ありふれた脇役でも主人公になりたい   作:ユキシア

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脇役32

目を覚ますと視界いっぱいに銀色が映る。

(ああ、そっか……)

その美しい銀色の髪の正体は昨夜、浩二と共に一夜を共にして肌を重ね合ったティニアが浩二に寄り添う態勢で眠っている。

(いっぱいしてくれたもんな……)

普段のクールビューティーとは思えないほど積極的で情熱的な奉仕を行ったティニアは珍しくも浩二に寝顔を晒している。

その無防備なまでの寝顔は芸術のように美しく、思わず手を伸ばしてその頬に触れてしまいたいほどだ。

(本当、美人だよな……俺なんかには勿体ないぐらいに)

けど、ティニアはそれでも浩二を選んだ。

浩二には雫という〝特別〟がいる。それでも浩二を諦めることなく想いを寄せて貞操を捧げた。どれだけ浩二の事を愛してくれているか、その想いの大きさが伝わるほどに。

だからこそ浩二は日本の常識も価値観も捨ててティニアの想いを受け入れたいと決めた。

例えそれが順序を無視し、様々な過程をすっ飛ばしたことになっても浩二は自分の気持ちを優先する。それが我儘だとしても、色々と問題が発生することがわかっていたとしても、自分の気持ちを優先し、正直に生きると決めた。

だからこそティニアを抱いた。浩二自身がそう決めたから。

(俺は脇役かもしれない。主人公(南雲ハジメ)のようになれないかもしれない。だからこそ俺は俺の道を行く。こんな最低な男を信じて、愛してくれる人達の為に……)

そっとティニアの綺麗な銀髪を撫でる。すると、ティニアは目を開ける。

「おはようございます。浩二様」

「おはよう」

目を覚ますといつものクールビューティーな表情となるティニアは薄っすらと笑みを浮かべる。

「浩二様は意外とケダモノでしたね。何度失神しかけたかわかりません」

「俺だって驚いてるよ……」

浩二自身も自分の新たな一面を知って驚いた。けれど、初めてだからそれも仕方がない。

(ヤっている時、人が変わる人はいるって聞いたことはあるけどまさか俺もそうだったとはな……)

知識としては豊富。けれど百聞は一見に如かず。経験に勝る知識なし。浩二は己の新たな一面を知ったのだ。

(いや、もしかしたら色々なモノを身体に取り込んだからその影響も出ているのか?)

もう既に肉体の8割は人間ではない。改造に改造を重ねた今の浩二の肉体はほぼ改造人間(サイボーグ)だ。肉体を改造した結果、そちらの方面にも何かしらの影響が出ているのかもしれない。

(今度、詳しく検査しよう)

暇が出来たら自身を精密検査しようと考えていると、ティニアがその豊満な胸を浩二に押し当てる。

「浩二様。朝のご奉仕は必要ですか?」

ティニアの視線の先には朝特有の生理現象を起こしているとある場所に向けられて、それを見たティニアは「私のご奉仕が不足だったようですね……」と妖艶な微笑を見せる。

それから先の展開は想像の通り。

敢えて言わせて貰うのなら朝に出した方が男性には健康にもいいそうだ。

 

 

 

 

「あらあら、昨夜はよく眠れましたか?」

少し遅れてリビングまで足を運ぶと微笑ましい顔を浮かべているレミアが朝一番にそう言ってきた。その笑みは昨夜、二人が何をしていたのかを察している笑みだ。

「旦那様、今夜は私ですよ?」

それとは別にエフェルは少し不服そうにそう言ってくる。どうやら浩二の最初の相手に選ばれなかったことが不服だったようだ。

「ああ、わかった」

浩二はそれを断ることなく了承した。二人を受け入れると決めた以上はティニアだけじゃなくエフェルもちゃんと相手をする。

(まぁ流石にこれ以上増えることはないだろう。主人公(南雲ハジメ)じゃあるまいし)

ティニアとエフェル。二人の美女と関係を結べただけでも浩二にとっては奇跡に等しい。だからもう二人のように浩二に惚れる人は現れないだろうと踏んでいた。

そんなフラグ染みたことを思っているとこの場にもう一人、姿を現す人がいる。

「目が覚めたか? イリエ」

「……うん」

浩二の改造の技能のおかげで見た目は人間族のようになっているもその実は魔人族のイリエは若干、皆と距離を取っているが浩二がイリエの手を掴む。

「ほら、さっさと飯にするぞ。俺達の仲間になった以上はやることもあるからな。朝の食事は大事だからしっかり食べろよ?」

「わ、わかった……」

こうしてレミア、浩二、ティニア、エフェルそしてイリエと同じテーブルで一緒に食事を取り始める。

(……不思議な人間)

食事を口に運ばせながらイリエは視線を浩二に向ける。

ティニアとエフェルに食事を食べさせられ、その光景をレミアは微笑ましく見守っているという穏やかな日常。もう見ることはないと思っていたその光景とその中心にいる浩二を見てイリエはそう思った。

(敵同士なのに殺さないなんて……)

人間族と魔人族は何百年も戦争を続けている。二つの種族の境には数え切れないほどの死と怒りと憎しみに満たされ、出会えば殺し合うほどに憎しみ合っている。

イリエ自身も魔人族の兵士として数多くの人間族を殺している。だから浩二に出会い、協力を求めるのは一種の賭けだった。

最悪の場合は出会ってすぐに戦闘も視野に入れて話を求めた結果、仲間になることに成功した。その経緯で奴隷になることも覚悟していたが、今は何の拘束もされずに正体さえ隠してくれている。

浩二自身に何のメリットもないのに……。

(あたしにはこの人間がわからない)

けど、命を大事にしろと言われたその約束は守る。イリエ自身、どこまで守れるかはわからないけどそれが浩二の仲間でいられる条件としたら安いものだから。

 

 

 

「平野様! 平野様はおられますか!?」

昼頃、いつものように【エリセン】に住む人達を診察していたら一人の海人族の兵士が慌ただしくも浩二の元まで駆け付けてきた。

「どうかしましたか?」

「ど、どうかご助力を! 正体不明な船と謎の不審者が停泊場に! 仲間も負傷している者が多く、お力添えを!」

「正体不明な船と謎の不審者……? ああ」

(やっと到着したのか……)

海人族の兵士の言葉にようやくか、と思い兵士と共にその場に向かうとそこには一触即発のような空気を漂わせている海人族の兵士達と主人公(南雲ハジメ)達がいた。

それを見た浩二は小さく溜息を吐いて二人の間に割って入る。

「はい。そこまで」

「平野様!?」

「ん? 平野? なんでお前がここにいやがる?」

いる筈のないクラスメイトに怪訝な顔を浮かべるハジメに駐在部隊の隊長格である男は鋭い眼をハジメに向ける。

「貴様っ! 我々はともかく平野様になんて口の利き方を!? 平野様がこの町に訪れてからどれだけ我々海人族の皆を無償で治療してくださったことか!!」

(……無償じゃないけどね)

実際は治療費や必要経費は全て国が負担してくれている為に無償ではない。

「落ち着いてください。それとこの人達は敵ではありません。この人達の安全は俺が保証します」

「し、しかし……いえ、平野様がそうおっしゃるのでしたら」

浩二の言葉に渋々ながらも頷いて矛を収める。それに一息ついて浩二はハジメ達に視線を向ける。

「南雲達も久しぶり、でもないか。【ホルアド】で別れて以来だな。ところで香織はどうした?」

「ああ、それなら」

「ん? 今なにか……」

ハジメは香織達はアンカジにいることを浩二に伝えようとした時、シアがウサミミをピコピコと動かしながらキョロキョロと空を見渡し始めて、ハジメも浩二もうっすらと声と気配が感じられた。

「―――ッ」

「あ? なんだ?」

「―――パッ!」

「おい、まさか!?」

「――――パパぁー!!」

「うわぁ……」

空から両手を広げて満面の笑みで自由落下している幼女がいた。

「ミュウッ!?」

パラシュートなしのスカイダイビング。その幼女の背には黒竜と香織の姿が見えた。

ハジメは自由落下しているミュウを認識すると否や〝空力〟と〝縮地〟を発動。その場から一気に跳躍して空中でミュウを腕の中に収めた。

(原作で知っていたとはいえ、ミュウちゃんの胆力は絶対に四歳児じゃないな……)

呆れと感心半々でそう思った浩二。すると騒ぎに気づいたティニア達が浩二の元へ駆けつけた。

「あれはティオ様!? どうしてここに!?」

黒竜姿のティオを見てエフェルはまさかの再会に驚きを隠せれない様子だ。

「香織様もいらっしゃいますね」

ティニアも顔見知りである香織の姿を発見した。

こうして浩二は主人公(南雲ハジメ)達と合流することができた。

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