ありふれた脇役でも主人公になりたい   作:ユキシア

59 / 92
主人公23

ハジメ達はシアの家族、ハウリア族を助ける為に大迷宮の攻略を後回しにして帝都に赴いていた。雑談と情報収集をしながら帝都内を歩いているとハジメはふと思ったことを浩二αに訊いてみた。

「浩二α。そう言えばオリジナルのお前も姫さんと一緒に先に帝都に来たよな? やっぱり帝城内にいるのか?」

帝国に捕まっているハウリア族はとある親切な元牢番が快く教えてくれたこともあって現在ハウリア族は帝城にある地下牢にいることが判明した。そこでハジメは先にリリアーナと共に帝城にいるであろうオリジナルの方の浩二にどうにか協力できないかを浩二αに訊いてみた。

「いや、オリジナルの俺は帝城より少し離れた場所にいるようだ」

浩二のオリジナル魔法である‶クローン〟は浩二自身の肉体と魂を複製している為に互いにどこにいるのか大まかな位置は常時把握できるようになっている。

「……シアさんの家族が捕まっているのに浩二は何してるんだ?」

浩二もハウリア族が帝国に捕まっているのは知っているはずだ。それなのに助けようともしていない浩二に光輝は歯嚙みしながらそう呟く。そこに浩二αが。

「いや、光輝。オリジナルは助けたくても助けられないんだよ。その理由わかるか?」

「助けられない理由なんてない筈だろ! すぐ近くにいるのなら助けるのが当然だろ!?」

いつもの正義スイッチをONにした光輝が浩二αにそう物申すが……。

「ならオリジナルがハウリア族を助けた後はどうなると思う?」

「……どう、とは?」

「まず真っ先に王女様が疑われるな。ハウリア族を逃がした罪に問われる可能性が高い」

「なっ!? リリィは関係ないだろ!?」

「そうだな。だけど帝国にそんなことは関係ない。帝国にとってハウリア族、亜人族は自分達の所有物であって逃がす理由がない。それならば他国の人間、リリィに容疑が向けられる。当然、オリジナルである俺にもな」

そして残念なことにそれが実行できるほどの実力を浩二達は有している。

「それは……」

「それに仮に助けたところでどうやってハウリア族を帝城から樹海まで連れて行くんだ? 俺もオリジナルも南雲のように複数人を一度に移動させる手段なんてないぞ? 樹海に連れ帰れたとしても帝国からの亜人族の捕獲活動が激化する可能性だってある。それでも助けた方がいいのか?」

「……」

「奴隷にされている亜人族を助けたい気持ちはわかるが、助けた後のことも考えろ。恵理のような存在を増やしたくはないだろ?」

浩二αに言い負かされて黙り込む光輝。自身が恵理のような存在を生み出した元凶だと自覚しているからこそ何も言えなくなり、黙り込んだのだろう。

「話は終ったか? それなら浩二α。平野がいるところに案内してくれ」

「了解。こっちだ」

浩二αを先頭にハジメ達はついていくと、帝城のすぐ近くにある訓練場と思われる場所に到着する。しかし、訓練場というには人がいない。それどころか近くを通った帝国兵がそこを避けるように移動している。

ハジメ達は首を傾げながら浩二αに‶ここで合っているのか?〟という視線を向けるも浩二αは頷いて肯定した。怪訝しながらもハジメ達は訓練場に足を踏み入れてそこであるモノを目撃した。

「このメス豚がぁ!! 強情っぱりもいい加減にしやがれ! お前は家畜だ! 家畜は家畜らしく鳴いていろ!」

「甘い、甘いですわ! この程度で私が根を上げるとお思いで!? 随分とお優しいことで!」

「上等だ! この‶ピー〟が!! お前が根を上げるまでとことん痛めつけてやる!!」

鎖で縛り上げて激しい罵倒と共に鞭打ちする浩二と鞭を打たれながらも笑みが消えないどころか更に挑発する女性。それを少し離れた位置から呆然としながら死んだ魚の目で見守っているエフェルとイリエの姿にハジメ達は啞然呆然とせずにはいられない。

「なにがあった!? オリジナル!!」

浩二αがハジメ達の思っていることを代弁してくれた。その声に気付いたのか、浩二が後ろに振り返ってようやくハジメ達の存在に気づいた。

「……ああ、南雲それに雫達も帝都に来たんだな」

そしてごく普通に声をかけてきた。

「いや、お前、帝都に来てまで何してんだよ……?」

「見ての通り勝負(デート)だが?」

―――――そんなデートがあるか!!

ハジメ達一同の心情は見事一致した。どう見てもただのアブノーマルなプレイにしか見えない。

「いや、オリジナル。いくら縛られている女性がオリジナルに惚れてどうにか諦めさせようといているのはわかるが、傍から見たらただの変態だぞ?」

「しょうがねえだろ? どうにか俺を諦めさせようとしたら自然とこうなったんだよ。あ、とりあえず‶戻れ〟」

浩二αは浩二と一つになって元に戻る。

「あら? 浩二のご友人でして? お初にお目にかかりますわ。私はレイナ・デュークと申します。夫共々よろしくお願いしますわね」

縛られて鞭打ちされていたのにご丁寧ににこやかに挨拶してくるレイナにハジメ達は軽く引いた。え、なにこの人? どうして普通に挨拶してるの? 縛られて鞭打ちされているのに。だがしかし、再び浩二の鞭が唸る。

「誰が発言を許可した!? お前が発していい言葉は‶浩二の事を諦めます〟の一言だけだ! それすらもできないのか!? この‶ピー〟!!」

「淑女たるもの挨拶は肝心ですわ。それが夫のご友人であればなおさら」

「誰が! いつ! お前の夫になった!? 妄想も大概にしやがれ!!」

「いくらご友人方の前だからといってそんなに照れなくてもよろしくてよ? ここは素直に私のモノになりなさいな」

「誰がなるか!?」

ビシッバシッと打撃音が響き渡る。

ハジメ達は納得した。道理で誰も近づこうとしてこないことに。こんなものを見せられたら誰も近づこうとは思わない。しかし、ティオだけはもの凄く羨ましそうに息をハァハァしていらっしゃる。

「うわ……SMだよ……」

「まぁ、その素質はあっただろうな」

「ああ、今の浩二、今までに見たことがないぐらいに輝いている」

「……そうね」

「だ、大丈夫だよ、雫ちゃん! 普段の浩二くんはいい人だから!」

鈴+幼馴染ズはどこか遠い眼差しで呟き、雫はこんなドSに心底惚れられている事にどこか危機感を抱く。しかし、浩二の恋を応援している香織は懸命に浩二のフォローに入るが目の前でアブノーマルな光景を見せられている以上はそのフォローも虚しく終わりそうだ。

「……なぜでしょうか? 何故か急に浩二さんと父様達を会わせてはいけない気がしました」

「……シア、もう手遅れ」

「ハァハァ……本当にエフェルが羨ましいのじゃ……。ご主人様に負けず劣らずの罵声を毎日のように浴びれるのじゃから堪らんじゃろうてぇ……」

「それならお前も逝ってきやがれ」

ハジメ達の眼前に映るのはただのアブノーマルなプレイ。浩二的にはそのプレイをする理由があるようだけど鞭を振るう度に見せる笑顔は誰がどう見てもただのドSである。

「あ、そうだ。おい、南雲」

「なんだ?」

「‶侵入〟」

ハジメの額に手を当てて灰色の魔力がハジメの頭を包み込むとそれと同時に帝城の構造と帝城の地下牢獄の道のりがハジメの頭に流れ込んでくる。

「役に立つか?」

「……ああ、十分だ」

どうやら浩二はただアブノーマルなプレイに興じていたわけではなかったようだ。ちゃんとハウリア族を助ける為の事前準備はしていた。

「ああそれと、王女様や皇帝陛下達は今日は色々と忙しそうにしていたから王女様に会うのなら明日にしてやれよ?」

―――仕込みは完了。ハウリア族を助けるなら今夜がベストだ。

暗にそう告げている浩二にハジメは気付いて頷く。

「そうか。それなら姫さんに会うのは明日にしとくか」

これで潜入もスマートにできるとわかったハジメ達は踵を返してその場から離れていく。

「なに悦んでいやがる! この卑しいメス豚がッ! ‶ピー〟して‶ピー〟されたくなかったらさっさと俺の事を諦めやがれ!!」

「諦めませんわ! できるのならどうぞご自由に! 貴方を私のモノにするまで私は決して折れませんわ!!」

背後から聞こえる罵声と打撃音。ハジメ達は耳を塞いで速やかにその場から離れていく。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。