キッテル回想記『空の王冠』   作:c.m.

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※2020/6/30誤字修正。
 佐藤東沙さま、Kimkoさま、ちはやしふうさま、サトウカエデさま、稲村 FC会員・No.931506さま、ノノノーンさま、水上 風月さま、ご報告ありがとうございます!


訳者あとがき

 一九六二年、一二月に本書が帝国で発刊され、多くの読者がその内容に驚かされ、賛否を巻き起こしたのは記憶に新しい。

 帝国内では本書の著者であるキッテル元帥大将*1の回想記でありながら、その奥方にしてサラマンダー戦闘団指揮官たるキッテル夫人の半生をも記録したものであるが、私も含めて、読者はとても両者が同時代の人間とは思えないほど、乖離した思想や人生観の持ち主であったことに驚いた。

 これまで騎士道の権化として、多くの軍事書籍や新聞で描かれたキッテル元帥大将の感情豊かな内面や、『白銀』と讃えられたキッテル夫人の波乱万丈ぶりや喜怒哀楽など、良い意味でも悪い意味でも私達を驚かせた。

 特に、キッテル夫人の余りに赤裸々な文は帝国でも問題となったようで、一時期は紙文から省かれ、注釈をつけての販売となったことも、本書を手に取られた方の幾名かはご存知のことと思う。

(尤も、それ自体は読者からの抗議で、すぐさま完全な形に戻されたが)

 

 ともあれ、本書の訳を私が担当することとなったのは非常に幸運であり期待に応えたいという意気込みもあったが、それらをここで語るよりも、訳を担当することになったことで機会を得た、キッテル夫妻との対談について語る方が読者にとっては有意義であると思う。

 

 本書に描かれたキッテル家の描写に偽りはなく、私は荘園で働き、領地に生きる方々の暮らしが豊かなものである一方、キッテル家の屋敷が実に小さく、しかし品良く落ち着いたものであったことに深い感銘を受けた。

 これまで取材を行ってきたどの帝国貴族であっても、大抵はそれなりの絵画や陶器といった美術品が飾られていたものであったが、キッテル家に関しては父祖の武具や旗が目立たぬ位置に、しかし入念に手入れされた状態で置かれている程度であった。

 

 私を招いた家令は本書に登場した『爺』でなく、御子息に当たる初老の男性であったが、彼からは面白い話を聞くことができた。

 『爺』は若かりし頃に兵卒としてプロシャ・フランソワ戦争に従軍し、ユーディット・フォン・キッテル氏の祖父君と戦場を駆けたことがあったという。

 そして、その祖父君の名こそアウグストであり、キッテル元帥大将のアウグストなる名は、その祖父から受け継いだものであったそうなのだ。

 

 こうした小話を合間に挟み、居間に迎えられた私の目に飛び込んだのは、実にたおやかで若々しく、それでいて女性として見事なプロポーションのご婦人であったが、誰あろうその人こそラインの悪魔として恐れられ、またダイヤモンド柏付き銀翼突撃章を時の皇帝(カイザー)から唯一下賜されたキッテル夫人である。

 少女時代のキッテル夫人しか写真で目にする機会に恵まれなかった一部の読者は、このように魅惑的な肢体のご婦人が、あのモノクロ写真や記録映像の痩せぎすな少女であったとは、きっと夢にも思わないだろう。

 

 私は過去、幾度かWTN通信社の特派記者としてキッテル元帥大将と対談してきたが、夫人と直に接するのは今回が初めてのことだった。

 キッテル夫人は年相応に柔和な、しかしこうして目にすると二〇代後半としか思えない美貌で私に椅子を勧めると、「主人が参るまで、お寛ぎになって下さいましね」と優しく応対してくれた。

 もし私と夫人が独身であったなら、私は夫人を口説いていたかもしれない。

 アルビオン出身の私に配慮してか、差し出された紅茶を口に含みつつも、年甲斐もなく夫人の容姿と気品に目が離せなくなってしまっていたから、間を置かずキッテル元帥大将が足を運んでくれたのは幸いだった。

 

 流石にキッテル元帥大将を前に、変な気を起こす気にはなれないからだ。

 キッテル元帥大将は夫人と比して、顔立ちは相応に老いていたが、それでもあくまで夫人と比べてのこと。

 私はキッテル元帥大将と同時代、同年代の退役軍人を多く取材してきたが、その殆どが老紳士と呼ぶに相応しい老いであったというのに、元帥大将は老将軍と称することがこれほど不適切な人物も居ないだろうと思えてならない。

 階級を知らず、現役武官だとだけ聞けば四十路辺りの、第一線を離れて数年が経過した佐官だと言われても信じただろう。私も年齢で言えば元帥大将より若いが、肉体年齢で言えば到底足元にも及ばないので、つい本筋に関係ないことを訊ねてしまった。

 

「若さの秘訣? そうだね。未だに新兵に混じって基礎訓練をしているのと、幾つかの馬術競技にも出ているね。身体は資本だから、動ける内には動くようにしているのだよ」

 

 帝国の新兵訓練は大変に過酷で、常日頃からスポーツで磨き上げた瑞々しい若者たちでさえ揃って音を上げるそうだが、キッテル元帥大将は「まだまだ若い者には負けんよ」と、笑って話した。

 そして、対談にあたって答えられる限りを話すと約束してくださったので、私は本書に描かれた時代でなく、描かれていない部分について問うことにした。

 例えば、ご長男であるミスター・アルトゥールが音楽家となったことに関してだ。するとキッテル元帥大将は、非常に困った顔をして、反対にキッテル夫人はコロコロと笑いだした。

 

「ミスター・アンドリューには語るまでもないことと思うが、キッテル家は代々武門の家系だからね。嫡子が音楽家を志すと知れば、家長としては反対せざるを得なかったものだよ」

 

 アルトゥール・フォン・キッテルといえば、今でこそ世界最高の指揮者としてベルン・フィルで指揮棒を振り、音の神殿で王侯貴族さえ惜しみない万雷の拍手をもたらす音楽家としてその名を轟かせているが、幼少期には幼年学校でも上級学校でもなく、音楽学校の門戸を叩かせるとキッテル夫人が言って聞かなかった時には、大層頭を痛めたという。

 

「確かに私自身、帝国近衛槍騎兵(ライヒス・ガルデ・ウラーネン)の道を捨ててパイロットになった手前、決して進路について声高に非難できる立場にはないと承知していたとも。

 だが、曲がりなりにも武門の嫡子が、幼年学校さえ出ず音楽家の道を行くなどというのは論外だった。しかも妻は、徴兵さえ一年志願兵として『社会勉強』に赴くだけで良い、後は音楽の道を邁進させるとまで言い出したから、私としても立場上声を上げざるを得なくなってね」

 

 ただ、ミスター・アルトゥール自身は長男として、嫡子として自分の立場は弁えていたそうだ。上級学校には入学するし、徴兵も他の地主貴族の温室育ちがするような一年志願兵などという特権を用いる気もない。

 帝国人として任期を全うした上で、できるならば音楽大学の門を叩きたい。

 それが許されず、軍人として一生を終えろと私が言うのであれば、ミスター・アルトゥールはそれに従うとキッテル元帥大将に言ってくれていたそうだ。しかし、それに反駁したのがキッテル夫人である。

 

「アルトゥールに将校としての才はありませんでしたからね。よしんばなれたとしても窓際に追いやられて、万年尉官で終わるのが関の山だったでしょう」

「それは否定しない。正直、兵卒としてならば信頼されても、将校には不向きな倅だった」

 

 これはキッテル夫妻だけでなく、後にインタビューしたミスター・アルトゥールを受け持った原隊指揮官らも意見を同じくしていた。

 ミスター・アルトゥールは与えられた命令には忠実かつ実直に従い、何事にも精力的に取り組むし、応用力や想像力も豊かであるが、反面極度に責任感が強く、部下の負担を軽減しようと抱え込む悪癖があり、他人に相談を持ち込めず一人で仕舞い込んでしまいがちなこと。

 危険な命令を下すことを極端に恐れることが表面化すると、彼を任された下士官や将校は、両親が兵卒より上は無理だと判を押したのは謙遜でなく、これが理由だったと納得していた。

 

 しかしながら、ミスター・アルトゥールはエルマー博士のように病で軍人の道を閉ざされた訳でもない。一時といえど、本人に軍人となる意思もある。だというのに、キッテル家の男児が他の道に進むというのは、家長として認める訳には行かなかったそうだ。

 しかし、キッテル夫人にとっては我が子の人生が何より大事だったという。

 

「私がどういった幼少期を送ってきたかは、語るまでも無いでしょう? 私のように、選べない人生を歩ませたくありませんでした。

 何より息子には音楽の才があり、本心ではその道で大成したいという思いもありました。母として我が子の将来を慮り、応援したいと思うことは不思議なことですか?」

 

 母は強しというが、正しくキッテル夫人はその言葉通りの女性となっていた。本来なら夫として誇らしく思うべきことだが、キッテル家の父としては決して容認することは出来ず、エドヴァルド・フォン・キッテル氏がキッテル元帥大将を叱責したように、父と母の間に挟まれたミスター・アルトゥールを、思い切り殴った。

 そして、かつてエドヴァルド氏がキッテル元帥大将に言った程ではないが、ミスター・アルトゥールを怒鳴りつけたそうである。

 

「進学は自由にせよ。軍人としての道も、歩みたくなければ構わん。しかし、帝国人たりたくば勤めだけは果たせ! そして、これだけは言っておく! たとえ道半ばで挫折したとしても、泣き言など聞かぬからな! ……とまあ、そんな塩梅だ。

 顔も見たくないと、そう言わねばならない私に対して、妻はアルトゥールを庇って私を睨めつけたよ。正直、あの時は私の方が泣きたくなった」

「貴方の立場は理解していましたし、必要なことだとも存じていました。けれど、母としては我が子にあのように手を上げる夫を、許せはしませんでした」

「喧嘩別れの言葉は『この石頭! 自分だって若い頃は空ばかり見ていた放蕩者でしょうに!』だったかな?」

「『こんな方だとは思いませんでした!』とも言いましたわね。それと『子供の将来よりも家の体面の方がお大事ですか?』や『栄達がお大事なら、家でなく司令部で暮らすといいわ』とも言いました。他にも色々と叫んでいましたけれど、すぐに思い出せるのはそれぐらいです」

「……すまない、泣きたくなったので席を外していいかな?」

 

 みるみる煤けていくキッテル元帥大将に、私は涙を禁じ得なかった。

 息子を家から叩き出すような口ぶりだったが、実際にはキッテル元帥大将が家から追い出され、休暇中も空軍総司令部の宿舎で過ごしながら、軍務に逃げていたそうだ。

 私も家庭を持っている手前、キッテル元帥大将には親近感が湧いて止まないが続きを促す。

 

「あの頃の私は立場柄頭も下げられず、仕事に逃げていてね。傷心の私にヒルデが電話を入れてくれたのは、本当に嬉しかったよ」

 

 ミセス・ヒルデガルドはミスター・アルトゥールとは一歳差であるが、当時から齢以上に大人びており、背も長男より高かったので、兄妹でなく姉弟と間違えられることも多かったそうだ。

 

「しかしながら、私としてはアルトゥール以上に、この愛娘の方が心配だった。長女だというのに大変に好奇心旺盛かつ男勝りで、『将来は母上以上の軍人となる』『父上のような騎士とでなくば、子などもうけたくない』と言って止まなかったのだ。

 おまけに海洋小説に憧れを抱いて、海軍将校になりたいとまで言いだしたお転婆だったからなぁ」

 

 どうして長男と長女の性別が入れ替わらなかったのだろうかと、心から悔やんでならない。親の贔屓目もあるのだろうが、容姿ならば妻に負け劣らず良いところを受け継いでいるのだから、女らしくなってくれと願ってやまなかったと、涙ながらにキッテル元帥大将が語り始めた。

 軍人としての威厳や威圧感など、もはや欠片も垣間見えない。私の目には、子育てに悩む平凡な父親の姿がそこにあった。

 

「ヒルデには、私の方が困りましたわね。あの子、貴方のような男性が好みでしたもの」

 

 世に言うファザーコンプレックスであったそうだ。ようやくお相手を見つけたと言い出せば相手は年配の佐官で、何処となく元帥大将の面影を感じさせる人物であったから、一層頭を抱えたそうである。

 

「士官候補生時代には、教官の将校に岡惚れしたと言い出してなぁ。しかも、相手は四十路ときた」

「私としては、父親に迫るようになるぐらいなら、年配でも認めさせますわ」

「限度がある! まだヒルデは一二だったのだぞ! それを! それをなぁ……!」

 

 キッテル元帥大将は泣き始めた。最近は涙脆くなっているそうだが、余りに不憫だった。とはいえ、お相手に関しては誠実かつ真面目であったし、家柄や将来に問題もないのに独身という好物件であったから、認めざるを得なかったそうである。

 嗚咽を漏らし始めたキッテル元帥大将に代わり、夫人が私に話し出す。

 

「ヒルデはアルトゥールの進路の件で喧嘩別れした私達を仲裁してくれましたし、良い子ではあったのです。ですけど、問題も多く起こして……ミスター・アンドリューもあの子の武勇伝はご存知でしょう?」

 

 私は苦笑いしつつ頷いた。帝国のホーンブロワーこと、アドミラル・キッテルの逸話は有名だ。保護領では輸送船を荒らす海賊相手にサーベルで大立ち回り。

 母譲りの魔導適性で敵船・敵艦に乗り込んでは制圧し、艦長の剣を奪って降伏させるなど、とにかく特派記者として、記事のネタに事欠かない女傑だった。

 

「そこに行くと、フリッツは本当に真っ当に育ってくれたわ」

 

 確かに上記の二名と比して、フリッツ・フォン・キッテルに関しては逸話らしい逸話がない。ミスター・アルトゥール然り、ミセス・ヒルデガルド然り、何かしら話題となるし、当人が有名人の両親との過去を語る一方で、ミスター・フリッツはまだ二四歳という若輩であることもあって、記事にするような内容などないのだから当然だろう。

 強いて挙げるならば、その優秀な頭脳ゆえに少尉任官から一年で進級してすぐ軍大学の門を叩き、主席で十二騎士の座に至ったということぐらいか。本書を推敲している現在は、アルビオンで駐在武官の任に就かれている。

 

「しかし、ミスター・フリッツはご兄妹と随分と齢が離れておいでですね?」

 

 私としては話のネタになるのがそれぐらいしかなかったが故の切り出しだったが、キッテル元帥大将はそれ以上聞いてくれるなと視線で訴えてきた。しかし、奥方たるキッテル夫人は笑いながら応えた。

 

「アルトゥールの件で仲直りしてすぐだったかしらね? 私が『家のことが心配なら相応しい子供ぐらい何人でも産んで上げるわ』って言ってあげたの。そうしたらこの人、すぐに私を押し倒したわ。『君の温もりが恋しかっ』」

「それ以上は本当に勘弁してくれ!」

 

 そして、頼むから対談らしい真面目な話をさせて欲しいとキッテル元帥大将は懇願する。

 しかしながら、私は既にWTNの記者として幾度もキッテル元帥大将と対談を重ねており、その手の話題は出尽くした後でもあったから、どちらかといえばこうした話題の方が好ましくもあった。

 

「ならば、妻に聞きたいことはないのかね? ああ、真面目な話だぞ?」

 

 分かっていますと頷いて居住いを正して向き直った。あの中央大戦で、何を感じたか。何を思い今日を生きてきたかを、私はまずキッテル夫人に問うた。

 

「私にとって、あの戦争は、いえ、他の戦争でもそうですが、答えなど変わりようがありません」

 

 戦争など、大嫌いだ。出来ることならば、子供にも軍人になどなって欲しくはなかったという。

 

「ミスター・アンドリューには面白くない話でしょうが、私は帝国が勝てたからとて喜ぶことはできません。あの戦争で私は多くを犠牲にし、その上に立ちました。結果として私は多くを得、私生児からキッテル夫人として人生を成功させました。

 誤解しないで頂きたいのですが、私は身勝手な平和主義者のように軍隊を否定はしませんよ? 国を守る手段は必要ですし、戦いを余儀なくされる場面も多くあるでしょう。

 ですが。せずに済むのであれば、戦争などしない方が良い筈です。我が子や夫を失い、血を流し、国を疲弊させてしまうばかりの争いが続くなど、私にしてみれば冗談ではありません。

 ミスター・アンドリュー。貴方は、夫の本を読んだのでしょう? あの、モスコーで私に復讐しようとした、女の子のことも存じておいででしょう?

 戦争は被害者を生み続けます。そして、加害者も同様に生み続けるのです。互いが自分を正しいと信じ、相手を悪だと罵りながら、殺し殺されを繰り返すのです。

 私の夫やクローデル議員、シェスドゥープ親衛中佐のように名誉を重んじ、憎むことなく争い、本懐を遂げるような対決など、本来有り得ざるものでしょう?」

 

 だから憎む。だから否定する。たとえ白銀と称えられようと、キッテル夫人にとって、戦争とは忌むべきものでしかないのだ。

 

「私は心から、あのような戦争が最後であって欲しいと願い、望みます。軍人は玩具の兵隊でいるか、ヒルデのように、犯罪者から国民の生活を守る存在でいて欲しいと思います。恒久的な平和など有り得ないとしても、平和な時代が長く続く事を祈っています」

 

 そして、その言葉をキッテル元帥大将も肯定する。

 

「妻の言ではないが、英雄の時代など、本来忌むべきものだ。国を守る備えとして、私達は必要なのだろう。国土を、国民を護る為、軍事力という剣は常に研がれていなければならない。しかし、その剣は壁に掛かり、鞘に収められたままであった方が良いのだ。

 ミスター・アンドリューが、ここに訪れるまでに目にしたであろう、当家の武具のように」

 

 他人の目を引かせ、それが使われた過去を偲ぶか、或いは好奇に胸躍らせる程度で良い。戦いにどのような感情を起こすかは個人の自由だが、若者が争いの当事者になることは、決して望んでないという。

 今を生きている、平和活動家を自称する多くの言よりも、二人の言葉は私に深く刻まれた。それは、あの戦いの当事者だったからというだけが理由ではない。

 子を持つ親として、後を託す人間として戦いを嫌いながらも、同時に争いを覚悟していたからだろう。

 人同士が分かり合えないことを知り、争い憎み合うことを理解し、それでもと願いながら、一人は軍服を脱いで母となり、一人は空を飛ばず剣を磨いた。

 それぞれが己の立場からの務めを果たし、次に繋いでいるからこそ、私は感銘を受けたのだろう。

 

 軍事という分野で記事を書き、糧を得る私がこのような事を言う資格はないのかもしれないが、平和とは本来、誰もが願って止まないものなのだと思う。

 だが、願わくば私達のような人間の記事が現代の争いでなく、使われぬ兵器を書いて余人に娯楽を与え、戦いに明け暮れた昔日を回顧しながら、読者が思い思いに耽る程度の、平穏が満ちる日々が後に続くことを願っている。

 この夫妻が英雄でなく、仲睦まじいご両人として読者の心に残ってくれたなら、それはこれ以上ない幸福である。

 

 一九六五年 七月 対談を終えて。

WTN通信社 アンドリュー

 

*1
 一九六四年、退役時に元帥号を取得。同年、プロシャ国王兼第四代帝国皇帝ベルトゥスより名誉連隊長(第一騎兵連隊)の終身名誉称号を賜る。

 元帥位は終身制であるため、現役武官として今尚公務に就かれている。


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