キッテル回想記『空の王冠』   作:c.m.

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※2020/2/8誤字修正。
 水上 風月さま、ご報告ありがとうございます!


20 空軍総司令部付き勤務-航空兵力編制

 一九二一年、一二月。シャルロブルク軍大学校を卒業し、参謀教程修了を証明する参謀徽章を拝受した私は、すぐさまフォン・エップ少将から少佐への進級と特別司令部改め、空軍総司令部付勤務の辞令を言い渡された。

 遊ばせる為に学ばせた訳でない以上、すぐにでも有効活用しろというのは、成程戦争機械たる帝国軍らしい辞令である。

 

 ただ、今日の読者諸氏は私の未来の妻や、エルマーの進級速度と業績の数々に感覚が麻痺しておられるやも知れないので述べておくが、齢二二の若造が『芋虫ぶら下げ屋(ラウペンシュレッパー)*1』になるのは、皇・王族や公爵位でもない限りは異例の進級である。

 この進級に対して、私は外側こそ誇らしげに胸を張って見せていたものの、その実年若く、未熟な自分が佐官という重責に堪えられるだろうかと、不安が心に重くのしかかっていた。

 しかし、表面にはそんな不安をおくびにも出さない私に、フォン・エップ少将は期待しているぞ、という更なる重圧を課してくる。逃げ場の無い私は、粛々とそれに応えるより他になく、地位に相応しい職責を果たすべく、一層鋭意努力するしかないのだと己を戒めた。

 

 

     ◇

 

 

「貴官の論文は目を通した。『爆撃機運用論』は中身が薄かったが、他二つは一考の余地がある」

 

 私は内心苦笑しつつ、フォン・エップ少将に「ありがとうございます」と簡素に返した。

 私に与えられた仕事は、帝国空軍航空部隊の編制を戦略・作戦・戦術単位に分けるので、これを各員と検討せよというものであった。

 数を決めろと言われれば簡単かもしれないが、そもそもにして、現状の我が帝国空軍の航空機保有数は何機なのか。整備員や管制員を含む補助要員や新設された各基地の配備数も含め、知るべきことは山のようにある。

 私は部下に書類を片っ端から持ってきて貰い、自分のデスクに置かれた卓上電話を回した。

 

「空軍総司令部のキッテル少佐だ。兵站総監部のエルマー技術大佐殿(一九二〇年、一二月進級)に繋いでくれ」

 

 交換手が快く引き受けると、エルマーはすぐに電話を取ってくれた。総監部然り中央参謀本部然り、これまでは傍受対策の為に外線が敷かれていなかったのだが、エルマーは空軍総司令部が出来ると同時、総監部と空軍総司令部を繋ぐ専用の交信手段を設けてくれたのだ。

 当然総監部は良い顔をしなかったが、そこはエルマーが秘話装置を造った上で行うと直談判して乗り切ったらしい。

 尤も、この後もエルマーは中央参謀本部にまで外線を入れたりと、兎に角時間を節約したがったそうなので、別段空軍総司令部が特別という訳ではなかったのだろうが。ともあれ、今は交換手が繋げてくれたエルマーとの会話に移ろう。

 

「私だ。ニコラウスだ」

「ああ、兄上。論文は読みましたよ。『爆撃機運用論』は阿呆共に釘を刺すには良いですが、他二つは凡庸ですな。失礼を承知で申し上げますと、中身が薄いかと」

 

 まさか他の者と真逆の評価を得るとは思わなかったが、何より驚きなのは、エルマー程の男が私如きの論文に目を通してくれた事だ。正直、弟なら他に読むべき物は幾らでもあると思うのだが。

 

「別に何を読んでも、家族からの手紙以外は心が湧き立ちませんのでね。勿論、兄上の戦友方からの手紙は別ですよ? さて、本題は航空機の生産数についてでしょう?」

 

 我が弟は読心術でも使えるのかと思ったが、世間話以外で、しかも空軍総司令部からとなれば、技術者たるエルマーに声がかかるのは新型機の催促か、量産についてぐらいかと納得した。

 

「話が早いな。それで、戦闘機は何機ある? それと、試作爆撃機のラインに関しても教えてくれ」

現行戦闘機(フォルカーD.Ⅻ)は七〇〇〇程ですが、既に大半がイルドアやイスパニア、秋津島といった買い手が付いています。武装を七・七ミリ機銃に換装してしまえば、高高度を維持しつつ爆撃機の護衛任務に当たれると伝えれば、それはもう飛ぶように売れましたよ。

 残りは練習機として使用するか、更新までの繋ぎとして手元に残す程度ですな。

 試作爆撃機は兄上の為に回した二機以外ですと練習機が二機ですが、こちらもイルドアと秋津島が高値を付けて頂いたので、一機ずつ両国に売って、練習機として残した二機はそのまま航空学校に送ります」

 

 ガラクタが実に良い金になったと、おそらくはほくほくとした笑顔で語っているのだろうエルマーに、私は開いた口が塞がらなかった。

 イルドア王国は地理的にも国力的にも我が国と直接敵対したいとは考えないであろうし、イスパニア共同体も、イルドア同様国交面でも問題ないから良しとしよう。

 しかし、極東の島国たる秋津島皇国に売却とはどういった存念からだろうか?

 あの国は確かに近代国家として建設する際、帝国を指針としてきたが、別段仲が良いというのではなく、近付いてきたのは中央大陸の強国であったが為に過ぎず、我々を『師』というより『教材』として見ていた向きが強い。

 確かに秋津島人の国民性は誠実かつ勤勉だと言われるし、実際皇軍は国際法を守る遵法精神も持ち合わせていたが、他国の技術を貪欲なまでに吸収し、しかもそれがどの国の由来であろうと全く頓着しないという無節操さを持っている。

 

 昨日帝国軍人を軍事顧問に招いたかと思えば、明日には共和国を、明後日には連合王国に声をかけ、それらを良いとこ取りするように組み合わせる。今回購入した爆撃機や戦闘機とて、すぐさま自国内で似たものを造り始めるに違いない。

 確かに秋津島は近代国家としては帝国以上の新興国だが、自分達が中央大陸と比して遅れていると自覚しているからこそ、その知識欲と探究心に歯止めがない。

 ある意味、この世界のどの国家よりも油断ならない国なのだが、エルマーにしてみれば、それで良いという。

 

「列強国では既に爆撃機を生産しているのですから、価値のある内に一番高値を付けて頂いた所に売れば良いのです。まぁ、共和国だけは売却対象国から外せと総監部一同から釘を刺されましたがね。私も仲の悪いお隣さんに贈る気は微塵もありませんでしたから、それは構いませんでしたが」

「最大仮想敵に売らずにいてくれた事は、喜ばしいし安堵しているよ。試作爆撃機の件だが、あれがゾフォルトの印象を薄める為のものだという事ぐらいは分かっているつもりだ。

 エルマーなら、既に本命を用意しているのではないか?」

「ご明察です。あの爆撃機は兄上のご指摘通り、ゾフォルトの対抗馬を遅らせる為に、他国が生産出来るギリギリのラインで設計しました。

 既に爆撃機も戦闘機も、偵察機を始めとする各機も、昨年度から量産体制に入っています。勿論、極秘裡にですが。現状の工場の稼働率から考えますと、今年一年で戦闘機二七六、爆撃機一六五、魔導攻撃機四六、偵察機三五三、輸送機三三二、練習機や連絡機が合計一七〇〇といったところでしょう」

「凄まじいな。一年でこれとは」

 

 エルマーの兵器は発案し、生産すれば即実用可能と言われる為に、他と比べ圧倒的に兵器更新速度が速い事は聞き及んでいたが、それにしても異常と言わざるを得ない。

 とはいえ、この結果に対して、エルマーは大いに不服であるらしい。

 

「本来なら月二〇〇〇が最低ラインでしたが、上が戦車工場を削りたくないと渋ったのですよ。とはいえ、他国の航空機保有数を示せば見方も変わると思いますので、それが狙い時でしょうな。

 兄上はダキア大公国の軍備をご存知ですか? あの時代錯誤な骨董品共、目の色を変えて複葉機を増産しています。来年には、一万九〇〇〇は行くでしょう。他国からも必死に買い漁っている始末ですので、総保有数は二万五〇〇といった具合かと」

 

 エルマーの予想が見事的中したと知ったのは後年の事だが、この時の私は、それを聞いて受話器を落としかけたものである。

 

「何時、上に掛け合うつもりだ?」

「どう足掻いても、こちらが追いつかなくなってから」

 

 それが狙いか、と私は嘆息した。或いは交換手が盗聴していて、上に伝えるという可能性もあるが、それはそれで構わないのだろう。一気に工場を増やすか、危機感を抱いて増産するようになるかは問題ではない。

 相手がようやく増産できた所で、それより遥かに高性能な機体を揃えて優位に立つ。これまでもそうだったように、エルマーは常に古い物を役立たずにしたいのだ。

 

「では兄上、私はそろそろ仕事に戻らねばなりません。航空機の仕様書は、責任を持って公用使に運ばせますので、それを参考にして下さい。ああ、それと言い忘れておりましたが、私は兄上の為にゾフォルトと試作爆撃機を送ったのであって、他はおまけです。

 嘘はいけませんな、母上に叱られてしまいますぞ?」

 

 ファメルーンのやり取りを聞いての事だろう。お前の為を思っての事だったのだがなぁとは思いつつも、頼まれてもいない事をしたのは私である。

 

「悪かった。今度埋め合わせをしよう」

「では、シュトルーデルでも食べましょう。美味しい店は、ベルンに幾らでもありますから」

 

 腹が裂けるまで食わせてやるという私に、エルマーは満足げに電話を切った。

 

 

     ◇

 

 

 送られてきた各機の仕様書に目を通した空軍総司令部は、設計者にエルマーの名が入っていただけで、このスペックが事実かどうかさえ検討せず私に投げた。

 

「仕様書の数字を深く考えるな。頭がおかしくなるぞ」

 

 そんなのは新型機を何度も見てしまえば、誰だとて慣れるだろう。そう思っていても、やはり数字を見てしまうと現実か否かを疑いたくなり、しかしあのエルマーの作品だからと自分を納得させるしかないのは、最早帝国軍人の恒例行事であった。

 

『戦闘機ヴュルガー(百舌鳥の意)。最高速度三三二ノット。実用限界高度三万四七〇〇フィート。航続距離八〇〇キロ。二センチ機関砲を両主翼に二門と、機首に七・九二ミリ機銃二丁装備。但し高度二万以上で機体性能に著しい低下が見られる為、二年以内の改修を前提とする』

 

『爆撃機コンドル。最高速度一九六ノット。実用限界高度二万フィート。航続距離四四四三キロ。最大爆薬搭載数二一〇〇キログラム。

 搭乗員数五名。一三ミリ機銃四二丁、二センチ機関砲一門装備。輸送任務での使用も可』

 

『近距離偵察機ウーフー(ワシミミズクの意)。最高速度一八〇ノット。実用限界高度二万三〇〇〇フィート。航続距離八三〇キロ。

 搭乗員数三名。七・九二ミリ機銃六丁装備。最大二〇〇キロ爆弾搭載可』

 

『輸送機ユンカー──後の前線兵士からのあだ名はユーおじさん(オンケル・ユー)──最高速度一四五ノット。実用限界高度一万八〇〇〇フィート。航続距離一二八〇キロ。

 貨物搭載量一〇〇〇キログラム。人員輸送は一八名を限度とす』

 

 私は仕様書を投げたくなった。何処ぞの若い技師見習いが、将来はこんな機体を作ってみたいと夢現で書き殴ったと言われた方が、余程説得力がある。

 ウーフーだけは偵察任務効率化の為、中央胴体前後をガラス張りとした中央短胴双側胴機という奇抜なスタイルを取っているが、他は全て当然だと言わんばかりに、全て全金属製の単葉機と来た。

 

 コンドルに関しては双発どころかエンジンを四機搭載。ユンカーも三機同調。馬力を上げて推力を高めるというのは他国でも研究されていたが、木造複葉機では主翼の重量限界と強度面からどうしても実現出来なかったものだ。

 だが、それ以上に新型戦闘機と爆撃機に見られる、車輪の脚を引っ込めるというのは革新的だ。エンジンに頼らず、空気抵抗を抑える事で速力を高めるというのは、どの国も欲して止まない発想だろう。

 爆撃機に搭載する爆弾にも手を加え、破片弾(SD)や徹甲弾(PC)だけでなく、対要塞仕様のコンクリート破壊弾(SBe)の開発も完了した為、こちらも増産でき次第送るとの記載があった。

 

「当分は、航空兵器の更新は必要なさそうだな*2

「同感です」

 

 だが、戦闘機に関しては二年以内に次のものを出すと前もって記載しているのだから、私や部下の苦笑いは止まらなかった。

 それにしても、ここまで来るとなると航空学校も偵察機のみならず、爆撃機の専門学校を用意しなくて良いのかと思ったものだが、案の定仕様書に目を通していた上の人間は、すぐさま専門校の開校に踏み切ったらしい。

 その点爆撃機に関しては、既に航空学校でも専門課程が用意されていた為スムーズだったそうである。

 元々空軍の入隊希望者は戦闘機乗りを希望して止まなかったようだが、そこは宣伝局のアピールで一定人数を確保する事に成功したという。

 

 ともあれ、私の仕事はこれらの航空兵力を最大限利用し得る編成を組織せねばならないので、責任は重大である。

 私はまず、対魔導師戦を想定した最小編制数たる三機編隊(ケッテ)を戦闘機小隊から廃することにした。

 既にして航空機は魔導師の高度領域からかけ離れており、エルマーの作品全てが、今後彼らに追いつかれる事はないだろうと考えた為だ。

 

 実際、あの魔導工学の権威たるフォン・シューゲル技師が対航空機に執念を燃やし、限界高度と最高速度を追求する余り、コンペを落としたというのは有名な話である。

 エレニウム八四式以降、帝国軍ではエレニウム工廠だけでなく、民間も含めたトライアルを実施した事で、これまでにない多種多様な魔導術式を確立させるに至ったが、その理由は、『エルマーが航空機開発に着手してしまったから』である。

 

 これまでの航空機開発は帝国軍主導ではあったものの、民間企業も少数ながら参加しており、フォルカーも最初期は飛行機開発に成功し、実用化すると共に会社の権利を帝国軍が買い取った──会社が零細で大量生産に向かなかった為──という経緯がある。

 しかし、あのエルマーが空の世界に踏み込んできたという情報が入った時点で、航空機会社は民間機専門に切り替えるか、これまでの積み重ねを捨ててまで、エンジン周りの技術を流用出来る、演算宝珠開発に舵を切り替えてしまったのだ。

 

「あんな化物と戦える訳がなかろう。エレニウム工廠に殴り込みをかける方がまだマシだ」

 

 これは時の航空機開発の権威にして、エンジン製造メーカー『ユンケルス社』社長、ユンケルス博士が放った、余りに有名な台詞である。

 この後のユンケルス博士は、帝国軍魔導工学に多大なる貢献をもたらした。

 各術式の簡略化に伴う、爆裂術式を筆頭とした攻撃術式の高速処理に加え、ゾフォルトの単装爆撃にも劣らぬ大規模爆撃を可能とする空間爆撃術式といった、地上制圧に力を注ぐ事で航空機を相手にしない方針を固めた。

 他企業も、航空機との高度差は酸素量や気圧差から克服し難く、従来通り対魔導師戦闘と地上支援を意識した設計にすべきという意見で一致した。

 

 これは魔導師にとっても喜ぶべき事で、航空機優勢という逆転された現象に住み分けの場を用意してくれただけでなく、軍主体であったが為に硬直化していた思想が柔軟になった為、これまでにない速度で技術拡張が進められたのである。

 光学系術式を攻撃手段に転用した狙撃・砲撃術式などはその典型で、空気抵抗に依らない安定した攻撃と防殻貫通性能は、全魔導師の必須スキルとなったほどだが、特に凄まじいのは消費魔力の削減と、魔導障壁の機能向上だろう。

 従来の防御膜は一般的な小銃弾(七・六二ミリ)までが防御可能な閾値であったのに対し、新型機は一二・七ミリ弾まで向上。

 防御にリソースを回せば、四センチの火砲さえ耐えられるというし、何より演算処理の拡張によって、防御膜と防殻の同時起動を実現させた事は鉄壁と言う表現でさえ余りある事から、魔導攻撃機を有さない他の列強国は、軍用機で魔導師の相手をしようとはしなくなった*3

 

 そして消費魔力量の削減は魔導師人口の大規模な増加を約束したが、これが原因で魔導師に一層の低年齢化を招いた事は、技術向上がもたらした悲劇とも言える。

 私の妻をはじめ、多くの少年少女が戦地に赴く事となった時代は、すぐそこまで来ていたのだ。

 

 

     ◇

 

 

 少々余談が過ぎたので、魔導師の事情は置くとしよう。

 私は三機編隊(ケッテ)に代わる最小編隊数として二機編隊(ロッテ)を定め、これを分隊とする事とした。

 戦術単位の最小たる飛行小隊は、この二機編隊二組の計四機から成り、この飛行小隊が三個で飛行中隊。飛行中隊三~四個と中隊本部で飛行隊(飛行大隊)。三~四個飛行隊で航空団となり、戦術単位の最大が航空団だ。

 この航空団が、空軍の戦術運用の基本単位となる。

 小隊から航空団までは単一機での構成であり、戦闘機なら戦闘機小隊。爆撃機なら爆撃機小隊となるが、爆撃機に関しては従来通り三機編隊を一小隊とする事にした。

 二機ずつで組ませるよりも、三機の方が地上制圧の効率が良いと判断されたからである。

 

 次に戦術単位の上位たる作戦単位だが、こちらは航空軍団と航空師団の二つを置く事とした。

 航空軍団は爆撃機航空団、魔導攻撃機航空団、教導航空団、研究実験大隊から編制されるが、必ずしも航空軍団はこの編制下にある訳ではなく、輸送航空団や偵察飛行大隊が加わったりと、柔軟に変化する事が前提となっている。

 これは後述する戦略単位における、唯一の編制である航空艦隊の傘下に作戦に応じて加わる為の措置で、独立性を確保する為、航空軍団指揮官には移動する飛行場の指揮権も付与した。

 航空軍団は陸軍の進出に合わせて基地を移動していくので、指揮権を与えなければ補給等に問題が生じる為だ。

 

 一方、航空師団の編制は簡潔で、原則としては爆撃機航空団、爆撃機大隊の二つによって編成される。(但し、こちらも作戦内容によって内部編成が変化する)

 

 最後に語る航空艦隊は空軍総司令部の直轄であり、決められた戦域部隊を管理する司令部としての役割を担う。

 航空艦隊の編制は航空管区、戦闘機司令部、爆撃機軍団、航空師団からなり、戦闘機司令部の下には戦闘機軍団が着く事となっている。

 

 私は最終的には、四個からなる航空艦隊があれば十分に戦略的軍事行動が可能だろうと考えていた。無論、これだけの規模を整えるともなれば五年単位の時間を要するし、運用に当たっては国内や国境周辺の空軍基地の増設や管制面の拡充も必要である。

 先は長いが、しかしどの国でも爆撃機増産に注力しつつ編制作業を進めている以上、最低でも三年は大規模な戦争など起こさず、列強国は大人しく、しかし着実に戦力を蓄えるに違いないと私は読んでいた。

 

 だが、この予想は裏切られ、私の──というより空軍の──将来設計は脆くも崩れ去る。

 空軍総司令部付となって僅か一年余り。帝国領ノルデンにて新設基地の視察中に、悪夢のような報が飛び込んで来た。

『レガドニア協商連合軍が、我が国との国境を越境せり』と。

 

 後世の歴史書、教科書にその名を刻まれる史上最大規模の大戦争。

『中央大戦』の幕開けである。

 

 

*1
 兵隊用語での佐官階級を指す。これはエポレット肩章からぶら下がる『総』が芋虫に見えた事に因む。

*2
 当時の私はこのように楽観視していたが、これは最大級の誤りであった。

 後の歴史が証明したように、新型機の登場以降、各国は航空機の生産・研究レースに邁進し、想像を絶する追い上げを見せたのである。

*3
 但し、以前にも註釈に記載したように、一九二一年からは帝国軍では大規模な撃墜スコア改定が行われており、魔導師と戦闘機は互いを撃墜数にカウントしなくなった。




 次回、デグ様が満を持して登場いたします(告知)
 ここまで長かった……。

補足説明

 幼女戦記の本来の歴史なら、原作1巻時点で第6航空艦隊とか居るし2巻ダキア戦で爆装済みの第7艦隊とかが出てくるぐらいヤベー規模な帝国空軍なのですが、この作品では主人公のせいで空軍編成がめちゃくちゃ遅れてしまった模様。

 遅れた原因はというと。

 本来、戦闘機の対魔導師戦は早々に打ち切られて、民間航空会社が参入する予定でした。
 そして高高度爆撃機とかの研究が進んで、原作通りの世界に行く筈でした。

 だけど、ファメルーンに何かスゲー勢いで魔導師撃墜しまくる化物がやってきました。
 航空技師も「おいこれマジで対魔導師イケるぜこれ!」とめっちゃノリノリになりました。
 他所の国も「帝国軍航空隊ヤバくね? ウチも似たようなんガンガン作っていこうぜ!」と乗り気になります。
 そして皆、対魔導師専用機としてしか戦闘機を見なくなりました。爆撃機とか地上攻撃とか思考の外です。戦術とか戦略思想もめっちゃ遅れます。そんなことより魔導師撃墜だ!

 他所の国でも帝国国内でも、民間・国家を問わず戦闘機ばっか作りました。大口径重武装のせいで、めっちゃ重くて足が遅いガラクタです。そして当然弾速も遅い。高威力を武器に急降下して地上攻撃とか論外です。
 木造飛行機にクソみたいな重武装積んだ機体とか、一部のアホみたいな技量のパイロット以外は機体がバラバラになります。ただのゴミじゃねーか!

 だけど帝国は、突然クッソやばいエルマーくんが、化物兄貴の為に明らかにオーバーテクノロジーの塊な兵器をガンガン完成させました。
 結果、ここに来てようやく各国もマトモな方向にシフトしました。でも、世界規模で航空機の技術と思想はめっちゃ遅れました。
 本来だったら今頃民間企業が入って、ガンガンまともな大型爆撃機とか高度偵察機とか作れてたのにです。でも、帝国軍の民間企業はもういません。みんな魔導工学に行っちゃったからです。
 このままエルマーくん死んじゃったらマジで帝国の空は詰むね! 全部化物兄貴のせいだね!


 ※航空機生産数は一九三四年ドイツのものを参考にさせて頂きました。
  但し、魔導攻撃機はアホみたいなコストなので、普通の急降下爆撃機の数字から半分にまで減ってます。
  演算宝珠って、主力戦車や戦闘機より高価ですからね……大型化なんかしたら、そりゃあアホみたいな額になるわけで……。

 ※なお、エルマー君は姉上の手作りだから甘い食べ物を喜んだのであって、別に甘党ではない模様。総監部やら中央参謀本部の電話も、主人公の負担を減らすためだけにやったみたいです。

 ※主人公のお仕事の航空兵力編制は、まんまドイツ空軍の編制です。『図解・ドイツ空軍』や『[図説]ドイツ空軍全史』が大変詳しく分かり易いので、ドイツ空軍が好きな方には是非お勧め致します!(ダイマ)

 ※航空機のスペックは元ネタの機体のものを使用していますが、資料によってスペックに違いがあります。作者は『ドイツ空軍軍用機集1928~45』を基本資料とし、こちらに記載がない項目に関しては『図解・ドイツ空軍』のドイツ空軍の機体の項を参照させて頂きました。

以下、名前・地名等の元ネタ
【史実→本作】
【航空機】
 フォッケウルフFw190A3→ヴュルガー
 Fw200コンドルC3型→コンドル
 タンテ・ユー(ユーおばさん)→オンケル・ユー(ユーおじさん)
 フォッケウルフFw189→近距離偵察機ウーフー
 ユンカース→ユンカー
【人名】
 ユンカース博士→ユンケルス博士

主人公のコールサインはどれが良いですか?(21話にて使用予定)

  • クロウ(crow カラス)
  • ケストレル
  • スカイ
  • ディサイプル(弟子)
  • ドギード(頑固者)

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