仮面ライダー01<ゼロワン> × 新サクラ大戦 ー新たなるはじまりー 作:ジュンチェ
…時は10年前
ひとりの男が大帝国劇場を去ろうとしていた…。
荷物を纏めて、英雄たちを失った舞台に一礼をするとバックを背に下げ出口へ向かおうと…しかし、それをまだ当時の幼い星児が裾を掴み引き留める。
「なんで行っちゃうんだよ、本郷さん!」
「星児くん…」
男…本郷猛は申し訳なさそうにすがる少年を見据える。涙をためる瞳に罪悪感が胸に刺さるが、彼には解っていた…もうここに自分がいるべきではないのだと。
「…すみれさんにも話をした。俺は真宮寺くんや大神くんたち…そして、俺の仲間たちを捜しに行かなくてはならない。それに、ここに俺が居ても出来ることは何もないんだ。」
「でも! 母さんが… 俺達は…」
降魔大戦は花組…そして、本郷以外の昭和ライダーたちを次元の彼方へ飛ばしてしまった。もう歌劇も防人としての務めを果たすことすら難しい事実上の帝国華撃団壊滅。本来、生き残りとして精神的支柱を果たすべきなのだろうが、言ってしまえば元よりこの太正世界で本郷自身には『その場に居る』ことしか出来ない…故に、蜘蛛の糸のようにか細い可能性でも並行世界を渡ることに賭けてみることにしたのである。
それでも…! と食い下がる星児に膝を折り目線をあわせる本郷は持っていた二振りの刀を星児に手渡す。
「…この刀を君に託す。いつか、君が『運命』と向かい合う時が来れば道を切り拓いてくれるだろう。」
―― 一振りは『桜』の花の唾が金色装飾された輝く華やかな『赤』
――― 一振りは『蓮』の花の唾に鈍く銀があしらわれた禍々しい『黒』
この刀が何だったのかは解らない。ただ、すみれが『ここに今はあるべきじゃない』と何処かへやってしまった…。そして、目まぐるしく帝都と帝国華撃団再建への日々に忙殺され、星児もいつの間にか忘れてしまった。
まあ、実際そんなものが役立つことは無かったのだから仕方ない。それから、星児は勉学や鍛錬に幼いながらも励んだ。母であるすみれも合間を縫って指導してくれたし、気の向いた時に白秋も手ほどきしてくれた…。他にも書庫の本を片っ端から読み漁り、花組の皆が教えてくれた様々なことを自分流に再現してみようと努力も重ね数年…
努力は実らなかった。
新たに立ち上げられた世界華撃団連盟W.L.O.F.…正確には統括者であり創設者のプレジデントGは帝国華撃団再建に前向きでは無かったのだ。理由を問い詰めても『今更、旧い形をしたソレを新しい仕組みに組込むのは人材も時間もコストがかかり過ぎる』の一点張り…それは建前で今更、旧・華撃団の連中がしゃしゃり出てこられても目障りなのだろう。
それでも、諦めなかった。かつての光を取り戻してみせる…自分が新しい花組隊長として……!
―――なあ、聞いたか? 帝国華撃団再建の話…つっぱねられたんだってさ。
―――ま、そうだよなぁ。今更、いらないだろ。上海華撃団だっているんだし…
―――今の支配人、神崎すみれだろ? 女優としては凄かったが…経営者としては、今の古ぼけた劇場みてるとなぁ。
―――帝国華撃団は…過去の綺麗な思い出であってほしいわ。
「…」
陰口… 侮蔑… 哀れみ…
全てが屈辱だった。
歯を食いしばっ食いしばって、食いしばって…それでも、それでも…!
「―――お前に何が出来る?」
そんな時に、あの人は現れた。サー・ガヴェイン=2号ライダーのあの人と同じ名前と同じ形をした力を持つ全くの別人…ロンドンから来た一文字ハヤト。いずれ、師匠になる男。
「お前は華撃団の忘れ形見だろうが、所詮は無駄に大層な看板を引っ提げただけのガキだ。お前自身には何の力も無い…。だから、お前を哀れんだり、蔑んだりしても、誰も手を貸さない。…自分も、何もかもを変えたいならロンドンに来い。俺が直々なシゴいてやる。」
悔しいが全てが言うとおりだった。忘れ形見という看板を振り回すも自分は中身が伴わなく幼い…おふくろの腰巾着。変わらなくては…もっと、強くならなくちゃ。平和のために身を捧げた『あの人たち』のように。何よりも、手を伸ばしてくれたおふくろのために。
だけど、薄々解っていた。多分、この男がやってきたのは裏でおふくろが手を回したんだろう…このまま帝劇にいても腐ることを危惧して…。
そんな思いを確かめることも怖くて飛び出して… まだ花組に入隊したての初穂すら置き去りにして逃げて… 甘えて… ロンドンからも逃げて… 帰ってきて… 逃げて… 傷つけて…
俺は… 俺は… 俺は何をすればいいんだ?
俺は…何処を目指せば良い?
誰か… 誰か……
苦しい… 寒い… 暗い…
誰か… 誰か…
「神山ァァァ!!!!」
「星児ィィ!!!!」
ギャァァン!と金属音鳴らしてぶつかり合う槍と刀。舞い上がる火花と有り余るほどの熱気と蒸気…。戦士と戦士が魂の底から雄叫びをあげ、刃を交わす。
実力は互角、パワーは星児機の『鬼・無限』が上回り、防御力と操縦者の技術なら神山機の無限が上回り拮抗する。
数秒後、刃が弾け間合いをとる両者。試合…否、最早、命を賭けた死合い。一撃一撃が下手をすれば霊子戦闘機だろうとバラバラにしかねない威力で喰らいあうような武の乱舞は続く。
「なんと…。これ程の霊力を持つとは…」
そんな様子を穏やかではない思いを胸に秘めながら見守っていたプレジデントG。まさか、帝国華撃団があんな隠し玉をもっていて、あろうことかベルリン華撃団が負けるのは想定外だったが、まあ良い…あんなものは『W.L.O.F.が認可していない』だのなんだの言い掛かりをつければこちらで接取出来る問題ない。ただ、ベルリンの元祖メンバーはリタイアして残るは帝国華撃団隊長と旧・華撃団忘れ形見の一騎打ち…正直、こんな展開は不安を覚えずにはいられない。
この戦いぶりを見るにわざと負けることはなさそうだが…
「ふむ。そういえば、夜叉の奴はアレを息子と言っていたな…。どうも洗脳が甘くなっている節があったが、最近の奴は何かと薄気味悪い。
真宮寺さくらに子供がいた記録は無いが…それにしても、あの最初期型の霊子戦闘機にも匹敵しうる霊力をバカ食いするマシンをあのように操る程のキャパシティ…。
……いや、まさか。まあ今度、調べてみるか。洗脳の再調整もしなくてはならないし丁度良いだろう。」
何にせよ…万一、負けようものなら母親ごと八つ裂きにしてやるまで。無論、人間のほうの母親だ。
不気味にほくそ笑むプレジデントG…
――その背後から音も無く、刀に手をかけ忍び寄る黒い影にも気が付かずに
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「俺はッ!! ずっと、背負って生きてきたッ!!」
鬼・無限の怒涛の攻め。霊力を圧縮した斬撃が神山の無限の装甲を抉るとる! しかし、飛電メタルの装甲はすぐさま弾けとんだ状態から元の状態へと戻りダメージを修復するが、搭乗している神山自身への消耗はそう簡単にいかない。一撃一撃を受け流すにも、防ぐにも体力・霊力がゴリゴリ削られる…機体よりも先に神山自身が駄目になりそうな勢いだ。
「…ぐっ!?」
「俺は、夢がある! 絶対に叶えなくちゃいけない夢がッ 取り戻さないといけない夢がッ!! お前には俺と同じ覚悟はあるのか!!」
頭上から迫りくる槍の切っ先。咄嗟に身を引き、刃は地面に突き刺さった上に神山機に踏みつけられ深々と地面にめり込み引き抜けなくなる。致命的な隙を神山は逃さない。
「背負っているのは、お前だけじゃないッ!」
慌て槍を放して飛び退いた鬼・無限の懐へ一気に踏み込み薙ぎ払い。その一閃は黒い装甲を掠めるが、ダメージらしいダメージを与えられず距離をとった彼は背中のホルダーから取り出した霊子ライフルの銃口を向ける。牽制のつもりだろうが、神山は恐れない。更に、踏み込み一閃…霊力の光を灯した銃身を斬り上げて両断。圧縮されていた霊力が炸裂し、鬼・無限は大きく後ろへよろけ星児の苦悶の声が洩れる…。
「ぬぐぅぅァ゛ァ゛ァ゛……!! まだだッ! まだだ、神山ァ!!」
されど、退くことはない。星児はコックピットのスイッチを操作し、霊子タービンの出力を限界まで上げるよう操作。すると、ゴォォ!と呻くように紫色の霊力の炎が全身から噴き出し、鬼…否、幽鬼かもしくは悪魔のような霊力のオーラを纏ってみせる。
同時に、機体はその力を維持すべく操縦桿を握る者の命を吸い上げ、一気にかかる負担は鼻血や血涙…牙を深々と突き立てられるような激痛となり星児を襲う。
その異常さ、すぐに神山は気が付き攻め手を止めた。
「星児、お前…!?」
「……これが、俺の死ぬ気の覚悟だ…。さあ、神山ァ…かかってこいよ! 死力を尽くしてなァ!!」
死ぬ気になればとはよく言う言葉…
この意味、正確には死を選ぶほどの覚悟があるなら、何だって出来るということを指すらしい。
だが… 星児の場合は…
☆鬼・無限
星児がプレジデントGから受け取った独自改装を施された重武装の無限。2本の霊子刀や槍、試製霊子ライフルの他にまだ実験段階の試製霊子タービンなどなど多数のまだ正式に運用されていない装備や機構が多数積まれている。どちらかといえば、武装などのテスト機の意味合いが強い機体。捻れた角パーツのおかげで鬼のように見える。
組み立ては本来ならプレジデントGのエージェントが受領する予定の機体の中から都合したもの。無茶なオーダーで急遽、用意したのでパイロットの生存のための各機能は最低限までオミットされている。
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次回で誠を受け継ぐ者編は一区切りになりますかね。
次章は真宮寺さくらといった旧キャラたちの過去編の掘り下げにするか、アナスタシアをメインに据えたオリジナルの話にしようかと考えています。アナスタシア編は彼女と因縁がある小説版のあの華撃団が…