仮面ライダー01<ゼロワン> × 新サクラ大戦 ー新たなるはじまりー 作:ジュンチェ
そして、星は輝くべき場所へ。 Ⅰ
…大帝国劇場の屋根の上
青空から振りそぞく優しい日差しと小鳥たちと戯れながら、預言者ウォズは本を開く。ただ、いつもの本ではなく『新サクラ大戦』と表紙記された一冊…これをいつもの予言者節で読み上げる。
「この本によれば、新生・帝国華擊団は数々の困難と試練を乗り越え見事に帝都に手を伸ばす巨悪を討ち倒し、華擊団復興の悲願を果たす未来が待っていた。…しかし、既にこの物語はこの本に記されている道を辿りつつも全く別の意味と結末を迎えるものに向かっている。……産まれるべきではないものが産まれ、全てを破滅へ導くための物語に。」
そして、彼はパタンと本を閉じる。
「鍵を握るのは星の行く先。…眩い未来か、…明けぬ夜か。」
★ ★ ★ ★ ★
…大帝国劇場が
「本当に、申し訳ありませんでしたッ!!!」
―ドゴッッ!!!(大帝国劇場が揺れる音)
…揺れた、物理的に。しかも、ひとりの男の本気の土下座でだ。
騒動を経て正気に戻った星児はサロンに集まる花組のメンバーや仮面ライダーの面々に文字通りに頭蓋が砕けんばかりに頭を打ちつけて土下座。額からドクドク血は流れてるわ、パラパラと木屑や塵っぽものも天井から落ちてきている…。え、これ大丈夫なの? よろめきながらも、クラリスが宥めにかかる。
「俺は、自分の弱さに負けた…それなのに、忘れ形見だ花組の隊長なんて…俺は俺自身が恥ずかしい…!」
「あの、星児さん取りあえず落ち着いて下さいね?」
「頼む、許してくれ!! なんでもするからッ!!」
―ドゴッ!!!! …メリメリ(大帝国劇場が軋む音)
「 落 ち 着 い て 下 さ い ね ? (威圧)」
「アッハイ」
やべえ、今の本気でチビリかけたわ…と心の中で呟く神山。やっぱり、帝劇の女を怒らせるべからず…。
取りあえず土下座はやめさせる。さて、やっと本題に入れるとクラリスはコホンと咳払いして令士に持ってこさせた星児の光武の部品を皆の前へ出した。一見すると、何かシリンダーのようだがどことなく不気味な円筒状のパーツである。しかし、なんで今これを?神山は彼女に問う。
「クラリス、これは?」
「星児さんの光武のパーツです。皆さんも思っていたと思いますが、星児さんの行動とランスロットさんの話…聞いていて違和感を覚えませんでしたか?」
…まあ、言われみれば確かに。ロンドン華擊団が正規団員に起用とする人間にしては精神的に追い詰められていたとしても、食い違うような行動の数々。正規隊員登用の話が死に体されているのに花組の隊長を名乗ったり、現・花組をいくら不甲斐ないとはいえ暴力を辞さずに責め立てたり…一方でクラリスの脚本には好感を示すなどかなりちぐはぐな行動が多い。
「星児さん伺いますが、花組の再建の話は何処でききましたか? そして、帝都にはどうやって戻ってきたのか…覚えていますか?」
「え… それは、………あれ? あ、あれ…」
混乱しだす星児。おかしい、確かに聞いた、だから自分は帝都に戻ってきたはずなのに…辿った至るはずの過程がなにひとつ頭に浮かんでこない。この反応がクラリスを確信に至らせる。令士に目配せすると彼は予め切れ込みがいれられていたパーツを分解…
これを割って筒の中身を見せると衝撃が走った…
「なに…これ…」
太正の世界にまだ疎い或人でさえ、それは真っ当なものではないと臭いでわかる……。 祟るための呪文の羅列が血で書かれた紙の札がびっしりと貼り付けられ、邪気を放っている。
「……うっ!?」
それを見た途端、星児の顔色は途端に青くなり強い吐気を覚えて口元に手をあて悶えはじめた。すかさず、あざみが飛んでいき彼の目の前で数回手を叩いて合掌するとすぐに落ち着いたのだが……これは一体…
神山はクラリスに問う。
「クラリス、これは…」
「『呪詛』です。これは霊力に反応して、付近の人間を混乱に陥れ錯乱させる呪術で、今時そう目にすることなんてありませんが…。
呪術…つまり、星児が何者かに呪いを受けていたということか。巧妙に機体の内部に隠せば早々見つからない上に触媒の霊力も供給できるとは考えたものだ。
気がつけたのは、やはりクラリスの出身が重魔導の一族で表に出回らない魔術に知識があったためだろう。
「そして、これが術の核。」
そして、彼女が取り出したものに今度はぎょぇ…と顔を引つらせる初穂。そりゃあ、つい先まで自分を怪人にしていた因縁の道具が飛び出してくれば嫌な顔くらいにはなる。ストップウォッチのようなソレは或人だけではなく今や花組にも悪い意味で縁があるもの…
「アナザーウォッチ!」
しかも、アナザーゼロワンのものだ。つまり、星児の件も降魔が裏で手を引いていたことになる。
「星児さんの暴走、並びに今回の一件は全ては降魔が関わっていたと思われます。そして、これと似た力を持つ人物に心当たりが……そうですよね、サー・ガヴェイン?」
「…ほう?」
「「「「「!」」」」」
唐突な背後からの声に振り返れば、そこには壁によりかかるハヤトが…腕を組み不遜に関心したという顔をしているが、強い戸惑いの表情をしているのは星児だ。それはそうだ、自分を祟る呪詛と世話になった師匠とが縁があると言われれば当たり前である。
「師匠、嘘だよな?だって、俺を拾って…ロンドンで世話してくれたのはアンタじゃないか…? それが、呪詛だ? 悪い冗談だろ?」
「…」
動揺しながらの弟子のすがるような問をハヤトは否定しない。よりかかった壁から起き上がると、ゆっくりとクラリスに歩み寄りながら一言。
「小娘、勘がいいじゃないか。」
彼女の顔面に右手をちらつかせるとメラメラと燃える『呪い』の類いの炎…溢れ落ちる赤い血の雫。咄嗟に神山がクラリスを庇い下らせるが、ハヤトは手を引っ込め不敵に口角を吊り上げる。その頬には改造人間特有の涙腺のような手術痕が浮かび、眼が蟲のそれと同じ複眼のような変質をしていく。彼の宿す力、確かに星児がはじめて001に変身した時に必殺技『ライダーパンチ・オルタナティブ』の際にも溢れていた赤黒いエネルギーと同じ。
『化け物…』 思わず、初穂はそう呟いた。目の前の男は人間じゃない怪物と遜色ない。
「で? だったらどうする? お前たちに俺を斬れるのか…?」
「そこまでだよハヤト。」
しかし、あわや触発…といったところで、ハヤトの肩を掴むのはタケシ。後ろにはウォズもいる。
彼の登場は神山とクラリスにも驚くべきものだった。アナザーダブルの際に世話になったが、彼は戦いが終わるや霞のように姿を消してしまい礼のひとつも言えなかったのである。特に神山は過去に助けられた記憶もあり、どうしても一言でも感謝をと思っていたがタイミングを逃したと悔しがっていたのだが…
そんな2人に目もくれず、腕を組んで溜息をつくタケシ。すると、眉に皺をよせいつものように、ハヤトはしかめっ面へと戻った。
「悪い癖、直ってないんだね。そういう態度が毎度勘違いを招くんだよ。」
「…フン。話したところでコイツらは事情など理解しない。」
悪の1号と悪の2号…馴れ馴れしいやり取りに困惑していると、ウォズが『彼等は同じ世界の出身なんだよ』と説明。なるほど、やはり繋がりがあったと言うべきか。
暫くして、ハヤトはふてくされたように椅子に座って一行に背を向けて、代わりに話の舵取りをウォズと共に担うタケシ。
「あー、ゴメンね。ハヤトは素直じゃないけど、悪いやつじゃない。大方、ここで揉め事起こしてロンドン華擊団と手を切ろうとか考えてたんだろうけど…そうは問屋がおろさないってね。さて、はじめての人もいるから自己紹介をしておこう。俺は本郷タケシ…悪の一号ライダーさ。」
「本郷猛…!? なら真宮寺さんは…」
「うん、でも真宮寺さくらと一緒に戦った彼とは違うよ。」
「へ?」
さくらは面食らった様子だったが、タケシは構わない。とにかく、事態は想定より深刻だ…はやく伝えるべきことを話すべきだろう。
「帝国華擊団、そして…ゼロワンにバルカン、バルキリーたちも聞いてもらいたい。この太正と令和の世界に迫る危機と敵の正体に…何故、星児が狙われたのか。君達は知るべきだ。」
世界の危機…そういえば、オーマジオウも言っていたと思い出す或人。しかし、具体的には何も説明せずただ『太正の1号』を探せと放り出されて今日まで手がかりらしいものは何ひとつ掴めず終いである。流れで帝国華擊団に協力することになったものの、事の詳細は実際のところタイムジャッカー絡みということ以外は全部が不明だ。仕事にせよ、何にせよ、理解してやると何もわからないとでは効率も成果も雲泥の差、是非是非聞かせてもらおう。
「じゃ、ウォズ! 宜しく頼むよ!」
いや、お前が説明がするんじゃないんかい。
★ ★ ★ ★ ★
見上げる星の数々 それだけ無数に並行世界と歴史は存在する。
『太正』と『令和』もそのうちのひとつであり、本来ならこのふたつの歴史は交わる必要は無い。しかし、ある悪意のある存在がこのふたつの歴史の融合・消滅を目論んでいる…それこそがネオ・タイムジャッカーにして上級降魔のレクス。アナザーゼロワンとして太正世界を暗躍する彼の究極の目的は時の王者・オーマジオウの討伐である。しかし、彼の魔王に挑んだ者たちはすべからく敗北し滅んでいった…
レクスは考えた…真っ向から挑んで勝ち目が無いのならば、土台から崩せば良いと…。そこで、目をつけたのがオーマジオウを支える平成の歴史の先にある『令和』と完全に仮面ライダーの歴史と関係がない『太正』、この2つの世界を融合・対消滅させることで波及させ『平成』を破壊することを目論む。
「…そのために利用したのが仮面ライダーゼロワン。君だよ。」
…ゼロワンが? ウォズの言葉に首を傾げる或人。ゼロワンが利用されているとはどういうことだろう? 今のところ、不調・異常も共に無いのだが
「オリジナルとアナザーライダーの惹かれ合う特性を利用したのさ。奴は太正世界にアナザーゼロワンを産み出したことで、2つのパラレルワールドは引きあっている状態なんだ。」
そういえば、さくらが令和世界に飛ばされた時に空に帝都が写りこむ現象があった… つまり、あれも世界崩壊の現象のひとつでネオ・タイムジャッカーが原因ということか。ということなら、とイズは口を開いた。
「なら、ネオ・タイムジャッカー…アナザーゼロワンを倒せば事態は解決するということですね?」
「残念ながら、事はそう単純には済まないんだなこれが…」
…え? 今の説明ってそういう流れでは? これについてもウォズは補足していく。
「アナザーライダーが誕生してしまった以上はこの世界は『仮面ライダーが存在する世界』と定義されている。アナザーゼロワンを倒そうものなら瞬く間にこの太正世界は歴史を担う者がいなったとされ、消え失せるだろう。」
なにそれ。
なんとも理不尽極まりない理屈である。でも、並行世界まるまる人質になっているとなれば迂闊にオーマジオウも手を出せないだろうことも納得がいく。するにはするが、倒しても駄目だし見ていてもジリ貧なら打つ手なしなのでは…という疑問に至るのを予想通りだったウォズ。
「だからこそ、必要なのが『太正の1号』。この世界を担う仮面ライダー…そして、それを担う可能性が最も高いのは…神崎星児くん、君だよ。」
「お、俺?」
唐突に話の舞台にあげられた星児。まさか、ここで自分にスポットライトが当たるとは思わず戸惑うものの落ち着きを心掛け、奇妙な預言者に疑問をぶつける。
「えっと、ウォズ…お前が胡散臭いのはロンドンに居た時から思ってたけど今回の話はマジでわけわからねえぞ。つーか、なんで俺が太正の1号になるなんて話になるんだ?」
そう、どうしてそんな理屈になるのだ? 色々ぶっとびすぎて面々の大半が話にまるでついていけないが、これに関しては何も脈絡が無い。
すると、ウォズは少し思案した様子で僅かな間だけ黙ると静かに意を決したように彼に告げた。
「…星児くん、それは君の母親がこの世界に産まれるべき仮面ライダーの前身だったからさ。」
どうもです。今回の話、ゼロワンというよりジオウじゃねえかという案件なんですが、アナザーライダーいる時点でジオウ案件なんじゃよ!(吐血)
さて、難解な超次元平成ロジックな話が多すぎて混乱した方々のために改めて説明をば…
令和ジェネ後の時間軸をレクスの視点で見ていきます。レクスは元々、オーマジオウと対立する勢力の一員でしたが勝ち目のなさより見切りをつけ一派を離脱し独自の行動を開始します。
彼は真っ向勝負で勝てないならとある計画をたてました。オーマジオウは平成という歴史の化身、ならば『平成』を消し去るもしくはダメージを与えれば存在そのものを消しされるのではと考え行動を開始します。彼はまず、令和ジェネの改変時間軸に介入して撃破されたウィルからアナザーゼロワンウォッチを回収(※実はアナザーゼロワンは再生産されたものではない、ここ重要)して、太正世界に介入…加えて降魔の力を手に入れてアナザーゼロワン2代目となります。すると、『オリジナルとアナザーライダーは惹かれ合う』というロジックが発動して、これを利用することで2つの世界を対消滅を行い連鎖的に平成の時間軸も滅ぼしてオーマジオウを倒そうということですね。
なら、アナザーゼロワンを倒せば解決といきますがそうはいきません。太正世界の悪である降魔の力を得ている以上は太正世界の仮面ライダーというルールがアナザーゼロワンにも適用され、奴を倒そうものなら『仮面ライダーが消えた世界は消滅する』というルールに引っかかり太正世界は消滅してしまうのです。そこで、応急処置としてオーマジオウは令和世界の時を止めて、ゼロワンを太正世界に派遣して一時的な太正の仮面ライダーの役割の代役に仕立てあげます。しかし、あくまで応急処置で根本的な解決にはなりません。
唯一の対処方法は太正世界に正規の仮面ライダーを産み出すことのみ。それこそが、『太正の1号』なんですね。無論、レクスもそれをわかっているので手を打ってきているのが前回の話。
いやー、難解ですみません。んで、やっぱりこれジオウじゃん(白眼)。ならなんで、星児が太正の1号になりうるのか云々は追々。取りあえず、今回はここまで。
感想お待ちしてます。