仮面ライダー01<ゼロワン> × 新サクラ大戦 ー新たなるはじまりー   作:ジュンチェ

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 まさか、開会式襲撃の話がここまで長引くとは思わなんだ…


 原作だとさくらちゃんが落ち込むあたり。ただ、本家よりイラッとくるかもしれない。ごめんね。



燃ゆ!鋼が吹き荒れる平和の祭典!! Ⅶ

「「ダブルライダーキック!」」

 

『ぐっ!?』

 

 

 1号オルタと2号オルタに追い詰められたアナザーゼロワン。合体必殺技を防御したために腕はボロボロ… 視線をずらせば自分の連れてきたアナザーライダーたちはDジオウを前に敗走していた。もうここをひっくり返すことは不可能だしメリットも無い…なら、もう長居は無用。

 

 

『今日はここらへんぐらいにしておいてあげるわ。』

 

「待て!」

 

「クソッ!」

 

 

 ありきたりな捨て台詞を残して、跳躍してさっさと撤退。追おうにも呼ばれたタイムマジーンに乗り込まれればもう追う術は無い。ここまでか……手痛い打撃を受けながら辛くも敵を退けた仮面ライダーたちは変身を解除。思いもよらない激戦に華擊団の団員共々、疲弊を顕にする。まあ、無理もないだろう。

 

 

「取り敢えず、しのぎきったか…… ハヤト?」

 

「…」

 

 

 そんな中、ハヤトは黒い無限を注視する…。ランスロットと放った合体技からして、搭乗者は間違いなく星児だ。だが、彼の機体は用意していないとすみれは言っていたはずだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うっ!?」

 

『或人社長!』

 

「イズ…?ここは…帝劇の病室?」

 

 

 目を覚ます或人… イズの除きこむ顔と清潔なベッドにシーツ…覚えがある、帝劇の病室だ。自分は気を失っていたようで、いつ担ぎこまれたかは定かじゃない。最後の記憶はアナザーゼロワンに引きずりこまれた悪夢の中…其雄やイズと滅亡迅雷が束になって襲ってくるおぞましいものだった…あの敵に仕込まれたプログライズ・キーの力か?

 

 そこは考えたところで自分では憶測を巡るばかり。取り敢えず、現状を確認しなくては…

 

 

「…何が起こったんだ?」

 

『敵の未知のプログライズ・キーにより、ゼロワンが暴走し多大な被害を出しました。プレジデントGの仮面ライダーと無限に乗った星児さんのお陰で敵は退けられ、暴走したゼロワンも制圧されたのですが、現場はかなりの混乱が続いているようです。』

 

「そんなことに…不破さん刃さんは?花組の皆は無事?」

 

『命に関わるような傷はだれひとり確認されていません。刃さんは回収した敵のプログライズ・キーの解析を…他のメンバーは療養やそれぞれ事態への対処にあたっています。或人社長も今は休んだほうがよろしいかと…』

 

 

「そうはいかない。皆、働いているなら俺も動かないと! …痛っ!?」

 

 

 

 迷惑をかけた身として黙って寝ているわけにはいかず、起き上がろうとするが肉体はDジオウから受けたダメージが残っておりろくに動かせない。深く傷口が裂けてくるような痛みに苦悶の声をあげかける中、病室に入ってきたのは初穂と令士だった。

 

 

「社長さん、目を覚ましたんだな。気分はどうだ?」

 

「大丈夫だよ、初穂ちゃん。色々と迷惑かけたみたいで…ごめん。」

 

「気にすんなって。あの降魔どもの仕業だし、社長は悪くねえ。しっかし、まあプレジデントGもあんなすげえ仮面ライダーが仲間にいるならさっさと出してくれりゃこんな被害が出ずに済んだのによ…これだから、守銭奴は。ま、星児の奴も戻ってくるみたいだし心配すんな!」

 

 

 初穂は落ち込む或人をグイグイと励まそうとするが、彼女も怪我が服の合間から見てとれる……恐らく、クラスターテンペストによる攻撃の被害が彼女自身にも少なからずあったのだろう。

 

 …一方の令士は複雑そうな顔をしていた。

 

 

「その星児の無限ことなんだが…俺はあの機体を知らない。それに、すみれさんやカオルさんにも聞いてはみたが…星児の無限を手配した覚えは無いそうだ。」

 

「は? 何言ってんだよ? 無限は帝国華擊団の霊子戦闘機だろうが。何にせよ、星児は戻ってくるって決まったようなもんだって。」   

 

 

「…初穂ちゃん、星児は誘拐されてるんだ。それが、いきなり無限で会場に現れた…どう考えたっておかしい。それに、アイツは帝劇に戻ってこないでまた音信不通だ。とてもじゃないが、安心は出来ない。」

 

 

 星児に対して楽観視する初穂に、令士は大きい不安を胸に抱いていた。黒い無限は令士やすみれ支配人たちも覚えが無いとなれば『帝国華擊団と無関係な第三者』が手配し、星児に与えたということにはなる。無論、そんなことが可能な人間など限られてくるが…

 

 

「それだけじゃない、俺達の無限は殆どボロボロだ。特に神山や初穂ちゃんの機体はヒューマギアたちの力を借りても華擊団大戦に出すなんてとてもじゃないが無理だ。」

 

 

 更に令士の懸念は花組の無限の損傷にある。夜叉の攻撃をまともに受けたが強い衝撃だけだったあざみとクラリス機はまだ良い、さくらの光武も不要になった彼女以外の光武から継ぎ接ぎしてやれば誤魔化せるが、問題はクラスターテンペストをまともに食らった神山機と初穂機。大破一歩手前まで文字通りに喰い破られた2機は見るも無残にひしゃげた穴だらけとなり直視に耐えない有様だ。

 そうなれば、ほぼ全機の無限の本格的な修理が必要だが、物資・資金・人手・時間…どれも圧倒的に足りない。

 

 

 

「…なら、どうしろってんだよ!」

 

「初穂ちゃん、落ち着いて!」

 

 

 そんな突きつけられる現実に初穂は一転して声を荒げる。楽観しているように見えたのは彼女もまた不安を誤魔化すためだったかもしれない…ドッと溢れた感情は抑えが利かず、或人も何とか宥めようとするが怪我人の今では無力であった。 

 

 そんな時、病室へあざみが入ってくる。

 

 

「目を覚ましたんだね、社長。指令室で皆が待ってる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

   ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝国華擊団指令室…或人らが訪れた時の空気はまさに最悪だった。

 

 

 

 この場にいるのは、花組に上海華擊団とロンドン華擊団…他にもすみれに付き添うカオルの姿もある。神山とすみれは並び立ち、険しい顔をするシャオロンとユイと対立する形になっている。一方、さくらは席についたまま、焦点があわない目で何かブツブツと呟きながら俯いた状態で、クラリスはどうしたらいいかオドオドするばかり…。アーサーとランスロットは流れを静観しているようだが……

 

 

 会話をまず始めたのはシャオロンだった。

 

 

「お、来たな。社長、悪いが、アンタを拘束させてもらう。」

 

「え…」

 

「事情は聞いてる。だが、アンタは実害を出しちまった…見過ごすことは出来ない。一時的に俺達、上海華擊団で預からせてもらう。ドライバーは置いてけ。」

 

 

 或人の拘束…メタルクラスタホッパーの暴走が原因だろう。本人の意思ではないが、大きな被害を出した以上は目を瞑るのはあまりに難しいということか。一応、『悪いようにはしないから…』とユイがフォローを入れるが、無論のことイズが黙っていない。不服をすぐさま申し立てようとする…だが、或人が『イズ!』と制止する。

 

 

「わかった。今回は俺の油断が招いた被害もあるから…責任はある。」

 

『或人社長…!』

 

「…すまない、理解が早くて助かる。アンタには助けてもらった恩もある…早めに解放できるよう力は尽くす。」

 

 

 或人は承諾するが、シャオロンとしてもこの対応は不本意であるようであった。帝国華擊団と同じく、帝都を守る者として仕方なくという意味だろう…本気で逮捕などそういう意味合いではない。

 そして、『さて…』と向いたのはすみれだった。

 

 

「支配人、次はアンタの番だ。…分かってるよな?」

 

「……夜叉と名乗った上級降魔のことですか。」

 

 

 その瞬間、さくらがピクッと反応した。花組の他の面々たちも顔が険しくなる…。仮面ライダーにまで変身したあの降魔、確かに強かったがそれだけではない雰囲気である。

 

 

「あれは誰だ?何か知らないのか…?」

 

「さあ。わたくしたちはなにも。寧ろ、こちらも戸惑っているばかりで……」

 

「何も知らねえってか、『あの顔』で。通じると思うか…少なくとも、俺たちより上の連中にソレで?」

 

 

 すみれが惚けている…というわけではなく、本当に知らない様子。だが、シャオロンは夜叉に対して追求を続ける…あの降魔が一体、どうしたというのだろう?或人は首を傾げるはがり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれは『真宮寺さくら』さんです。」

 

 

 

 

 

 

 

 ぼそり… さくらが呟いた。今まで黙っていた彼女は弱しくもつらつらと口を動かしはじめる彼女。

 

 

「…間違いありません。…あの顔 …あの声 …それに、あの技『破邪放神』。真宮寺さくらさん以外、何者でもありません。」

 

「!! …さくらさん、それは違いますわ!」

 

 

 不穏な空気がますます強くなる。一方、或人は誰それ…という調子で、こっそりクラリスへ助けを求める。

 

 

「…(クラリスちゃん、その真宮寺さんって誰

?)」

 

 

「…(すみれ支配人と同じ、旧花組のメンバーでさくらさんの憧れの人です。10年前、すみれさんを残して他の隊員と失踪したとは聞いていましたが…)」

 

 

 なる程。それにしても、さくらの不安定度を見るに余程心酔していたのか、普段は明るく快活な彼女からは信じられない表情である。そして、いつもなら礼儀をもって接するすみれ支配人にすら喰ってかかる。

 

 

「ならなんで、あそこまで似ているんですか! それに、星児さんのことも知っていた! そして、自分が本当の母親とまで言ったんですよ!? それに、破邪放神は星児さんだって使える…これで偽物なんて話が通らないです!」

 

「さくらさん、落ち着いて…」

 

 

 クラリスが宥めようとするが、感情のタガが外れたのか止まらないさくら…シャオロンが口を挟む間も入れず、更に激しくすみれを糾弾する。

 

 

「答えて下さい支配人! 星児さんは真宮寺さくらさんの実子ではないんですか!? 真宮寺さんは星児さんを取り戻しにきたんじゃないんですか!?」

 

「さくら!! いい加減にしろ!」

 

 

 とうとう神山すら怒号をあげる……その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……それ本気で言ってるの姉ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 ――聞き覚えがある間の抜けた声に一堂が振り向く。

 

 

 或人の後ろ、いつの間にか彼はいた。

 

 

 

 

「…星児?」

 

「オッス、おふくろ! 今、帰ったぜ。」

 

 

 

 神崎星児… 渦中の問題児の帰還である。

 

 

 

 

 





★次・回・予・告

すみれ「この話はしたくはなかった。貴方には夢みたままでいて欲しかった。でも、話さなくてはいけませんね…貴方の本当の母親の話を。それがどんなに残酷だったとしても…」

カオル「次回、『語られる過去。夜鷹の翼。』…太正浪漫に交錯するはじまりの風!」
  

すみれ「咲かずに散った帝都の花… その名前は『御子神カナタ』。」


 次回もお楽しみに!


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