ガバ日本語は仕様です(震え声)
あの後、泣き疲れて眠ってしまったユウリをゆっくりとベットに寝かせてその日は帰宅した。
抱き抱えた時、あたしでも軽々支えられた。病弱にしても、あまりにもひ弱に感じられた。
…どうか神様、ユウリの体調がこれ以上に悪化しませんように。
ユウリのお母さんにはとても感謝された。あんなにも素敵な笑顔を見せてくれたのは、久しぶりだと言われた。
あまり、感謝されることには慣れてないから恥ずかしかった。…エール団からのは慣れてるのに。
…ぐっすりと眠っていたあの時のユウリ寝顔は本当に幸せそうだった。愛おしくて、たまらなくなった。鮮明に思い出せる。
でも、今は思い出す必要は無い。
(だって、今じっくり見るーけん。本物を見た方がよかと)
ユウリを軽く撫でながらじっくりと顔をのぞき込む。
あの時とは違って、ただ眠っているだけ。それだけなのに、見ているあたしがとても幸せになってしまっている。
(ダメ、あたしが幸せになってどうすると)
…そうは思っていても、そう簡単に幸せは手放せなくて。
(…あたしに子供が出来たら、こんな風に感じるんやろうか)
そんな事を思っていると、モルペコが大きなあくびをした。顔の半分以上が口になる程のあくび
「うらー…」
「モルペコ、あんたも眠うなったと?」
鳴き声の代わりにあくびで返事をした。ユウリを撫でるのをやめてモルペコの方に向く。目元をこすっていて眠たそうだった。
「…じゃああたしが子守唄ば歌っちゃる。ほら、おいで」
よたよたと足元がおぼつかない歩き方であたしの膝の上に乗った。と言うよりは倒れ込んできたと言うべきだろう。
「…よしよし」
左手でユウリ、右手でモルペコを撫でて、深呼吸をする。
「――――――」
歌う曲は、昔アニキに歌って貰った子守唄。あたしの思い出の曲。染み付いて、心を満たしてくれている。あたしの心に何時もある曲。
あたしが寂しくて泣いていた時に歌ってくれた子守唄だ。
いつも、歌ってくれる時は優しく撫でてくれた。あたしが寝付くまで、ずっと歌ってくれた。
その時のアニキは、いつもより心地よくて。暖かくて。何時までも聞いていたかった。
…今は恥ずかしくて言えないけど、本当は今でもずっと聞いていたい曲。
…そういえば、モルペコが来てからだっけ。子守唄聞かなくなったのは。
(…そう思うと、あたしとモルペコって結構長かばい)
ふと、モルペコ方を見ると小さないびきをしていた。注意すれば聞こえてくる可愛らしいいびきで、いつも眠る頃には聞こえてくる音だった。
「…モルペコ、いつもありがとー」
あたしとずっと一緒に居てくれて。
「らー……」
寝ぼけているのかわからないけど、モルペコはあたしの方を向いて、ゆるりと笑って鳴いた。
(直接言うのは、やっぱり恥ずかしか)
「ん…っぅ………」
恥ずかしさを誤魔化そうと思い、ふとユウリを見ると、微睡んでいるように見えた。
ピッピにんぎょうを手繰り寄せて抱きしめていた。…あたしの腕と一緒に。
「……んー?…うで……?」
少し時間を置いてから気付いた様で、ゆったりとまぶたを開ける。でも、そのまぶたは重そうだった。
ユウリと目が合う。
「おはよーユウリ」
「…ぁ、えっと、マリィさん?」
少し混乱している様で、はてなマークがいっぱい浮かんでいる光景が見えた。
「スキあり」
ユウリのほっぺを突っつく。あまり弾力感はないけど、触り心地はスベスベで気持ちがいい。
「夢じゃなかったんだ…」
「まだ、寝ぼけとー?」
「違うよ。さっき、夢の中でマリィさんに会ったんだ。…多分、子守唄かな?…すごく安心する歌を歌ってた」
にへらと幸せそうな笑顔を浮かべて、顔を赤らめてピッピにんぎょうに顔を埋めていた。
「…それに、マリィさんが私に会いに来た事が信じられなくて」
まだ夢だったりして、なんて呟いて、あたしの手に頬擦りをした。まだ体温は温くて、目覚めていない様に感じた。とても暖かくて、あたしも少しだけ眠たくなる。
「…マリィさん。子守唄歌って欲しいな。…また眠たくなっちゃった」
ふわぁという擬音が似合うあくび。とろりとした睡魔にまとわりつかれているユウリ。
「ん、わかった」
ユウリと手を繋ぐ。あたしの事を実感するようにふっ、と握られた。
歌い始めると、ユウリはすぐに眠ってしまった。一定のリズムで寝息が聞こえてくる。
寝顔は前に見た時とは違った。幸せそうで、愛おしくて、たまらなくて、更に今のユウリは微笑んでいた。
…ユウリと繋いだ手は強く握られていて、今のユウリと昔のあたしが重なった。
手を繋いで、アニキと一緒に眠っていた頃のあたし。
(あの頃は、寂しかったけど)
(…あたしは、アニキと一緒で幸せやった)
(…ユウリ)
(今のユウリは幸せやろうか)
(…そうやったらよかね)
小さい頃、マリィがネズさん子守唄を歌って貰っていたという独自設定
書いててとても楽しかったです(小声)
(ダンテさんじゃなくてダンデさんだった)
貴方には命に関わってしまうが、どうしてもやりたい事がある。やりたい事は生涯の夢。
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命に変えてでもやる。
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やりたい事を諦める。