仮面ライダー01<ゼロワン> × 新サクラ大戦 ー新たなるはじまりー   作:ジュンチェ

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語られる過去。夜鷹の翼。 Ⅲ

 明らかになった星児の真意…

 

 ――しかし、もうひとつ明らかにしなくてはならないことがある。

 

 

 

「…『夜叉』。あれは一体、何者かご存知ありませんか? 彼の母親と名乗っていましたが。」

 

 

 エリスの質問に更に空気が重くなる… かつての帝劇のトップスタァである真宮寺さくらに瓜二つの上級降魔であろうことか星児の母親まで名乗った謎の存在。不意打ちに近いとはいえ、さくらの光武とゼロワンを一瞬で戦闘不能に追い込んだ力の持ち主で勿論、無視は出来ない事項だ。

 

 すると、すみれは星児に目配せして…彼が頷くのを確認すると重い口を開く。

 

 

「夜叉、あれは真宮寺さくらさん…ましてや、星児の母親などでは絶対にありません。既にご存知かと思いますが、旧・花組のメンバーは真宮寺さんも含めて降魔大戦の折に行方不明になっております。そして、何よりも…わたくしは星児の実の両親を知っていますし、父親はまだ存命ですわ。」

 

 

 降魔大戦…或人も太正世界に来たばかりの頃に耳にした。降魔皇と呼ばれた強大な敵を封じるためにかつての花組や巴里やニューヨークの華擊団たちが身を呈して犠牲となったことを。それが、かつての帝国華擊団の事実上崩壊の引き金になったことも…

 

 そして、新しい星児の情報…両親について。父親がいるというなら誰? 加えて『父親は』という含み…無論、ここを踏み込むエリス。

 

 

「…父親は? 母親はどうなさったのです?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………母親は…星児を産み落とすと共に、その命を落としました。」

 

 

 

 

 

 

 ――!

 

 

 すみれの実子ではないという時点で何かしらの事情があるのは察していた一同…されど、肉親が生まれながらに欠けていた事実を明かされれば小さくとも、驚かずにはいられない。

 続けて、すみれは語る…

 

 

「星児の母親の名前は『御子神(みこがみ) カナタ』…彼女はかつての花組の見習い隊員のひとりで、わたくしが引退した跡を任せるべく呼んだ方ですの。そして、父親は婚約者である『黒潮 虎月(くろしお こつき)』…護国の一族・黒潮家の三男坊で造船業の社長を今はなさっておりますわ。諸事情があって、星児を引き取れませんでしたが…。このことは、星児にも養子にする時に伝えています。」

 

 

 御子神カナタと黒潮虎月… これが星児の両親の名。

 

 歌劇団の見習い隊員と婚約者である名家の三男坊か。この事実を知り、すみれを信頼しているからこそ夜叉に星児は惑わされなかったということか。

 

 

「――舞台に立つ前にショッカーとの戦いの中で命を落とした花組の新米隊員の噂は私も耳にしたことはありましたが…驚きました。ということは、真宮寺さくら女史自身やあの夜叉との血縁等の関係は無いと?」

 

「勿論ですわ。」

 

 

 エリスは暫し考える…そして、『最後にひとつ…』と告げる。

 

 

「星児のことは理解しました。そして、これはプレジデントGからの伝言です…『帝鍵』の在処を知っているなら速やかに報告せよ。』とのことです。」

 

「…御期待には添えるかわかりませんが、尽力しますわ。」

 

 

 それから、辛いことをお聞きしました…と謝りエリスとマルガレーテは去っていき、星児もそれに続く。一瞬、声をかけようとしたすみれだったが、言葉が喉で詰まってしまう。

 星児も母の視線に気がついていたものの、何を言葉にして良いかわからず逃げるように足を速めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

 ベルリン華擊団が去ったあと、暫くして解散になった一同。すみれから『帝鍵』なるものについての説明も受けた或人…。

 

旧・華擊団たちが降魔皇を封印するために用いた神器らしく、強大な力で別次元の帝都・『幻都』への封印を成し得たものの旧・華擊団メンバーもろとも巻き込まれる形になってしまったらしい。それを降魔皇復活のために降魔が、戦いに終止符を打つためにプレジデントGが欲しがっているということ。…一方、ネオ・タイムジャッカーのレクスが欲する理由はなんだろうか?やはり、これを利用して世界崩壊を加速させオーマジオウを葬る思惑なのか。

 

 

「ま、夜叉についてはさくらがああ反応するのもわからんでもない…」

 

 

 帝鍵云々以外は現在の花組の面々も知っているようで、或人は神山から色々と事情の補足を受けていた。まず、さくらが語った『真宮寺さくら』なる人物について…

 

 

「真宮寺さんはさくらの憧れの人だ。なんでも、はぐれ降魔から助けてもらったのがキッカケで、以来あの人のようになりたいと口癖のように言っていたよいつも。星児が天宮家に預けられている間も、よく真宮寺さんのことを聞いていたよ。」

 

「え? 星児くんって、さくらちゃんの実家に預けられてたの!?」

 

「…あ。あ、そうだな。そういえば言ってなかったな。あの頃は帝都も降魔大戦のゴタゴタが多かったし、すみれさんも手が回らなかったんじゃないか?」

 

 

 ああ、だから『姐ちゃん』と呼ぶわけか。

 

 そこは納得だが謎が残る…なら、夜叉が真宮寺さくらの姿をしていたのは本人かどうかは別にして、混乱を誘うためだろう。だが、星児の母と名乗る意味は? 揺さぶりをかけるにはあまりに個人に狙いを絞りすぎているし、実の両親の記録も残っている以上は大した効果は無かった行動。敵のリサーチ不足かそれとも、別の何かに狙いがある?

 

 

「今はさくらに時間が必要だ。そっとしておこう…きっと立ち直れる。問題は…無限だな。」

 

 

 無限は開会式襲撃の際にアナスタシア機以外はかなりのダメージを受けている。特に、メタルクラスタホッパーのクラスターセルをまともに喰らい削られた神山機と初穂機は複数箇所のパーツを交換しなくてはならない程に甚大で、令士も『試合までには絶対に間に合わせる!』と意気込んでいたが…物資と時間どちらも足りなくなる可能性が高い。

 

 

「神山さん、それなら俺に考えがある。」

 

 

 ここで、或人は意を決して提案する。

 

 

「昴や他、何体かのヒューマギアに霊子戦闘機についてラーニングさせて下さい。ヒューマギアなら、人間より細かい作業や重労働だって長時間耐えられます。そうすれば試合まで間に合うかも…!」

 

「ヒューマギアを?しかし、霊子戦闘機の機密をいくら社長とはいえおいそれと見せるわけには…」

 

 

 或人の提案は確かに魅力的だ。しかし、彼はあくまで帝国華擊団の人間ではない協力者で厳密には外部の人間…霊子戦闘機のデータを見せることは機密の漏洩にあたる可能性は充分にある。とても神山の一存では決められない…支配人であるすみれの判断を仰がなくては…

 

 

(しかし、すみれさんも今はかなりまいってるみたいだし…。花組全体が不安になってる。俺がしっかりしないと…!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

 資料室… 普段、クラリス以外は滅多に足を運ばないこの場所にすみれは居た。

 

 

(…御子神さん。)

 

 

 思い返すかつての仲間の記憶。…散りゆく灰のような銀髪を黒いリボンでポニーテールをした後ろ姿は服装の袴と相まって儚げな雰囲気で、その視線はいつも憂いを帯びていた…。

 彼女はこの図書室で決まって同じ『絵本』を読んでいた……何度も… 何度も… 虚しさと哀しさを織った視線を落としながらまるで人形のように。

 

 

(……宮沢賢治 『よだかの星』。)

 

 

 『よだか』という名前の鳥が主人公で、優しく気弱な性格が祟って本物の鷹でもないのに『鷹』という字が名前に入っていると難癖をつけられ動物たちに苛められる。そして、救いを求めて夜空の星座に請うたが相手にされず、遂には飛ぶ力を失ってよだかは死んでしまうというのがおおまかな話。その結末の解釈については文学者によって別れたり議論されたりなどするが、別にすみれの知るところではない。

 本棚から手をとり、パラパラとページをめくる…丁度、よだかが星座たちに声を届けようとするシーンで止まった。藍色の絵の具の夜に散りばめられた銀色の星が美しいが、シーンの意味合いとこのあとの展開を知っていれば残酷に思えてしまう。

 

 

 

 ―――きっと、私もよだかのように落ちて、この世に呪詛を吐きながら死んでいくんでしょうね。

 

 

(でも、あなたは落ちなかった。大神さん、真宮寺さん…皆がいたからあなたは…) 

 

 

 彼女は孤独だった…でも、すみれは当時の仲間たちなら冷たくなった彼女の心を溶かしてもう一度、血を通わせることが出来ると信じ託した。そして、彼女は心を開き…やがて、星児が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――私の息子を返せぇ!!

 

 

 

 

「…」

 

 

 追憶の最中に過る夜叉の顔。真宮寺さくらの顔をしながら、星児の母を名乗る上級降魔… 

 

 あれを見たのは今回が初めてではない。

 

 

 

(きっと夜叉はまた星児を狙う。早くなんとかしなくては…手遅れになる前に…)

 

 

 

 

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