ありふれた脇役でも主人公になりたい   作:ユキシア

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主人公19

帝国に奴隷として輸送中の亜人族とハウリア族をフェルニルに乗せて樹海に向かう途中でハジメはパル達から事情を聞いた。どうやら魔人族が変成魔法で強化された魔物を使ってフェアベルゲンに侵攻していた。幸いにもその時はハジメの手によって魔改造されたハウリア族のおかげでどうにかなったようだが、今度は帝国が侵攻してきた。それも魔人族の侵攻で消耗している隙を狙ったかのように。それも帝国は樹海の特性である感覚を狂わせるのなら、フェアベルゲンが確認できる場所まで樹海を燃やすという荒業に出た。

それも全ては亜人族という労働力を補充する為。帝国も魔人族の侵攻で相応の被害を受けたからだ。そして奴隷として攫われた亜人族のなかにはハウリア族、それもシアの父親も捕まっている。

そして帝都近郊では。

フェルニルに詰め込まれた馬車と馬を使ってリリアーナが侍女と近衛兵と共に帝国に突撃訪問するのだが……。

「本当によろしかったのですか? 浩二さん」

その馬車には浩二それにティニアやエフェルそれにイリエも乗っていた。

「何がでしょう? 王女様」

「いえ、南雲さん達と一緒に樹海におられた方が……」

リリアーナは浩二の目的がハジメと同じように神代魔法を手に入れる為ということは知っている。だからそれを無視してこの場にいることに疑念を抱いているのだ。

「その必要はありませんよ。南雲のことですから大迷宮を攻略する前にシアの同族を助ける方を優先するでしょうから。身内には甘いですからね……」

(それにもしもの為に浩二αがいるしな……)

念には念を入れている。それで神代魔法が手に入るのかは不安ではあるも何もしないでおくよりかはいい。亜人族の治療も浩二αと香織がいればどうにでもなる。

「それに誰かさんのせいで勝手に神にされて崇められるのも嫌ですから……」

苛立ちを吐き捨てるように言う浩二。どこかの錬成師のおかげで浩二はすっかり亜人族にとって信仰の対象にされた為に落ち着けずその場から離れたかった為に後の面倒事は浩二αに丸投げした。

それとどうして浩二がリリアーナと共にいる一番の理由は……。

「それに俺が行かなくてもティニアは王女様と一緒に行くでしょうから」

「浩二様……」

いつもは表情を崩さないクールビューティーの顔が驚きに包まれる。

「王女様のことが心配なんだろ? なら俺も一緒に行くに決まってんだろ?」

ティニアは何も言わなかった。リリアーナのことが心配だから一緒に行きたいとも、手助けしたいとも言わなかった。しかし浩二はティニアの心情を察していた為にリリアーナと行動を共にすることを選んだのだ。

「俺に遠慮するなよ、ティニア。お前が王女様を助けたいのなら俺も全力でそれを手伝う。それぐらい俺はお前の事を大切に想ってる。だからこれからは何かあれば遠慮なく言ってくれ」

そんな浩二にティニアは深々と頭を下げる。

「浩二様、ありがとうございます……」

「いいよ。気にすんな」

「今晩、遠慮なくご奉仕しますね」

「…はいよ」

「あ、ずるいですよ! 旦那様! 私も一緒に!」

「……はいよ」

どうやら今日は美女二人に挟まれながら眠ることになりそうだ。イリエは我関せずと小窓の外を眺めていた。そんな浩二達にリリアーナはどこか羨望の眼差しで浩二達を見ていた。

するとリリアーナ付きの専属侍女であるヘリーナが浩二に尋ねる。

「浩二様。不躾ながら浩二様は元の世界に帰られるのでしょうか?」

「なんですか? 急に。……それはまぁ、家族も心配しているでしょうし、南雲が元の世界に帰れる方法を見つけたら一緒に帰ろうとは思ってますよ」

嘘偽りのない本心だ。その時はティニア達を連れて日本に帰るつもりだ。

「浩二様から見てリリアーナ様はどう思われますか?」

「ちょっ!? ヘリーナ! いきなりなにを!」

あまりにも突拍子もない質問。その質問の意図に気づいたリリアーナは自分の侍女に思わず声を荒げる。ヘリーナは浩二とリリアーナをくっつけようとしているのだ。

浩二の医療の腕前や調合の技量はそれこそ‶医神〟と称してもいいぐらいに神がかっているし、浩二自身の実力もかなりのものだ。それにこれまで不治の病だった薬を調合して特効薬まで作り出しているから民からの信頼も厚い。これからの王国の未来と安寧の為にどうにか浩二を繋ぎ止められないかと打算する。

それに対して浩二の答えは。

「いや別に」

別に興味ありませんが? と言わんばかりの顔で答えた。そしてその視線はリリアーナの身体のとある部分に向けられていてそれに気付いたリリアーナは顔を赤くして両腕でその部分を隠した。

「……浩二さん、今私のどこを見ていましたか? 怒りませんから言ってください」

「……別に」

思い切り視線を逸らして別に見ていませんよ? といった風に装う浩二にリリアーナは思わずプツリと何かが切れて思わず口走る。

「ティニア。実は浩二さん、王都を出る前日に私の胸で―――」

「ああああああああああああああああああああああああああっっ!! ‶改造〟!!」

思わぬ反撃に悲鳴を上げてリリアーナの口を塞ごうと自らの腕を改造させて蛸の足のような触手がリリアーナを襲う。だがしかし、その触手はリリアーナには届かなかった。

「申し訳ございません、浩二様」

「失礼します、旦那様」

「ちょっ!? お前等!!」

まさかの裏切り。リリアーナに迫る触手をティニアが‶分解〟を付与させた短剣で斬り払い、エフェルが浩二を取り押さえた。二人とも愛する人の知らない一面を是非とも知っておきたいのだ。だがしかし、それは浩二にとって唯一無二の黒歴史。雫にフラれたからといって自分より年下の少女に抱きしめられてその胸で思い切り泣いたなんてとても恥ずかし過ぎる過去。ここで浩二は最後の希望を呼ぶ。

「イリエ!」

最後の希望であるイリエに向けて声を飛ばす。しかしイリエは両手で耳を塞いでこちらに振り向こうともしない。如何にも私は無関係ですと装っているイリエに浩二の希望は絶望へと変わった。

それを見てリリアーナはニヤリと勝利を確信した笑みを浮かべた。

「そう、あれは浩二さんが王都を去る前日に深夜のことでした」

「やめろ!! やめてくれぇえええええええええええ!! 俺が、俺が悪かったからぁぁああああああ!!」

語られる一夜の出来事。それはもうご丁寧に詳細に語るリリアーナにティニア達は興味津々に耳を傾ける。そして浩二はその話を聞く度に吐血でもするのかと思えるほどに羞恥心で悶えるのだ。

「かふ……」

あ、吐血した。

 

 

 

 

「殺せ、いっそのこと一思いに殺せ……」

馬車の片隅で膝を抱えながら小さくなる浩二。いくら名医だろうとも治せない傷もあるのだ。唯一の救いがあるとすればイリエが聞いていないことぐらいだろう。

そんな浩二を見てリリアーナは勝ち誇った笑みを浮かべてティニアとエフェルは全力で慰めに入る。

「何も恥ずかしいことはありませんよ」

「そうですよ。誰にだって泣きたくなる時はあるのですから」

美女二人に挟まれて慰められる浩二。一見してみれば羨ましい光景ではあるも今の浩二はそれどころではない。

「ふふ、もう一度私の胸で慰めてあげましょうか?」

「勘弁してください……」

カモ~ンと両腕を広げるリリアーナに浩二のライフはゼロだ。不躾な視線を向けたことに浩二は深く反省した。

「さて浩二さん、落ち込むのもそれぐらいにしてもうすぐ到着しますよ」

そうこうしているうちに馬車は帝城へと辿り着いた。

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