「へぇ、りんちゃんってピアノやってるんだね」
「うん、幼稚園の頃からやってるんだ」
あれから1月が経ち、白金ちゃんとも大分打ち解けてきたように思う。
最初の頃は周りからちやほやされたり、白銀さんが緊張して話が続かなかったりしたが、今では慣れたことで、言葉に詰まるようなこともなくなってきた。
「かずくんもなにか習ってることとかあるの?」
「習い事はしてないなぁ、けど父さんに習っていろいろ作ったりしてるのだよ!」
そのお陰か、呼び方も"かずくん"に"りんちゃん"と愛称で呼ぶようにも慣れた!うん、かんばった!
「いろいろって例えば?」
「例えばって言われると困るけど、絵も描くしアクセサリー作ってみたりとか…うん!とにかくいろいろ」
「ふふふ、かずくんって多芸なんだね」
「ん、タゲイ?」
「いろいろなことが出来るねってことだよ」
「おぉ、そういう意味なのか!」
りんちゃんは俺に比べて遥かに頭がよく、こんな感じでよく物をおしえてもらっている。授業でいつもお世話になっておりますっ!
よく授業で指されて困っているときとか、こっそり答え教えてくれるんだよね。マジ天使。
「けどピアノって凄いなぁ、両手でカタカタなんて出来る気しないわ」
「カタカタってパソコンみたいだね…、慣れたら出来るようになるよ」
「慣れるまで練習できるのがすごいと思うのです。そうだ、今度聞かせてよ!」
「え…ぅん…いいよ?」
「なぜにはてな?」
「だって…人に聞かせる自信なんてないから」
そういってちょっとそっぽ向くりんちゃん。
ん~上手く弾くことって必要なのかなぁ。ぼくもよく絵を描いては自分で父さんのと比べてへたっぴって思うけど、父さんは上手だって言ってくれるし、この絵はこの絵で好きっていってくれる人だっているって母ちゃんが言ってくれる。
父さんを真似ていろいろ作るけど、どれも父さんのようには上手く作れない。父さんも自分で自分の作品をまたは作れないって言ってる。
『この世に同じものはない、同じものって言うのはつまらないことだよ』
これは父さんの言葉だ。母さんにそのあと
『クローンって同じものよねぇ』
って言われて膝から崩れ落ちていたけど。
ぼくはそれだけじゃあなんのことかよくわからなかったけど、次の言葉でよくわかった。
『そうだなぁ…周りのみんな、友達のけんくもんゆうくんもはるくんも、全員が全員同じ顔で、同じ声で、同じ反応をする。それって楽しい?』
ぶっちゃけホラーだ。
けどよくわかった。誰もが同じ反応をして同じものが返ってくるなんてそれはつまらないって。
うん、何を考えてるかわからなくなってきたが、目の前のりんちゃんの方がぼくが何を考えてるかわからなくて不安そうな顔をしておる。
だからぼくの伝えるべき"ことば"はなんだろうか。
それはたぶん…
「ぼくは、りんちゃんの音が聞きたいんだ
…りんちゃんのだから聞きたいな」
今週末、りんちゃんの演奏を聞かせてもらうことになりました。とても楽しみです。あれ、作文?
Side:Rinko~ちょっと前のお話し~
最初は怖かったです。
名前が似通っているというだけど話しかけてきた鉄くん。
そもそも私は目を会わせて話すことが得意じゃないです。なのに鉄くんはまっすぐに私の目を見つめてきます。
だから私は鉄くんの方を一切向けませんでした。
そうしたら鉄くんは
「何かわからないけどごめんなさい!」
「…ふぇ?」
必死に謝ってきました。
そこで私は久しぶりに、鉄くんの目を見ました。
子犬のように無邪気にくりくり輝かせていた目は不安そうに揺れ、まるで飼い主に怒られたあと、こちらを伺ってくるような目になっています。
あ、何かかわいいなぁ。
少しだけ怖くなくなりました。
「えっと…どうしたんですか?」
「ぼくがなんかやっちゃったのかなぁって…
目を会わせてくんないし…」
「…鉄くんは何も悪いことはやっていませんよ」
「じゃあなんで?」
なんで、と聞かれましても…
「その…私は何と言いますか…人と話すことが得意じゃなくてですね…その…どうすればいいのかわからないんです」
「うーん、それじゃあ話してみよう!話して、話して、知って、わかって、そうすれば大丈夫!多分!」
すごい自信満々な口調なのに弱気な言葉尻。
そんなアンバランスな言葉と、無鉄砲な言葉。
私は、そんな無鉄砲さを見習いたく思った。
一途くんは父さんの影響により変な語彙はあるけど基本は馬鹿です。