キッテル回想記『空の王冠』   作:c.m.

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※2020/3/15誤字修正。
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37 消えた講和-帝国の報復

 中央大陸の問題は、中央大陸で片付けよ。

 秋津島との同盟が流れる結果となった皇帝(カイザー)のお言葉は、何も武力で全てを解決せよということではない。皇帝(カイザー)は帝国議会に「これ以上の戦争は無意味である。要衝を得た今、再度和平の道を探って貰いたい」と語り、官吏らは奮起して講和への舵を切った。

 

 相手が侵略国である以上、白紙和平とは断じて行かないが、それでも皇帝(カイザー)の御心であるならば、戦果に対して多少要求を甘くしても戦争終結を望んでいた国民は納得するだろう。軍部としても終わらせる戦争ならば終わらせて、国力の回復に努められるなら言うことはない。

 特に空軍などは、編制も完了しない状態で戦時体制に突入した為、無理くりに各戦線の空軍基地に航空機と人員を送りつつ、臨時編制で部隊を整えるといった強引な手法をとっていた。

 将校が階級に合わぬ規模の部隊を指揮することなど日常茶飯事。任務次第では佐官が小隊を、尉官が大隊を率いて飛び、私も幾度となくその日限りの中隊や小隊を率いて飛んだものである。

 終わらせられるなら早く終わらせて、編制を整えたいというのは偽らざる本音だった。

 

 だが、帝国の講和要求は、最大限の譲歩と相手の疲弊した国力を計算に入れての穏当な物であったにも関わらず、フランソワ共和国もアルビオン連合王国も、これを呑もうとはしなかった。

 どちらも戦死者の数こそ大きいものであったが、全くと言って良い程国土が無傷であること。二年以上になる複数国との戦争から『帝国は攻勢限界に達した』『苦境に立たされたが為に、これ以上戦争を続けたくないという本音から講和条件を甘くしたのだ』と、足元を見るような真似をしたのだ。

 共和国・連合王国にしてみれば、戦争は終わらせたくても終わらせられない。自らの意思で侵略し、敵国に進軍した以上、莫大な戦死者を出しておきながら、何の成果も出せませんでしたでは話にならない。

 ましてや優勢の筈の敵が、ここに来て『弱み』を見せてきたのだから、強気に出たのは当然だった。

 

「我々は屈しない。決して、決して、決してだ! 日の沈まぬ国は永遠だ。我々が屈しない限り、勝利を希求する限りにおいて永遠に続く。神と国王陛下の名の下に、私は断固たる意思で、帝国に勝利することを宣言する!」

 

 火を吹くようなチャーブル首相の演説は、全世界に報じられた。ロンディニウム・タイムズでは、この戦争に身を蝕まれた狂人を、悪しき軍国主義を打倒する自由と正義の宣誓者として報じ、共和国もまたチャーブル首相の熱意に追従するように戦争を継続したのだ。

 

 

     ◇

 

 

 宮中で報告を受けた皇帝(カイザー)は信じ難いと零され、そして大いに嘆かれた。

 

「ユリウス*1よ。余は、国民は平和を望んでおる。何故、彼らにはそれが分からぬのであろう?」

 

 玉座に深く腰掛け、目を覆われたという皇帝(カイザー)の心の傷は、長年仕えてきた小モルトーケ参謀総長には、誰より痛いほど分かるのであろう。ユリウスという愛称で慕われ、お側に侍る小モルトーケ参謀総長は、静かに返された。

 

「陛下。思うがままに行かぬ子供とは、癇癪を起こし暴れるものなのです。こうした子には、躾が必要と存じます」

 

 小モルトーケ参謀総長は、口調こそ穏やかなものであっても、激しい怒りを滲ませていた事は想像に難くない。事実、「陛下の宸襟を悩ます全てを、私が取り除いてご覧に入れます」と胸を叩いて宮中を去った後に、その武勇の相に血管を浮かばせ、中央参謀本部の面々を失禁寸前にまで恐怖させたというのは有名な逸話である。

 

 そして、エルマーの兵器について、私から尋ねるようにと参謀総長より直々に電話がかかってきたときは、余りの声の冷たさに名を言われるまで誰か分からなかった程である。

 当然、皇帝(カイザー)の御心をかくも深く傷つけられたのだという事実を知った時には、私も自己を抑えられる自信がない程に激怒していた。

 それほどまで、血で血を洗う戦を所望するとあらば、望み通りにしてくれようか、と。

 何となれば、今すぐにでも最前線に赴き、敵という敵の血を最後の一滴まで絞り取り、敵兵の骸を積み上げて捧げねばなるまいと考えていた程だ。

 しかし、今の私は空軍指導部の一員であり、与えられた職責を果たさねばならない。私はエルマーに電話をかけ、フィーゼル・セカンドが使用可能かを問うた。

 

「使うだけなら問題なく。しかし兄上、随分と荒れておられるようですが」

「すまない。どうか勘違いしないで欲しいのだが、お前に怒っているのではないのだ。

 我らが皇帝陛下(マインカイザー)の御心を傷つけられた事に、私は怒っているのだ」

「用意した講和の席を、足蹴にされたとあれば当然でしょうな。兄上のお怒りもご尤もです。フィーゼル・セカンドはレランデル海岸線の陸軍基地に移送済みですが、今からでも空軍の管轄に変更致しますか?」

「いや、小モルトーケ参謀総長閣下には花を持たせたい。何より、フィーゼル・セカンドは陸の所管にすると提案した、お前の言葉も取り下げたくないのだ」

 

 エルマーは決して無駄な事はしない。弟が陸軍の所管にしろというからには、それ相応の理由があって然るべきだし、態々個人的な感情でそれを台無しにはしたくなかった。

 

「ありがとうございます。必ずや、兄上にご満足頂ける結果をお届け致します」

「いつも満足しているとも。ありがとう、エルマー。お前が居てくれていることが、心強いよ」

「私も、兄上に喜んで頂ける事が嬉しいのです。ですから、兄上。どうかご無理はなさらないよう。いつも、私は兄上を心配しているのですからね?」

「分かっているとも。お前より、長く生きれるように頑張るさ」

「それは嬉しいですね。私は、兄上の死に顔など見たくありませんから」

 

 穏やかな声で、電話を切る。軍の電話で私語に興じてしまうのは如何なものかと思うが、誰もが気を利かせて、私とエルマーの会話を邪魔しようとしないから、つい話してしまう。長話をしてしまった分は、仕事で穴を埋めるとしよう。

 

 

     ◇

 

 

 レランデル州の海岸線はアルビオン王立空軍による空襲と陸・海の大規模上陸侵攻に備える形で、早急かつ大規模な基地建設が進められていた。

 元あるフランデレンやネーデルの基地を使用する事も考えないではなかったのだが、共和国・連合王国は自軍の脱出時にこれらの基地を徹底的に破壊し尽くして去っていった為、土台程度しか残らなかったのだ。

 結果、一九二五年末には既に敵の存在しなかったレランデルに、フィーゼル・セカンドを実用可能な状態で配備することが出来たのは、年が明けて二ヶ月後の事になった。

 

 その間、アルビオン王立空軍は帝国軍基地の建設を妨害すべく、夜間侵攻用の空挺部隊や爆撃編隊を送り込んできたが、敵が基地爆撃や制圧を達成することは叶わなかった。

 既にして帝国空軍は連合王国首都、ロンディニウムまで索敵可能な高高度レーダー網と、ドードーバード海峡はおろか、連合王国本土海岸線まで確認可能な低高度探知レーダーを設置していた為、敵空軍の強襲は三時間前には帝国空軍には筒抜けの状態だったのだ。

 王立空軍はレランデルの海岸線に到達する前に悉くがドードーバードで散り、その間に帝国陸軍は、着々と連合王国本土攻撃の準備を進めた。

 

 そうして運搬されたフィーゼル・セカンドと、海岸線を防衛する為の陸・空軍基地が整い、遂に発射という段にまで漕ぎ着けたものの、そこから先もまた労苦の連続であった。

 民間施設への攻撃を可能な限りにおいて避けたいという私の希望をエルマーが通してくれた為、万が一にも被害が出ないよう、徹底的に連合王国本土の海岸・沿岸線沿いの基地を調べ上げ、座標を完璧に確認した上での発射となったからだ。

 帝国陸軍としては、戦果そのものよりも連合王国本土に防御不能な攻撃手段があることを見せつけたいという意図が大きく、一日でも早いフィーゼル・セカンドの発射を望んだが、エルマーはこれを一蹴した。

 

「万が一都市部にでも命中してみなさい。このような超兵器、すぐにでも国際法の名の下に使用禁止を迫られますよ?」

 

 何しろ弾道ミサイルなどというものは、中央大戦時において帝国しか保有していなかった最新鋭兵器である。他国では保有どころか構想すらなかった怪物である以上、ここで軍事施設以外に甚大な被害を与えたとあっては、どんな手段を講じてでも生産・開発を封じてくるだろう。

 付け入る隙は与えるなというエルマーの発言は一々尤もで、陸軍高官も政治家達も折れざるを得なかった。特に陸軍としては、折角自分達の手に渡った超高性能兵器が国際法によって奪われるなど耐え難く、エルマーの要求を素直に呑んだが、結果としてみるならば、これは大成功だったと言える。

 フィーゼル・セカンドは、実戦配備されるまでの間にも絶え間なく改良を施されており、開発初期の試作機二発と一九二六年に入っての正規量産型九発では、射程・生産コスト・威力・安定性・命中率等、全てにおいて桁違いの性能差を有する事になったからだ。

 エルマーにしてみれば、試作機は射程と速度、高度こそ及第点だが、それ以外に関しては文字通り失敗作であり、どれだけ時間がかかっても、徹底的な改良を施しておきたかったらしい。

 

 まずもって、フィーゼル・セカンドは非常に高価なのである。試作機のコストは一発でコンドル四機分に相当する額でありながら、ミサイルなので当然使い捨て。液体燃料を使用するので、研究室に近い環境の基地を用意せねばならず、そこで推進剤の充填、整備、設定を必要とした。

 おまけに誘導システムは特定目標を照準出来ず、命中精度は七~一七キロメートルもの開きがあるという、本当に敵国に心理的ダメージを与える以外使い道のない、脅し目的の兵器だった。

 速度こそ遅く撃墜される可能性が高いとはいえ、安価で命中率も高く、爆撃機にも搭載可能なフィーゼル・ファーストの方が、兵器としての価値は遙かに高い。

 口さがない陸軍高官などは、「空軍が運用できない欠陥品を、自分達に押し付けたのだ」と陰で漏らしたらしいが、そんな筈が有るかと私は一喝してやりたくなった。私の弟が、そんな理由で兵器を譲る筈も無いし、欠陥だと言うのなら確実に改良するに決まっている。

 

 当然エルマーは自身で指摘した欠陥を放置する筈も無く、直ちに改良が進められた。

 エタノールと液体酸素を推進剤とする試作機から、量産機はケロシンを燃料に、硝酸を酸化剤にすることで推進剤を常温でも貯蔵できるようにし、タンクの構造等を見直すことで射程を延長。

 発射装置も基地内での設置に依らない、トラクターで牽引する移動式にする為に小型・軽量化を図り、ミサイルは陣地設営から発射まで四時間で完了する事を条件にした。

 この条件はエルマーが自分から提案したもので、開発者自ら過剰な要求を設定するなど前代未聞であったが、それだけの熱意を持って取り組んでいたという事だろう。

 この条件を達成すべく、エルマーは油圧式の操舵装置を空圧式に変更し、付随装置の軽量化にも着手。高価なアルミニウムを多用する試作機から、軽合金での構成に変更する事で一トン以上の軽量化とコスト削減を達成した上、弾頭重量を九五〇キロまで増加して威力の底上げを図った。

 推進剤を供給するターボポンプも設置から発射までの短縮化の為に改良が施され、過酸化水素の不要な燃焼室からのガスで直接駆動する仕組みに切り替える。

 それと共に、命中精度を高めつつコスト削減を図る為の誘導装置の簡略化も並行して進められ、一定高度に達した時点で弾頭を分離。誘導・制御を地上から電波で行う無線制御装置が組み込まれた。

 

 現代の科学者をしても、この発明品は異常なレベルであり、世界中の科学者が団結しても、実用化は一〇年は先だった筈のオーバーテクノロジーだと語ったが、最早総監部どころか帝国軍や政府さえ、そうした技術の異常飛翔に関して、完全に感覚麻痺を起こしてしまっていた。

 兄である私も含め、この時点で帝国はエルマーを何でも実現出来る魔法使いのように捉えてしまっていたのだろう。

 エルマーの発明品にも、その異常な開発速度にも疑問を抱けないまま、弟の死後には誰もが「何故遅々として研究が進まないのか」と、それが他国の常識的な開発速度にも拘らず業を煮やしたというのだから、帝国が何処までエルマーに甘え切っていたかが、分かろうという物である。

 

 

     ◇

 

 

 フィーゼル・セカンドは、試作型が最大射程三二〇キロメートル。

 五分半で三〇万五千フィートもの高度に達したそれは、人類が初めて飛行物体を成層圏に到達させるに至った偉業を達成したが、エルマーは満足などしなかった。

 量産型は最大射程七〇〇キロメートルにして、命中誤差範囲は最大五〇〇メートル。鉄道と牽引式トラクターさえあれば、世界中の何処であろうと運搬・発射可能なこの兵器は、音速の五倍近い速度を叩き出した、世界最速にして最高難易度のテクノロジーが詰め込まれた帝国の、否、エルマーと共同で開発・改良に携わった、フォン・シューゲル主任技師との英知の結晶と称すべきものだった。

 コストが非常に高く、精度にも難がある試作機はエルマーが有無を言わさず解体処分にした上で、全ての目標施設に量産型のフィーゼル・セカンドを発射する事を決定させた。

 

 着弾地点を綿密に設定した上での主目標は、フィーゼル・セカンドの設置地点から五一〇キロもの距離を隔てたデヴォンシャーポート海軍基地に設定されたが、これは帝国軍が連合王国全ての軍事施設を標的に出来るという脅し目的で射程圏内にある軍事施設を選んだに過ぎず、戦略・戦術的な意味合いは皆無だった。

 実際、一つの目標に纏めて撃ち込む方が効率が良くなる筈であるのに、デヴォンシャーポートに二機のフィーゼル・セカンドを発射する事を決定した後は、残る七機を全て別の軍事施設に発射するとした事からも、陸軍が敵の心胆を寒からしめたいという目的だけで動いている事は誰の目にも明らかだった。

 

 こんな無駄遣いをして、エルマーが怒り狂いはしないかと私は気が気ではなかったものの、当のエルマーは涼しげな表情で「一度完成すれば幾らでも造れますから、好きなだけ撃ち込んで下さい」と背中を押す始末だった。

 エルマーは私や家族を喜ばせようとする以外で嘘を吐く事はなかったが、幾らでも造れるという言葉も、決して嘘偽りではなかったらしい。

 試作機より五分の一以下までコストを削減し、大規模な構造の簡略化によって生産性を向上させたフィーゼル・セカンドは、試作機の段階では一月に二〇〇の生産が限度とされたのに対し、量産体制の確立と工場の拡張により、最大で月に四五〇発もの安定生産を可能にしていたのだ。

 

 蛇足になるが、エルマーがフィーゼル・セカンドを陸軍の所轄にした理由は、生産ラインの拡充を図る上で陸軍の無駄を削らせたいという意図があったらしい。

 これまでの陸軍はグルップル社を始めとする民間に大砲や列車砲の開発を委託しており、弾種の規格統一さえ碌になされていなかった。

(だというのにStG25の生産を弾種の違いで渋ったというのだから、陸の予算運用に関しては本当に物申したくなったが)

 

 しかし、このような有効でも高価な兵器を多数保有するのであれば予算の見直しを図る必要があり、当然ながらこれまでのような、潤沢な陸の予算に物を言わせた無駄遣いを無くす必要が出てきた。

 結果、フィーゼル・セカンド保有後は、新兵器の大規模生産を行いながらも保有前と比べて五分の一近いコストのカットを実現したというのだから、笑う他ないだろう。

 情報部などは、コストカットに伴う情報整理の過程で発覚した官吏や軍高官の癒着の多さに激怒し、「身中の虫を粛清させろ!」という過激な意見まで出たが、その件は本著とは関係ないので、筆を置かせて頂く。

 

 とはいえ、流石に資源も予算も無尽蔵にある訳でないという事は陸軍とて分かっている。

 今回の発射は飽くまで景気づけであり、皇帝(カイザー)が望まれた和平を足蹴にした敵国と、不遜な挑戦状を叩きつけたチャーブル首相への報復こそ全てだった。

 

 一九二六年、二月一四日。計九発のフィーゼル・セカンドが連合王国本土の大型軍港と海岸線基地に着弾。マッハ五もの速度で飛翔するミサイルを当時の技術で迎撃する事は帝国でさえ不可能であり、必然、連合王国は大混乱に陥った。

 帝国軍としては、不発弾が生じても確認の術がない事を憂慮していたが、エルマーという天才に抜かりはない。仮に不発弾が敵地に落ちたとしても、超高感度の触発信管が回収しようとする敵兵諸共、ミサイルを爆発させる仕組みだったからだ*2

 

 

     ◇

 

 

 連合王国はこの日を『血のバレンタイン』と後年記した。

 

 甚大な被害を被った連合王国は、帝国がまたしても恐るべき新兵器を開発したのだと察し、速やかにこれを潰すべく動いた。

 これ程までの兵器ならば、発射には相当な設備が必要となる筈であり、レランデルに建設された陸・空軍基地を速やかに制圧・破壊する事でフィーゼル・セカンドの発射を阻止しようと目論んだのだ。

 

 王立海軍は最早損害も構わず、艦隊を北洋・ドードーバード海峡双方から派遣。レランデル海岸線に艦砲射撃による絨毯制圧の後、地上軍の大規模上陸侵攻を計画した制圧作戦を発動したが、規模こそ違うだけで過去の三国介入戦争と何ら変わるところがない以上、帝国は対策済みだった。

 加え、既にして海岸線ではレーダー網が配備され、地の利を得た帝国空軍が哨戒任務に就いていた事もあって、敵の動きはこちらからは丸見えだった。

 

 王立海軍の動きを察知した帝国空軍は、北方から転属したダールゲ少佐らを筆頭とする戦闘爆撃大隊や、Ka202ハーケルを主戦力とした爆撃大隊を出動。

 フィーゼル・セカンドの脅威を目の当たりにした連合王国ならば、確実に動くだろうと予想しての空軍指導部による戦力集中は見事的中した。

 王立海軍はその威信にかけ、既にして保有していた航空母艦ヘルメースと一九二五年末に完成したアーク・ロイヤルを出撃。

 帝国海軍も派遣可能な艦隊を結集させ、海岸線からも海兵魔導師を出撃させた。

 

 後の世に語られる一大海上決戦『オステンデ海戦』の火蓋が切られたのだ。

 

*1
 小モルトーケ参謀総長の愛称。常に思慮深く物事を考え、眉間に皺を寄せていたことから、皇帝(カイザー)は参謀総長を冗談でユリウス(陰鬱な男)と呼び慕っていた。

*2
 実際、フィーゼル・セカンドの不発弾は中央大戦を通して二発だけだったが、何れも敵軍が回収作業を始めた瞬間に自爆し、却って甚大な被害を与えた。




補足説明

【帝国の和平交渉が蹴られた理由】
 帝国の講和要求は賠償金だけで見たら穏当だけど、共和国と連合王国が「二度と侵略できねーようにする」という名目で「レランデルは俺らのもんだから同意しろや」という条約が講和を蹴られた原因の模様。敵からしたら絶対にノゥ! な条件だったようです。

【V2ロケット? について】
※V2ロケットと言いながら、WW2戦後のシュペルとG-1の機能が盛り込まれたトンデモ兵器になったフィーゼル・セカンド=サン。もう世界征服できそう(悪役かな?)

【今回のエルマー君のやべー所】
 エルマー「なんで陸の所轄にしたかって? コストカットとか嘘だから。
      空の所轄にして万が一都市部に命中したら、兄上が悲しむでしょ? ああいう扱いづらそうな兵器は他所に回して、全責任を取って貰えば良いんだよ」

 ※エルマーくんの考えに深い意味とかはなかったようです。
  なお陸の大幅なコストカット成功の裏で、多数の民需産業が大打撃を受けたので、民間人のことを考えると、一概に良かったと言える案件ではなかった模様。
  取り敢えずこの時期での帝国内での失業率がクソヤベー事になった(後々ミサイル工場とかに回されたから、全員が全員首括った訳じゃないけど)

以下、名前・地名等の元ネタ
【史実→本作】
【基地】
 デヴォンポート海軍基地→デヴォンシャーポート海軍基地
【空母】
 ハーミーズ→ヘルメース
【地名】
 オーストエンデ→オステンデ

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