王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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第85話 全員で東京へ

期末テスト。

 

 

 

―――――ピシッ!

 

 

 

何かにヒビが入ったかの様な音が聞こえた………ような気がする。

 

ほんのついさっきまで、凄く騒がしかった筈なのに、盛り上がって雰囲気も良く、賑やかだったと言うのに、………いきなり無音の世界へとやって来たような感覚。

 

 

ここは虚無の世界……、まさに地獄。

 

 

地獄がここに、この体育館にあるだなんて、誰が想像出来ただろう?

部員全員が一丸となって全国目指そう! と一致団結、気合十分だったのも何だったのだろうか……。

 

 

 

「………わかるよね?」

 

 

 

そして、つい先ほども、此処はまさに天国な気分だったと言える。

 

東京に行ける話を持ってきてくれた武田。

いつもいつも選手達の事を思い、最善を尽くし そしてついには様々な縁まで繋げてくれた武田。

 

……だけど、今回 持ってきてくれたのは、天国だけじゃなかった。……地獄も一緒に連れてきた。

 

 

 

どれだけ地獄地獄とのた打ち回っても、これが現実。変わる事の無い現実。

 

受け入れがたい現実に直面した時、目を逸らせたい気持ちになるのは十分解る事ではある、がだからと言って、ここで武田が妥協する気は一切ない。……と言うより、武田は顧問監督である前に教師なのだから。

 

 

……勿論、バッサリと切って捨てたワケじゃない。何度も何度も何度も自問自答を繰り返したし、精神の1つや2つ、やられていた気分だったし、……何より教頭()に掛け合う事はも武田はしてくれた。

その結果が……コレ。

 

 

 

「テスト期間は向こうとも大体一緒らしいので、合同練習はそれの後―――と言う事です」

 

 

 

淡々と告げられていく。……話が終わるまで待たされる時の気分はまさに死刑でも宣告されたようなもの。

 

武田の声だけが、まるで感情を感じられない無機質声だけが場に響いてくる。

 

 

 

「…………………」

 

 

 

流石の烏養も、この時ばかりは何にも言えず、ただただ青い顔をしていた。

本人も、この烏野高校の出身だ。……地獄を潜り抜けてきた身だから、痛いほどわかるのだろう。

 

この先に、武田が言おうとしている事(・・・・・・・・・)も。

 

 

 

「―――で、予想ついてるかもしれないけど」

 

 

 

先ほどから一切武田と視線を合わさずに、目を見ずに、只管逃げ続けていた男たち約4名は、びくんっ! と身体を震わせた。

 

いつもは草食動物とも言って良い程の武田なのだが……、この時ばかりは肉食、それも天敵を前にした気分に浸る。

 

ガタガタと身体が震える。

震えをどうにか止めてほしいのに……、違う意味で止めてくれた。

トドメをさされてしまったのである。

 

 

 

「赤点で補習になる教科がある場合――――。………週末だからね。赤点の量にもよると思うけど、場合によっては夏休みにも(・・・・・)入る。そして、合同練習の場所は東京。……遠征に行くの物理的にも無理(・・)、って事になるんだ」

 

 

 

 

合同練習はおろか、夏休みでさえ 思う存分練習が出来ない更に奥に鎮座している地獄まで紹介されて、平静でいられるワケが無い。

 

ほんの一時でも、穏やかだった、楽しかった。……それでも地獄が追いかけてくる。

逃げたくなってしまったとしても、無理はない。

 

 

 

「「!!!」」

 

 

 

条件反射で、脱兎のごとく、どんっ!! と地を蹴り 跳び起きる田中と西谷は、回れ右をして駆け出していった。

なかなかに素早い好スタート。ビーチフラッグスの大会にでも出場すれば、かなりの好成績を残せそうだ。

 

―――と、それは置いといて。

 

 

 

「おいコラ!! 田中 西谷! ドコ行く!? どこにも逃げられないぞ!! 縁下!! 捕まえるんだ!」

「あ、アス」

 

 

見事な身体能力を披露してくれたが、今は一切関係ない。

 

持ち前の身体能力をフルに活かして逃げに徹する田中&西谷を制するのは、普段はやや隠れている様に見えるかもしれない2年の裏のボスである縁下。

 

澤村に2人の捕獲を命じられ、動き出した。

単純な身体能力では、田中や西谷には及ばない筈なのだが……。

 

 

 

 

「あ、あかっ、あかあか!! あ、あお?? そう、あおっ!!」

「いや、青ってなんだ? 青って。顔色的な? まぁ、今の翔陽的には間違ってないかもだけど、今重要なのは赤な? 赤点。……中学ん時はあんまり縁のない名前だったんだけど、改めて言われると、大変だよなぁ……? ……あの時も点取れてなかった、ってのは別として」

「っっっ!!」

 

 

日向の学力の低さに関しては、火神は多分この場で一番よく知っている。

 

中学校は義務教育だから、悪い点を獲った所で 余程の事が無い限りは大事ないのだが、それでも日向の頭の悪さは筋金入り(暴言)

過去にも何度も補習を受ける羽目になっている。

 

だが、実は補習(それ)をそこまでの苦行だとは当時の日向は思ってなかったりする。

 

理由はいくつかある。

 

まず家にまで遊びに来たり、逆に遊びにいったりしている友達であり親友であり、相棒でもある火神の存在。

 

同学年では一番大人染みてる印象の通りの学力も持ち合わせていた。

 

バレーのスキルもそうだが、非常に、とても! 物凄く! 不公平だ!! と日向は何度か思ったのは言うまでもない事だが、その思った数の凡そ10倍以上は、学業でもバレーでも世話になってるのは言うまでもない話。

 

そして次に補習の時期。

大体がテスト期間部活休み期間が明けて存分に活動する時期に行われたから、と言う理由。

 

何故それが理由になるかと言うと、テスト期間の休み明けの部活だから 当然 室内競技の部が全面的に体育館を使う。

人数がまだ全然居なかった男子バレー愛好会は、他の部活の合間合間を縫って練習したり、たまに女子に混ぜてもらって練習したりしていたのだが、部活休み明けの練習は、どの部活も、テスト期間中出来なかった分を存分に発散してるかの様で なかなか練習参加と言うのが難しいのだ。

普段より倍増しでスペースが極端に狭まる様な感じだろうか。

 

 

男子バレー部の無い雪ヶ丘で、バレーの練習をさせて貰うのは結構難しい、と言う事だ。

 

 

それに、当然だが遠征なんて贅沢過ぎるモノがあるワケも無い。

補習はさっさと終わらせて、ちょっとでも練習に混ざる、若しくは火神と外でパス練をする! と日向は 受ける前提で行っていたので、云わば、自分だけテスト期間が少し延びる……ちょっとした行事そのものになっちゃってたのである。

 

 

【中学までなら大丈夫だけど、高校入ったらヤバイぞ? 翔陽。留年とかするなよ~? バレーとか、翔陽ん家とかみたいに、ついていったりはしないからな?】

【流石に、それはしませんて! 留年とか ヤバすぎんべ~】

 

 

面白おかしく火神にそう言われて、一蹴した日向だったのだが……、今現実を目の当たりにして顔を青くさせているのだ。

 

毎日毎日部活ばかり一生懸命で、学業部分を疎かにし過ぎてて。

高校では、中学時代の様にはいかないのを悟って頭の中がショートしたのである。

 

 

「あ、あかあかかか、赤点って何点なのせいやっっ!!」

「ん? ああ、赤点は40点以下で……って」

 

「「そっから!?」」

 

 

思わず後ろで聞いてた菅原と火神はハモった。

 

 

「どうしてこうなっちゃうまで放置しちゃったんだよ、火神(おとーさん)! 育児放棄は感心しないぞっ?」

「い、いやいやいや、何だか久しぶりに、おとーさん聞いた気がしますが、そこまで面倒見切れませんって!! 中学ん時は同じクラスだったから、まだ 授業中寝たりしたら注意してたり、提出物とかも面倒みたり、補習受ける時に色々教えたりはしたけど……」

「いや、それはそれで 結構面倒見てると思うぞ……。つーか、中学ん時に既に補習受けたんかーい!」

 

 

菅原の保護責任者義務違反! 監督義務の放棄! な勢いで言われた火神だったが、流石にそれはリーダーとしての責任範疇外。

断固として甘んじて受けたりはしない、と言った姿勢を見せた。

 

 

菅原は菅原で、半ばネタの様に言っていたのだが、蓋を開けてみれば 想像以上に面倒を見てあげてて、流石に驚いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

それはそれとして、問題児たちの運動(バレー)面のリーダーもそうだが、まさか勉強にまで監督(リーダー)責任を押し付けられた日には……それこそ火神の身体がモたない。

 

 

「おぉ~~い! おとーさん! 今度は影山(こっち)だ! 影山(コイツ)息してないーーー! AED――!!」

飛雄(お前)もか! ってか、山口も悪ノリするなーー! AEDて、心停止かよ!? どれもこれもオレの責任(せい)じゃなーーい!」

「あっはっは。多事多端だねぇ」

 

 

 

月島が言う通り。

多事多端が過ぎるとはまさにこの事だ。

物理的にも首が回らないし、何より 学業面に関しては仕事ですらないので、気分的にも乗らない。因みに山口は100%悪ノリしたワケではなく、影山がマジで息をせずに青くなっちゃってたので、慌てた結果……、やはり保護者に頼ってしまうのは当然の流れなので、咄嗟に火神の名前が出たのである。

 

 

 

慌てふためいてる日向。

半分死んだも同然な影山。

逃亡を図った田中&西谷。

 

 

 

 

その問題児4人以外はと言うと、何とも対照的だ。

動じた様子は一切見せない。

 

 

「そもそも部活と勉強を両立する、って春高まで残ると決めた時に宣言しちゃってるから、それなりの成績出さないといけないんだよな」

「それなりの成績どころか、まず赤点は無いデショ」

「無いね」

「オレはもうちょっと頑張らないと不安かな?」

「あ、それはオレも。べんきょーって、やっぱ苦手で」

 

 

それぞれの意見はごもっともだが、月島が言う通り 赤点までは無い、と言う様な意見が殆どだろう。

 

 

影山の為に、AEDを持ち込んできた山口は、心配と口にしつつも 赤点までは無い、と顔に書いてる。半笑い気味だから。

 

 

縁下に関しては、身体能力で劣ってるのにも関わらず、田中と西谷の捕獲に成功し、首根っこひっ捕まえて戻ってきていた。

澤村が信頼して任せた理由が解ると言うものだ。

 

 

 

勉強が好き! と言う者は稀であり、東峰が言う様に大半がやっぱり苦手になるだろうが、それでも基本的に平均点は獲れるくらいの難易度の筈なのだ。その平均が40点(赤点)付近、なワケもない。

勿論………授業中、その大半を寝て過ごして無ければ……ではあるが。

 

 

「翔陽。ここが本気ポイントだ。ほら、テスト勉強教えてた中学(あの)頃 よく言ってただろ? 【次から本気出す!】って」

「はふぐぅっっ!!」

 

 

日向がそれを常套句にしていたのは否めない。

でも、火神も火神で それは当然の様に知っていて、(ありきたりな謳い文句だから)別に本気で受け取ってなかった。……もし、日向が言葉通り、本気を出して高得点を叩き出してれば逆に火神が即倒してしまうだろう。

 

 

「本気の本気でテスト頑張れ! 今までみたいに、補習ありきな受け方だと………東京はキツイ(・・・・・・)ぞ?」

 

 

火神の【東京はキツイ】発言で、更に電流が流れる日向。

びくんっ! と身体が跳ねたかと思えば、何を考えたのか はい! と手を上げて答える。

 

 

「そ、そうだ! 教頭、教頭先生に一生懸命頼めばきっと……!」

「いやいやキミ。本気出すっておとーさんに言ってたんデショ? なら、まず頑張んないと。と言うより一生懸命 お願いする(・・・・・)より 赤点を避けな(・・・・・・)よ」

 

嫌味ったらしい笑顔でクスクスと笑っているのは月島。

いつもなら、勉強面以外の煽り毒舌なら、日向も影山も反応するだろうけれど、今は一切頭に入ってない。 ただただ、東京へ、東京へ、としか考えてない。

火神に言ってきた(らしい)、本気発言も、最早記憶の彼方に消え去ってる。

 

「……はぁ、いつもだけど、ものすっごい良い笑顔で言うよなぁ月島。と言うか、今はお前の煽りコメントにも縋りたいよ。翔陽や飛雄の導火線に火をつけてくれ……」

 

月島に煽られたから、憤慨して全力で取り組む! と言う姿勢が生まれるかもしれない。

 

「いや、無理デショ。勉強(ベンキョー)系は絶対」

「解ってるわ! 身に染みてるわ! 皆まで言うな!」

 

勿論、それも火神は言ってみただけなのである。

 

「そ、そうだ!! づ、ヅラ! ヅラの事黙ってあげるって言えば……!!」

 

日向は交渉材料として、あの初日のヅラぶっ飛ばし事件を思い返した。

頭頂部の秘密。教頭がひた隠ししていた秘密。……皆にはバレバレなんだけれど、本人はそうは思ってないからこそ、あの場の全員に口を噤む様にとだけ釘を刺したんだ。

 

ならば、交渉の材料にはなる筈! と日向はなかなか視線が変になっていた。

 

「―――今度は脅迫する事まで考えちゃってるよおとーさん。育て方間違えてない?」

「いや、知らんから。ほんっと知らんから」

「おとーさんも投げやりになったねぇ~」

「何か、これ以上は足にまで負担掛かっちゃいそうなので、持ち場に戻ります、見学スタイルに戻ります。はい」

 

教頭にどうにか頼む、くらいは余裕で想像出来ていたんだけれど、まさか 頭頂部の秘密(ヅラ)の事まで持ち出そうとしてくるのは予想を超えていた。

素直で単純一途だった筈の日向が、悪に染まった気がする……が、もう、どうとでもしてくれ、と疲れた様に 椅子に深く腰掛けて火神は両手を上げた。

 

生徒たちが苦しんでる。藻掻いている。

もっともっとバレーが上手くなりたい、強くなりたい、と言ってたあの時の様に。

 

 

こう言う時こそ、手を差し伸べ 前へと進む道しるべになってあげるのも教師の役割ではあるのだが……、今回の件に関しては八方塞。

 

 

「……教頭先生の承諾を貰えても、補習になった場合、補習(そっち)が優先だよ……」

「!!!!」

 

 

学生の本分は学業である。

赤点選手を外に出してる暇ない、と言うのが学校の方針なので、仮に教頭をどうにか攻略したとしても、学校側が許してくれないだろう。……成績として、数値は残るから、どう頑張っても誤魔化しようがない。

 

 

 

教頭攻略しても意味なし、と悟った日向の脳裏では 東京の風景が粉々になり消滅している。

 

 

ばっ! と顔を上げる日向。

頼みの綱である火神はもう逃げてるし(それに勉強しろ、としか言わないので最善とは思ってない)、月島はそもそも論外。

 

 

後、頼りになる人と言えば……やはり人生の大先輩。

 

 

 

「コーチっっ!!」

「!!!」

 

 

日向が頼ったのは烏養である。

ガシっ、と両手にしがみついて離れない日向。

そして、オレかよ!? と言いたげだった烏養は固まった。

 

一先ず原因は兎も角として、頼られたので、ある程度の答えは導き出さなければならないだろう。

 

 

「あー……、ま、まぁ 学生である以上、避けては通れんだろうな……」

「そ、そんな……」

「ほ、ほれ! 本気出すんだろ!? もう何十、何百、何千と火神に言い続けたんだろ!? 後は有言実行だ! それに根性! 根性も追加してやってこい! 最後の最後でモノを言うのは気持ちだ!!」

「せ、精神論……!!」

 

 

 

「なー、日向大丈夫かよ、火神……」

「オレに何を求めてるんですか菅原さん……。そもそも【勉強しなさい!】って言ったから 【解った! 直ぐやります!】 って性格じゃないんですよ翔陽は……。バレー以外では」

「あー、確かにバレーだったら、アレやれコレやれって、火神に言われたら するかもなぁ。……ってか、コーチ何千って言ってるけどそんなに?」

「流石に1日1回以上を毎日言い続けるなんて、翔陽には出来ません。と言うよりオレもそんなの聞きたくないです」

 

 

火神と書いてお父さんと呼ばなくなった菅原。

もう結構マジメに考えてくれてる様だ。次いでに心配も。

 

と言うワケで、火神と話した後は今度は菅原が日向に話を聞く番になった。

 

 

「なぁなぁ、日向。そこまで思い詰めなくても多分大丈夫だよ。烏野って、そんな難しいレベルの学校じゃないし」

 

やんわりと諭す様に言う菅原。

そもそも、学力面重視で難しい高校なら、入学(はい)れてない筈だから。

 

 

「!! で、でも オレ昔から絶対2教科は点数低くて居残りさせられてましたし……、後 高校入ってから60点満点の小テスト、2桁以上の点数殆ど取った事ないですけど、大丈夫ですか!?」

「えっ」

「えっ」

 

 

「………えぇぇ。それ昔より学力衰退してない? 翔陽……」

 

 

 

確かに高校は中学より難しいかもしれないが、まだ入ったばかりの1年のこの時期は そこまで難しいレベルのモノじゃなかった筈だ。

寧ろ、中学校の時のお浚いみたいな問題も多々あった筈。……クラスは違えど、小テストは火神も何度か受けているので、大体察しているのだ。……それを踏まえて、中学時代の頃を思い出して、比べてみると……、変な声が出てしまうのである。

 

 

 

 

そうこうしている内に、後ろも騒がしくなった。

 

「一体ドコに逃げるってんだ? お前らは」

 

珍しい縁下の説教タイム。

それを黙って受けていた2人。甘んじて受け入れた2人がたどり着いた境地。

 

 

それがこの慈愛に満ちた掌と掌を合わせて。掌の皺同士を合わせて、今こそ幸せを――――と悟る。

 

 

もう部活も終わり、日も落ちてきたと言うのに、何だか神々しい光が体育館の窓から差し込んできて、田中&西谷を温かく包む。

菩薩の如き顔面で、目を閉じて瞑想。後光が見える。

 

一体何をこの場所に降臨させるつもりなのか? と思わず火神は苦笑い。

 

 

「おいお前ら!! その菩薩顔ヤメロ! それ、受け入れた言わねぇ! 諦めたってヤツだろ!!?」

「……凄いなぁー、自分の境地を可視化出来るなんて、ほんっとすごいなーー」

「火神も現実逃避しない! これから忙しくなるんだぞ!」

「だからこそですーー! そんな未来が見えてる気がするからこそですーー!」

 

 

何だかんだで面倒見なければならない気がしたので、せめてもの抵抗にと火神は意識を手放す様に……田中と西谷の降霊術? を眺めていた。

 

 

 

予想通り、いや 或いはそれ以上のパニックを持ち込んでしまった武田。

結果は端から解っていた筈なのに、生徒たちよりも前から知ったし、カクゴも出来た筈だったのに……、気を抜けば。

 

 

「やればできる、ダイジョウブ、ダイジョウブ、ダイジョウブ………」

「せ、せんせーー!? 気をしっかり持て! しっかりしろ!!」

 

 

と、壊れた玩具の様にダイジョウブ連呼していた。

どうにか烏養が現世に繋ぎとめようとしていた。

 

 

 

「あははは、なんか、多事多難より、阿鼻叫喚がしっくりくる~」

 

 

 

多分、唯一純粋に楽しんでるだけなのは、月島だけだろう。

ここぞとばかりに、普段の鬱憤でも晴らしてるのか、いつも以上の笑顔を見せていたから。

 

 

そんな時だ。

 

 

「狼狽えるな!!」

 

 

全てを一喝する様に、澤村が腹の底からの大声を出す。

半死半生になってた、4人は僅かながら延命出来た様で、のろのろ~ と動き出した。

影山……、息が止まってから一体何分たった? と日向もある意味心配した様で、ちょっと動いたから揺すって起こして現実へと連れ戻した。

 

 

「いいかお前ら! この4人は烏野だ! 烏野の一部だ!! どんなバカでもアホでも、能無しでも! 烏野が高く飛ぶ為にも、無くてはならない翼なんだ!」

 

 

「大地さんがスゴク良い事言ってくれてるのに、翼、とか格好いいと思うのに。………バカとアホと能無し。……うれしいような、悲しい様な」

「事実だからなー……、べんきょーに関しては」

 

 

田中も西谷もバカだのアホだのをしっかりと受け入れた。

澤村の言葉だからより強く受け入れた。

 

 

「それとな田中。お前、参加出来なくても良いのか?? レギュラー勝ち取りたいなら、この絶好の機会を逃すワケにはいかないんじゃないか?? 今に、火神やオレがお前以上のパワーで相手をぶっ飛ばせる日が来るかもしれないぞ?? 勉強嫌いだからって、それで良いのか??」

「っっっ!! そ、それは 嫌ですっ!!」

 

 

唯一4人の中でレギュラーじゃない田中。

でも、攻撃特化スタイルにするパターンの時に澤村と交代したりして、戦術的には紛れもなく無くてはならない男……なのだが、澤村は敢えて煽るのだ。

 

パワーで田中を上回るのはこの短期間じゃ無理がある。

その点は火神だって同じだろう。

 

でも、田中以上の攻撃力を発揮しだしたら? 

レギュラー争いからは完全に脱落した、と言われてもおかしくない。戦術的交代も危うくなってくる。

アイデンティティを取られたら存在意義も薄れてしまう。

 

焚きつけるには、どんな種火を加えても中々燃えてくれない勉強と言う部門だが、それでも無いよりはマシな煽りだと澤村は認識したのである。

 

 

「何はともあれだ! このバカ4人抜きで、烏野のMAXが発揮できる訳ないんだ!! ……だから、やるしかないぞ、お前ら……。全員で、東京だ。……東京に行ってやる」

 

 

先ほどまで、田中と西谷には後光が見えていたと思えば、澤村の背後は闇だ。

漆黒の闇を纏い、現実逃避と言う名の後光を闇に染め上げてしまった。

 

 

「目ぇ据わってるぞ、大地!!」

「こええよ!!」

「うるさい! ともかく、ここはもう片付ける!! 帰る前にいったん部室に集まれ!!」

 

 

 

澤村の号令により、蜘蛛の子を散らす様に 皆が散らばって、体育館内の後片付けをする。

火神は、足の負傷により 一先ず免除にはなった。勉強の件が無ければソワソワしていただろう。

 

「はぁ、どうしてこう、ネタが尽きないと言うか、ベタな展開と言うか 何と言うか……」

「ふふ。大変だね」

「清水先輩にも手伝――――は、止めときます。今、色々動いてくれてるのを知ってるので、余計な手間かけさせるワケにはいきませんし。……足が十分なら、そっちも手伝うんですけどね……」

「うん。悪いけど そっちは任せるよ。……勿論、火神は足の事にも注意する」

「はい」

 

新マネージャーを探している、と直接的に聞いたわけではないが、火神も元々知っていた事に加えて、間接的に色々と聞いている。

 

人を勧誘すると言うのは、正直難しい。この時期だから 元々入るつもりが無い人が多い筈だから。そんな人達をやる気にさせるのは流石に。

男子なら、清水目当てなら簡単に集まりそうな気もするが、マネージャーに関してはなかなか難しいのだ。……そもそも、清水の周りに番犬が居る噂は結構広まってるからと言う理由もある。

 

「でも……、はぁ、大変だなぁ……」

「がんばれ」

「ぅ……、清水先輩のがんばれは、皆にとって一番最高の激励ですね。それをオレ1人で受けるのは、モノスゴく光栄な事なんですが――――、どっちかと言えば、がんばるのは、彼らの方ですよ?」

 

正論である。

何せ自分が頑張ったからと言って、日向や影山、田中、西谷の成績が上がるワケではないのだから。

 

「火神ならきっと、出来る。……試合でやってたみたいに、がんばる姿を見せれば、きっと」

「……で、でも、オレ今頑張っちゃ駄目なんじゃ?」

「勉強だから、足は大丈夫」

 

清水もなかなか厳しい事を言ってくれる。

と言うより、もう皆が、と言うより 火神が手を貸してあげてテスト乗り切るみたいな空気作ってくれた。

 

頭と足は違うから、頑張っても大丈夫だと言うのはある意味 正論なのだが……。

確かに勉強は個人の問題だけど、チームの問題になりつつある事だから……。

 

1年リーダーを任されてると言う事は、ある程度の責任も伴ってくると言う事なのだろうか。非常に頭が痛くなりそうだ。

 

 

「ぅぅ。清水先輩って、案外S……」

「なに?」

「何デモ 無イデス」

 

 

怒涛の攻め、押し寄せる清水を見て【頭文字S】が頭を過った。思わず口にしてしまったが、清水の笑顔(怖)が視界に入ってきた気がしたので、即否定する。

 

 

 

でも、何だかんだ言いつつも火神も楽しんでいるのは間違いない。

 

勉強は大変で頭が痛くなるのも本当だが、烏野(ココ)でやる分には全て楽しいに変換できるかもしれない。

 

 

大変なのは、間違いなく大変。……凄く大変。楽しむ事もあるが、やっぱり大変。

 

 

「やるだけやるしかない、かな」

 

 

火神はぐっ、と軽く拳を握る。

 

それを傍目で見ていた清水は、そっと頭に手を置いた。

 

 

 

「――――私は、出来る人にしか言わないから」

 

 

 

突然のことに驚いた。

清水に頭を撫でられた事はあるにはあるのだが、極稀だと思っている。

だから驚いたし……、何より 【清水は案外S】と言う発言、しっかり聞かれていた様で肝も冷えたが、一先ず清水の声色から察すると問題なさそうなので、安心すると同時に。

 

 

「――――そ、それはそれでプレッシャーですよ?」

「ふふふ」

 

 

 

火神はプレッシャーを感じ、そして清水は微笑みを1つ残してくれた。

 

 

 

 

清水とのやり取りを、例の2人に見られてないのは良かったと言えるが、焚きつける為にも見られた方が良かったかな? とも火神は思えたりしたのは別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、男子たちは部室へと集合。

勿論、帰っても良いが 少なくとも4人は絶対に駄目、と言う事で 部室へと集まった。

 

 

澤村は、腕を組み、仁王立ちしていて、その横に何故か火神が座っている。

 

……4人は正座、火神は椅子。この時点で待遇は全く違うのだが、座る場所が何でここなのか気になる所だ。

澤村に影山や日向の事を頼まれるだろう事は薄々理解しているが、それでも立ち位置がなんだかおかしい。1年が座ってる2年の前に居るなんて……。

 

 

「よし、良いかお前ら。重要なミーティングを始めるぞ」

【……………】

 

 

普段のミーティングよりも緊張感を感じてしまう。

試合前のミーティングに匹敵するかもしれない。

 

 

「まずは、だ。お前らがこれから絶対に守るべき事。――――それは」

【……………】

 

 

鋭い眼光で4人を貫く澤村。

有無を言わせない、その迫力は 無理難題を吹っ掛けられたとしても、頷かざるを得ない。

 

でも、無理難題なんてことはない。

当たり前、一般常識な事を言うだけだ。

 

 

「授業中に寝ない事!!」

【っっ!!!】

 

 

 

「………〇び太君じゃないんだからさ。澤村さんの言葉に驚かず、せめて頑張ろう! ってくらい思おうよ、そこは」

「……そっからなのね」

 

 

普通に教師に見つかれば怒られる案件である。

当然、どれだけ簡単なテストだったとしても、授業を最初から聞かず、シャットアウトしてれば、解けるものも解けない。

 

眠っててもテスト満点なんて事が出来るのは、限られた天才だけだ。

 

残念ながら、そんな天才はこの学校には居ない。

高校1年が2回目な火神でも、それは無理である。

 

 

 

 

「根性だけでイキナリ徹夜とかして、日中の授業も部活もグズグズ……、なんて以ての外だ!」

【!! ………ハイ】

 

 

テスト対策で、真っ先に思いついたのが一夜漬けだったのだろう。

そして、それを行った時の自分の未来を正確にトレース出来てた様で……、まさに図星を突かれて、身体を震わせていた。

 

 

「じゃあ火神。バカの半分は任せた」

「……アス」

 

 

正式に任命されてしまった火神。

身体は普段よりも重く感じるが、やるしかない、とゆっくり立ち上がって、ちらっ と月島達を見た。

 

 

「お先でーーーす」

「お疲れ様ですー……」

 

 

視線が合った筈なんだけど、ニヤリ顔1つ返されただけで、そのまま帰っていっちゃった。

とりあえず、月島たちを見送って今後の事を考える。

 

 

 

 

 

「でもまだ、時間はあるし、効率よくやれば大丈夫だべ。そもそも、烏野(ここ)に入れるくらいの頭は持ってんだし、いけるいける」

 

 

 

厳しい澤村の次は、優しい菅原。

飴と鞭を上手く使い分けてくれるのが、我らがバレー部の3年生たちだ。

 

 

「「スガさんっ……!」」

 

 

正座させられていた田中と西谷は、目をうるわせている……が。

 

 

「まあ、これで授業中寝てたらマジ覚悟しとけよ。その辺は ガチで頼んで監視()といてもらうからな?」

「「………………」」

 

 

澤村は厳しくて、菅原は優しいイメージである。

確かにそれは正しい。……正しいが、度を越すと菅原も途端に厳しく怖くなる。

何せ、主将の澤村に正面からはっきり言って聞かせるのが菅原だから。

 

 

その後は、勉強に関して。

 

2年生を纏めるのは勿論 縁下らであり、澤村も勉強を教えられる部分は教えると承諾。

 

 

「んじゃ、お前らも同じな? 菅原さんが言ってた様に見ててもらう。……竹内先生たちに頼んで授業中寝ないか監視してもらうつもりだから」

「「…………」」

 

 

未だ放心状態な2人。

それを見て、とりあえず活を入れる為に火神は続けた。

 

 

「あー、音駒は勿論、東京って強豪だらけだよな~」

「「うぐっ!」」

「後、纏めてる梟谷なんて確か、全国常連校だよな~」

「ふぐっ!!」

「今年も強いって話聞いた事あるし、めっちゃ有意義な練習参加だよな~~」

「「…………」」

 

 

プルプル震わせている2人のそれぞれの肩をバシッ! と叩く。

 

 

「バレーしたかったら、キリキリ働け!!」

「「う、ウス!!!」」

 

 

働くってなんだ? と思った菅原だったが、恐らく影山や日向の頭……脳みそに言ってるんだろうな、と推察。

 

前途多難ではあるが、とりあえず 良いスタートではないだろうか。

明日から 部活と勉強、とても大変。―――普通の事ではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

「翔陽は、もうちょっと問題を落ち着いて読み直した方が良いよ。別に変人速攻じゃないんだからさ。慌てて飛び出さなくて大丈夫。最低3回は問題読む事。……ていうか、コレ前にも言った気がするけどなぁ」

「は、はい……」

「そんで、飛雄は……まず基本から。おさらい重視した方が良い。ほら、中学時代の教本持ってきたから。バレーでもいきなり応用とか無理だろ? 基礎重視。基礎体力つけてから、身体が動く様になってから必要な技術。その辺 勉強も同じ!」

「ぐっ……」

 

 

一番長い昼休みの時間に復習を重ねる日向と影山。

長いとはいっても所詮休み時間。長々と詰め込むのは無理があるので要点を絞っての指導だ。

日向は兎も角、影山は 中学の頃の教本を出され、少なからずプライドを刺激したのか、目の色が変わった気がする。

 

 

「普段から意識してくれよ? オレんトコに居る間だけ、とか意味ないからな。―――東京行きたいんなら」

「「うす!」」

 

 

勉強は嫌い。

でも、東京に行きたい気持ちの方が勝ってるので、苦行ではあるが 一心不乱に取り組む。

結果が伴うかどうかは、まだ初日なので何とも言えないのがツライ所だ。

 

「んじゃ、ちょっとトイレに」

 

 

重要? な部分を伝える事は出来たので、火神はその隙にトイレへと向かう。

 

 

その帰りに、清水と出会った。出会った、と言うより火神が1年の廊下で見かけた。

どうやら、勧誘の途中の様だ。……2人と交渉しているみたいだが、首を左右に振る仕草を見れば、入ってもらえないのは解る。……こういう失敗は、結構心に来るものがあるよなぁ、と火神は思いつつ、自分でも日向と一緒に調べたリストを教室に獲りに行って清水の元へ。

 

 

「清水先輩。これ、オレと翔陽の分です。とりあえず半分くらいのクラスで、部活やってない生徒をリストアップしました」

「! ありがとう。……今は日向達と勉強会?」

「はい。………まぁ、こちらも前途多難ではありますが、何とか」

 

 

火神は苦笑いをしながら続けた。

 

 

「翔陽から伝言も貰ってます。【1年でやれることは何でも手伝います!】 ですね。オレが一緒に伝えてくるからって。今は勉強優先させてますが」

「ふふ。だね。日向と影山には 今は勉強優先させないと。流石、火神 ナイス判断」

 

日向と火神の2人より………と、ほんの薄っすら、一瞬考えた清水だが、直ぐに頭の中からその考えを消去。

 

しっかりと火神を見据えて、気持ちと言葉を繋げる。

 

 

「……私たち3年は、次の大会が終われば居なくなる。火神達が入ってきてくれて、烏野は確実に強くなってる」

 

 

 

これまでの事を清水は思い返した。

何度か見た。

 

公式戦で敗れた事、【堕ちた】と揶揄された事、……そして、自分達の先輩が肩を落として、涙を流していた事。

 

清水も勿論、バレー部はもう他人とは言えない。

共感している。悔しいし、苦しかった。

でも、今は違う。……期待している大型新人が、凄い男の子たちが入ってきてくれたから。

 

自分の何処かにあった【他人事】。

自分は実際にボールを繋ぐわけじゃない。最前線で戦ってる訳でもない。

 

ここ暫くは清水以外のマネージャーは烏野には居ない。

だから、自分が居なくなったとしても、ただ、元通りに戻るだけだと清水は思っていた事もあった。

 

 

でも、今は違う。

 

恩とまで言ってくれた人が居る。

心を熱くしてくれる人が居る。

 

自分でも知らない感情を教えてくれた人が居る。

 

 

それに応える為にはどうすれば良いか?

 

 

決まっている。

自分に出来るのは 託す事。繋ぐ事。

託さなければならない。志を継いでくれる人を繋がなければらない。

 

 

「そんな皆を見て、来年とか再来年の事、改めて考えた。―――火神が私に恩を感じてくれてる事、それは嬉しかった。でも、やっぱり私自身は何か出来たなんて思ってない」

「! い、いや それは……っ」

 

 

そんな事は無い、と火神は言おうとしたが、清水は笑顔で制する。

最後まで言わせて、と言っている様に。

 

 

「私は私が胸を張れる。繋ぐ事が出来たと誇れるだけの仕事をしたい。……バレー部のマネージャーとして、繋ぐ(・・)仕事を。それが恩に対しての答えに繋がるって思うから」

「――――手伝いますよ。なんでも言ってください」

「ふふ。ありがとう。でも、まずは問題児たちを宜しくね?」

「あ、あい……」

 

 

難題がまだまだ残っていると言うのに、正直、これ以上手を広げる余裕はないし、清水もそれ以上は望まないだろう。

 

 

「皆も――――、私() あなたに期待してる。……実は コレ滅多に言わないから、……内緒にしててね」

「!」

 

 

清水の笑顔、そして人差し指を口元で立てる所作を見て、ドキッ と心臓が高鳴る。

悪戯っぽく笑う清水。……まだまだ火神には知らない事が多いのだと実感していた。

 

 

「ありがとうございます。……大丈夫です。オレ、これでも口は固いですから。清水先輩の激励の時に、証明出来たと思いますし」

 

 

火神も同じく にっ! と笑って答えた。

ドキドキしたから、ちょっぴり顔が赤くなってるかもしれないが、お構いなく。

 

 

 

「そうだったね。うん。信頼もしてるよ」

「はい! ……あー、後は田中さんや西谷さん達の嗅覚だけが心配ですが………」

「ふふふ。がんばれ」

「!! そ、そこは手を貸してくれた方がありがたいです……」

 

 

 

その後、清水はマネージャー勧誘の為、火神は問題児たちに勉強を教える為、別れた。

 

 

 

 

 

 

―――野次馬の視線が分散していく。

 

流石に、2人の話の内容に関しては盗み聞きするワケにも、そんなに近づけるワケでもないので、解らないが 終始和やかで笑顔を向け合っての対話だったので、男子の大多数が羨ましがりながら。

 

【………爆ぜろ】

 

と口出しかけて、女子たちも。

 

【良いなぁ】

 

と、思わず指を咥えそうになっていたのだった。

 

 

 

 

 


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