仮面ライダー01<ゼロワン> × 新サクラ大戦 ー新たなるはじまりー 作:ジュンチェ
「……痛っ。 ここどこだよ?」
星児がまず感じたのは頬につくチクチク…うん、変哲もない芝生だ。サッカーやらラグビーやら屋外スポーツの会場でよくあるやつ。むっくりと起き上がりながら、随所に先の戦いの記憶が戻る…あの謎の仮面ライダーに手も足も出ず必殺技を喰らって……そこで意識を失った。最後に『合格』と言っていたがどういう意味だ?
「ちっ、真っ暗でよく見えねえな。」
痛みをこらえながら、汚れをはらって立ち上がる…辺りは暗くてよく見えない…観客席と天井とおぼしきものは夜目で確認できる。恐らく、ここはドーム状の空間か何かか… ん? よく見るとフィールドの中央に何か鎮座している。大きい…霊子戦闘機? 機体色が黒っぽく暗闇に溶け込んでシルエットが捉えづらい…でも、見覚えがある。
「…コイツは無限か? だけど、誰の機体だ?」
帝国華擊団であと無限を持っていないのはさくらのみ。だが、彼女のパーソナルカラーはピンク…黒じゃない。となると、もう乗る人間はいない……
【それは、君の機体だよ。】
「!」
突然、眼前にそびえる見上げるほど大きなホログラム。胸像のように上半身しか映さない立体映像が象るのは忌々しい相手、プレジデントG。彼の登場で星児は顔を険しくする。
「プレジデントG…コイツなんの真似だ? おふくろは機体は受け取らないと言ったはずだ!」
【ああ、そうとも。だが、君個人へ贈る分としては問題あるまい。私からの気持ちだよ。】
「ふざけんな! さっきの仮面ライダーだってテメェの差し金だろ!」
【はて、何の事やら? 私は迎えを頼んだだけだったんだが…(…『私は』ね)。責任ある者として、贖いはしっかりしなくては、こちらも周りに示しがつかない。それに、君も正規の隊員になる以上は相応しい機体を持つべきだろう?】
わざとらしいすっとぼけ振りに、叶うなら殴り飛ばしてやりたい衝動に駆られるが辛うじて呑み込む。わざわざ、こんなやり方をして連れてくる以上は贖いの他に思惑があるのだろう…それを見定めなくては。
しかし、どうして無限なのだ…?ロンドン華擊団の機体はブリドヴェンだ。霊子戦闘機はW.L.O.F.が認めた共通フレームを各国の特色に合わせた改装が施されたもので、既存の霊子戦闘機は腹違いならぬ国違いの兄弟なんて言ってもあながち間違いではないだろうが、異国の霊子戦闘機の運用にはいくらフレームが共通しているとはいえ多方面で支障をきたしかねない。例えば、無限が破損した場合、ブリドヴェンのパーツの流用等が効かないパーツなどは日本からわざわざ取り寄せになるなどが考えられる。そうなれば、整備側の人員の負担は勿論、取り寄せにかかるコストもバカには出来ない。ロンドン華擊団に居させるのならブリドヴェンを用意するのが筋だ。なら…
「俺を帝国華擊団に戻すつもりなのか?」
帝国華擊団に戻る…無限をということなら、そんな意図があると思うのは必然。しかし、プレジデントGは嘲笑う。
【何故、君を今の帝国華擊団に戻す必要がある?】
「…? じゃあ、無限でロンドンに行けって言うのかよ!」
【いいや? 君はもう既にロンドンの人間ではない。】
じゃあ、何なんだ!? なんで、無限を用意したんだ!?
【神崎星児くん。私は最初、君はとるにたらない石ころだと思っていたよ。しかし、例の事件のあと…君を改めて精査した。するとどうだ、ロンドンではあとひとつ最強の騎士・ランスロットに及ばないものの、男性でありながら一般人を遥かに凌駕する霊力の保持に収束・放出といった技能を持ち、実践も霊子甲冑でありながらあのアーサーが認めるほどの戦績。石ころなんてとんでもない…ダイヤの原石だったよ君はァ?】
ねっとりと気持ち悪い。グイッと近づくホログラムの大きさも相まってはじめて後退る星児。怒りだけでこの男を今まで見てきたが、こうしてまともに話すと中々の不気味さだ。
【流石、帝国華擊団の忘れ形見…であるが故に惜しい。名ばかりのドブの中にそれを捨てるか、はたまた古いだけが取り柄の万年の二番手にそれを託すことなど……。】
前者は今の帝国華擊団で後者はロンドン華擊団のことだろう。アーサーやランスロットがいたら、間違いなくブチギレしていたであろう暴言…そして、母が束ねた帝国華擊団への侮辱。やはり、この男は味方どころか中立な裁定者であり運営者でもない『敵』なのだと再認識する。
そして、彼は告げた。
【……そこで、私は決断した。星は輝くべき場所へあってこそだと。帝国華擊団の忘れ形見は同じく、その魂を受け継ぐ彼女等の元へあるべきだと!】
「何を言って……… …まさか。 うっ!?」
瞬間、スタジアム内に光が満ち目が眩む。怯みながらも、目を開けていくと『彼女たち』はいた…。軍服のような制服を纏う凛々しい姿は世界最強たる王者の風格を放つ。先頭に立つ銀髪の彼女は兵士を統べる者…
「お初にお目にかかる、私はベルリン華擊団=シュバルツアイゼンの隊長、『エリス』だ。帝国華擊団の忘れ形見、話は聞いている。この度、貴公を預かることになった。」
かつて開かれた2回の華擊団大戦を制した文字通り最強の覇者『ベルリン華擊団』…その隊長のエリス。凛々しく容姿端麗にして強さを兼ね備える彼女を星児は知っていた。むしろ、因縁の相手でもある…この華擊団そのものが。そして、プレゼントGが何を企んでいるかも理解する。
「…こんなの冗談だろ?悪趣味が過ぎるぜ……」
【冗談ではないのだよ、神崎星児くん。
…君は本日付けで、ロンドン華擊団からベルリン華擊団に正規隊員として配属。そして、華擊団大戦に出てもらおう。】
★ ★ ★ ★ ★
時を同じく、帝都郊外 上級降魔のアジト
「…たくよお毎度毎度、派手にぶっ壊しやがって。幻庵の小言もたまったもんじゃねえ。」
朧は愛機・荒吐を地下のドッグに収容して修理にあたっていた。呪術の魔法陣を破損箇所に展開して妖力を注入しながら修復を促すさまは修理というより治療だ。まあ、そもそも技術が人間のそれと違うので異様に見えるのは当たり前か。
「覚えてろよ、帝国華擊団。この借りは必ず…!」
――ギャアぁああああああああぁあああアアアア!!!?
「!? なんだ!?」
突然、つんざくような悲鳴が上がる。それに驚いた拍子に力加減をミスった朧は愛機の装甲を自らの手で、グニャリと変形させてしまい夜同士作業が水の泡になったことにこちらも悲鳴をあげた。
畜生め!と頭に血を昇らせながらも、ただ事では無いだろうと一旦地下ドッグを後にして地上の廃工場に跳び戻ると様子を確認。廃材やらが次々となぎ倒され埃も咳こむほど舞い上がっている。その中を暴れまわっているのは…
「…夜叉か? おいどうした!」
顔をおさえながら、のたうちまわる夜叉の姿。出血しているのか、辺り一面にドス黒い体液を撒き散らしながらおぞましい叫びをあげ続けている彼女。一体、何が?…敵にしては特に気配は感じられない。何にせよ、このまま暴れられては困る…止めなくては。
「このタコ! 止まりやがれ!」
「いぃいだいい!! 私の、私の臍帯が…! 息子との繋がりが切れ…て……!!」
何言ってんだコイツ? すると、何処からともなくアナザーゼロワンが現れ、彼女の頭を鷲掴みするとエネルギーを流し込む。同時に夜叉は糸が切れたように大人しくなり、ぐったりとその腕に抱かれる彼女。同時に変身を解除したレクスは『ディケイド…』と小さく呟くと『1号』のアナザーウォッチを取り出し、空中に浮遊していたブランクウォッチも呼応するようにアナザーウォッチへと変質していく。
「…時計の針はもう止まらない。でも、押し進めることは出来る。まずは、ゼロワンを封じましょう。」
次に近くのテーブルに目を移すと、機会のアームのようでありながら有機的な化物チックな職種がレーザーで物質を編み込み、普通のものより大きい鋼色のプログライズキーを精製し終えたところ。これを拾いあげるとニタリと嘲笑う。まだ、ゼロワンの物語において存在してはいけないそれをタイムジャッカーという利点を活かして創り出したソレ。衛生ゼアのバックアップが充分ではない太正世界で人間の悪意を織り込まれて産まれたプログライズキー…
「メタルクラスタホッパー…厄災の権化たる鋼の嵐。ククク…楽しみね、華擊団大戦……」
次・回・予・告
神山「ついに幕を開けた華擊団大戦!各国の威信をかけた夢の舞台…だが、レクス率いるアナザーライダーと降魔の軍団が襲いかかる!おいおい、お前たちは招かねざる客だ!帝国華擊団・花組出撃!」
さくら「次回『燃ゆ!鋼が吹き荒れる平和の祭典!!』…太正浪漫を駆け抜けろ、令和の風ッ!」
ランスロット「まて、星児……なんで君が、ベルリンにいるんだ!?」
次回、ゼロワン暴走。