仮面ライダー01<ゼロワン> × 新サクラ大戦 ー新たなるはじまりー   作:ジュンチェ

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そして、星は輝くべき場所へ。 Ⅲ

 大葉こまち…小柄な彼女だが、勝ち気な性格と大阪弁が特徴的な大帝国華擊団の売店の主。本来ならば、持ち場を離れるわけにはいかないのだが、今はホールの真ん中で仁王立ちして押し寄せてきた招かねざる客を留めていた。

 黒服の集団に傍らに上海華擊団と矢車、更にはアーサーとランスロットからなるロンドン華擊団まで。それらの一団を率いるのはスラリと背の高い白い礼装の男…眼鏡とオールバックに人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべるこの顔をこまちは知っている。いずれ対峙する日はくるとは思ったが、何も今でなくても良いだろうに…

 

 

 そして、彼は先頭に立ったまま、こまちに話しかける。

 

 

「レディ、そこを退いてくれたまえ。我々も必要以上に事を荒だてるつもりは無い。支配人とその御子息に用があるだけなのだよ。」

 

「はい、わかりましたと言うと思うたか? 坊ちゃんにオタクらが何をしたかを忘れたとは言わさへんで! プレジデントG!」

 

 

 プレジデントG…世界華擊団連盟の頂点に座る世界有力の権力者。帝国華擊団再建の難航もこの男が『待った』をかけたのが原因で、神崎親子にとっては建前は上司であるが、真実は敵…星児にとっては仇も同然のような存在である。そんな彼が神崎親子を目当てでやってきたのならば… 今度こそ破滅させる気なのか。

 

 

「ふむ、私は君に用は無いのだがね。残念ながら時間は有限なんだ…早くしてほしいところだが……」

 

 

 

 

 

 

 

「俺は逃げも隠れもしないさ。」

 

 

 

 

 その時、星児が2階から降りてくる。それをニヤリと嗤いながら見る黒服に見覚えがあったが、それよりも黒服の一団に並ぶロンドン華擊団…ランスロットに視線が向いた。彼女もアーサーもこちらに視線をあわせようとすらせず、無表情に堅く冷たく…彫像のように立っていた。これだけで覚るには充分…

 

 

(ランスロット…そうか、許せるわけねえよな。)

 

 

 気が狂った時に吐いたあの言葉が確実に彼女を傷つけた…それが、ロンドン華擊団との決別にもなったのだろう。自分の空けた傷口の大きさを改めて感じながらも、プレジデントGに向きなおる。憎き相手ではあるが、こうして直接面と対峙するのははじめてだ。

 一方のプレジデントGも星児を見るや口角を吊り上げる。

 

 

「これはこれは、旧・帝国華擊団の忘れ形見。会えて光栄だとも…」

 

「薄っぺらい挨拶は良い。俺をとっ捕まえにきたんだろ? 早くしろよ。」

 

 

 無意味な社交辞令…まあ、そんなことわかっている両者。空気が張り詰めていく中、花組たちも追いつき神山が真っ先に声をあげた。 

 

 

「星児! ランスロットさん、止めてくれ! 貴方は星児を助けるために日本まで来たんじゃないのか!? シャオロンも頼む! 全部、その男の陰謀なんだ!!」

 

「言いがかりはよしてくれたまえ、帝国華擊団・花組の隊長さん。私は何もしていない。」

 

 

 しかし、必死の訴えもランスロットやシャオロンも応じない。おまけに、自らは一件に無関係と嘯くプレジデントGに花組全員の怒りのボルテージが上がっていく。無論、親であるすみれが胸に抱く感情は憤怒のそれと等しくなり、気取る道化に踏みこもうとするが…『二眼のトイカメラをひっ下げた黒服』が割って入り彼女をたしなめる。

 

 

「…(今は下手に動くな。流れに任せろ。)」

 

 

 小さく忠告すると、すみれの肩を押して下らせた彼。そして、こっそりアナスタシアへとアイコンタクトを送る…それを同じくアイコンタクトで応答する彼女。無言のやり取りを気がついた者はこの場では誰もいない。

 

 さて、すみれは抑えられたものの、黙っていないのは何も花組だけではない。

 

 

「待ってください、プレジデントG。」

 

 

 次にプレジデントGの前へ進み出たのは或人とイズ。彼等もまた星児の不当な処分にいくら部外者とはいえ納得出来るものではなかった。

 

 

「君は…」

 

「飛電インテリジェンスの社長、飛電或人とこっちは秘書のイズ。今は帝国華擊団にお世話になっている身ですが、これでも一応は社長です。」 

 

 

 ライズフォンの名刺を見せて自己紹介。といっても、飛電インテリジェンスのことなど知る由もない彼は首を傾げると、見かねた黒服のひとりがこっそり耳打ち…すると、『ほう?』と頷いた。

 

 

「君が噂の帝国華擊団の特記戦力…いや、仮面ライダーゼロワンか。報告は受けているとも。なんでも、帝国華擊団の人手不足を解決する画期的な技術を持ち込んだとか?実に興味深い。」

 

 

 予め存在は耳には入れていたのか。帝劇の中をねっとり舐めるように見回しながら答えるプレジデントG…彼の瞳には帝劇の中で働くヒューマギアたちが目に映っていた。嫌悪感を覚えるが、今は呑み込んで堪える。

 

 

「星児くんを捕らえるなら令状は? 今回の一件はあなたの部下の暴走が原因だと聞いていますが?」

 

「その不確かな情報の出処は何処かね? 少なくとも、貴重なW.O.L.F.の財産である霊子戦闘機を2機も破壊し、あまつさえロンドン華擊団を脱走・国外逃亡をした物証ならあるのだが?令状もここにある。」

 

「…っ!」

 

 

 誰のせいだと…っ! 喉から言葉が飛び出しかけた帝国華擊団の面々。そもそも、発端はそちら側だろうに! 

 

 しかし、星児は噛みつくどころか逆に庇う或人を止める。

 

 

「社長、俺は構わねえ。これ以上、騒ぎを大きくしたら公演にだって影響が出る。これ以上、迷惑をかけられねえさ。」

 

 

 悟っていた。いずれは来るはずの問題が今、飛んできてしまったのならせめて燃え広がる火はなるべく小さくしなくては。ここで帝国華擊団再始動の幕開けを散々迷惑をかけた自らの手で断つわけにはいかない。 

 神山や初穂も喰ってかかろうとするが、タケシとハヤトが掴んで止める。ここで直接問題をプレジデントGと起こせば公演どころの話ではない…だが、このままでは、星児に待つのは間違いなく悲惨な末路だろう。

 

 歯噛みする物語たちを尻目にプレジデントGは無慈悲に命令を下す。

 

 

「さあ、下手人を捕えろ。」

 

「「仰せのとおりに。」」

 

 

 すると、数人の黒服たちが口角を吊り上げ迫っていき連行していく…。その刹那、彼はふぅ…と溜息をつきながら愛しげに天井を見上げて小さく呟いた。

 

 

「…(じゃあな、俺の夢。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その手を離しなさい。」

 

 

 

 微かな言葉…しかし、それを耳にした瞬間に黒服の壁から踏み出した者がいた。進行方向に割って入り、木刀を構える真っ直ぐな少女の瞳…さくらが行手を遮る。

 

 

「その人は私たちの仲間…そして、すみれ支配人の御子息です。アナタたちが触れて良い人じゃありません!」

 

「なんだ貴様は!?」

 

「どうやら、道連れを希望らしいな。正規の隊員から逮捕者が出れば帝国華擊団も終わりだ。」

 

 

 行かせてなるものかと立ちはだかった彼女だが、相手の黒服たちは面食らいながらもかえって好都合とさくらへ手を伸ばす。彼女が捕まれば、もう舞台どころの話ではない。星児が身を張った意味もなくなってしまう。

 

 

「俺のことはどうだって良い!だから…!」

 

「どうだってよくはありません。歩む道は違い、ぶつかり合いましたが目指す夢が同じで、今度は共に私たちと歩むことを望むなら…あなたも仲間です。仲間を卑劣な悪党に渡すわけにはいきません!」

 

 

 しかし、さくらは譲らない。きっと、ここで彼を見送ってしまえば例え帝国華擊団の再興や自分の追う夢が叶っても胸を張って前を向けるか?いや、断じてNOだ。かつて夢を抱いた幼い自分も、夢に向かうこれからの自分も、今の自身を怒り叱責するはずだ。為すべきことは、傷つきながらも伸ばした手を振り払うことではない…掴むべきなのだから。

 

 

「…お、おねえちゃん……」

 

「勘違いしないで。許すとは言ってません…でも、誠兄さんと初穂…それに支配人に免じてチャンスを与えます。だから、今度は裏切らないで。」

 

 

 

(あれ、今、星児くん…さくらちゃんのこと…?)

 

 

 こんな勢いであるが仲直り…いや、待て。或人の耳に中々聞き捨てならないことが飛び込んできたぞ?一瞬、聞き間違いかと思ったがさくらも否定しない。 

 

 さて、無論、あまつさえ悪党呼ばわりされた黒服たちは業を煮やし『ええい、ゴチャゴチャと!』と2人を拘束せんと……

 

 

「何をしている?私は下手人を捕えろといったのだ。ミス・すみれの御子息から手を離せ。」

 

「「…は?」」 

 

 

 何? 突然のプレジデントGの発言に帝国華擊団たちは愚か、黒服たちも戸惑った顔をしている。彼は星児を捕えにきたのではないのか…?

 その時、星児を掴みかかった黒服の喉元に添えられる剣先。視線をずらせば先にとはうって代わってネットリとした笑みで柄を握るランスロットがそこに。もうひとりの片割れも、アーサーが組み敷き拘束しており、残りの黒服たちも一瞬で上海華擊団たちが素早く鉄拳でダウンさせる。

 

 馬鹿な…どうなっているのだ? 周囲が呑み込めない中、プレジデントGはすみれの元へ歩み寄って…なんと頭を下げた。

 

 

「このような形で迷惑を重ねる形になってしまい、申し訳ない。今回、私は貴方に謝罪をしに来たのです。」

 

「…謝罪?」

 

「ええ。私の部下が起こした貴方の御子息への無礼・暴挙についてお詫びに参りました。全ては末端までの管理を怠った私の責任…この通りです。」

 

 

 すみれは…いや、一番この展開に驚愕していたのは星児だった。今まで憎しみの象徴ともいえる存在の男が…仮にも組織のトップが頭を下げてきたのだ。…しかも、納得が躊躇うほど不気味なほど素直に。

 勿論、こんな流れを呑める黒服たちではなく悲鳴のように上司に助けと詳細を乞う。

 

 

「プレジデントG!?これは一体、どういうことですか!?」

 

「黙れ、痴れ者ども。私の与えられた権限を良いことに散々好き勝手やってくれたな、エージェントB!エージェントO!今まで貴様らは吊るんで私の目を盗みながらやっていたらしいが…それもここまでだ。証拠が上がった。」

 

 

 すると、ユイがボイスレコーダーとおぼしき機械を取り出してスイッチを押す…やがて、流れ出した音声に黒服たちは顔面を蒼白に。花組たちは怒りで赤く染めていく…

 

 

【はは、帝国華擊団も終わりだなこれで。いや、神崎すみれもか…まあ、あの古ぼけた帝国華擊団の看板と共に沈むのなら本望だろう。】

 

【しかし、今回のことやっぱり、やばくねえか? いくら点数稼ぎしたいからって、俺たちの独断 …いくら、旧勢力が目障りだからって今回はだいぶ強引過ぎるぜ。】

 

【なあに、あのお方は我々を信じておられる。だからこそ、今回の踏み込みに御自ら出陣して我等の同行も許可した。全てが終わった暁には帝国華擊団の髑髏で祝い酒が飲めるだろうな。ハハハハハ!!】

 

【ま、あのガキは元より気にいらなかったしな。何が忘れ形見だ…チヤホヤされやがって、七光如きが。ま、自業自得と思えばその通りか!大人しく、引っ込んでればこうならなかったんだろうしな!】

 

 

 

【帝国華擊団の最後に…!】

 

【俺たちの未来に…乾杯!!】

 

 

 

「「あ…‥ああ…」」

 

 

 お酒って、怖いねー?と、慄く黒服を見下すユイ。実はこれ、前日の神龍軒で録音された彼等の声…完全に星児の襲撃を裏付けるものである。調子に乗った酒の席、まさか聞き耳をたてる者などいないと慢心した間抜けのやりとりの一部始終だ。

 もう言い逃れは出来ない…追い詰められた黒服は尚もプレジデントGに縋りつこうと必死に泣き叫ぶ。

 

 

「プレジデントG! 私たちはあなたを思って…!」

 

「くどい。お前たちを今日付けでエージェントの任務から解く。処分はロンドン華擊団に一任する!」

 

 

 そ、そんな!? 無慈悲に手は振りはらわれ、エージェントOとエージェントBたちはランスロットと上海華擊団…部外者だった黒服に拘束・連行されていく。その間際、負け犬の遠吠えらしき一言を遺して…

 

 

「……そうか! 全て貴様の仕業か、アナスタシア・パルマ!」

 

「…」

 

 

 当の彼女はわざとらしく視線を反らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





★プレジデントG

 え?綺麗なプレジデントG?またまたご冗談を。


★アナスタシア

 彼女が何をしたかって? 簡単に言うと上司に同僚の不始末をチクった。


 

  
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