王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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火神が日向と同じ中学なのに、烏野の側に家があるのは違和感がある、とご指摘を頂けましたので、1話を少し修正しまして、少6で日向に出会って、無理いって同じ中学に、としました。些か強引な気もしますがそう変更してます 。

これからもよろしくお願いします。


高校生編
第9話 烏野高校入学


――俺に足りないものは、何なのか。

 

 

日向は、自問しているが、もう最初からわかりきっている事だった。自分に足りないモノ。

 

それは、練習、経験、指導者。

 

たった3つ、と思われるかもしれない。でも、それが何よりも重要で、簡単なものなど1つもない。だけど、それらを積み重ね続けていれば、きっと中学の頃の相棒である火神にまできっと届く、追いつけると日向は思っていた。

 

諦めきれず やっぱり渇望するのは背丈。

 

でも それはどう頑張っても届かない。どう頑張っても身長だけは変えられない。バレーボールでは高さがどれ程重要なのかも判っている。それでも、牛乳飲んだり、跳んだり跳ねたり……生きててずーっとしてきたが、効果はいま一つなので、高校生では もう運を天に任せるしかできなかった。

 

なら今、どうするか。

決まっている。ただただ愚直に練習を重ねる、経験を重ねる事。今の日向に できるのはそれしかない。

 

それらを本気で、真剣に考えだしたその時、日向は火神に言われてた事が 本当の意味で分かった。何をするにもまずは基礎。バレーの基礎。それを継続し続ける事。継続は力だ。

 

それを火神に伝えた所、彼は笑っていた。

 

【何度も言った筈だぞ】

 

そういって、笑っていた。

 

 

その日から、例え女子バレー部でも、何一つ文句言わずに 混ぜてもらえるのなら混ざった。

近所のママさんチームでも、そして 1人でいる時も、バレーボールを触り続けた。

 

【ボールは友達。これって 翔陽もどっかでは聞いた事あるだろ? だから、常に触ってた方がいいんだ。バレーっていうのは ボールには一瞬しか触れれない。持つこともできない球技だから。いつ、何処でも どんなボールにも応えれるように。自分の身体の一部って思えるように、ずっと扱ってやれ】

 

火神に言われた言葉だ。ボールの慣れが足りてない、と。ボール遊び自体は 幼少期より、そして あの小さな巨人を見たその日から、ずっとしてきたつもりだった。

 

【実感するのは難しいけど、意識一つ変えるだけで全然違うんだ。今の翔陽がやるのと、前の翔陽がやるんじゃ全く、全然。……常にイメージ。イメトレ。練習中も練習後も、寝る前も起きる時もずっとバレー。少なくとも、俺はそうしてた。だから、今の俺がいるんだ】

 

凄い説得力だった。

あの試合で、火神の隠していた真の力! みたいなのを垣間見た気もしていた日向だったのだが、そういった積み重ねもあって、あれだけの事が出来るようになったんだという事は決して嘘じゃないと思った。

 

気合がものすごく入った日向だったが……、物凄く落ちてしまう所もあった。

 

 

【そういえば翔陽。バレーも大事だけど、まずは受験勉強しないとダメじゃない? 烏野のボーダーラインはそこまで高くないけど、基準超えてる?】

 

 

その一言を頂いたからだ。頼れる我が相棒は、一緒に練習している筈なのに 同じだけ練習している筈なのに、一体いつ勉強してるの? と聞きたくなる程成績が自分より遥かに良かった。(遥かに、と日向は思ってるが、ただ単に日向が悪過ぎるだけである)

 

でも、そこも歯を食いしばって頑張った。 

高校へ行く為に。行きたい所、志望校は勿論――――烏野。

 

 

 

宮城県立 烏野高等学校。

 

 

 

 

【俺、烏野は家からも近いし 日向も行くし 丁度良い】

 

火神もそういっていた。

日向は火神と一緒に絶対入るんだ、と更に気合を入れた。勝てる試合を、勝つ試合を火神とともにするんだ、と。

 

ただ……少しだけ不安もある。

 

練習から勉強まで、やることが多すぎるし、正直パンク仕掛けだったから、改まって聞けていない事。

 

 

 

それは 火神は、高校でもバレーをするか否か、だ。

 

 

 

しっかりと返事はもらえてない。【練習に付き合う】としか言ってくれてない。影山に何か言っていた様だけど、あの時の細かな記憶は日向には無かったから、確定とは言えないかもしれなかった。

ただ、火神は あれだけ出来る。バレーは上手だし、日向との練習にまで、可能な範囲ではあるが付き合ってくれて、指導者の真似事までしてくれて(教えるのは不得手と言ってたが)、それでバレーをしないわけ無い! と日向は思っていたから、聞かなくて良いだろう、と 有耶無耶にしてしまったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして――時は流れ、高校1年の春。入学シーズン。

 

 

 

日向翔陽は、無事に最難関だった受験を突破。大泣きしたのは良い思い出。泣かない、と誓って卒業式でさえ、涙をこらえてたのに。何人かの仲間とは別の高校に行くから、お別れをした。その時でさえ 涙をこらえていたのに。―――その都度、【そこは泣いとけよ】とツッコミを貰ったのも良い思い出である。

 

 

そして とうとうこれた烏野高等学校。

烏野の学生服。烏の名に相応しい真っ黒な学生服に包まれ、片道30分。一山を自転車で越えて、とうとうあの学校へとやってきた。

 

憧れの小さな巨人がいた烏野高校へ。

 

 

 

「うぉ~~い、せいやーー!! バレー部いくぞーーー!!」

 

 

ばんっ! と勢いよく開く1年5組の教室。

因みに日向は1年1組。

我が物顔で他のクラスに侵入してくるのは、部活勧誘の先輩を除いたとしても、今のところ同級では日向くらいだった。

 

「相変わらず元気元気……」

「何黄昏てんだって、ほーら、行くぞ! バレー部バレー部!」

「って、ちょっと待て 俺まだ決めかねてるんだって」

「――――んなっっ!!!」

 

 

今日まで、あの初めての試合、そして敗北を喫したその日から今日まで 聞けてなかった事の答えがこんなあっさり返ってきた。―――それも最悪の形で。

 

 

「お、おいおいおいおい! 一緒にする、っていったよなっっ! いったと言ってくれよな!! せいやーー! みすてないでーーーー!」

「うおおっ、お、落ち着け翔陽! ここ家と違う違う! それに これ見てこれ見て」

 

 

荒ぶる日向を抑えながら見せたのは大量の紙。ファンレター? みたいなのが大量にあった。入学したばかりなのに、この子は もうファンを作っちゃったのですか? と少し落ち着いた日向は、何とも言えない表情をしていた。

 

「ヤメて、その顔」

 

チョップで日向の顔を変える火神。

その一枚一枚を見せる。見てみると……たくさんの部活勧誘に関するものだった。

入学初日から、たくさんの上級生にその体格をみられて、マークされていた模様だった。可愛らしささえ出てる筆跡は女子のものだと解る。年上のお姉さんからの誘いがあったとの事だ。

それを突っ返す等、誰が出来るものだろうか。

 

 

「推薦入学じゃないのに、こんなに貰ってしまってな。一応、全部に顔出すつもりなんだ。スパッと断るの出来てなくてさ」

「うぐぐっ……、さ、最後はバレー選ぶよな!? 選ぶんだよなっ!?」

 

日向が、火神にちゃんと言質取ろうとしたその時だ。

 

「うぉ~~い、火神~~。悪いんだけど、視聴覚室まで来てくれないか? さっき火神にだけプリント配れてないの、そん時に渡すから」

「あ、中村先生。わかりました」

 

火神は、先生に呼ばれたので、席を立つ。

 

「というわけだ。んじゃ、またな、翔陽」

「あ、コラ! まだ聞いてない!」

「早くいかないと、バレー部閉まってしまうかもしれないぞ? まだ 日はあるから明日でもいいとは思うけど」

「うぐぐっっ、そ、それは嫌だ。今日がいい!! くそっ、また来るからなーーー!!」

 

どひゅんっ、と効果音をつけたいくらいの勢いで、去っていく日向。

制服につけている名前 日の名前があるくせに、まるで嵐のような男だった、と思ったのは このクラスの大多数である。

 

 

 

「はは。なんだよ閉まるって。出店じゃないんだから 閉まるわけ無いのに。…………悪いな、翔陽。まだ悩んでるっぽいんだ」

 

 

火神は、頭を何度か掻きながら、教室を出て視聴覚室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間を遡ろう。

場所は、3年の教室が並ぶ3階。

 

今日は一段と騒がしかった。何故なら、3年の各部の主将を中心に 期待待望の新入部員をゲットしようと息巻いて、鼻息を荒くしている者たちが多かったから。非常に暑苦しい事極まれり、ともいう。(失礼だが)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視聴覚室での用事も終わり、戻る。

 

そんな中。3年、2年のバレー部員たちもいた。皆新入部員を楽しみにしていたのだ。……が。

 

 

「澤村。コレ、今んとこの入部届」

 

改めて説明すると烏野高校3年 バレーボール部マネージャー 清水 潔子。

マネージャーの仕事の1つでもある入部届を、顧問に そして主将に渡す。その薄さに哀愁漂わせるのは 

同じく3年 バレーボール部 主将の澤村 大地。

 

「……少ないな。昔はもっと多かった筈なのに……。覚悟してたつもりだが、きつい」

「こっから増えるって、気にすんな大地!」

 

あまりに落ち込む我らがキャプテンを元気づけようとするのは

同じく3年バレーボール部 副主将 菅原 考支。

元気づけて、励まそうとしてるのは間違いないんだが、菅原の表情にも余裕は一切なかった。

それ程、部員の数が深刻だから。

 

そんな中で、ただ1人。少なく薄い紙ではなく、清水のみを見ている者もいた。

2年 バレーボール部 田中 龍之介。

 

「潔子さん! 今日も美しいっス!!」

 

基本的に 3年のエリアには用事はない。ただ、今回の様な重要なイベント。部員を増やす事が出来るかもしれないイベント等では、行き来したりする。田中の狙いは当然ながら清水。

部活の時間以外で顔を合わせる滅多にないイベントだから、逃すはずもないのだ。

 

「………」

 

勿論――今のところ、その努力が実ってるか? と聞かれれば 客観的にはなかなか頷けない。

 

「ガン無視興奮するっス!!」

 

本人は達成感で満ち溢れてるようだが。

 

「はぁ……。田中はいつも元気でいいよな……。ん? あれ?」

「……気付いた? 澤村」

「お、おお。こいつって、まさか……あの?」

「確認取ってる。間違いない」

「……マジで??」

 

落ち込み続けていた澤村の目に生気が戻る……どころではなく、驚愕して目を見開いていた。それを見越していたのか、肯定する様に頷く清水。

 

入部届の中に、知った名があったから。二度見してしまいそうな名があったから。

ただ、驚くのはまだこれでも早かった。

 

 

 

「後、入部届は無いんだけど、もう1人――――」

 

 

 

その清水の言葉で 最初こそは田中以外はお通夜状態だったバレー部のメンバーがお祭り騒ぎになるのだった。

 

 

 


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