王様をぎゃふん! と言わせたい   作:ハイキューw

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第95話 2日目

 

東京遠征2日目。

 

 

今日も気合が上がる。

チームの士気も申し分なし。

 

強くなる為に必要なモノが東京遠征(ここ)に全て詰まっている、と言うのなら尚更だ。

 

青葉城西戦(あの時)の敗北を決して忘れない様に、そしてそれでいて払拭し、乗り越える為に、自分達はここに居るのだから。

 

 

「(――――楽しんだ。昨日は十分楽しんだ。……さぁ、ここからギアを変える(・・・))」

 

 

烏野高校の練習試合1戦目。対戦相手は生川。

まだ序盤も序盤だが、火神は自分にサーブ権が回ってきた所で改めて意識を変えた。

 

それは、ギアを上げる(・・・)――のではなく、変える(・・・)事だ。

 

昨日の練習試合。

決して手を抜いていたワケではないし、当然集中力も力の限り最高ギアに上げていた。

 

そう、思う存分満喫する為に(・・・・・・・・・・)楽しむ為に(・・・・・)

 

 

また1つの憧れに出会えた。

そして、敗北は幾度となくしたが、憧れの背に追いつく事が出来ている事は確信できた。

 

そう――自分達(・・・)がやって来た事は、憧れた世界に通じる事を証明できた。

 

なら、此処からはどうするか。

 

勝ち切る為にも。……もっともっと強くなる為にも。

 

 

 

運命(・・)とやらに勝つ為にも。

 

 

 

 

「――――(…………やっぱ進化、かな)」

 

 

 

 

少々口に出して言うには恥ずかしい台詞ではある、が。考える分は問題ない。

より高く上る為には必要な事だから。

 

 

 

この烏野(チーム)で高く高く昇っていく為には……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火神と言う男とマッチアップして、幾度も無く高揚したのは言うまでもない。

生川の面々も等しく同じである。

 

 

烏野高校とは、殆ど関係性を持った事はこれまでに無かった。

音駒高校との因縁の話はそれとなく聞いていたが、ただそれだけだ。この合宿で初めて交わり……そして直に感じ取った。

 

 

梟谷グループの中で、トップに君臨するのは当然、全国相手に戦い続けている梟谷。

調子にムラが有り、よく暴走したりする危なっかしいエース、木兎が率いる梟谷だが、ここぞと言う時は存分に力を発揮してくれる全国5本の指に数えられる大エースだ。

 

何より、木兎は 相手の強さ故に試合を放棄する様な精神は持ち合わせていない。

 

全国大会優勝チームであり、過去から現在にかけ、優勝候補と常に称されて優勝争いに幾度となく絡み続けている王者 井闥山を相手にする時、木兎のそれは顕著に表れるのを周囲は良く知っている。

 

よく解らない所で凹む事がある分、そこで補っている。

相手が強ければ強い程、他のメンバーが心折れそうな時があったとしても、1人だけでも元気。

 

その元気が如何なる場面でも継続される時こそ―――梟谷がより高く飛び、進化する時だと言えるだろう。

 

 

そして次点に 時にはその爪が梟にも届き得る事がある音駒。

【守りの音駒】と称されているが、侮る事無かれ。その猫の牙、爪を決して侮る事無かれ。

 

その守りは、鉄壁(ブロック)とはまた違う意味を持つ極めて堅牢と言える地の盾。

 

時として、その堅牢な守りは、宙を舞う相手を地面に引き摺り下ろす。

幾度も幾度も攻撃を振るっても……その分拾われる。攻撃が散漫になり、その隙を、僅かな隙であっても 決して見逃さない。

そして、何よりも怖いのが 気付かぬうちに その爪と牙が背後にまで迫っている、と言う事。

 

音駒の守備のエース 守護神(スーパーリベロ) の夜久を筆頭に、満遍なく守備意識とそのレベルが高いのが音駒だ。

 

 

それらをこのグループ内で幾度も幾度も相手してきた生川と森然。

だから、例えどんな相手であっても驚かない。

 

 

―――絶対に勝てるとは言わないが、絶対負けるとも言わせない。それこそ、王者 井闥山であったとしても、冷静に対処しうる自信が夫々に備わっている。

それ程までに濃密な練習を、この仲間たちと行ってきたという自負があるからだ。

 

 

 

だが、この烏野と言うチームは……、これまでのどのチームとも違った。

 

 

 

「くぅ……、あの10番が来た後、今度は11番かよ。そんでもって、後ろで控えてるのも無視なんか出来ねぇし、あのセッターは何一つ読ませてくれねぇ。……頭ん中めっちゃくちゃになりそうだ……」

「……落ち着いて1つずつ処理だ。こちらの攻撃も決まっているし、何よりあの10番の速攻にも反応する事が出来ている。慌てる程の点差も無い。―――常に冷静にだ」

「ったく……。武士か? って思える程の強心臓には毎度毎度感服するよ」

 

 

汗を拭いながら、攻撃の要であるWS(ウイングスパイカー)の強羅と守備の要であるMB(ミドルブロッカー)の伊勢原は短く、それでいて的確な指示で、烏野のビックリ攻撃を徐々にではあるが、対処・対応し出していた。

 

昨日、彼ら生川のみがこの烏野に負け越しているのだ。

他のチーム以上に気合が入っている、と言っても何ら不思議ではない。

 

 

 

「――――さぁ、まずはここ(・・)をどうにかしないとな」

「……だな」

 

 

そして今。

烏野と言う驚きの元でもある、と言える男、火神のサーブターンが回ってきた。

強打か軟打か無回転か、これまた頭を悩ますと言って良いサーブを操る男の。

 

 

「何か、今日の11番…… 目の色が違うっつーか、表情が違うっつーか……」

「うむ。まるで変幻自在か。……二段構えで気を引き締めさせてくれる相手なんて初めてだ」

 

 

初日の脅威は十分満喫できた。

 

強力な数種のサーブを操り、その音駒を思わせる地のレシーブ力、そして空のレベルも極めて高いと言える。

あのとんでもない速攻を成立させる、とんでもない精度のトスを操るあの影山(セッター)も脅威だが、あの火神のスパイクも力ではなく(パワーが無いワケでは決してないが)、読ませてくれない系統のモノだ。

 

ストレートかクロスか、ほんの僅かな時間だが、悩まさせてくれるから更に頭が痛くなりそうだ。

まだ、事読み合いにおいては、パワー系である東峰や田中を相手にする方が幾らかマシだと思ってしまう程に。

 

 

兎も角、先日の練習で十分過ぎる程に警戒に値する男である、と認識した筈なのに、今日はまた様子が違っているのだ。

 

そして、それを気づかされるのも当然の事。

 

本来なら選手の些細な違いなど、木兎の様に解りやすいのを除けば、解る筈なんて無いが、ある意味火神は木兎の様に解りやすいと言わざるを得ない。

 

―――何せ……。

 

 

 

 

【……あの笑顔が消えてる】

 

 

 

 

 

生川に限らず、全てのチームがより一層気が引き締まる思いだと言える。

初日―――あれだけ楽しそうにしていた男の笑みが消えているのだから。

 

勿論、まるっきり消えてると言うワケではない。点を決めたり、仲間が点を決めれば互いに鼓舞し合う。その時に見せる笑み、所謂普通の笑み(・・・・・)はしているから。

 

 

単純に飽きた、とかそんな陳腐な感情ではない事くらい、その様子を見ればよく解ると言うものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな生川と烏野の試合を隣のコートで見ていたのは音駒の指導陣。

 

 

現在、音駒は生川と烏野、梟谷と森然、の試合が行われている為 あぶれている状態なので、より集中して各チームの試合を見る事が出来ているのである。

 

 

―――……が、それももう後少しだけの話。

 

 

梟谷が森然を下し、25点目を獲得したので、次は音駒vs梟谷の練習試合だ。

 

 

 

梟谷相手に、監督陣が散漫になるワケにはいかないので、試合が始まる前の今だけ集中して見ている。

 

 

そんな中、やはり集中的に見るのは烏野高校。

 

 

「いやぁ……、それにしても、まだ会って日も無いので、サスガ(・・・)と言って良いのか解んないですが、……あの見栄えする9・10番コンビの後ろで存在感を出してる11番は、改めて見るとほんと凄いですよね。周りもソレに充てられたのか、負けん気が強い子も多そうで、今日も良い具合に相乗効果が取れてると思います」

「ん~~そうね~~~。以前の鬼に金棒(・・・・)、その後ろに鎮座する大鬼(・・)って、表現が一切間違ってなかった、って今更ながら実感してるよ~。まぁ、あんときは 大鬼がよりすげー 金棒(武器)を持ってるのかと思ったケドね。………選手達も触発されてる。うんうん。心地良い心地良い」

 

 

実に実りある練習が出来ていて、互いにとって まさにWINWINとはこの事だろう。

 

猫又は、烏野の烏養前監督が倒れ、そして話を聴かなくなり、宮城県内のチームの中でも、有力と呼ばれなくなった烏野はもう駄目だ―――と思っていた昔の自分を嘲笑いたい気持ちでいっぱいだ。

とんだバケモノが息を潜めていたのだから。

 

これならば、兼ねてよりの夢であったあの決戦も――――と心躍る気持ちでは居るものの、猫又はそこまで楽観視は出来ていない。

 

無論、自身が受け持つのは音駒であり、烏野ではないのだが、それでも気にかけてしまうのは、嘗てのライバルの存在が、病床に伏したとしても、まだまだ色濃く残るあのライバルの姿が、現監督の孫、烏養 繋心に受け継がれているからだろう。

 

 

確かに、烏野と言うチームは強くなっていると言える。

だが、このままの流れで本当に良いのか? と問われれば、安易に首を縦には振れない。

 

 

「(―――見栄えはする。安定感も出てきた。間違いなくどんな相手でも翻弄出来るだけのものを持っているだろう。………だが、それだけ(・・・・)でいいのか? 烏野)」

 

 

烏野のIH予選の結果は知っている。

そして、あの敗北した試合の動画は見せて貰った。

 

 

「(ただのガムシャラな力、突出した個の力。………無論、例外はあるものの、完成に近づきつつある地力の強さには及ばない事の方が多い。―――バレーは繋ぐスポーツ。繋ぎ切った方が勝つスポーツ。如何に惜敗だろうと、最後の点を獲りきらなければ勝ちに繋がらない。……たった1点。たった1点でも、それは 時として絶対的な差になる事もある。―――そう、敗北(・・)に繋がるんだ)」

 

 

 

青葉城西高校。

白鳥沢に後塵を拝す結果となっているが、かなりレベルの高いチームであると言う事は解っている。

 

例え、どんな不運があったとしても(・・・・・・・・・・・・・)、烏野が負けたという事実は覆らない。

それに―――。

 

 

 

「(―――本当に満足しているのか? 烏野。今の現状のまま(・・・・・・・)で)」

 

 

 

猫又は選手達を見る。

特に見るのは……無論 烏野の上級生達。

 

 

間違いなく一歩、いや何歩か解らない程 前を進んでいるバケモノがチームに2人もいる。

それが 余りにも眩しくて眩しくて―――本来の自分達の立ち位置を理解しているのだろうか。

 

 

 

「(より強くなる為。……その為に、ここへ来たのだろ?)」

 

 

 

人知れず、猫又は烏野にエールの念を送る。

 

最高の試合を、最高の舞台で、最高の状態でする為にも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音駒vs梟谷

 

 

「っしゃああーー! いくぜお前らーーー!」

 

 

「うはー、今日も今日とて変わらずテンションMAXだな~おい」

「ここまでくりゃ、一遍モードチェンジしといた方がガス抜きになりそうだけど? 寧ろ抜いといて欲しい」

 

「って、気合に水差さないでくださいっ! なぁ! 赤葦もそー思うよな!?」

「…………………」

「赤葦!! せめて何か喋って!!」

 

 

梟谷も言わずもがな、木兎1人いるだけで、チーム全体がハイテンションにさえ見えてくるから不思議だ。

 

音駒も十分過ぎる程それは理解している。

何だかんだ、梟谷とは、木兎との付き合いは 同じ東京の音駒が一番長いと言えるから。

 

 

「とりあえず、木兎をしょぼくれさせるには一番ブロックで止めんのが重要だが、調子に乗ってる時のアイツはヤベェのも頭に入れとけよ。リードブロック、きっちりボール見てから動く事。良いかリエーフ」

「うすっ! ん? えー、っとスンマセン、リードブロックって何でしたっけ?」

「トスが何処にあがるのか見てから跳ぶブロックだ。ついさっき、説明したろ?」

「うっす!!」

 

 

元気よく返事するリエーフ。

元気の良さだけは本当に人一倍だ。音駒のデカい日向、と言っても良い位に。あまり元気が良すぎて、色々と素直過ぎて、色々揉め事を起こす事もあるが、それはそれだ。

 

「研磨、リエーフの事たのんだぞ。きっちり見ててやれよ?」

「えぇ………」

「嫌そうな顔すんじゃないよ、音駒の脳」

 

問題児を押し付けられたイメージがあまりにも強烈過ぎるので、中々渋い顔をする弧爪。

普段は、レシーブ陣に過保護にされてきたので、読ませないセッターと言う意味では 影山にも通じる所があるが……こう言う時の表情こそ、読み易いものはないのが孤爪研磨である。

 

 

「さぁ、昨日、セット獲ったのは生川のみ。次はオレらが梟谷に土をつけるぞ」

 

 

黒尾は、ニヤッと中々あくどい顔を全面に出し――――そして、いつもの円陣。

 

血液、酸素、脳を正常に回す為。

 

コート内へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わり、生川vs烏野。

烏野が現在2点リードで点数は折り返し地点。

生川のTO(タイムアウト)

 

 

「飛雄、今の速攻ん時のトスだけど、次やれる時が来たら、出来ればもう後ボール1個……いや、1個半くらい高めで頼めるか?」

「? おう」

 

 

汗をぐいっ、と拭い影山に注文するのは火神だ。

これは少し珍しい光景でもある。

 

「誠也、もっとジャンプできる! ってヤツなのか?? 実は隠してた力があった、みたいな??」

 

それに人一倍食いついたのは日向。

勿論、言い方は違えど、皆が思っていた事、聞いてみたかった事と大体同じだ。

 

何せ、影山の精密トスを一度でも味わえば……誰でもそう思ってしまう。

ここ一番、ここしかない、と言った地点にピンポイントで合わせてくるのだから。

月島の様に、自身の考えとトスのパターンが違っていれば言う事もあるだろうが、今回は何だか違った。

 

「うんにゃ? 常に全力全開だ。てか、そんな余力残してられる様な余裕のあるチームなんていないでしょ、東京(ココ)には」

 

ごもっともな答えが返ってくる。

生川、森然、勝ち越している相手とはいえ 数度戦ってみてその強さは解っているから。

 

「じゃあ何で高めにすんの? あ、1人時間差! ってヤツか!?」

「オレ、速攻(・・)って言ったし。それに今の攻撃の何処が1人時間差なんだよー、って 一応ツッコんどく」

 

普通に速攻。早い攻撃だった。如何に日向であってもそれくらい解るだろう、と火神はチョップ。

 

「折角の練習試合(・・・・)。色々と試してみたい。でも、ボールが高くなるって事は届かない可能性だってあるワケだから……」

 

火神は日向を見ていた視線を、他のメンバーに向けた。

 

 

「フォロー、お願いします!」

 

 

と言って火神は頭を下げる。

火神が言わんとする言葉、その意味は言われるまでも無く解る。寧ろ、言う前から何を言うか、それさえ解っていたかもしれない。

 

 

【任せろ】

 

 

ニッ、と笑顔を向けて、特にレシーバー陣、西谷を筆頭に強く胸を叩いていた。勿論、レシーバ―陣だけでなく、東峰や田中、交代でちょくちょく入替ってるメンバー全員もれなく同じ気分だった。

 

 

「……成る程」

 

 

烏養はそのやり取りを後ろで見ていて、1人納得する。

ただ、武田は やはり解らない様子。

 

「んん、ボールを高く上げる、と言う事は……その、早い攻撃の場合であれば、空振りをしてしまう可能性が高くなる、と言う事では無いのですか……?」

「ああ。その通りだぜ先生。特に影山からのトスを受け慣れてたら、たった数センチの差でも、困惑しちまう可能性だってある」

 

ニッ、と笑みを浮かべながら烏養は続ける。

 

「まぁ、今は見守っとこうぜ」

 

そう締めるし、烏養は選手達に声を掛けた。

 

 

「火神の言う通りだ。……折角の貴重な練習試合。見つけられるもん、出せそうなもんは、各々で探っていけよ。勿論、変な真似したら、遠慮なく激は飛ばしてやる」

【アス!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして笛の音が鳴ると同時にTOも終了。

中断されていた試合が再開される……と、コート内へと向かおうとしたその時だ。

 

 

音駒vs梟谷のコートの方で、一際大きな声が響いてきた。

 

 

 

「上がった!!」

「ナイスレシーブ!!」

 

 

木兎のストレート打ち。

それを見事に上げて見せたのは 海。

 

木兎は当たりは悪く無かった、決まる手応えだったというのに、拾われた事に対し。

 

「っっ~~、くっそーー! 化け猫レシーブっ!」

 

何度思ったか解らない感想をまた、口に出す。

音駒と言うチームのレシーブ力に関しては、木兎もより解っているからこそだ。

 

 

 

今度はこっちが止めてやる番、と思っていたのだが……、今の音駒は守りだけではない。

 

 

「上がった研磨!! カバーだ!」

「レフトレフト!!」

 

 

如何に守りの音駒と言えど、スパイクをレシーブ、ディグして確実にAパス……と言うのは難しい。それが木兎のスパイクとなれば尚更だ。

 

やや、アタックラインより外側の位置。比較的近い距離で助かった。

 

近かろうが遠かろうが、この時ばかりは 孤爪も相応に動かなくてはならないのは当然。

あまり沢山動くのは好ましくない、と言うスポーツ選手にあるまじき感性な弧爪だが、仕方ない、と割り切って出せる範囲内で早く落下点に入り、ボールを無難にレフトのトラに上げようとしたその時だ。

 

 

「オレに寄越せェェェェ!!」

 

 

突如、一際大きな、先ほどのレシーブを上げた時よりも大きな声が響いてきた。

ライト側に向かって猛然と駆け出しているリエーフの姿がそこにあった。

 

 

「!?」

 

 

突然の注文に、孤爪は訝しむ顔を向けるが、狙いとしては悪く無い。

相手ブロックも間違いなく間に合わない、と総合的に判断し、少々冒険が必要になるが、リエーフの言う通りにトスを上げる。

 

 

リエーフは、身長も高いが、その手足の長さも勿論ある。

一歩踏み出すストライドが、他の選手のそれよりも遥かに大きい為、 ヨーイ、ドン! で走ったとするなら、確実に置いて行かれてしまう。

 

 

その結果が、この攻撃に出た。

 

高打点から鞭の様なスイングで繰り出されるスパイクが相手コートに突き刺さった。

ブロックを置き去りにした移動攻撃(ブロード)である。

 

 

 

「「!!」」

 

 

 

丁度、その場面を烏野の面々は見たのだ。

レベルの高い梟谷のブロックを置き去りにしたリエーフの攻撃を。

 

 

そして、見事点を決めてのけたリエーフはと言うと。

笑顔だったのだが、いつの間にか鳴りは潜め。

 

「あ、研磨さん、タメ口すんません……、調子こきました」

 

神妙な顔をしていた。

普段素直過ぎるが故に、結構な頻度で怒られているから、ある程度の処世術を学んでいるのだ。

 

学んではいても、正直まだまだだ。

何せ使う相手を色々と間違えているから。

 

「そういうのいいっていつも言ってんじゃん」

 

孤爪は、そういうのは気にしない性質だから。

そして、孤爪にとって、気にしてもらいたい所はそこではない。

 

 

「それより、移動攻撃(ブロード)なんて突然言われても困る。(オレが困っちゃうからこそ、相手の意表をつけたんだとは思うけど…………イキナリは嫌)」

 

 

突然言われて、それを器用にいつでも合わせれる程の技術を孤爪自身が持っているワケではないし、何より、孤爪が言う通りイキナリのぶっつけ本番は勘弁してもらいたいのだ。

 

 

リエーフはそういうところを見つめなおしてもらいたい……とも思ったのだが、どうやら無理そうだ。

 

 

「今の、ブロードって言うんスか! カッケーー!!」

 

 

移動攻撃、ブロードの響きの方に感動している様だから。

それを使うまでの過程の話をしていたつもりだった孤爪だが、言い直したり言い聞かせたりすることなく、そのままスルーをする方向性で。

そんな弧爪を見て、リエーフは真剣な顔つきになる

 

困る、とは言われた事は解ったが、今のトスは十分打ちやすかったし、何よりも梟谷相手に点を獲る事が出来たんだ。

 

 

「でも、できたじゃないスか。ぶっつけ本番でも」

 

 

してやったりなリエーフの顔付きに、少々イラっ、としたのか、孤爪はネコの様に目を細めて睨みつけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶっつけの移動攻撃(ブロード)だったのかよ……」

「身体を操る、センス、ってヤツかな。後 精神面にもあると思う。【絶対オレが点を獲る!】 って気持ちが強烈に強い」

「………ああ。見たまんまだな」

 

 

影山もリエーフのセンス、少なくとも攻撃面においてのバレーのセンスの良さは、解っている。守備面は、あの音駒なのに……悪い意味で目立つので解っている事だが、それを差し引いたとしても、あの攻撃力は脅威の一言だ。

 

守備が突き抜けていても、攻撃力が平凡である、と言うのが音駒の印象だった。

どう守備を崩すか、あの守り相手にどう繋ぎ勝つか、だったが、この合宿にして認識を改めなければならないだろう。

 

 

「………センター、……エース」

 

 

日向は、そんなリエーフの背をじっと見つめていた。

 

 

そして、昨日言っていた言葉が頭から離れない。

 

 

 

【オレは音駒のエースだから】

 

 

 

エースである事に対する強烈な自尊心(プライド)

 

それは、冴子にも聞いていた事だが、小さな巨人にも備わっていた。

あの度胸満点、相手が誰だろうが、ぶちかます! な強靭な精神を持ってる冴子を恐れさすほどに強烈なインパクト。

 

強いその想いが、あの様な攻撃を生む結果になったのだろうか……と、日向は 生川の試合が始まると言うのに、声を掛けられるまで暫くリエーフから目を離せないでいた。

 

 

そんな日向を見ているのは猫又。

 

 

「(―――自分の限界値を決めつけていないか? ……言った筈だ。お前たちは 粗削りではあるが、圧倒的な潜在能力(ポテンシャル)を秘めている。―――それをそのままにして、今のままで良いのか? ただの安定で良いのか? ――――それとも)」

 

 

 

猫又の口端がゆっくり吊り上がる。

ぎょろっ、と開いていた細い目が再び薄く閉じ、微笑む。

 

 

 

 

 

 

「進化するか、だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

求めるのは、安定した強さか。……或いは、更なる高みへと飛ぶ為の進化か。

烏野がどちらを選ぶだろうか。

 

 

 

「―――ふふふ。今回、鍵を握るのは、あの子かもしれんな」

 

 

猫又はそう呟くと、再び梟谷との1戦の方へと集中するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、練習試合も進んでいき、試合相手も変わる。

 

 

 

 

音駒vs烏野

 

 

 

通算3セット目。

前日の戦績が2-0で負け越している相手の内のひとつ。

 

 

 

今日も景気よく日向・影山の変人速攻が場を荒らす。

 

 

如何に守りの音駒と言えど、完璧にあの攻撃を見切るなんて出来るワケも無い。

基本スロースターターと言って良い。徐々に整えだし、隙を作らず、守り勝つのが音駒だ。故に序盤は、日向・影山の変人速攻に限らず、攻撃がよく通る方なのだ。

 

……が、それでもとんでもない代物なので、見栄えする事には変わりない。

音駒のMB(ミドルブロッカー)であるリエーフも、もう何度目になるか解らないが、やはり驚きを隠せれない。

 

何せ、自分より遥かに背が低い日向が、30㎝も低い日向が、気付いたら 自分の上にいて、ボールを地に叩きつけているのだから。

そして、日向の攻撃を意識し過ぎると、火神や他の攻撃に打ち抜かれてしまうから、止めると豪語していたリエーフだが、序盤から 直ぐにとはいかなさそうだ。

 

 

「くっそっ! すっげぇ!!」

 

 

少しでも遅れれば、この小さな烏の攻撃は止められない。

 

音駒はその少しをどう縮めるか、そして烏野は如何に翻弄するか、だ。

前日は音駒に軍配が上がった。

だが、本日はどちらか。

 

 

――地に下ろそうとするネコが勝つか、空から場を支配しようと羽ばたくカラスが勝つか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やはり、烏野の10番は速攻を打つ瞬間、目を瞑ってますね。……例え開いている時も、ボールを一切見ていない、と言うかボールを意識してないと言うか」

「むん……、あの神業の様な速攻の正体はセッターの超絶技巧、と言うワケだ。末恐ろしい…… と言えるが、……正直、オレはあの11番のオールラウンダーぶりの方がもっと恐ろしい」

「ぅ……それは確かに。あの速攻、何度か触れ出してますから、もう直慣れが見えてくる頃です。少なくとも合宿終盤には、気持ちよく打てるとは思えませんが」

 

生川の監督陣は烏野をそう称する。

強いのはもう解った。此処からどう攻略していくかにかかっている。音駒は元々守備特化とも言えるから、攻撃特化である烏野とは相性が良い、と言えるのだが……、ふとした時に忘れてしまいそうになるのがあの11番、火神の存在だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレだ!!」

「大地さん! ナイスレシーブ!」

「ナイスレシーブ!」

 

 

音駒のサーブ。

守備力の高い澤村が安定したAパスで影山へと返球した。

 

影山の指揮。

ライト、レフト、センター、バック、ここからの選択肢の多さを考慮すれば、実に多彩な烏野の攻撃が音駒を仕留める可能性の方が高いと言える。

極めつけは、日向を攻撃としてではなく囮として活用すれば、ブロッカーだけでなくレシーバーにも 更に混乱させる事が出来るだろう。

 

 

「ッ!!」

 

 

日向は駆け出した。

脳裏に浮かび続けるのは、リエーフの言葉。

 

 

【一番沢山点を捥ぎ取った奴がエースだろ】

 

 

単純極まりない事だ。

点はリベロ、そして例外を除き、基本攻撃の司令塔でもあるセッター、2つのポジションを除けば、基本どのポジションでも取る事が出来る。

 

エースと言う定義は何か? 

最後にボールが集まるのがエース?

何故、最後にボールが集まるのだろうか?

 

 

決まっている。点を獲る事が出来るから。

 

――― 一番、点を獲る事が出来るから。

 

 

リエーフの言う通りだ。

 

 

日向は気合を十全に出し、持ち得る全てを出す。

 

ブロッカーが居ない所にただ走っていくだけではない。

日向のバネ、瞬発力を使うともっと攻撃の幅が広くなる。

 

 

「ッ!!」

「!?」

 

 

真ん中に陣取っているリエーフ目掛けて突っ込んでいった! かと思えば、直前に日向は斜め右に向かって跳躍した。

 

 

「(AからCに跳んだ………)」

 

 

日向の変人速攻を意識し過ぎていると、この手のサイドへの高速跳躍を逃しやすくなってしまう。

突っ込んできた時の日向の威圧感が、正面からくる、と強くブロッカーに思わせ、その結果、まるで足に根を下ろさせたかの様に、横への移動を疎かにさせるのだ。

 

 

リエーフもこの動きには驚いたが、――――― 一切怯みはしなかった。

 

 

日向が、直前に動いたのであれば、自分もそれを追いかければ良いだけだから。

 

 

あの194㎝と言う長身からは考えにくい反応速度で日向の横の動きに付いて行くと、後は持ち前の背のデカさ、手の長さを最大限に活かしたブロックで止める。

 

 

 

ドパッ!!

 

 

「――――ッ!」

 

「あっ……」

 

 

 

日向の脳裏に、あの青葉城西戦で光景が思い返された。

最後の最後、ブロックに阻まれたあの時の記憶を。

 

 

「っしゃあああ!!」

 

 

リエーフの声も聞こえてくる。

そう、あの時も最高の跳躍で、最高の一撃を打てた筈だったのに―――止められた。

今回も止められ―――ボールは地に………。

 

 

 

 

 

 

「んんんッッ!!」

 

 

 

 

 

 

落ちる事は無かった。

今回()違った。

 

 

後ろに居る西谷では追いつけない。

ライト側で囮に入っていた火神が、リエーフが反応したその瞬間、日向のフォローへと回っていた。

 

あの日向に誰もが意識が集中する中、あの日向を止めたリエーフに意識が集中する中で、誰よりも目立たずに、誰もが驚くレシーブを魅せた。

 

 

 

 

【うおおおおおおお!!】

「うはーー! ナイスレシーブ、ナイスレシーブ!!」

 

 

 

それは烏野側か、音駒側か、どちらか一方ではない。どちらからも大声援が飛んだ。

 

 

 

 

 

 

「これだ。これがあるんだよ……」

「ええ。烏野の最大クラスの武器を防いだ! 大砲を防いだ、やった!! と、思った途端に、逆に地に引き摺り降ろされた様な感覚がするんですよ。………盛大にカラ回った感覚を植え付けられてしまうんですよね」

 

スーパーレシーブと言うモノが、どんな攻撃よりも一番会場が沸くのは良く知る事。

 

だが、それは強い攻撃……スパイクやサーブと比べたら明らかに起こる頻度が少ないと言えるからだ。

バレーは失点を確実に0にする事は出来ないスポーツだ。

だから、攻撃の方が圧倒的に決まる方が多いと言うのに、ここ一番、ここぞと言う時にリベロ顔負けのレシーブを魅せる。

 

 

「未来でも見られてるか? そんでもって、その未来に連動して動く身体を持ってるって事か?」

「や、流石にそれは………。それされたら、きっと梟谷だって音駒だって、昨日負けてますよ」

 

 

 

 

 

魅せられるプレイには、思わず身体を熱くさせるが、それ以上に苦笑いが止まらない生川監督陣だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそーーー! 日向の攻撃叩き落せたと思ったのに。うわっ、っしゃーー、とか言っちゃったよ!」

「落ち着けリエーフ。今度はお前が止める番だ」

「解ってまっス!!」

 

 

 

火神に拾われた事に憤慨するリエーフだったが、直ぐに横から後ろから激の声が飛んできて、何とか気を落ち着かせる。

 

拾われたからなんだ、何度でも止めれば良い、と。

 

そもそも、リエーフが所属しているのは音駒だ。……普段から、何度も拾われる場面は見てきている筈なのだ。

 

 

「ナイスレシーブ!」

「っ、シッ!! 影山ッ!!」

「!」

 

見事なレシーブを魅せた火神だったが……、上げただけで満足するワケも無い。

直ぐに立つ。直ぐに立つ事を強くイメージ。

 

ボールはAとは言い難いが、十分。影山であれば十分セットできる範囲内であり、高さだ。そして幸運にもボールが上がった高さが十分過ぎる程あった為、火神を攻撃に参加させるだけの時間を作った。

 

 

「来いッ!! 止めてやる!!」

 

リエーフは、それらを見てまず間違いなく火神に上がる! と判断。

熱くなり過ぎてる、と判断し 火神以外の他に託しても良い場面だと言えるが、火神に呼ばれた影山の選択肢は1つだった。

 

ライト側への高めのトス。

 

 

「(あの早い速攻じゃない……、追いつく!!)」

 

リエーフは、影山のボールを見て先ほどの日向へのトスに比べたら断然遅い、と判断。

十分追いつけると火神の正面へと持ち前の速度で移動し、手を大きく上へと出した。

 

火神は、視界の中に入ってくるリエーフのブロックをはっきり見ながら……思う。

 

「(リエーフ。確かに反応速度がヤバイ。デカいのに素早い。それに高校から始めたって事を考慮しても、あの伊達工と比べたって全然遜色ないだけのモノを持ってる……! もちろん、そんなの知ってたけどなっ!! だれよりも!!)」

 

 

空中での時間は、ほんの僅かな筈なのに、高揚する気分が体感時間を圧縮させるとでもいうのだろうか。

地上()から見ていた日向は、いつもよりもずっと長く感じた。

 

 

そして、その視線を―――火神も感じている。

 

 

「(翔陽―――床にたたきつける(・・・・・・・・)だけがスパイクじゃない(・・・・・・・・・・・)ぞ、ってな!)」

 

 

火神は視線をリエーフの左手の先にロックオン。

リエーフは反応速度やセンスは確かにずば抜けているが、技術はまだ無い。

 

それは、ブロックにも言える事だ。

 

「ッ!!!」

 

 

ドッ!! バチッッ!!

 

 

「シッ!!」

「あッ!!? わ、わんたっ……!」

 

 

それは、ワンタッチを取った、スパイクの威力を削いだ、と言ったモノではない。

明らかに狙われた一撃。ブロックアウトを取る為の攻撃。

 

 

「くっ、そっっっ!!」

 

 

一番先に気付いたのは夜久だった。

スパイカーの様子を、そしてブロッカーを見てコースを先読みする。リベロとしての当然の嗜み。どのコースを打っても対処できるようにレシーブ陣は身構えていた。

 

だが、それでも気付くのが遅すぎた。

寸前まで、真っ向勝負の様に見えたから。

 

 

ボールを追いかけるが、届かない。遥か後方へと吹き飛び……そして落下。

 

 

 

 

「「「「しゃああああ!!」」」」

「「「「ナイスキーーー!!」」」」

 

 

 

この点に関しては、音駒ではなく烏野に歓声が沸き、点を追加された。

 

 

 

 

「は、はふぅ…… あ、あの日向君の速攻をこんなに早く止められた……、って驚いちゃったと言うのに、それを火神君が、取って、きめて…… ど、どこをどう驚いたら良いのかわかんなくなっちゃって……」

 

驚きの連続は勿論、外部にも影響する。

武田は、日向の速攻が止められた時、思わず立ち上がり、唖然としていたのだが……続く火神のレシーブに目を見開き、そのまま攻撃で点を決めた事にも驚いた。

間違いなくシャットアウトされて、取られた、と思ってしまったからだ。

 

 

「1個ずつ説明すっぞ……」

 

 

説明を始める……と言った烏養だが、実の所 武田と変わらない。

烏養は、武田よりも経験があり、バレーの経験者だからこそ冷静に見極められただけであり、心情部分は武田と何ら変わらない。

 

 

「まず、日向が止められた事。ありゃ、前回の練習試合からそうだが、音駒はあの速攻へ対処が優れているからだ。加えて、あの新入りMB(ミドルブロッカー)身長(タッパ)プラス反応の速さがスゲー。そんでもって次だ」

 

 

烏養は、生唾をゴクッ、と飲み込んで続けた。

 

「本来の音駒なら、知っている(・・・・・)音駒なら、あの火神のレシーブにも驚かなかったかもしれねぇのに、あの一瞬、反応が一歩遅れていた。……そんだけ、あの新入りのブロックは完璧に近かった。点を獲った、って寸前まで思ってても不思議じゃねぇし。それを、そんなブロックを火神(アイツ)は拾った。音駒でも一瞬点を獲った、って思わせるブロックを拾ったんだ」

 

火神の反応の良さ、ブロックフォロー等の守備力はチームでもトップクラスである事は知っているが、それでも何度でも舌を巻く。

 

 

「よく反応したな、火神!」

「やるじゃねぇか! 誠也! オレじゃ届かなかったぜ、今の!」

「アス!! あたりをつけてたトコに来て助かった、だけだったりするんですけどね」

「それでも十分すげーよ! ……負けねぇからな! 次はオレだ!! オレも守り勝ぁぁぁつッッ!! 負けてらんねーですよ! 大地さん!」

「ああ、勿論だ!」

 

 

リベロの西谷が、そして澤村もライバル視をしているのが良く解る。

 

 

 

「……そんで最後だ。あの火神のスパイク。音駒は全員が満遍なくレシーブ力、守備力が優れているからな。正直、ここだ、って決められる穴なんか無ぇって思った方が良い。………そいつを瞬時に見極めたってのか、火神はブロックアウトって手を取った。ブロックは1.5枚。十分打ち抜けるスペースはあったってのによ」

 

最後まで言い切った所で、烏養はドサッ、と腰を下ろす。

 

「な、なら、あの手を狙ったスパイクは ぐーぜんではなく、火神君は狙って打った、と?」

「ああ。十中八九な。自分自身が万全の体勢じゃなかったってのもあるかもな。それに、コースが開いてるって言ったって、相手は音駒だ。……普通に打ってたら、拾われてた可能性の方がたけぇよ。唯一の死角が大きく外へ放り出す事。……反応の速さはスゲェけど、ブロックの技術はまだ粗削りな所が見えるからな。そこを狙ったのか」

 

 

烏養は、そこまで言うと今度は大きく息を吸い込み、そして吼える様に声を出した。

 

 

「ナイスだ火神!! ナイスフォローだ!! んでもって日向ァぁ! 引き摺んなよ! 相手は音駒だ! 変人速攻慣れしてる相手だって事、改めて頭ん中入れとけ!!」

 

【アス!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員の気合の入った返事を聴き、烏野がまた1歩前に出た瞬間だった。

 

 

そして――――。

 

 

 

「仁花ちゃん、息。とりあえず、落ち着いて ちゃんと息しようか?」

「はひゅっ、はひっっ!! ふぁ、ふぁいっ!!」

 

 

 

日向の一撃を止められてしまった―――と少なからず動揺していたのは谷地。

そして、武田同様、そこからの怒涛の展開に頭が追いついて行かず、驚きに驚きを重ねてしまって……過呼吸? 無呼吸? になってしまっていて顔が凄い事になってしまっていたので、清水が支えていた。

 

勿論、AEDや救急車を呼ぶ様な事態ではないのであしからず。

 

 

「凄いっす!! た、ただそれだけっす!!」

「ふふ。……うん、凄いよね。とても」

 

 

清水は何処か誇らしそうに胸を張った。

火神誠也とは、何せ―――期待する大型新人(スーパールーキー)なのだから。

 

 

 

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