王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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第6話 北川第一戦③

「かぁーー、次はジャンフロ!アイツ、一体どんだけ武器搭載してんスかね?スガさん」

 

田中はもう、睨む事を忘れたようだ。清水が彼に集中していた事もひょっとしたら、今は、今だけは忘れているかもしれない。

それほどまでに、魅せられたからだ。日向にも火神にも。

 

無名校だった筈の、雪ヶ丘中学のバレーボールに。

 

「うん。アレ直接落ちて点になったけど、実際レシーブするとなると……。オレ達みたいにコートを上から、それも全体を見てるから分かりにくいかもしれないけど、相当取りづらいサーブだよな」

「対峙した時に、わかる。インかアウトか直前までは、アウトの軌道だったのに、そこから変化した。加えて、威力もなかなか。……ほんと凄いヤツが出てきたもんだ」

「…………」

 

皆が火神を、そして日向を見ていた。

清水は、もう一度だけ首を軽く傾げた。プレイを観ていていろいろと有りすぎて驚いたが、それ以上に考えていたのは、あの時出会いがしらの火神の反応だ。

 

「……やっぱり、初対面の筈」

 

もう何度目になるかわからないが、そう結論する。

 

「きっと、潔子さんの美しさに中てられたんスよ!中坊が色気づきやがって。教育が必要、っスかね??」

「田中じゃないんだから」

「っ………、無視も最高っス、でも潔子さんに応えてもらえるのももっと最高っス」

 

相変わらずな田中はさておき、澤村は少しだけ考えた。

 

清水は田中とは違うと言っていたが、もし――彼が清水目当てに烏野にやってきたら?たとえ、清水が目的だったとしても(色々と違う意味で面倒ごとが増えそうだが)、あんな選手が入ってきてくれたら、烏野は爆発的に進化するだろう。それにチームをまとめている所を見ると、普通に好感度が高い、好少年だ。扱いが面倒くさいのが、むしろ自分たちのチームに約2名いるけれど。

 

 

 

だが、あくまでそれは希望的観測に過ぎない。

 

 

この会場には、違う意味で目を光らせてる者がいるから。

本来ならスルーしても良い筈なのだが、北川第一という優勝候補のチームの初戦だという事もあって、いろいろ来ているから。

 

「(ちらっと字が見えた。多分、あれは青葉城西。それとあっちはひょっとして白鳥沢か?)」

 

ぱっと見えただけで強豪高校がこの場所に集っている。青葉城西は北川第一の選手の大部分が進む高校だから、来ていても不思議ではないが、まさかあの高校県内優勝校である白鳥沢まで。単なる偶然かもしれないが、それでもあの火神のプレイを観たら目の色を変えるのは間違いない。

 

「期待薄、かなぁー。世知辛いもんだ」

「大地?どした?」

「いや。変に期待しない方が良いかな、って思っただけだ」

「「???」」

 

 

進むとなれば……強豪校を選ぶだろう。そしてお誂え向きに各高校の関係者が来ているのだから、スカウトは必至だ。

 

「おっ、続き始まるっスよ!」

 

田中に言われ、全員が視線をゲームに戻す。

澤村は、今度会う時は戦う相手として観る。そう思いなおすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞ!」

【さぁ、来い!!!】

 

 

気合十分、北川第一の気迫がこちら側にまで伝わってくる。

セッター位置にいる泉、関向は思わず気圧されてしまう程のものだった。

 

「(後、何点……いや、全部取れ。だろ?翔陽。いや、俺も取りたい!とも言うかな)」

 

火神は、チラリと日向を見て笑った。

そして前を向いている日向だが、まるでその視線が分かったかのように振り返ると、笑顔で大きな声を上げたのだ。

 

「10点取れ!後はオレがとーる!!」

【……あ゛??】

「ひぃっっ」

 

思わず笑ってしまうやり取りだ。日向の言葉は、相手側の挑発にもなってしまった様。思いっきりガン飛ばされて、萎縮してしまう日向。その様子を見て笑っていたいのだが、生憎時間は限られている。

 

 

「……狙いは、あの間」

 

口に出す事で、それを絶対行うと言う暗示を自らにもかけつつ、イメージ通りの姿勢をも脳裏に描く。ジャンプサーブに比べたら、やりやすいサーブではあるが、それでも行うルーティンは変わらない。決めるイメージ。脳内ではいつもサービスエース。決めると信じて打て。

 

ボールトス、ジャンプの姿勢、タイミング。

 

「(完璧……っ!)」

 

打ったサーブは北川第一の5番と6番の丁度間。うまくいけばお見合いを誘発できる位置だ。

 

 

 

「っ!オレが取る!!」

 

だが、北川第一も簡単には点は取らせてくれない。もう3本目。うち2本はノータッチエース。優勝候補校のプライドが、安易な得点を許すわけにはいかない。大きな声かけで正面に入る5番。

 

「(よし、とれる……)なっ!!」

 

取れると確信したポジショニングだった。

先ほど落ちてきたので、そのボールに対応できるように、距離をやや詰めてオーバーで捕らえようとした。手段としては完璧なレシーブ。……だが、いつも決まった方向へとぶれるとは限らないのがジャンプフローター。

魔球とも呼ばれる所以。

 

 

伸びるボールへと変わったサーブは、オーバーで捕まえようとした5番の手を、指先を掠め、弾くように、後方へと飛んだ。

 

 

 

【よっしゃあああああ!!】

 

 

 

沸き起こる大歓声。まるで、勝った!みたいなお祭り騒ぎ。まだ2点負けてますよ?と思うが、そんなのは関係ないだろう。

火神も、喜びつつも不安はまだまだ残っていた。このまま、勢いのままに行けるところまでは行ってしまいたい。あわよくばセットを取るところまで。……が、そう簡単にはいかないだろう。

 

 

単純なチーム総合力では圧倒的に劣っているのだから。

 

 

「せいやーーーっ!このやろっ、このやろうっっ」

「おう!」

「せいちゃん、めっちゃ余裕じゃんっっ、なーにが勝つのは無理~ だよ!しょうちゃんじゃないけど、すごいすごい!って言葉しか見つからないし」

「そうそう、このままいっちまえ!ボール受けるの痛いし!」

 

皆が集まってくる。

 

だが、ここで浮かれるわけにはいかない。まだまだ前半戦なのだから。

 

「ここで軽めの円陣だ。翔陽。……あんま浮かれ過ぎるな、調子には乗っても乗りすぎず、いったんまずはクールダウン。今の所、相手のレシーブミスで取れてるから大丈夫だが、返球だってあるからな。ボールから皆目を離すなよ」

 

皆が勢いよく頷き、大きく返事する。

 

「……流れがある内は、オレのサーブで行ける所まで連れてく。だが、止まった所からが、第2ラウンドなんだ」

「おうよ!! オレだってやってやるんだ!! っと言うか、オレもボール触りたいんだーー!!」

 

難しい事を今の日向に言っても……な様子。仕方ないので、このままいく事に集中しなおすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――俺だったら、取れる。俺だって、あれくらいのサーブは打てる。

 

 

影山の内に燃えるような闘志が沸いた。

ただ、今の味方の現状には苛立ちしか無い。もしレシーブするのが自分なら取る。取れる。

影山はプライドが非常に高く、負けず嫌いな性格だ。

 

「絶対切るぞ!!」

 

その苛立ちは、自分中心的な物言いに変わり、周囲からは浮いた存在となり、疎まれる事が多くなった。それは、この試合でも変わらない筈、だったのだが、今回に限れば違った。

 

 

「(俺の、ミスだ………ッ!!!)」

 

 

5番……金田一は、両頬を思い切り挟み込むように叩いた。

いつもは、影山の無茶なセットアップに合わせられず、影山の横暴な態度もあり、気持ち的にも萎縮するため、ミスが多い時もある。だが、今のサーブレシーブは違う。声掛けをし、完全に捕らえたと思ったら、変化した。まるでボールを直前で操ったのではないのか?と思ってしまう程、ボールがブレた。

 

 

そして、失点した。

 

 

影山のことを好む者は、このチームには皆無だと言っていい。誰もがあの自己中心的で、横暴で、独裁者で……幾らでも言える。

そんな男だからこそ、何よりも繋ぎが重要な競技で、仲間との連携、意思を、呼吸を合わせようとする者などいなかった。

 

 

だが、今回は違った。

 

 

【一本、切る】

 

 

今日初めて……いや或るいは、これまでで初めてと言えるかもしれない程、チーム全員の意思が、利害が一致した。

 

 

「さぁ、来い!!」

 

 

そして、全員の顔つきが明らかに変わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火神の4本目は、ジャンプサーブ。

極限まで集中していたのだろうか、今回は見事なレシーブで影山へと返球。そして、流れるような連携で一本返されてしまった。

 

あまりの鮮やかさに、速さに、前で構えていた3人は動く事が出来なかった様だ。

 

 

「っ、と。悪い。恰好つかないな、連れてくって言っといて。……もう1点くらいは稼いどきたかったんだが」

 

 

そんな中で、火神の声だけは聞こえた。

 

 

 

 

 

その後、立て続けに3点返され、先に20点台にいかれた。

 

その後も何とか相手のミスを誘ったり、こちら側にラッキープレイが出たり、火神、日向の点もありと得点を重ねることは出来たが、それでも差は広がって24-19のセットポイント。

 

 

 

 

 

火神が言っていた【クールダウン】という言葉が皆の頭の中に出てくる。

 

 

そう、浮かれ過ぎてて忘れがちだったが、相手は遥か格上。

点を取っている様に見えるが、それは火神が取ってくれた物やフォロー等もあり、日向の素早い攻撃もあり……即ち、ほとんどと言っていいほど、得点に結びつくようなプレイは火神を中心に行われている。

 

そして、あのサーブの場面は最高潮だった。

 

もうちょっとで追いつける所まで迫っていた。皆も盛り上がっていた。だからこそ、忘れていたのかもしれない。火神以外はほとんど初心者であるということを。

 

日向は毎日の様にボールに触れて、スピードやバネ、跳躍力等は凌駕しているものの、総合力で言えば遠く及ばない。なのに、自分たちの力と錯覚してしまっていた。

 

バレーは1人でするスポーツじゃない。個だけじゃ決して勝てない。点は取れても、勝ち切る事はできやしない。それは、違う球技スポーツ出身者たちだってわかりきっている事だ。

 

 

「難しいよなぁ、バレーって」

「そうだね。……でも」

「ああ。例えサッカー部からの助っ人だって言っても、ここまで来たら、ジャイアントキリングしてみてえよ。……足引っ張らない様に、は正直素人の俺らじゃ無理かもしれねえけど、食らいつける所までは食らいついてやる」

「うん。俺もせいちゃんに言われてたプレイ、まだやってないしね。できることはまだまだある、って思う」

 

泉と関向。2人の初心者も改めて気を引き締めなおした。

最初に考えていたような事、あんな強い相手に勝てるわけない、と考えていた事はもう頭の中にはない。

 

ただただ、あの球体を、自分たちのコートに落とさないように、自分たちにできる事は最大限努めよう。

 

そう 思う。

 

烏野スタメン落ちアンケート

  • まだまだレギュラーは早い 火神
  • チームの大黒柱 澤村
  • リードブロック月島
  • 強メンタル田中
  • サムライ兄ちゃん東峰

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