仮面ライダー01<ゼロワン> × 新サクラ大戦 ー新たなるはじまりー 作:ジュンチェ
――色々あった。 でも、悪くない人生だったと思う。
同じ団員の息子というだけで、家族にも帰る場所にも恵まれて… 血は繋がっていなくても我が子同然に厳しくも愛を注いでくれた母もいた。
友にも恵まれた。…本当に人に恵まれていた人生だった。
「――! ――ッ! ――!!」
だから、少しでも誰かの役に立ちたかった。
誰かの支えになりたかった。誰かに認めてほしかった。
結局、迷惑をかけてばかりだったけども…
「――! 目を――さい!! ――!」
このまま生きているよりは良いだろう。せめて、これ以上な邪魔にならないように死んだほうが…
「目を覚ませ! 神崎星児!!」
――!?
聞こえるはずのない声に朦朧としていた意識が覚醒する。
「姉ちゃん…?」
天宮さくら…間違いない、コックピットから装甲を隔てた先にいる…!?彼女はアタッシュカリバーを装甲の合間に突き刺してハッチをこじ開けようとしているのだ。更にゼロワン・シャイニングスチームホッパーが苦悶の声を上げながらも、両手を打ち付けて霊力を吸い上げているではないか。神山の無限も離れずハッチを剥がそうと限界のボディに鞭打っている。
「そんな… どうして。駄目だ!このままじゃ、巻き込まれる…!俺のことなんて放っておけよ!」
「そうやって、逃げるつもり!? 死んで楽になろうなんて卑怯! それが、全力であなたに向かいあってきた人たちに対する答えか、神崎星児! それでも、花組の忘れ形見か!」
「…じゃあ、どうしろって言うんだよ! やること為すこと裏目に出て、嘲笑われて、迷惑かけて……もう、生きていたくなんかねぇよ。もう死なせてくれ…放っておいてくれよ!!」
さくらの叱咤に思わず弱音が洩れてくる……それが、傷だらけの少年の素顔だった。苦しみに遂に折れた哀れな独りぼっち…泣きじゃくる顔はずっと心の奥底で隠し続けてきた弱りきった自分。
それでも!とさくらは叫び続ける。
「情けなくたっていい!嘲笑われてたって、転んだって…!生きなさい!! どんな時でも、あなたの帰りを待っている人はいるでしょ!!」
帰りを待つ人…過る母の顔。花組、ロンドン…
続けて叫ぶゼロワン。
「星児くん、君の夢は死ぬことなんかじゃないだろ!! …それで君は満足できるのか? 花組の皆や君のお母さんは胸を張れるのか!!」
――夢。
自分の本当にしたいことは、描く未来はこんなことだったか?
「星児、お前の夢はなんだ…!?」
夢… 本当の願いは… 夢見た先の景色は…
「帝国華撃団を…復興させること…! 兄さんや姉ちゃんたち…おふくろやさくら姐さんたち皆と一緒に輝く大帝国劇場の舞台を観たい…っ!」
その時だった。ガコン!と音がなり、ハッチがこじ開けられる…眼の前にはさくらにゼロワン、神山の無限。3人が手を伸ばしている。
「手をッ…はやくッ!!」
気がついたら無意識に掴んでいたさくらの手。
そのまま、引きずり出されると同時に鬼・無限は爆発四散…神山機とゼロワンはギリギリで離脱したのであった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「神山隊長! 星児さん!」
クラリスは愛機を降りて、神山機に駆け寄る…。
初穂やあざみにアナスタシア…更にはすみれも続き、皆が安否を確かめんと急ぐ。そして、目にしたのは愛機から降りた神山にさくらと星児が息をきらして座り込んでいた…どうやら、全員無事のようである。
「マジかよ…本当に兄さんも姉ちゃんも、滅茶苦茶だぜ。」
「無茶でも滅茶苦茶でもやるさ、俺達は仲間で家族だろ?」
「華撃団は決して、仲間を見捨てない…でも、もう勘弁してくださいよ?」
疲労が滲む乾いた笑いのやりとり。こんなように話すのなんて実にいつ以来か…再会してからは笑ったことなんて一度もなかったのに、今は幼き日々が戻ってきたようだ。
されど、すみれが近くに居るのに気づくと星児は明りが消えたように顔に暗い影を落とす…。
「星児…」
「おふくろ…ごめん。結局、なにも出来なかった。独りよがりした挙げ句にこんなザマだ。トップスタァの息子が情けねぇ…」
「そんなことあるものですか!」
自嘲する我が子をすみれは優しく抱きしめる。
「あなたは、立派に戦い抜いた…恥じることなど何一つありません。誰がなんと言おうと、帝国華撃団の一員でわたくしの自慢の息子ですわ。」
「おふくろ…」
それから、少年は声をあげて泣いた。
母に抱かれなくなど、それこそ幼子の解き以来だ…。同時に、観客席から勇士たちの奮闘を讃える拍車が響きはじめる。それは、星児が生まれてはじめて舞台で浴びる祝福の喝采にして、彼の縛る鎖が砕けていく音… そして、帝国華撃団再建の大きな一歩の足音だった。
「よかった。本当によかった…」
一方、或人も疲労困憊になりながらも満足げに芝に腰を降ろし笑っていた。
星児の手は今度こそ『家族』と繋がれた…もう独りよがりに迷うこともないだろう。花組の彼等に血のつながりは無い…でも、確かにそこには決して絶ち切れない絆がある。そう、それは人間とヒューマギアのような…
【 ――よくやったな、或人。】
「父さん?」
ふと、父親の声が聞こえた気がしてゼロワンドライバーを取り出すと…どういうわけか眩い霊力の光を発しているではないか!『えぇ!?』と戸惑う或人だったが、次の瞬間に光がゼロワンドライバーのシルエットを象って分離…やがて、新しいドライバーへと形を変え魂が吹き込まれる。
ゼロワンドライバーをベースに帝国華撃団のシンボルである桜を意匠にした飛電型霊子ユニットが搭載された新しいベルト…。太正と令和が交わるこの世界その在り方を示し、世界を救い『太正の1号』へと至らせるためのカギ…その名は
「それが、『ニューエイジドライバー』…太正の1号のベルトさ。実験は成功だな。」
「…!」
タイミングを計ったように現れる戦兎。…万丈は戦兎の代わりにマルガレーテにシバかれて『俺は関係ねぇ!?』と悲鳴をあげていたが、心配する或人の視線も相棒の窮地も無視して話を続けていく。
「成功はした…が、かなり大詰めは危ないところだった。咄嗟の判断で君が暴走する無限から霊力を吸い出してくれなきゃ、花組も神崎星児も木っ端微塵だった。感謝する。」
「あの、実験って…」
「ああ、飛電改装はドライバーと霊力リンクを円滑にするための準備に過ぎない。まあ…色々と調子に乗って試合は負けたけど。終わり良ければ全て良しってね!」
――良いわけあるかァ!!
「うわぁ!?こっち来た!?」
多分この人も後々でマルガレーテにシバき倒されるんだろうなぁと思いつつ、再び新しいベルトへと視線を移す或人。戦兎は終わりと言ったが、まだ終わりじゃない…いいや、彼等はまだスタート地点に経ったばかりなのだから。
喜びも苦難も…全てがここから始まるんだ。