仮面ライダー01<ゼロワン> × 新サクラ大戦 ー新たなるはじまりー   作:ジュンチェ

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神山隊長の中の人って、ゲームでG3ーXの声当ててたんすね。知らんかった…

そして、新サクラアニメの次回で死亡フラグビンビンのレイラお姉ちゃん…強く生きて…。このままじゃ、悪い男に引っ掛かった上に本命は妹だったという不憫過ぎる最期やん。悲しすぎるよぉ。




夢見た幸せ/怪物の少女 Ⅰ

……とある遠い遠い国

 

 

そこには、大きな屋敷があってお姫様と兄…その両親からなる貴族が住んでいました。

 

 

お姫様の一族は『重魔導』と呼ばれる特別な力があり、先祖から代々その力で歴史の裏から権力者の下で暗躍してきたのでした。嵐を起こし、時には山や街すら消しとばすような危険な力…それを振るうことで、時の権力者からの見返りを受けて現在の貴族の地位を手にいれていたのです。

勿論、お姫様もその重魔導を修めることを求められましたが、内向きで本を愛し…何よりも破壊の力である自分の一族の異能とその歴史を忌々しく感じる彼女はそれを拒否します。父にぶたれ、母に叱咤されても断じてそれを受け入れず、いつしか部屋に閉じこもり外に出なくなったお姫様。最初こそは力付くだった両親もいつしか、諦めて彼女に我が子としての意識を向けなくなります。…一族の恥さらし、出来損ない。心無い言葉がより孤独な心を殻の奥深くへ

 

 

それでも、お姫様には唯一見捨てない優しい『兄』がいました。

 

 

彼と本の語るお伽噺、それがあったからまだ彼女は本当に孤独ではなかったのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ですが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眼前に拡がる血の海… その中心で倒れているのは……

 

 

 

「いやあああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

★★ ★★ ★★ ★★ ★★

 

 

 

 

 

 

 

「…はっ!?」

 

 

目を覚ますとそこは自室だった…。額にはダラダラと汗の粒、荒い息…魘されていたのか?窓の外はもう暗い。一体、どれだけの時間を寝ていたのだろう。頭痛と吐き気…倦怠感を覚えながらも記憶を呼び起こす。

 

 

(そうだ……私は…)

 

 

使ってしまったのだ……二度と使うまいと決めたあの忌々しい『重魔導』を。直撃を受けたウォズは変身解除され、自分はそのまま気を失った…。

 

 

「…気がついたか?」

 

「あ…」

 

 

部屋に誰かがいる。太正世界では珍しい黒のスーツの女性…唯阿だった。片手にはショットライザー…それだけでどんな状況なのかを理解する。

 

 

「…悪い夢、ではないようですね。」

 

「ああ。万一に備えて私が面倒をみることになった。嫌だろうが、必要な処置だ。」

 

 

再びアナザーダブル化した際に即座に対応出来るように彼女が世話役…もとい、監視役に選ばれたのだろう。何となくだが腹に異物感があるような気はする…燻る火種が再び燃え上がりたいと疼いているような。

もう脚本どころではない。こんな自分はどうなるのだろう。 …助かる術はあるのか? …それとも、降魔扱いとして処分されるのか?

 

 

「私は、地獄に堕ちるのでしょうか?」

 

「…今、治す宛をさがしているところだ、希望を持て。」

 

「裏切られるなら、持たないほうがマシです…そんなものは…」

 

希望などない。クラリスの心無いは暗く深いところへ再び閉ざされたのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

★★ ★★ ★★ ★★ ★★

 

 

 

 

 

 

 

…さて、場所は変わって帝劇の支配人室。

 

 

 

「ご足労してもらってすまない、ランスロットくん。 君のおかげで、私の身分は証明されたよ。」

 

「…面倒起こすなって、あたし言わなかったっけ?」

 

 

ウォズは自分がロンドン華撃団所属する仮面ライダーとして身分を証明するためにランスロットを呼び出して、すみれ支配人や花組の面々に紹介していた。無理矢理、連れてこられたランスロットは露骨にイライラしているが全く彼は気にする素振りを見せずにしており、やれやれと溜め息をつく。『ま…それより』と彼女は星児へと視線を移すと、バツの悪そうな顔が映る。

 

 

「やあ、『見習いクン』。色々と話はあるけど、それは一先ず後にしようか。」

 

「…うっ」

 

 

……見習い? 首を傾げるさくらとあざみ。すると、神山が説明をしてくれる。

 

 

「星児は正確には見習い隊員として、ロンドン華撃団に籍を置いてるんだ。」

 

「え…あのロンドン華撃団に!?」

 

「ロンドン、ベルリンに並ぶ強豪華撃団…」

 

 

ここで明らかになる星児の経歴。ロンドン華撃団は世界に存在する華撃団の中でも実質No.2相当の実力があるとされる華撃団で、ランスロットはその中でもエースとして知られている。そんな場所に彼が在籍していたとは夢にも思わなかった彼女たちだが、居場所として申し分ないロンドンを捨ててまで帝都に戻ってきたのは更に驚きである…

しかし、確か帝劇を無断で出ていったという話だったはずだが…

 

……それよりも、今はもっと重要な問題がある。ランスロットは改めて、デスクに座るすみれに向き直った。

 

 

「すみれ支配人、うちの特記戦力がお騒がせしました。そして、今の帝国華撃団の問題も聞いてしまったのですが、彼…ウォズから今回の件に何かしらの対抗策があるようです。お時間を頂いても?」

 

「ええ、構いませんわ。」

 

 

アナザーダブル…クラリスの一件は必然的にランスロットも知るところになった。本来、イギリスの華撃団である彼女が首を突っ込むのはまた別の問題になりかねないが、通りすがってしまった以上は無視は彼女の性分上不可能な上、ウォズも関わる気が満々だ。

 

そして、指名が入ったウォズは皆に説明をはじめる。

 

 

「では、改めまして…。私はウォズ。ロンドン華撃団に一時、身を寄せている仮面ライダーだ。アナザーライダーの案件に関しては、私の専門分野であると言っても他言ではない。」

 

「「「アナザーライダー…?」」」

 

「君達も既に戦ったことがあるはずだ。クラリスくんが変身したものと同様の…降魔とは違う異形に。あれらは、タイムジャッカーが仮面ライダーから力を奪い取り、歪め、産み出した怪人さ。」

 

 

花組たちの記憶に過るアナザーゼロワンやアナザークウガ… クラリスの変身したアナザーダブルに朧のアナザーバルカンなど降魔とは違う異能を扱う強力な怪人たち。普通の仮面ライダーや霊子戦闘機の攻撃すらろくに通じない厄介な相手。……そんな怪物にどうしてクラリスが変貌してしまったのか。その答もウォズは持っている。

 

 

「今回、クラリスくんについてだが…彼女は上級降魔・朧に触れられた、もしくは何かされた瞬間にアナザーダブルになったという話だが、恐らく核であるアナザーウォッチを埋め込まれたのだろう。これが本当に降魔がやったとするなら、奴等は間違いなくネオ・タイムジャッカーと繋がっていると見て間違いない。」

 

「クラリスさんを元に戻す方法はありませんの? 例えば、その核を外科手術などで取り出すなどは…」

 

「それは無理ですが…救う方法はあるにはある。彼女がアナザーライダー化した時に、核のウォッチが耐えきれない程の火力を与えるか…もしくはオリジナルである仮面ライダーダブルの力で倒すか。現在可能なのは前者です………しかし…」

 

 

方法はあるとしながらも、歯切れの悪いウォズ…どうしたというのだろう。アナザーウォッチの破壊も彼のギンガファイナリーなら十分に可能なほど火力を持つのに何がいけないのか?

 

 

「今回の一番の問題は、彼女がよりにもよって『仮面ライダーダブル』のアナザーライダーであることです。ダブルは本来なら変身者が二人であることで成立するかなり特殊な仮面ライダー……しかし、アナザーウォッチは対象につき1つ。それでも、ダブルを強引に再現しようとすると…」

 

 

 

 

 

 

 

★★ ★★ ★★ ★★ ★★

 

 

 

 

 

 

…再びクラリスの部屋

 

 

 

唯阿はクラリスの目覚めを花組に伝えるために部屋を出た…。残された部屋の主は溜め息をつき…虚ろに天井を見上げる。いつも寝起きして生活する部屋もなんだか牢屋のように息苦しく感じる…朝は神山とのデートだとうきうきして準備していたのが嘘のよう。

 

 

(……私の居場所は、やっぱりここにも無かった。)

 

 

結局、ルクセンブルクの実家と変わらない。重魔導を理由にずっと嫌なものから目を背けてきた……一族の宿命、両親…帝都に来てからもろくに戦闘には参加しなかったし、演技もろくに出来ない始末。花組の面々も既に重魔導のことは知ってるし、神山も『なら、無理はしなくていい』と許容はしていたが……きっと本心ではあまり自分を快く思っていないだろう。

 

 

 

 

……逃げたい。 ……でも何処へ?

 

 

 

逃げられる場所なんてない。この帝劇に来たのも、唯一の救いだった兄を傷つけた事実に耐えられなかったから。しかも、腹の中には重魔導とは違う外部の力が尚も自分を喰い破ろうとしている。そんな自分は何処にいけば…

 

【……クスクス】

 

「…?」

 

 

何処からか笑い声がする。おかしい…自分以外は部屋にいないはず…

 

 

【逃げたい? でも逃げれない…? もう逃げられる場所なんてない? 本当にそう?】

 

「…頭の中から …私の声が?」

 

 

自分だけど、自分じゃない… カセットテープの録音とは違う明確な意思をもった『誰か』が喋っている。幻聴にしても明らかに質の悪い嘲り嗤うようなトーンで、軽快に話しかけてくる。…耳を塞いでも意味が無い場所に陣取るソレは何なのかわからないが、思い当たるのはアナザーダブルと化した自分の姿。あれの影響なのか?

 

 

【あなたは怪物… ここでは幸せになれない。だけど、幸せになれる場所へ私は案内してあげられる。】

 

「幸せになれる場所? 何を…」

 

【代わりに払う代償はたったひとつ…… それは…】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★ ★★ ★★ ★★ ★★

 

 

 

 

 

「二重人格…?」

 

 

或人は首を傾げた。ウォズが危惧していたのは小説などでよくある『二重人格』…有名どころではジキル・ハイド博士なんかがそうだが、現実の症例・解離性人格障害としては過度なストレスなどによる自己防衛で自分にもうひとつの人格があるという思い込みなのだとか。

アナザーダブルは右側(ソウルサイド)と左側(ボディサイド)のダブルの機構を強引に再現しようとするためこの二重人格が起きるのだという。その人格は半身を預ける『相棒』どころか、変身者の負の側面などを象られ産まれたある意味『寄生虫』みたいなもので、特定の寄生バチや寄生キノコが宿主を傀儡にして最終的には喰い破るのと同じく変身者を蝕み衰弱させ肉体を乗っとるのだという。全く洒落にならない。

 

 

「クラリスくんにどんなタイミングで、どんな人格が発現するかはわからない。しかし、既に兆候は私と戦った時に確認は出来た。その人格が我々の味方になる可能性はほぼゼロだろう。」

 

 

先の戦いでウォズはフューチャーリングクイズで確認していたもうひとつの人格の覚醒。既に侵食は始まっていると見ても良い… なら、と不破が声をあげる。

 

 

「なら、朧を倒せば良いんじゃないのか?」

 

 

アナザーウォッチの破壊か元凶である朧を倒す…真っ先に思いつく手段。先は紆余曲折あって取り逃がしてしまったがこういったものは術者を倒せば元に戻るのは漫画やアニメのお約束だがウォズは残念ながらと首を振る。

 

 

「残念ながら、それは出来たとしてもクラリスくんは助けられない。アナザーウォッチは破壊しない限り止まることはないからね。そして、一番厄介なのは…アナザーダブル化した時に表層化していた人格が撃破した時に消えるということだ。」

 

 

緊張が走る空気。どうやら闇雲に戦えば最悪、クラリスの本来の人格の消失を招く危険性があるらしい。そんな結果になれば、事実上のクラリスは死亡する上にアナザーダブルの力を失えど帝国華撃団に離反する可能性だってありうる。

 

しかし、本来の人格と偽物の人格…どうやって見分ければ…

 

 

 

 

 

「あら、皆さんお揃いでしたか?」

 

 

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

 

 

その時、現れたのは問題の本人。涼やかな笑みで現れたクラリス…後ろでは唯阿が付き添いで一緒である。ウォズの話を経たため一気に警戒の空気に包まれる支配人室…だが、原因である彼女はキョトンとした様子で首を傾げていて無垢な表情を浮かべる。

 

 

「どうしたんですか? 私は見ての通り平気ですよ?」

 

 

…そんなわけがない。

 

しかし、確固たる証拠も無い。ただひとりの異質な笑顔だけで訴追しきることはあまりに難しい… どうしたものか?

 

そんな時、ふと或人の頭に過る出来事。

「…(神山さん、今日のデートとかに何か見分けるヒントは?)」

 

「…(急に無茶な!? いや、待てよ…)」

 

 

そういえば、神龍軒での会話で彼女は自分の作風について語っていたことを思い出す神山…。初心者でありながら任された大役の不安やコンプレックスに対する思いなど。彼女の心が見え隠れしていたそれらがカギに成りうるかも…

 

 

「なあ、クラリス…脚本はどうだい?」

 

「? …ええ、順調です。もう時期、書きあがると思いますよ? ただやっぱり素人には無理です。今後は2度と御免ですよ本当。」

 

 

苦笑するクラリス。周囲は神山以外は意図をつかめずにいた質問だが、彼は続ける…その顔に貼り付けた笑顔を浮かべながら。

 

 

「そうか…。で、作品はやっぱり『バッドエンド』かい?」

 

「「!」」

 

 

星児とアナスタシア…作りかけの脚本に目をとおしていたふたりは気がつく。神山が確かめようとしていた一点を… 彼女ならどう答えるかはわからないが、『絶対に答えない答え』…しないことだけは唯一ある。それは…

 

 

「ええ…

 

 

 

 

 

 

……惨くて、儚くて、美しい、全滅バッドエンドです。」

 

 

 

自分の作品がバッドエンドで締めくくること。そう彼女はこの結末で終えてしまいたくなくて神山に相談したのだから…もし、悩んだ末のバッドエンドのエンディングを選んだとしても、あれだけ悩んでいた笑顔で答えたりするわけがない上に協力した神山にすら言及する素振りすらない。

 

加え、全くの後悔の無い表情は明らかに不気味。 …もうこれで十分だろう。

 

 

 

 

 

「…クラリス…………いや、君は誰だ?」

 

 

 

 

 

彼女はもうひとつの人格…ドッペルである。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回のオリジナル設定を補足すると、クラリスの重魔導は口頭とはいえアナスタシア以外の花組は知っていますし無理して使わなくて良いという方針でした。そして、星児は正式にはロンドン華撃団の見習い隊員だったんです。つまり、ランスロットは華撃団大戦の下見と一緒に彼を連れ戻しにきたわけなんですね。つまり、厳密にはロンドン側の人間なんですよ星児…… あれ?でも勝手に飛び出したんじゃ…と思った読者さん、それはまた先に語ります。


諸々の原因はありますが、花組が面倒くさくなったのは■■■■■の悪魔のせいなんです(ネタバレ)





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