ありふれた脇役でも主人公になりたい   作:ユキシア

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主人公14

光輝と浩二の戦いの後でリリアーナはハジメに王都の防衛態勢が整うまで滞在を求めるもハジメはそれを拒否するも大結界の修理だけは了承した。

そして今回の一件で己の力不足を痛感した雫達は神代魔法を手に入れる為に大迷宮への同行を求めた。これは浩二の口添えもあってハジメはあっさりと承諾したのだが、腹の中では光輝達を肉壁兼囮扱いにしようとする企みもあったがそこはスルー。

そうしてハジメが大結界の修復に向かっている少しの間でも強くなろうと早速訓練に励んでいる。

特に龍太郎と鈴は死に物狂いと言っていいほどに必死だ。

「うん、やっぱり改造……‶魔力操作〟を覚えようか」

その指導役兼訓練相手として訓練に励んでいる龍太郎達を見て浩二はそう言った。

「今、改造って聞こえたんだけど鈴の気のせい……?」

「安心しろ、鈴。浩二に限ってそれはねえ」

改造するなら改造する。例えそれがクラスメイトだろうと幼馴染だろうとも変わりない。そんな龍太郎の発言を気にも止めずに浩二は説明を続ける。

「‶魔力操作〟はその名の通り魔力を直接操作するから詠唱も魔法陣も必要ない。これからの戦闘を考慮するならそっちの方がいいだろ?」

「でもそれって魔物の力じゃ……あ、だから浩二くんとカオリンはあんなにすぐに魔法を発動することができたのか」

ほぼ無詠唱で魔法を発動させて勇者パーティーを支えてきた浩二と香織だが、ほぼ無詠唱ではなく無詠唱だったから魔法の発動速度が他の比べて異様に早かったことに鈴は気づいた。

「鈴の言う通り魔力を直接操作することができるのは魔物だけだ。俺は自分を改造してその技能を手に入れたが魔物の力を持つ人間ということが他の人達、特に教会に知られたら厄介だったから隠していた。とはいえもう隠す必要もない。むしろこれからのことを考えれば必要な技能だとは思ってる。特に鈴、‶結界師〟であるお前には必要な技能だろう?」

「……うん」

天職‶結界師〟。守りを生業とする者として結界の発動速度は自分だけではなく守る者達にも影響を与えてしまう。いちいち詠唱して発動するよりも魔力を直接操作して発動させた早いし効率もいい。

そこで浩二が「ちなみに……」と言って。

「既に光輝はその技能を獲得して俺と訓練しているぞ」

浩二が指す方向には光輝ともう一人の浩二と模擬戦を行っていた。

「クソッ!」

「甘いぞ、光輝! この浩二αも倒せないようならオリジナルの俺には到底勝てないぞ!」

「うるさい!」

刀と聖剣を交えながら戦っているもう一人の浩二αの正体は浩二が‶魂魄魔法〟を手に入れて生み出した正真正銘もう一人の浩二だ。

再生・魂魄複合魔法 ‶クローン〟

自らの肉体の一部を切り離して再生魔法を施して肉体だけを再生させて魂魄魔法で己の魂の複製させて義魂として定着させることでもう一人の自分自身を作り出す魔法。

肉体構造を細部まで知り尽くし、再生魔法と魂魄魔法に高い適正を持っている浩二だからこそできる浩二オリジナル魔法だ。

肉体と魂を複製させた複製体は複製した分だけステータスが弱体化してしまう欠点や魔力の消耗率が高い為に今の浩二の魔力では最大二体までしか生み出せないというところだ。

そうして生まれた浩二αと剣を交えながら‶魔力操作〟の訓練をしている光輝を見て龍太郎達は意外そうな顔をしている。

「……浩二。いったいどうやって光輝を言い包めたんだ?」

「妥協するように言っただけだ」

事実、浩二は光輝が目覚めてすぐに‶魔力操作〟の獲得について話した。だが案の定、光輝はそれを拒否したのだが。

『自分に勝った相手から力を貰うのは受け入れがたいことぐらいはわかる。だけど光輝、それは力であることには変わりない筈だろ? お前が本当にこの世界の人達を守りたいのならその力を掴め。その上で自分の正しさを証明してみせろ』

暗に変に意地を張らずに力を得る為に妥協しろ、と言った浩二さん。そして光輝は己の無力さと敗北した悔しさを噛み締めながら自分の正しさを証明する為に浩二と戦っている。

今の光輝の心境はどうであれ、強くなろうとしているのは確かだ。

後は上手い具合に誘導すれば浩二に敗北する前の光輝よりマシにはなるだろう。

(今のところはまだ現実を受け入れがたい部分が強いけど……負けずと俺に食らいついている所を見ると改善の余地は生まれたみたいだな)

それが単に自分に勝って浩二のことが気に入らなくても、自分の方が正しいと疑っていなくても負けずに浩二αに勝とうとしている姿勢を見れば一歩ぐらいは前進したと思いたい。

(まぁ、光輝に関しては今後も経過観察しながら考えて行くか……最悪、記憶と精神を改造させて綺麗な光輝にすればいいし)

さりげなくとんでもないことを考えていた浩二。すると空からまた衝突音が轟いた。顔を上げて空を見上げればそこにいるのは思わず見惚れてしまうような二人の天使。

銀が混じった白菫色の翼と瑠璃色の翼を羽ばたかせているのは香織と雫。神の使徒を材料に浩二が‶改造〟して神の使徒と同等の力を手に入れた二人はその力を扱えるように空中で訓練している。監督役としてティニアを連れて。

「行くよ! 雫ちゃん!」

「ええ! いつでもいいわよ!」

それはもう新しい玩具を手に入れた子供のように分解砲撃を撃つ香織とその砲撃を雫は分解を付与した黒刀で斬り裂いた。

二大女神ここに降臨!

日本、学校で二大女神と言われ男女問わずに人気を誇る二人の美少女はトータスに召喚されて、正確には浩二の手によって本当の女神のようになった。そんな二人を崇める人は少なくない……。自称雫の義妹であるソウルシスターズは天使姿の雫を見て鼻血が噴き出て満面な笑顔のまま倒れたのは言うまでもない。ちなみに元となった素材は香織はノイントで雫はドリットである。

「二人共凄ぇよな……。ここからでもとんでもねぇプレッシャーを感じるぞ」

「うん、でも鈴達も戦うかもしれない相手だもんね」

敵意を向けられていなくてもそこにいるだけで冷汗が止まらない。本物なら冷汗だけでは済まないかもしれない。そこで鈴が……。

「ところで浩二くん。どうしてあの二人に……?」

劇的にパワーアップできる方法と言えば方法だけどそれをどうして香織と雫に改造して施したのか鈴はそれを率直に浩二に問いかけた。

「香織は元からそういう約束をしていたからな。それに香織自身それを望んでいたし、雫は初めは拒んだけど俺と香織が説得させた」

というよりも主に香織の突撃という名の説得に雫が圧倒されて「わかった! わかったから! 香織の言う通りにするから!」と気がつけば首を縦に振っていたの方が正しい。香織ナイス!

「それにあの二人と光輝にしか適性がなかったからな……」

魔法のように‶改造〟によって取り込める素材にも相性や適性が存在する。適性がなければ多少ステータスに加算されるだけで技能は獲得することができない。以前、浩二がハジメの血液と魔石をブレンドした薬を飲んでも‶錬成〟を獲得できなかったのは適性が低かったからだ。そして香織と雫それと光輝は神の使徒との適性が高く、‶改造〟によって香織と雫を強化させた。光輝にしなかったのは下手に力を与えて暴走することを防ぐ為でもある。今の光輝に必要なのは精神面の強化だ。使徒の力は必要ない。

「まぁ、戦力強化できたしいいかな。それでどうする? ‶魔力操作〟を覚える気はあるか?」

「応ッ! 皆強くなってんだ! これ以上遅れるわけにはいかねぇ!」

「鈴もお願い! もっと強くなって恵理と話をしたい!」

二人の覚悟は本物。それならばそれを浩二が拒む理由はない。浩二は二人に‶改造〟を施して‶魔力操作〟の技能を獲得させた。今の浩二なら触れただけで‶改造〟を施して‶魔力操作〟の技能を獲得させるなど朝飯前だ。

「おお、なんか不思議な感覚だな……」

「うん、今までと違うから慣れるまで苦労するかも……」

これまで詠唱と魔法陣で戦ってきた二人は魔力を直接操作する‶魔力操作〟の扱いに戸惑いを覚えるもそこは慣れて貰うしかない。

「時間もないし、二人同時に相手をするからかかってこい」

「応ッ!」

「うん!」

今よりも強くなる為に二人は訓練を始める。

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