LA STORIA D'AMORE È NATA CON TE ~あなたと紡ぐ“恋”物語~   作:璃空埜

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どうも!璃空埜です!(本日二回目)

同時投稿、ホロライブ+α二次創作です!


恋愛オンリーって難しい!以上!!


START OF YOUR STORY'S act-3

ーーーーーーーい。おーい!起きろー!」

「……んぁ?」

 

金剛の声に呼び覚まされ、突っ伏していた机からゆったりと頭を上げながら目を開く。すると、もう既に帰りのSHRが終わってしまったのか教室内にあまり人は残っておらず、何人かが固まって雑談をしているくらいだった。

 

「ん〜〜…………六時限目丸々寝てたか……」

「そうだぞ〜?特にセンセも干渉はしてなかったけども、少しピキピキしてたな」

「流石にあの後だったんだから大目に見てくれたのか、助かったな」

「初日から半日エスケープ決め込んだ野郎が何言ってやがる」

 

大盛況だった五限目と昼休みをを使った星街とのテトリス勝負、あれの疲れがなぁ…………。悔しいことにあと一歩叶わなかったが……それでもアイツのテトリス捌きはなんだろな、まるで先の先まで読んでやがるような積み方してるしこっちが送ってもすぐに返されるし……ともかく破格に強かったな。あれなら世界でも通用しそうだな、うん。

 

「あふっ……」

「……流石にお疲れか」

「あの勝負の後なんだ、堪忍してくれぇ……」

「いやいや、すいちゃんのテトリスに四十分近くも耐え忍ぶなんて偉業を達成したってだけでもすげぇっての」

「…………しっかし、悔やまれるのはあん時棒の設置をミスらなけりゃ……」

「あっっっっい変わらずすげぇ負けず嫌いなことで……」

 

仕方ねぇだろ、そういう性分なんだから。

 

「ま、ともかく帰ろうぜ!こっちに来たのなら1度は寄るべき、とっておきの店があるんだよ!!」

「……ホントか?」

「おぉ!ホントもホントよ!」

 

こいつがこうやって手放しで褒める店……これは期待出来そうだ。

机に寝そべらせていた上半身をゆっくりと起こしたあと、大きく伸びをする。それから机横にかけて合ったカバンに教科書やらを放り込んでから立ち上がり、金剛と共に教室を後にする。

 

「因みに、どんな店なんだ?」

「ふっふっふ、それは行ってからのお楽しみだ!」

 

そりゃ楽しみなことで。

そうして、二人で談笑しているところに零斗と麗鵝も加わり四人でゆるりと校門をめざしてゆったりと歩いていると……

 

「おや?おやおや?そこにおわすは噂の編入生君では?」

 

何やら活発そうな女子生徒を先頭に、朝話した白狐?猫?の子とクラスをまとめていた狼の子、そしていやに嬉しそうなあやめのグループと出くわす。

 

「お?そちらも今からお帰りで?」

「そうだよ〜!今日はゲーマーズの集まりもないからフブキ達と帰るんだ!」

「黒ちゃんは先に帰っちゃったけどね」

 

あ、この白い子、誰かに似てるなって常々思ってたけど……そうだ、クロと瓜二つなんだ。…………って我ながら今更かよ、俺。

 

「そ、それなら一緒に帰らないか?」

「ん?いちおうこの後、俺らは寄り道するが、それでもいいのなら俺は特に問題はねぇよ」

「行先は金剛の話からして、いつものお店だよ〜」

「それなら私は大歓迎!」「ウチも問題は無いかな」

「よっしゃ!そうと決まれば早速向かおうぜ!」

 

こういう時の金剛の率先力は助かるが……何やらいつも以上に気合が入ってるな。具体的には先の活発そうな女子生徒が声をかけてきて、俺達が相手さん方のメンツを確認した時ぐらいから。

 

「……何か金剛の気合いの入り用が強くなってないか?」

「あ〜、ゲーマーズの二人がいるからだね」

「ゲーマーズ?さっきもそんな単語が出てたけど一体?」

「正式名称は“ホロライブゲーマーズ”。あの白髪の狐の子、白上フブキちゃんをリーダーにしたゲーム好きが集まった学園のサークルのひとつでね、ファンもすんごい多いんだ」

「ほぉ〜?」

「おや?呼びました?」

 

零斗とそんな話をしていると、件の少女……朝SHR前に話した白上フブキとその部活仲間でもあるという狼の子がこちらへとやってきた。因みに彼女らのファンであるという金剛は、最初に話しかけてきた子、麗鵝、そしてあやめと共に何やら楽しそうに話している。

 

「ん、いや何、少し零斗からお前らの事を色々聞いてたんだよ」

「ウチらのこと?……あ、そういえば自己紹介まだだったね、ウチは大神ミオ。同じクラスだし、仲良くしてくれると嬉しいな、鴻山くん」

「そして、私が……」「白“猫”の白上フブキだろ?朝は世話んなったな」

「うぐ……ち、違うよ!私は狐じゃい!!」

「はてさて、真実はいかがなもんだか」

「むぅぅ……いつか絶対私が狐であるってその身に分からせちゃる……!」

 

っと……流石にいきなり弄りすぎたか。何だか、白上が嫌に怖い目付きになって変に燃えてやがるぞ?……おぉ、怖い怖い。

 

「あはは……何だかフブキの弄り方が既にわかっちゃってるね……」

「朝の周りや白上自身の反応から察したのさ」

「シンは昔っからそういうのに鋭いんだよね〜」

「何となくだけどな。ともかく大神だったな、改めて鴻山龍神だ。これからよろしく頼む」

「こちらこそよろしくね」

「がるるぅ〜……」

「…………今度は狼になっちまったか」

 

大神の背後に隠れつつ、その白いしっぽを奮い立たせた白上がこちらに向かって威嚇のようなものをしてくる…………が、迫力は無いに等しい、というか、逆に愛くるしい小動物のような雰囲気があるな。

 

「どうどう落ち着け落ち着け〜」

「ぐるるぅ〜……」

 

うん、怖さ零可愛さ百とはこの事だな。

 

「てか、ひとつ聞きたいんだが……白上とクロって性格とかは全然違うけど、容姿については瓜二つだよな。なんでなんだ?」

「う?黒ちゃん?」

「黒ちゃんとフブキは一卵双生児なんよ。それで綺麗に白黒で別れてたから、苗字だけ変えてるんだ」

 

獣状態だった白上の代わりに大神が答えてくれる。この子、クラスでもまとめ役だったが、普段からオカン気質なんかな。…………何か近しいモノを感じなくもないのは気のせいだろか。

 

「なるほどなぁ、それだったらあれだけ似てるのも頷ける。性格は全然違うけど」

「余談だけど、フブキよりも黒ちゃんの方が色々しっかりしてるよ。朝はちゃんと起きるし、料理とかもしっかりできる……確かによくサボるけどね」

「言われてみると確かにサボりはするけど成績とかも黒さんの方が上だしね〜」

「つまりはアイツの方が姉ってことか」

「……なんか、鴻山くんの中で私の立ち位置が変な方向に向かってるような気がしてきた」

「そんなことないぞ?」

 

…………朝遅刻してきたくせして、ゲームに夢中になってSHRほっぽる奴くらいな認識だけどな。…………そんなこと言うと学園初日の授業をほぼ全てサボってたやつはなんにも言えないんだけど。

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

それから、もう1人の女子生徒……夏色まつりとの自己紹介を済ませつつ、賑やかに金剛のオススメの店とやらに向かっていたのだが…………途中からやけに見覚えのある道になってきたのが気になる。

 

「ん〜……」

「どうしたの?」

「いや……気のせいか何やら見覚えのある道なんだよなぁ……」

「あれ?そもそもシンってこの町出身なのか?」

「一応、な。色々あって全国を転々とはしていたが……産まれたのはこの町だ」

「ほほぅ、まさか同郷の者とはな」

「それについては俺や零斗が保証するぜ。ちいせぇ頃はずっと一緒だったからな!」

「ずっとじゃねぇだろ……」

「おぉ、これが男の友情……」

「まつりちゃん?なんか凄い顔になってるよ?」

 

んん〜…………にしてもホントにこの道見覚えが……………………あ。

 

「はは〜ん?なるほどね」

「ん?」

「いや、何でもねぇよ」

 

金剛のオススメの店、俺分かっちまったや。…………しかしまぁ、せっかくサプライズを考えてくれたんだ、それを無下になんてしねぇし出来るわけがねぇ。

 

「お!見えてきたぞ!あの店だァ!!」

 

そうして、俺が行先に検討がついてるのを知らず、気前よく金剛は……少し先にあった、古いいかにも様々なものが出てきそうな見た目の家屋の前に置いてある看板を指さす。そこにはおどろおどろしい文字で【和風喫茶店“大墳墓”】と記されていて…………あぁ、やっぱりここか。

 

「つうわけで到着したぜ!ここがオススメの……」「和ホラー風緑茶&トウモロコシ料理がメインメニューの喫茶店“大墳墓”」

「「「「「え?」」」」」

「しっ、知ってたのか!?」

「あれ?でも、ここができたのはシンがこの町を出たあとだよ?」

「…………俺がこの店を知ってる理由は入りゃぁわかる」

 

いやはや、まさかこの店をチョイスするとは……しかも話的に結構な頻度で訪れてたみたいだな、鉢合わせなくて良かった。

そんなことを思いつつ、真っ先にこれまたおどろおどろしい装飾がされた喫茶店のドアを開く。すると……

 

「いらっしゃ……あら、龍神くんじゃない。今日シフト入ってたかしら?」

 

扉と同じような装飾が施された喫茶店内装にはあまりマッチこそはしてはいないものの、自他共に認める整った容姿とそれに見合った白い髪と澄んだ水色の瞳を持つ女性にして、俺のここでの先輩……水鏡 涼(みかがみ りょう)が出迎えてくれる。

 

…………そして、さっきの彼女の言葉でわかる人もいるだろうが…………この店、和ホラー風喫茶店“大墳墓”は俺のバイト先のひとつなのである。

 

「いや、今日は後ろでポカンとしてる友人たちと一緒にお客さんとして来ました」

「そうなのね。ええと……結構大人数?」

「俺を含めて総勢8名です。席、大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ♪マスター!!8名様ご案内します〜!!」

 

水鏡さんが厨房の奥に声をかけると微かに「は〜い♪」と返事が聞こえ、その返事を聞いてから水鏡さんは僕達を広い大テーブルがあるスペースへと案内してくれた。

 

「それじゃ、注文が決まったら呼んでね♪」

 

笑顔と共に一言残してから、別テーブルのお客さんの元へと向かう水鏡さんを見送った後、まだ驚きが抜けていない面々へと向き直る。

 

「…………驚きすぎだろ、お前さんら」

「い、いやいや、まさかここでバイトしてるなんて……」

「一度この町に来た時いい塩梅のバイト代とシフトを考えてくれた店がここだったからな。しかも、掛け持ちOKってのと掛け持ち先を紹介してくれるいい所だぞ」

「にしたって……あまり近づかんだろ?」

 

まぁ……なんであんな見た目にしたのか、初見さんにとっちゃ入りにくい店であることは確かだな。常連さん達が多いから十二分に経営できてんだけども。

 

「ま……元々マスターさんと親父繋がりで知り合いだったってのもあるんだがな」

「え?」

「はい、そうなのですよ。そして、皆様、いらっしゃいませ♪」

 

そんな話をしていると、ひょっこりとここの店のマスターである龍族特有の角としっぽを生やした渋めながらも暖かな頬笑みを浮かべた男性……ナザリック=OB=ロードさんが姿を現し、皆それぞれの挨拶を返す。

 

「うわ〜……幼馴染みの俺も知らなかったッスよ、まさかマスターとシンが知り合いだなんて」

「龍神様のお父様には色々お世話になりまして……その縁から龍神様とも親交を深めていたのですよ」

「ほぇ〜それで……」

「今回の引越しとかも手伝って貰った上にこんないい条件でバイトさせてくれるナザさんにはホントに感謝感謝だよ」

「いえいえ、お気になさらないでください♪それと、これはサービスのお茶です、暑いのでお気をつけてどうぞ♪」

「おおっ!ありがとうございます♪」

 

お茶と聞いて真っ先に食らいついた白上が早速1口含み、ふぅ……と感嘆の声を上げつつ耳としっぽをふやけさせる。

そして、お茶を分け終えるとナザさんはにこやかな頬笑みを浮かべたまま一礼して再び厨房の方へ戻って言った。

 

「相変わらずフブキはマスターの淹れるお茶が好きだよね〜」

「だってとっても美味しいんだもん〜……」

「ってか、すげぇふにゃふにゃだな」

「フブキはここのお茶を飲むといつもこうなっちゃうんだ」

「「あぁ〜……」」

「そして、それに感化されて金剛と夏色もとろける」

「でも、金剛達程じゃないけれどもフブキちゃんのほっこりしてるところを見てると癒されるよね〜」

「わかるぅ〜」

「ま、ナザさんの淹れるお茶は確かにうめぇってのもあるからな」

「それも、わかるぅ〜」

「あれ、でも、なんで鴻山くんだけ器が違うの?」

「俺だけアイスだからだよ……猫舌なもんでね」

「猫舌……かわいい…………」

「……なんで百鬼までふにゃけてるんだ?」

「さぁ?なんでだろうね」

 

そうこうしつつそれぞれの食べる料理を決めて水鏡さんを呼び、注文。そして、続々と運ばれてくる品物を皆でつつきつつ俺の話題を中心に盛り上がっていった。

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

そして、宴会のような賑わいとなりつつあった最中……

 

「龍神くん〜ちょっといいかな」

 

少し申し訳なさそうに水鏡さんが顔を覗かせた。

…………ふむ、何かあったのかな?

 

「どうしました?」

「えっとね、今日シフトに入る予定だった子が急用で来れなくなっちゃって……」

「分かりました、その穴埋めですね」

「えぇ。お友達と盛り上がってるところ申し訳ないのだけど……」

「ってことなんだが……わりぃ、ちょっと抜けても大丈夫か?」

「おや。それは仕方な「もしかして、シンのウェイター姿が見れるのか!?」えと……あやめ嬢?」

 

いや、なしてあやめはそんなに目を煌めかせてるんだ?

 

「でも、百鬼ほどではないが、君の働きぶりも気になるな」

「…………まぁ、今日はいきなりエスケープしてたからね〜……」

「エスケープ……黒ちゃん……せんせ…………うっ、頭が……」

「…………ま〜、別に減るもんじゃねぇし良いけどもさ」

 

とりあえず、了承してくれたってとこでもう一度皆に断りを入れてから席を立ち、水鏡さんの後に続く。

 

「ごめんね、いきなり呼んじゃって」

「別に構いませんよ。世話になってる分、その恩返しはしないといけませんからね」

「学校の授業はサボったのに?」

「なんで、ここでその話になるんですか…………」

 

ジト目になった水鏡さんから軽く睨まれつつ、更衣室に入って自分のロッカーを開けて学校の制服から、手早くこの店のウェイターの格好に着替え、髪型も少し形を変える。そして、更衣室を後にし事務所によってタイムカードを差し込んでから厨房に立寄る。

 

「マスター!鴻山、入ります!」

「あぁ!申し訳ないです!」

「気にしないでください!接客いきますね!」

 

忙しそうなナザさんに一声かけてから、丁度呼び出しが入ったテーブルへと向かう……

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お待たせしました、ご注文を……」

「あら……」

「あ、噂の編入生くんだ〜♪」

「……なるほど、ここでバイトしているのか」

「お腹すいたにぇ〜……」

「ねぇねぇ、せっかくだし話そうよ♪」

 

おや、同じ学園の人……確かこのスカーフなら先輩に当たるのか。って、そのうちの一人の俺の顔を見てから楽しそうに話しかけてきてるのってパンフレットでみた高等部生徒会長のときのそらさんじゃ……?いや、今は確認することはよそう。こっちだって忙しいし……

 

「申し訳ありません、現在少々混み合っておりまして……」

「ありゃりゃ、残念……」

「仕方ないわよ、バイトの邪魔は出来ないもの……ごめんなさい、これとコレを注文するわ」

「承りました。他にご注文は……」

「……このスイーツを1人前頼む。後、俺には緑茶を1杯」

「にぇ〜……」

「……あとは特にないわね」

「分かりました。すぐにお持ちしますので少々お待ちください」

 

一礼してからそこを後にし、すぐ様受け取った注文を伝える。そして、またすぐに別のテーブルへ…………

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お待たせしまし……」

「え!?先輩!?」

「わ!びっくりs」「あ、鴻山くんだ〜」

「へぇ……この子が噂の……」

 

っとぉ?またか!しかも、4分の3は知ってる人達だし!

 

「申し訳ありません、現在混み合っておりまして……」

「〜っ!」(パシャシャシャシャシャシャッ)

 

おい、天音よ。なしてお前は写真を撮っとるのだ、しかも高速連写で。

 

「ねぇねぇ、また今度さ時間があったらさ、またテトリス勝負しようよ!」

 

星街よ、そのお誘いは嬉しいが今はそれどころじゃないんだ察してくれ。

 

「えと……それじゃあコレとコレを、あとデザー(パシャシャシャシャシャシャシャ)……にコレを」

 

ナイスだ、角巻!被ってたけどな!あとお前は一体、何枚撮るんだよ天音!さっきからずっと撮ってるじゃねぇか!!

 

「フムフム……?」

「その……すみません。ご注文を……」

 

そっして、さっきからあなたは何を吟味してるんですか!金髪の先輩!

 

「あ、ごめんね。私はいいから……」

 

結局無いんかい!!

突っ込みたい気持ちは山々だが、ここは我慢する。ともかく一礼して……(パシャシャシャシャシャシャシャシャシャ)まだ撮っとるのか天音ぇ!!……コホン、そうして再び厨房へと注文を伝え、次なるテーブルへ…………

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お待たせしました。ご注文……」

「牛丼大盛り五杯!」「いや、ノエル?ここ喫茶店だよ!?」

 

ナイス突っ込みだエルフの人!こういう喫茶店に牛丼なんてそうそうないぞ!!あるとこにはあるけども!!つうか、牛丼大盛り五杯ってどんだけ食うねん!!

 

「えっと……すいません。コレをふたつ、そのうちひとつを大盛りでお願いします」

「るしあはコレ!」

 

きっとこの集団の中で一番まともであろう少し褐色肌のエルフの注文に続いて、小柄な緑髪の子が元気よく注文する。……しかし、何だ。なんで緑髪の子はなんか海賊の格好した人の膝の上にいるんだ?…………というか、海賊の人に限らずここのテーブルの人達皆何かしらコスプレみたいなのしてるな。さっき牛丼頼んだやつは何処ぞの騎士団みたいな格好だし、まともなエルフもチャイナ服みたいなの着てるしというかそれよりも彼女に近くに浮いている小さなパンダは一体なんなんだ。んで、緑髪の子は……まぁこの子の服装が一番まともか。…………で、あとは兎と。

 

「他にご注文はありますか?」

「マリンとぺこらは?」

「ん〜……私は緑茶を貰います」

「ぺこらは……」「緑茶と人参一つですね、承りました」「ちょっと待つぺこ!?」

 

何だよ、こっちは忙しいんだよ、人参嫌いなのか兎よ。

 

「ぺこらもスイーツ食べたいの!!」

「……分かりました」

「いやホントに分かってるぅ!?」

 

とりあえず『人参(スイーツ)』とでも書いとくか。

まだ喚いているぺこらと呼ばれた兎は置いておいて、一礼してからテーブルを後にして、厨房へと注文を伝える……

 

「?人参のスイーツ……?」

「兎のお客さんだったので。まぁ、人参に生クリーム付けてあげればいいと思いますよ」

「ん〜……それなら簡単に出来るのでいいのですけど…」

 

不思議そうに首を傾げるナザさんだったが、すぐさま料理を作り始めた。それを見届けてからまたまた呼び出しの入ったテーブルへ…………

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お待たせしました、ご注文をどうぞ」

「ご注文はアナタで♪」

「帰れ」

「酷くないデスか!?」

 

何だよ何だよ、この店。弥吾呉学園の奴らにはめちゃくちゃ人気なのか?今度はココとトワ、白氷那くん……そして見知らぬ、しかし同じ学園の制服を着た同級生二名か。

 

「ココ、悪いが今忙しくてな。早めに注文頼む」

「む〜……」

「忙しいなら我慢しよう……えと、このパフェを5つお願いします」

「あいよ」

 

そうして、注文を読み上げていると……

 

「えと……私もここでバイトしてるんだけど…スゥー………手伝った方がいいかな?」

 

同級生二人のうちの片方、濃い紫色の髪を流した女子の方がおずおずと声をかけてきた。

……ふむ。

 

「ちょっと待ってな…………水鏡さん!!」

「どしたの〜?」

「人手、まだいります?」

「ん〜………………正直言うと欲しいわね」

「分かりました。…………つうわけで、悪いな手伝ってもらえるか?えと……」

「あ、あてぃし、湊あくあ。えと……確か……」

「今日隣のクラスに編入してきた人だよね!」

「ん、その通り。詳しいことはココにでも聞いとけ……そんじゃ、湊悪ぃが手伝い頼む!」

「わ、分かった!」

 

湊を連れてテーブルを後にし、厨房へ注文を伝える…………そして、そのまま次のテーブル…………

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

………………ようやくピーク終わった…………。

控え室のソファにぐったりと寄りかかりつつ、マスターの淹れてくれたお茶を飲んで一息つく。流石にあの勝負の後だと疲れも増えるな……。

 

「二人とも、今日はありがとう〜。すっごい助かったわ」

「はは……まさかここまで大変なことになろーとは……」

「い、いえいえ!お気になさらず……」

「いつもはここまでじゃないのだけども……まぁ、いい経験にはなったわよね」

「確かに……っと」

 

さて……あんまりここでゆったりしてる訳にもいかねぇな、皆を待たしちまってる。

 

「っと……これから俺一緒に来てるやつらのところに戻るけど……湊はどうする?ココら帰っちまったろ?」

「あ…………えと…………」

「因みにメンツは男性陣は俺、こ……鳳、戦場ヶ原、未来川。女性陣は白上、大神、夏色にあやめだ」

「スゥー…………そ、それなら……お邪魔させてもらおうかな…………」

「ん、わかった。……つか、そんなに緊張しなくていいぜ?」

 

俺の言葉にもガチガチに固まりながら高速で首を振るう湊……ううむ、どうにもすんげぇコミュ障か何かっぽいな。

 

「…………あ〜、ともかく行こうか?」

「ひ。ひゃい!!」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

んで……湊共に皆が待ってるテーブルへと戻ったんだが…………

 

「…………なんか増えてるな」

「む。なんかってなんなのさ〜?」

「ひゃあ〜…!」「ね!ね!凄いでしょう!!」「これは…………ヤバい余!!」

「やほ〜♪お邪魔してるね♪」

「いや〜、今日の勝負について色々聞けて楽しかった!」

「あ、あくあちゃんもここでバイトしてたんだね。ともかく、二人ともお疲れ様」

「あ、ありがとうミオちゃん……!」

「…………つか、なんでしれっとお前までいるんだよ……」

「え!?2人って知り合いなの!?」

「あれ?話してなかったか?俺ら3人幼馴染みなんよ」

「「何だってぇ!?」」

「それは僕も初めて知ったよ……」

「中々、面白い組み合わせじゃないか」

 

何やら人が増えてるのに加え、もう一人の幼馴染みにして俺が引っ越すよりも先に外国に留学して以来の再会である、カナデレミがいつの間にやら鎮座していた…………うちの学園の制服で。

 

「久しぶりの幼馴染みに対しての第一声が『なんか増えてる』ってなんなの〜?」

「まさか、レミが来てる……しかも、同じ学園にいたなんて思うかよ……」

「それについては私もまさかリョウくんが編入して来るなんておもってなかったよ。すいせいちゃんとのテトリス勝負に呼ばれててびっくりしちゃった」

「めちゃくちゃ疲れたがな……。んで!星街、さっき言ってたテトリス勝負予定あったらやろうぜ。苦手なジャンルのゲームとはいえ、負けっぱなしってのは嫌だからな!」

「うんうん!こちらこそ大歓迎だよ〜!でも……私も負けないからね♪」

「望むところさ……!」

「すいちゃんに宣戦布告してる……」

「でも、二人の勝負なら見てみたいな」

「相変わらず負けず嫌いなんだから……」

「はは!それがコイツの面白いところなんじゃねぇか」

「奴の実力ならば、すいちゃんも楽しめるだろうからな……会員達には手出ししないように厳命しておこう」

「あはは……麗鵝も大変だね……」

(も、もしかしてライバル?)

(い、いや!まだ分かりませんよあやめ先輩!)

「あ……もしかして、彼って……」

「そうそう、クラスに戻った時にも話したすいせいと凄い勝負を繰り広げた名プレイヤーだよ」

 

そうして、俺と星街が火花を散らしていると……

 

「やほ〜……って、何か龍神くんが燃えてるね」

「あ……水鏡さん」

「お、何かありましたか?」

「そうそう構えなくていいよ。後お客さんで残ってるのここの人達だけだし、私も手隙になってマスターの許可を得てから混ざりに来たのと、龍神くんにいつもの頼みに来ただけだから♪」

 

ひょっこりと首だけを出してきた水鏡さんの言葉に皆が首を傾げる中で俺は一人、やれやれまたかと思いつつ肩を竦める。

…………しかしまぁ、今日は忙しかったししゃぁねぇか。

 

「こころ、また寝ちゃったんですか?」(へ?こころちゃん?)

「えぇ、そりゃもうぐっすりと。こんな時だけどもまたお願いしてもいいかな」(ふぇ?)

「……今日は特に忙しかったら特別に」

 

俺の言葉に少し苦笑いしつつ、水鏡さんが俺達が居るスペースに入ってくると……その背中にはやはりというかなんというか……予想通り、すやすやと静かな寝息を立てる天宮こころの姿があった。そして、少し断りを入れつつ湊と席を代わってもらい、こころを水鏡さんの背中から受け取って膝の上に乗っけると、すぐさま猫のように体を縮こませながら俺の服をギュッと掴む…………のを見ていた皆のうちの、恐らく約2名が何やらおかしな奇声をあげる。

 

「zzzzz……んみゃ……」

「ったく……」

(((((おぉ……何か母性感じる顔だ……)))))

「お前……またか」

「またかってなんだよ」

「仕方ないよ、剛くん。リョウくん、口は悪いけど雰囲気が優しいのは確かだから」

「にしたって…………なぁ〜流石にこうまで異性から頼られるのはすんげぇ羨ましいぞ?」

「俺は頼って貰えるだけで十分だがな」

 

そう話しつつ、すやすやと先程よりも心地よさそうな表情で寝息を立てるこころの頭をゆったり撫でてやる。

 

「ちょちょちょ!?」「ふっふふ二人はどどどんなかんかんかん!!」

「ハイハイ、落ち着け落ち着け二人共。こころとはこのバイトで出会った…………いわゆる妹みたいなもんさ」

「妹分なんだ。というか、このバイトそこそこ長いの?」

「実は何気にここに定住する前、半年前くらいからやってた。ま、裏方メインで、接客は平日の昼間のみだったから顔合わせることはなかったろうよ」

「そして、その子と出会ったのか」

「そ、俺がバイト始めて少しして入ってきてな、色々教えてやってるウチに懐かれた。因みに、湊と今日が初見だったのは少し立て込んでバイトに来れない時期があってな……多分そん時に湊がバイトに入ってきたからだな」

「……なるほど、だからこころちゃんが少し落ち込み気味だって水鏡さんが話してたんだ……もしかして、ここ最近元気になったのって……」

「俺がバイトに復帰したからだろうな…………っと」

「うみゅ…………」

「わり、もう少し小声で話していいか?」

 

少し声が大きすぎたのか、元々小さな体を更に縮こませてうるさそうに身を捩るこころ。さて、どうしたもんか……と考えを巡らせながら彼女の頭をあやすように撫でていると、頭上からは何やらパシャパシャと連続して写真を撮る音が。

 

「…………お前ら?」

「あ、いやぁ……」

「零斗らもかよ……」

 

まさか、女性陣だけではなく男性陣まで写真を撮ってやがるとは……。ってか、あやめと天音の目が少し怖いんだが?

 

「た、たはは……私と熱戦を繰り広げた人と同じ人とは思えなくて…………」

「……き、聞いてたような人とはかけ離れすぎててつい…………」

「いや〜……昔からリョウくんは母性ある方だと思ってたけど、まさか成長して更にそれが増してるとはね〜」

「確かに、俺もコイツがここまでオカン属性増やしてるとは思わなんだわ」

「おや?それはちょっと気になる話だね♪」

「その話!」「詳しく!」「教えて!!」「欲しい余!!」

「何だかあやめちゃんとかなたちゃんの息が一日で凄い合うようになってる……」

「そこは気にしなくても大丈夫だよ、フブキちゃん〜」

「でも、天宮ちゃんだっけ?確かに何だか保護欲がかきたてられる子だね〜」

「それについては同意する」

「何やらうちのクラスのオカンが増えたようね〜」

「片方男だろうが……」

「…………優しいんだ……」

「あれ?あくあ?」

「!!べっべべ別になんでもないにょ!!」

 

結局、賑やかになる俺達の席。

…………けど、これからこんな日々が続くとなると嬉しいもんがあるな。

 

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

その後、しばらく皆でワイワイと賑やかに過ごしていたが麗鵝の塾や星街のレッスンの時間が近づいてきたということもあってお開きとなり、それぞれの帰路に着くことになった。(因みに代金は男性陣で割り勘した。女子に払わすわけにゃいかんからな)んで、俺はと言うと……

 

「zzzzzz…………」

「っしょっと……」

「えっえと……だ、大丈夫ですか?」

「ああ、つか……天音がこっちの方とはな」

 

結局最後まで眠りこけていたこころを背負い、彼女の自宅へ……同じ方向に自宅があり、しかも同じクラスである(これには結構驚いた)天音と共に向かっていた。

 

「にしても……何か今日はやけにお前に世話になったな」

「ふぇ!?」

「最初、案内してくれたのもお前だったし、星街とのあの勝負が成り立ったのもお前が用意してくれたおかげだった。ありがとな」

「へっ……へいっ!!」

 

それと同じくらい奇行が目立ったけどな…………それは言わないでおくか。何か嬉しそうなところに水を刺したくねぇしな。

それからは天音の普段の生活の様子を聞きつつ、のんびりと歩を進める。…………因みに天音の話としては総じて、ココ(あの暴走ドラゴン)に苦労してるみたいだ。…………全くアイツは……。

 

「ん……」

 

そうして少しすると、背中にいたこころが目を覚ましたようで身を起こした気配がする。

 

「お、起きたか」

「んみゅ…………ふぁれ?にぃにと……かなちゃん?」

「おはよ、こころちゃん」

「…………んん〜……」

「今日は爆睡だったな、結構疲れてたか?」

「……そうみたぃ…………」

「そか。ならそのまま休んでろ、家まで送ってやるから」

「ん……ありがと、にぃに……」

 

だが、疲れで睡魔が強いのか再び俺の背に身を預けて寝息を立て始めた。

 

「ありゃ……また寝ちゃいましたね……(う、羨ましぃ〜)」

「それだけ疲れてたんだろ」

 

少しこころを背負い直してから、何となく星が瞬き始めた空を見上げる。

 

 

…………明日からは本格的に今日以上にあの学園を、中心とした生活がスタートする。

別に前の学校も楽しくなかった訳じゃないが…………今日あった面子だけでも濃い連中なんだ、これからの日々が楽しくなりそうだぜ…………あん時の辛さを忘れさせてくれそうな程に……………………な。

 

 

「鴻山先輩?」

「……わり、少しぼんやりしてたわ」

「もしかして……先輩も疲れてます?」

「かもしれねぇな。あの激闘の後だ……流石にあるかもしれねぇや。…………あと、『鴻山』じゃなくて名前呼びとかあだ名呼びでもいいぞ」

「ふぇ!?そっそそそそそそんなおおおお畏れ多い……」

「おいおい、お前の中で俺は一体何なってんだっての。ま、強制じゃねぇし、こっちは名前で呼ばせてもらうがそっちの好きなタイミングでいいぞ」

「はっはははいっ!ってはい?」

「ってか、今日会った奴らは皆名前呼びしてもいいか?……後で確認するとすっか。ともかく本格的に暗くなる前に行くぞ、かなた」

「わっ!ま、待ってくださいよ〜!!」

 

こころを起こさないようにしつつ軽く早足で歩き始めた俺の後を慌てて追いかけてくるかなた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………ホント、明日からもこんな日常が続けばいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        act-3 end

        LETS GO TO NEXT STAGE




以上、ホロ二次創作最新話でした!

次回はSS挟んでゆゆゆ(もしかしたら連続)投稿の予定です。
大乱闘って大変や……(少しネタバレ)


それでは、誤字脱字、ご意見、ご感想の方気兼ねなくお寄せください!

PS.本日はサンキューの日、いつも読んでくださる方々ありがとうございます!

かなり日はまちまちで期間も空いたりしてしまいますが、気長にお待ち頂ければ幸いです。
そして、
これからも頑張っていきますので、よろしくお願い致します!

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