている理由は理解できたが、着てない理由が判らない。

 

「……澤村、菅原、田中、西谷の対応と火神の対応について、皆の意見も聞いてもらった方が良いかな、と思って」

「「ふぐっ!?」」

 

火神が頑張ってフォローしてくれて、怒りも無くなったかと思いきやの清水の発言。なかなか刺さるものがあるようで、澤村と菅原は思わず言われた瞬間 ぴんっ! と背筋を伸ばしていた。

 

「ですがしかし!! 我らには才色兼備だけでは物足りないのです!」

「そうですよ潔子さん!! 貴女様の名こそが我々にとって至上の喜びであり!」

 

と、わけわかめ、な人達だなぁ……と言う事は、縁下は勿論の事、他の皆も思っちゃったので、断然支持するのは火神である、と投票。

 

「大地……。なんかオレら悪くないよな? 悪くないよな??」

「決まってるだろ……。でもなんだ? この焦燥感は………。今後、清水関連では更にあの2人は要注意するしかない。……そして、火神を最終兵器として常に常備しよう」

「だな! てか、【一騎当千】じゃなく【最終兵器】にした方が良いべ」

「良くないです! なんか変な所でオレ巻き込まないでください!」

 

 

人の居ない所で一体何を!? と抗議の声を上げる火神。

 

火神と言う枷が無くなった1年達は、更に口で罵り合いが続き、日向まで巻き込まれる。

軈て、獲物を再び見つけた猛獣妖怪2人組は、更なるオーラを背に、火神に迫る。

 

色んな意味でキーとなる人物だ、と遠目で見ていた武田は感心するのと同時に、その横にいた烏養は。

 

 

 

 

「……お前らいい加減に帰れ! 帰ってメシを食え!!」

 

 

 

 

と、いつまでたっても帰らない部員に喝を入れるのだった。

 

 




あまり進んでなくてすみません。次はネコがやってきます。

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